東方陰陽玉   作:咏夢

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 新キャラ登場。提供者さんに申し訳ないよな、と思うほどに、男子が書けません。初の男子キャラです。
 三章に向けてペース上げたいですね(ヒトリゴト)。


黄昏の里の勇者―近づく陰陽
出会い①


 一ヶ月の猶予が与えられた、その翌日の事。

 

「うーーーん……」

 

 咏夢はさっそく悩んでいた。藍姉は、暖かい湯飲みを差し出すと、首を傾げる。

 

「どうしたの?咏夢ちゃん」

「なんかさ、仲間が欲しいって、朝から呻いてて。」

「呻いてないよ!?」

 

 橙は呆れたように肩をすくめて、藍姉の淹れたお茶を一口飲んだ。美味しかった。その横に腰かけると、藍姉はさらに首を傾げる。

 

「仲間、って……私とか橙ちゃんとか、他にも美鈴さんとか……たくさん居るよ?咏夢ちゃんの仲間。」

「うーん、そうじゃなくて……こう……」

「味方じゃなくて、仲間なの?」

「そう!そうなの!」

 

 橙の指摘にぶんぶんと頷く咏夢、あまり真意を掴めずに考える藍姉。三人は詠唱院の居間で、朝から話をしていた。最初はそれぞれの近況について話したり、咏夢が遅い朝飯を食べていたりしたが、ふと咏夢が言い出したのは、とんでもない案件だった。

 

「にしても、"博麗の試練"かぁ……。紫様、そんなこと言ってたなんて……。」

「李瓜の所でも、何も分からなかったし……前例は無いみたいだよね。やっぱり、初めてなのかな……?」

「うん……私も聞いたことない……。あ、文さんに聞くのはどうかな?もしかしたら、何か知ってるかも。」

「それいい!」

 

 咏夢はガタンと立ち上がって、詠唱院の裏へと軽やかな足音を立てて駆けていく。結界の揺らぎが、虹色の光の輪を生み出しているその場所で、くるりと振り返る。

 

「さっ、行こう橙!」

「全くもう……ホントに落ち着かないなぁ。」

 

 橙はため息を吐きながらも、笑みを浮かべていた。手をしっかり握った二人は、後ろに立つ藍姉に手を振る。

気をつけてね、となおも心配そうな彼女に笑いかけて、咏夢は三度目の幻想郷へと旅立った。

 

――――――

 

「よーし、今日はこの辺でいいか……。」

 

 満足げに剣を収めると、青年は辺りを見渡した。腕が鈍らないように始めた妖怪退治も、なかなか悪くない。少ししっかりとした個体も倒せているし、やはり自分の力は落ちていないようだ。

 彼は、湖畔まで歩いていくと、怯えていた人里の少女に立ち上がるよう促した。依頼にあった迷子は、この子で間違いないな、と確認すると歩き出す。ついでにと、里の掲示を見てきてよかった。

 

「しっかし……やっぱり此処は凄いな。見たこと無い奴がぽんぽん出てきやがる。」

「勇者様は、お外から来たの……?」

「ん?……あ、あぁ。そうだな……外から、といえば外だけども……。」

 

 答えながら、青年は少し笑った。勇者サマ、なんて柄でもない。いつの間にそんな風に呼ばれるようになったのだろう――しかし、彼は真に"勇者"だ。

 ただし、世界を救うヒーローとか、そういう意味合いではない。種族としての話だ。善の期待と悪の畏怖を力として、人々を救う立場にある、勇者。

 そんな彼は、確かに外来人だ。

 

「俺は、現惣村に住んでいたんだよ。そこから幻想入りした……こっちに来たんだ。結界を破るのとは違う、神に招かれたのかもしれないね。」

「へぇ~……勇者様は外から来たのに強いのねぇ。」

「うーん、それも少し、ズルかもしれないけど……ね。」

 

 "何でも攻略する程度の能力"は、彼を大いに強くしてくれた。現惣村から異例の幻想入りができたのも、能力による力の増幅によるものだと――少なくとも彼自身は――考えている。

 

 そんなことを話している内に、人里の門が見えた。人のあまり居ないその場所で、一人の女性が立っている。こちらに気づくと、大きく手を振った。

 

「先生……!」

「いろは!無事だったか、ケガは?」

「少し転んじゃったけど大丈夫っ!」

 

 女の子のハキハキと受け答えする様子に、青年は安堵を覚えた。それと同時に少し疲労も覚えたが、さして気には留めなかった。女性はさらりとした髪を揺らすと、顔を上げて微笑んだ。

 

「いつも感謝しているよ。里の皆も、お前に礼を言いたがって……」

「何も感謝される事は無いだろ。俺は勇者なんだから。」

 

 片頬で笑った青年に、人里の教師・慧音は少し呆れたような、心配しているような顔をした。しかしこの問答は、出会った頃に済ませている。いろはを家に送ると、慧音は青年の手を引いて、代わりに言い放った。

 

「今日はもう日も暮れる。休んでいけ。」

「あの、慧音?それ拒否権って……」

「無い。」

「ですよね……分かったよ。ありがとう、慧音センセ。」

 

 青年が困ったように笑うと、少し頬を赤くした慧音は無言で彼を隣に並べた。慧音は、自分が勇者であるからと無茶をしたりすると、こうして不機嫌になる。青年もそれは分かっているのだが、どうしても自分を大切に、という思考には至らなかった。

 その代わりに、こうして時々旧知の仲である慧音の家で休ませてもらうのだ。半ば強制的ではあるが、悪くは思っていない様子の青年は、夕日を背に笑った。

 

 現惣村出身の、青年の名前は、広野優希。

 "何でも攻略する程度の能力"の、勇者である。

 

 彼は、咏夢の強い味方となるであろう。紫は二人分の背中をひっそりと眺めながら、また笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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