IS~舞い降りる黒き自由の翼~   作:zeke

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今回は、織斑母の登場です。


男は、夢から覚め

男―――――大佐は、夢を見ていた。目の前には、いつもの夢と同じ男性と女性が部屋の一角のソファーに座っていて、二人の間に女の子が座っていた。しかし、いつもの夢と違うのは、女性のお腹が膨らんでいていつもの男の子がいなかった。

 

「ねえ、〇〇〇」

 

「どうした、◆◆◆」

 

「もうすぐ生まれてくるこの子の為にもそろそろあそこから手を引いた方がいいのでは無いの? 」

 

「しかし、もう後には引く事の出来ない所まで来ている」

 

「でも、」

 

「大丈夫だ。計画が完成したらきっといい未来になるさ。千冬と生まれてくる一夏の為にもいい未来を作ってやらねばならない。それが俺ができる唯一のこの子らへの贈り物だ。そして、俺の贖罪でもある」

 

「……でも、あなたもこの子達の前にいてあげて」

 

「…………分かったよ、千夏(ちなつ)」

 

男は、そう言うとソファーから立ち上がり上着を羽織った。

 

「もう行くの? 」

 

「ああ。もうそろそろ行かなきゃいけない」

 

「お父さん。もう行っちゃうの? 」

 

小さな女の子、織斑千冬が男のズボンを掴み男を見上げるようにして訊いた。

 

「ああ。早めに帰ってくるさ。可愛い千冬の為にも」

 

男は、そう言うとズボンを掴んでいる千冬を抱き上げて頭を撫で始める。

 

「私には、無いのかしら? 」

 

男の妻―――千夏は、幼い千冬に嫉妬をした様に男に問いかける。

 

「はあ、お前は小さい子に何嫉妬をしているんだ」

 

「私の事が嫌いになった? 」

 

千夏は、愛する夫に恐る恐る訊く。が、男の答えは、即答だった。

 

「馬鹿野郎。そんな事でお前の事が、嫌いになるかよ。何年の月日が経とうともお前を愛するこの思い。そして、わが子への思いは、変わらないさ」

 

それは、男の本心であり愛する妻、そしてわが子達への嘘偽りのない言葉であった。

 

「私もあなたの事を何年もの月日が経とうとも、あなたが記憶を忘れてもあなたへのこの思いは、絶対に変わらないわ」

 

そして、彼の愛する妻もまたそれに答えるかのように男への偽りのない気持ちを口に出した。そこで夢は切り替わり、大佐は気が付くと病院にいた。大佐の前に男が幼き千冬の手を握りソファーに座っている光景が映し出される。

 

「ねえ、お父さん。お母さん具合が悪いの? 」

 

「そうだよ千冬。お母さんは、具合が悪いから病院に来ているんだよ。でも、病院に来たからもう大丈夫だよ」

 

男は、そう言うと千冬の手を無意識のうちに強く握りしめていた。

 

「お父さん、痛い」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

千冬に指摘され男は、千冬の頭を撫でながら謝る。そして再び沈黙が訪れた。

 

「織斑さん」

 

30分後、一人のナースの登場によって沈黙は破られ男と千冬は、ナースのもとに駆け寄った。

 

「家内は、千夏は、無事なんですか!?」

 

男は、取り乱し千冬は、幼きながらも何かを感じ取ったように不安の表情を浮かべていた。

 

「安心してください。お子さんも奥さんも大丈夫ですよ。無事に出産は、終わりました。 」

 

ナースのその言葉に男は、安心し千冬も喜んでいた。ナースに案内され千冬と男は、千夏のもとに駆け寄った。

 

「千夏!」

 

「お母さん!!」

 

「二人とも大丈夫よ。それと、あなたこの子を一夏を抱いてあげて」

 

「ああ」

 

男は、千夏から小さな男の子を渡され抱き上げる。細い小さな手で一夏は、男の指を掴む。そして男は、嬉しそうにその様子を眺める。

 

「お父さん私も一夏を抱き上げたい」

 

千冬が男のズボンを掴み男に頼む。男は、二つ返事で許可すると千冬に一夏を渡す。

 

「重いから気を付けるんだぞ」

 

「うん」

 

男から渡された一夏を千冬は、重そうに抱きかかえていると男が千冬の頭を撫でながら千冬に喋りはじめた。

 

「千冬もこれでお姉ちゃんになったわけだ。ちゃんとしっかりするんだぞ」

 

「うん」

 

「千冬。あなたも知っていると思うけどあなたは、私たちと血は繋がってないわ。でもね、あなたは、私たち家族の一員の織斑 千冬なのよ。そして私たちにとってあなたは、大切な家族。自慢の娘よ。それだけは、覚えておいてね」

 

「うん。分かってる私もお父さんとお母さんの娘で良かったと思っているよ」

 

「嬉しい事を言ってくれるな千冬は、」

 

「そうね」

 

「ふふふふふ」

 

「ははははは」

 

大佐の前でその家族は、楽しそうに笑い幸せそうであった。突如その映像は、紙で描いたのごとく破られ大佐の足元は、ひびが入り地面が割れ大佐は、そのまま落ちて行った。そして大佐は、夢から覚め記憶を取り戻した。自分の名前。家族。自分がしていた事。ファントム・ハーケンの事。自分が何者であったのか。そして、あの事件の自分が記憶を失う原因を作った犯人を。

 

利用させてもらうぞファントム・ハーケン、技術長。ここから先は、お前たちの物語じゃない。俺の物語だ!俺の計画の為にもお前たちを利用させてもらうぞ!!

 

 

 

 

外れていた運命の歯車が再び動き出し世界に影響を与える。物語に書かれたシナリオから外れることになるとは、今はまだ、彼以外は知らない。しかし、この男――大佐の記憶が戻った事により物語は、徐々に変わっていく。そして、男の復讐劇が世界を巻き込み始まろうとしていた。

 




ここで言う物語とは、ファントム・ハーケンのストーリー(計画)です。
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