彼は、夢を見ていた。彼が見るのは、いつも決まっていた。飛行機が平常に飛行していると突然飛行機の左翼から爆発音がし、けたたましいアラーム音が機内に鳴り響く。人々の不安の声、とある者は祈り始め、とある者は泣き叫び、とある者は愛する者の名を呼び、とある者は落ち着かせようとする。さまざまな声が男に聞こえ、彼は隣にいる彼の愛する愛しき者の手を握る。そして飛行機の高度は、急速に下がり山に墜落する。飛行機は、バラバラになり飛行機に衝撃が走る。彼は、衝撃により意識を失った。彼が気が付くと飛行機の残骸部分から火の手が回り始めていた。男の横に彼が愛する者は、居なかった。男は、ふらつきながらも愛する者を探し、愛する者の名を呼ぶ。しかし、どこにも愛する者の姿は見当たらず男は、意識を再び失う。そして夢は、切り替わり一つの写真が男の夢の中に出てくる。男の愛するものと愛する者の前にいる一人の少女。そして愛する者の腕に抱きかかえられる一人の子供と愛する者の横にいる一人の青年。そこで夢は途切れ彼は、夢から覚める。
「はあはあ、またあの夢か…一体誰なんだ。あの夢に出てくる子供と少女は、そしてあの女性は…何か思い出そうとすると頭に強烈な痛みが走るこの感覚は…」
彼のこの夢は、かれこれ5年以上は続いている。彼は、いつからこの夢を見始めたかは、正確に覚えてない。この夢が日常となりつつあるので、一々覚えてられない。一年前の昼食を誰がおぼえているだろうか?覚えている人がいるかもしれないが大概の人は、覚えてないだろう。彼にとっては、それと同じなのだ。
「大佐」
彼のベッドの横に取り付けられているモニターから一人の部下が映し出される。
「もう時間か」
「はい」
「ならば行こう。更なる明日を世界を創る為に…」
彼は、そう言うと自室を出た。
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「お兄ちゃん」
放課後、一夏が自室に入ろうとすると横から声が掛けられた。
「どうした春花」
「今週会長さんとデートするって聞いたけど本当?」
「ああ。部屋から出ていく代わりに今週デートすることになった」
「それは、お兄ちゃんから言い始めたことなの?」
「いや。ただし、拒否しても何でも言うことをできる範囲で一つ聞くって言っちゃったからどの道デートをしなければいけなかった。」
「…それじゃあお兄ちゃんからデートに誘ったわけじゃないんだね?」
「ああ。あの人と一緒に生活すると俺のメンタルがドンドン削られるから一緒に生活したくないんだよ」
「可哀想なお兄ちゃん」
春花は、そう言うと一夏を抱きしめる。
「ありがとな春花」
一夏は、春花の頭を撫でながら言った。
「お兄ちゃん…」
「どうした春花?」
「大好きだよ」
「……ありがとな春花」
春花の発言に一夏は、ただそう答えるだけだった。だが、それでいい。彼らの間にそれ以上の言葉は、必要ないのだ。
「それで、会長さんとのデートどうするの?」
「今、考え中だ」
「お兄ちゃんがそんな事をするなんて驚きだよ」
「はあ。お前は、俺を何だと思っているんだ」
「年中朴念仁」
「おい」
「はははは」
「最初の雰囲気がぶち壊しじゃないか」
「お兄ちゃんが雰囲気とか分かるなんて驚きだよ!?」
「春花一週間口を聞かないぞ!」
「御免なさい」
春花は、一夏の発言にジャンピングDOGEZAをして謝った。普通の人にとっては、たいした事無いのだが、一夏にべったりの春花には、死活問題なのだ。
「はあ、俺だって傷付くんだぞ?」
「御免なさいお兄ちゃん」
「今度から気を付けるように」
一夏は、しゃがみDOGEZA中の春花の頭を優しく撫でる。
「はい」
元気の無い声で返事をする春花に一夏は、優しく頭を撫で続けた。
「そう言えば春花、今週の土日に家に帰るのか?」
「帰ろうと思っているけど何でそんなこと聞くの?」
「俺と千冬姉は、今週帰ろうと思っているから。それで、まあ土日の食事を作るんだがお前も帰ってくるなら春花の分も作っておかなきゃいけないだろう?」
「あ~、それじゃあお願いしてもいい?」
「別に構わないぞ。腕によりをかけたものを作ってやるからな」
「楽しみにしているよ一夏」
春花は、そう言うと一夏を背にして何処かに足を運び始めた。残った一夏は、ボソッと呟いた。
「千冬姉と春花が楽しみにしてんだから腕によりをかけて作らないとな」
一夏は、土日の献立を考えながら自分の部屋に入って行った。
△ △ △
「やっと終わった~!これで、いっ君喜ぶかな?」
束の前に一夏のISギャラハットがあった。一見彼女に預けた時と何ら変わりのない様子であるのだが彼女の手によってギャラハットは、更なる性能を見せる事になる。
「ふふ、いっ君が喜んでくれるといいな~」
天才と天災とも呼ばれる兎も惚れた男の前では、一人の少女?でしかなかった。
「ふふ。いっ君に頭をヨシヨシしてもらって、それからデートをもう一回してもらえたら嬉しいな~。あ、でも子作りで既成事実を作るっていうのも悪くないかも!束さん頭いい!!」
煩悩まみれの声がとある兎のラボに響き渡っていた。