東方陰陽玉   作:咏夢

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 すごい勢いで設定捏造しまくる事に定評のある作者と、それを公式と信じてしまうヤツの悪循環。




出会い②

 人里は、今日も賑やかになってきた午前。咏夢はその風景を、物珍しそうに見回している。その隣では、橙がフード付きのケープを被って、咏夢の手を引き、足早に人の間を縫っていく。

 

「すごいね、ホントに人間ばっかり……」

「だから、何度もそう言ってるでしょ。ちょっと例外はあると思うけど……基本的に対妖怪思想は強いの。」

 

 村とは違ってね、と付け足した橙に、なるほどと咏夢は頷いた。そう、現惣村とはかけ離れている、この人間だらけの光景が咏夢にとっては珍しかったのだ。

 二人の目的地は、人里の端にある寺子屋。そこにいる上白沢慧音は、歴史に詳しいとのことで、博麗の試練について何か知っているかも、という訳だ。

 

「それにしても、広いね……村一個分ありそう……」

「さすがにそれは……言いすぎ、だと、思うけど……?」

 

 そんな話をしている内に、商店の並ぶエリアを抜け、人もだいぶ少なくなった。そして、ついに二人は寺子屋を視界に捉えたのだった。

 

――――――

 

 かなり底の擦りきれたブーツを履いて、優希は玄関口に立った。一通り身の回りを確認して、一つ息を吐く。此所を出たらまた、何のためか分からない日々が始まるのだ――なんて、考えることは柄にもなく暗い。それを感じたか、背後から心配そうな声がかかる。

 

「なあ、もう少しゆっくりしていっても、良いんだぞ。」

「……いや。泊めてくれてありがとな、慧音。」

 

 笑顔で振り向くと、慧音はまだ不安な顔をしていたがこくりと頷く。その様子が何だか愛らしくて、優希は手を伸ばしその髪を撫でた。

 

「ふあっ!……ど、どうしたんだ……っ」

「あ、いやっ。他意は無いよ!それじゃ。」

 

 慌てたように優希は背を向けると、片手を上げて人に紛れていった。早足で消えていく彼の背中を、慧音は頬を紅くして、見送っていた。

 

「……また、帰ってきてくれよ、優希。」

 

――――――

 

 ふと、寺子屋の扉から足早に出てきた青年が、橙との間を通り抜けていった。その拍子に、咏夢の持っていた包み――中身は二人分の昼飯だ――が彼の腰に提げた剣に引っかかってしまい、双方共にバランスを崩す。

 

「え、うわっ……!」

「わわっ!?」

「な、咏夢!?」

 

 慌てて橙は、隣にいた咏夢の手を掴む。どうにか転ぶ事は免れた。一方の青年は、片手に包みを持ってこちらを見上げている。

 

「よっ、と……ごめんな。ケガ、してないか?」

「あ、は、はいっ。大丈夫です!」

 

 慌てながらもにこりと笑ってみせる咏夢に、青年は手を伸ばした。咏夢が包みを受け取ると、彼は苦笑で立ち去った。

 

「……あ、そうだ。そこの君、」

「は?えっ、私?」

「店に入るなら、玄関の右を見た方がいい。妖祓いの札は、少しキツいぞ。まあ、君くらいの実力があれば、大した事は無いと思うが……、それじゃ。」

「!」

 

 それを聞くと、橙は身を強ばらせた。咏夢には、その真意は分からなかったが、二人が互いに背を向けたのを見て、慌てて橙を追いかけていった。

 

―――――

 

 その後、橙は明らかに不機嫌だった。正確に言うと、機嫌が悪いのではなく、少し考え込んでいるのだが、隣を歩く咏夢からしたらただ、不機嫌なのである。

 

(アイツ……)

 

 そう、先ほどの青年についてである。彼に関して橙は考えていた。咏夢はもちろん気づかなかっただろうが、とんでもないスペックだった。

 

 たとえば、バランスを崩してからの一瞬で状況を判断した上で、包みを剣の柄から取って上手く抱え込んだ。

 たとえば、触れてもいないのに、今まで誰も気づく事の無かった自分の正体を覚っていた。

 

(一体、何だったの……?)

「橙、ちぇーんー?」

「……もしかして、勇者……とか……あるいは能力持ちとか……?」

「ねえ!何考えてるか分かんないけど、着いたよ?」

 

 勇者の類いなら、そこら辺は敏感だろう。または、妖を察知する程度の能力なんてものがあってもおかしくはない。

 橙がそこまで考えた時、横から頬を摘ままれる。耳が見えそうになって、慌ててフードを引っ張る。振り向くと、咏夢が首を傾げていた。

 

「……あ、あぁ。着いたんだ、ごめん。」

「うんっ!早く行こうよ!慧音さんってどんな人かなぁ」

「そっか。咏夢は寺子屋、通ってないのか。」

「うん……うん……?」

「いや、どっちよ。」

 

 前からそうだ。彼女は、"小さい頃の話"をよく覚えていない節がある。例えば読んだ本、歌った童謡、遊んだ人まで、なんだか曖昧な返事しか返ってこない。その度に、見ているのが辛くなるような目をするから、あまり橙から話題にはしなくなったのだが。

 

「まぁどっちでもいいけど。行くよ、咏夢!」

「うんっ!今は試練の事、少しでも調べなきゃ!」

 

 

 

 




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