東方陰陽玉   作:咏夢

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とりあえず書けました。
投稿ペース戻したいんですホントに。

頑張りますので宜しくお願いしますね!(T-T)


彩符「彩光乱舞」

「私は誇り高き吸血鬼。この夜を統べる者……」

 

 部屋のドアを見つめて、謳うように呟く少女。その姿は姉に似て幼く、可愛らしい仕草の一つ一つだった。

 

「フランドール・スカーレット。……きゅっとして~」

 

 どかーん。囁くような声に秘められた衝動が、ドアに掛けられた高度の封印を破った。満足そうに歩き始めたその口許は、既に狂喜で歪んでいた。

 

―――――

 

「……そろそろ限界か。」

 

 親友の施した上位の結界魔法、その残り香が消え失せたのを感じたレミリアは、グッと唇を噛み締めた。

 それは何かを悔やむようであり、また決意を固めるようでもあった。当主としての風格は怯まずに、常に未来を、運命だけを見つめているのだから。

 

「咏夢……貴女が何者かは分からない。けれど――」

 

 上質な肘掛け椅子から立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。チラリと牙を覗かせた口から息を深く吐き出して、強く暗く輝く瞳が細められる。

 

「不確定要素は、排除しなくてはならないわ。何一つ、失敗は許されない……全ては、フランのためだから。」

 

紅い廊下に響く靴音は一際高く、そして哀しい。

 

――――――

 

「本当なの……咏夢が、捕まった?」

「はっ……先程、妖精メイドを取っ捕まえ話を聞いたところ、そのような情報が……。」

「分かったわ。ありがとう、藍。」

 

 妖しさと鋭さが幾らか増した様子の紫は、藍からの新しい報告を受けて、内心激しく動揺していた。何しろ幻想郷の中で、スペルカードルールにおいてはトップ層に入る、魔理沙がいたのだ。その姿さえ見当たらない。

 

「やはり……。」

 

 彼女を此処へ連れてくるべきではなかったのかもしれない。このままいっそ全て伝えずに、帰してしまった方がいいのかもしれない。紫は自分の情に流された行動を悔やむと同時に、心のどこかでそれを否定していた。

 

「何も伝えなくても、きっと彼女は此処に来たはず……」

 

 あの村には、力量不足な者達が博麗大結界を越えようと集う場まであるのだ。咏夢が結界を越えようとする事くらい想像はつく。そして彼女は実際に、結界を越えられる。本人は気づいていないようだが、彼女の継いだ"博麗の血"がそうさせているのだ。

 

「だから。大丈夫よね……零華?」

 

 旧友が命懸けで遺したあの娘を、ここで見殺す訳にはいかない。紫は、異例の行動に出た。

 

――――――

 

 痛い、痛い痛い痛い。

 

「うぅ……ぁ……」

 

 全身が熱く生きようともがいて、また咏夢の意識を揺すった。右肩から流れ続けた血は、いつの間にか止まった。が、痺れるような痛みは消えずに意識も朦朧としている。

 同室者に勘づかれないようにして、咏夢は震えた息を吐き出した。ふと滲んできた涙を堪えて、周りを見渡してみる。紅い布の壁に紅いカーペット、これでもかという程の主調で染まっている小部屋。

 客室のような所だろうか、と考えてから咏夢は、ハッとして背後を振り向いた。厚いカーテンの隙間の、その奥に光るのは……

 

「月……?!」

 

 その瞬間、咏夢はグッと襟首を引かれて、後ろに倒れ込んでしまった。冷徹で光のない瞳に、血の色の髪。

 そしてその奥にもう一人、小さな人影があった。

 

「ふぅん、意外とタフなのね。美鈴にやられて、二度も目を覚ますなんて。でも、美鈴は"気"を感じとる。」

 

 コツコツという足音、顎に指が添えられて少女の顔立ちが露になり、咏夢は息を呑んだ。

 銀色の髪にナイトキャップのような帽子、口から覗かせた牙、そしてこの館の何よりも紅い瞳。それは、気迫と強さに溢れていて、憂いと迷いが見え隠れしていた。

 そして振り切るように、口許に笑みを浮かべ囁く。

 

「貴女は逃げられないし、逃がさないわ。」

 

 咏夢は、今度こそ泣きそうになるのを必死に堪えた。生存本能を隅に押しやって、掠れた声で心から問った。

 

「貴女は、一体……何を……」

「……今から消える者に、教える事なんて無いわ。」

 

 レミリアが美鈴の瞳を覗き込み、一瞬のオーラを放つ。それは絶対の命令であり、従ってしまえば楽なもの。抗うことを許さない、容赦なき"魅了"。

 

「"彩光……乱舞"」

 

 その声は、やはり濡れていた。

 抗えない何かに抗う事を、諦めきれないようだった。

 

 

 




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