東方陰陽玉   作:咏夢

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すっっっっっごく遅くなりました。本当にすみません、というか、待たせたあげくにこんな短くてすみません。

三人称難しい。


動き出す紅い館―光り出す陰陽
虹符「彩虹の風鈴」


 二人の少女が、箒に跨がって飛んでくる。

 その眼下には、寝ているように見える赤髪の門番。

 霧に霞む水面が、少し揺らいだ。

 

 それだけだ。

 窓越しに見つめている事は、たったそれだけ。

 

 それでもこれから始まるのは、結末の見えない物語。

 

「そろそろね……咲夜、下がっていいわ。」

「……畏まりました。」

 

 何時振りだろうか。

 こんなにも、予感に満ちた昼は。

 吸血鬼は一人、牙を見せて自嘲気味に笑った。

 

―――――――

 

 ……どうしていきなり幻想郷に来られたのかなんて、もう気にしなくていいかもしれない。そう思い、一人ため息をつく咏夢は、フワフワした気分で眼下をもう一度眺めた。

 奥に聳える紅い館、とてつもなく広い湖には、先程の妖精共がプカプカ浮いている。……ご愁傷さま。

 

「さて、と。じゃあ今度こそ降りるからな~」

「はーい!」

 

 何というか、すっかり妹気分に浸っている咏夢は、紅魔館の入り口を指さして言った。

 

「あの人……いや、人じゃないかな?」

「美鈴のことか?居眠り門番だが」

「矛盾がスゴいんですけど。」

「まぁそんなもんだろ。」

 

 さすがに適当過ぎないか、幻想郷の人。普通に真面目な人も居るには居るんだろうが、今のところそんな印象しか見受けられない。咏夢は、静かに苦笑を滲ませながら、これからの事を考えていた。

 ここからでは表情などは見えないが、その人は緑色の服を着ている、赤毛の女性が立っている。正確に言うと、赤レンガ造りの塀に背中を預けて、目を閉じている。

 あの館の中は、とてつもなく広いという。そこからは完全に魔理沙頼みだが、仕方ない……と思いたい。

 

「……よーし。入るぜ~」

「お邪魔しま~す……」

 

 魔理沙に合わせて、咏夢も小声で挨拶をしながら、箒は塀の上すれすれを飛行する。前を見れば、いつの間にか日はかなり落ちてきている。午後3時といった所か。

 

 咏夢はふと、違和感を感じた。ピリッと肌を走る感覚はまだ感じた事の無い、懐かしく、どこか違うような。

 これは――

 

 

 

 

 

 

 

 

――"気"?

 

 

 

―――――――

 

「…………!」

 

 箒を握る手が震える。たかが一瞬の気流が、鍛え抜いたはずの反射神経を遮る。

 

 魔理沙はかつてない感覚に焦っていた、それ故に忘れてしまったのだ。敵意を見せるということが、どれだけ危険を増す相手なのかを。それが誰であるのかを。

 

「きゃああああああ!?」

「やめろ――っ!!!」

 

 金色の瞳を見開き、左手を伸ばして、後ろに座っていたはずの"彼女"の手首を掴む。直後に感じた事象に対処するには、少し時間が足りなくなっただろう。

 一瞬の閃光、肌を撫でる風さえ感じられないまま、数秒前に通ったはずの門前へと叩きつけられた。肺の中の空気が一瞬で吐き出される。

 

「ぐあ……っ!?」

「すみません魔理沙さん。今回だけは、通せない。」

「めぃ、り……おま、えっ……!?」

 

 迸る血のような彩光が、瞼を焼き付ける。すらりとした脚が、箒を折れない程度に踏みつけているのが見えた。そのまま目線を上に遡ると、身長差も相まって宙に揺れる細い身体。青を基調とした和風な袖、そこから覗く手は力無い。

 労るような口調と裏腹に、無感情で虚ろな瞳が細められる。心なしか笑みが浮かぶ整った唇が微かに動く。

 

「何せ私は……お嬢様の従者なので、ね?」

「……!」

 

 もう指一本動かせない。魔理沙は直感的にそう悟った。圧倒的な気迫、今まで感じたことの無いほどの強さ。

 いや、違う。違うはずだ。凍りつく思考をフル回転して、魔理沙はある矛盾に気づく。

 いくら友好的である美鈴でも、初対面で気を許していた訳が無いのだ。あの気迫があったからこそ、自分は門番との戦いを避けたのだから。感じたことがあるはずなのだ。この

  

(何かが、おかしい……)

 

 微かに感じる妖気も、明らかに本物なのに。魔理沙は自分の勘を疑った。偽物?まさか、そんな筈はない。

 

「では、失礼します。私は、お嬢様の所へ行かなくては」

 

 どこか取り憑かれたような響きの裏に、微かに感じたのは、深い悔恨と哀惜なのか。それもただの願望なのか。魔理沙には分からなかった。

 

「"彩虹の風鈴"。」

 

――ごめんなさい。

 

 ポツリと聞こえた声は、微かに濡れていた。

 

 

 

 

 




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