昨日布仏姉妹からの告白を受けた一夏は、今、寮の自室で時間を潰していた。
と言ってもパソコンを使用してメールをしていただけなのだが突然頭の中に声が響き渡った。どうやらジョーカーが彼に話しかけて来たようだ。
『 一夏、お前その決意でいいのか? 』
「 なんだよ急に。今まで放置だったのにいきなりどうした? 」
『お前がどちらを選択しようとも構わん。だが、お前には、後悔のない選択をしてほしい』
「急にどうした?辛気臭いぞ」
『お前があそこに来なければ俺……いや、俺達は束博士のラボの端で埃を被っていたか、分解されていただろうからな。お前には、本当に感謝しているから。だからこそ幸せになってほしいと俺は、俺達は、願っているんだ』
「……そうか」
『ああ。お前があの時あそこに来なければ俺らは、この世にもういなかったかもしれん。お前は、俺達の命の恩人と言っても過言ではない。だからこそ人生の選択に後悔の無い選択をしてほしいのだ。お前は、命の恩人。だからこそ我々はお前に力を貸す』
「すまないな」
『気にするな。お前に拾われた命だ。お前の気の済むように使うがいいさ』
「ありがとう。ジョーカー ジャッカル」
一夏の声を聴いて照れ臭くなったのかジョーカーの声は止んだ。
一夏が時計を見るとパソコンを使用していた時から20分が経過していた。
「時間だし、そろそろ行くか」
一夏はそう言うと椅子から立ち上がった。椅子に掛けていた上着を羽織り、自室を出て箒の部屋に向かった。
箒の部屋の入口についた一夏は、箒の部屋のドアをコンコンと軽くノックする。
するとドタバタという音が箒の部屋から聞こえて来る。音は、どんどんと大きくなりついに一夏のすぐ近くで止まった。音が鳴りやむと同時に一夏の目の前の扉が勢いよく開かれた。
「い、一夏!こういうのは、普通どこかで待ち合わせをしてだな~「なら、今日のデートを中止にするか?」」
箒が発言の途中、一夏の言葉が箒の発言を遮った。
「 俺は、別にどちらでも構わないぞ? 」
普段通りの表情で一夏は発言する。
その言葉に箒は、
「い、いやこのままで」
とだけ答える。
「そうか分かった。それと箒……」
一夏の無意識に意地悪な問いに少し腹を立てた箒は、怒った声で
「 なんだ? 」
とだけ答える。
「その服、似合っているぞ。いつもより少し違っていたから少し見惚れてた」
「 へ? 」
突然の一夏の口説きに箒は、思わず思考が停止する。
一夏は、実際に思ったことを言っただけなので口説きでは無いのだが………
「そ、そ、そうかそうか」
再び箒が口を開いた時も動揺を隠せなかった。
「それじゃあ行くぞ箒」
一夏はそう言うと箒の手を取り寮の廊下を移動する。移動の最中周りから歓喜と悲鳴が聞こえるが一夏は、気にせず歩く。移動中、箒はずっと下を向いたまま顔を赤くして一夏に連れられるがまま移動する。
「ほら着いたぞ」
一夏の声を聴き箒が顔を上げるとそこは、デパートだった。
「 い、一夏、一体何を? 」
「ここでお前の服を買うんだよ」
「い、いや私は服を持っているぞ」
「いいからいいから」
一夏に強引に連れてこられた箒は、されるがままの状態となった。
「すみませ~ん」
一夏に連れられて箒が店に入ると一夏が突然店員を呼んだ。
「 はい。どういったご用件で? 」
「この子に似合いそうな服を選んであげて下さい」
「分かりました。それでは、こちらへ」
「ちょっ、ちょっと待てああああああああああ」
店員に無理やり連行され箒は、奥に行った。
10分後、店員が戻ってきた。
「お連れ様がお待ちですよ」
店員に案内されて着いた先は、更衣室。
「それでは、どうぞ」
店員がレースのカーテンを捲るとそこには、白いワンピースを着た箒がいた。
「似合わんだろう。笑いたければ笑え」
「いや、似合っているぞ。すみません店員さん。これ一着お買い上げでお願いします」
一夏はそう言うと店員にお金を渡そうとする。
「すみません。お会計は、あちらでお願いします」
一夏は店員に指摘され会計に行こうとすると突然箒に袖を掴まれた。
一夏は、箒の方向を見ると
「 どうした箒? 」
と尋ねる。
箒は一夏の方を見ると口を開いた。
「 ま、待て、一夏!私は、買うとも言ってないぞ!! 」
「いいからいいから」
一夏は、箒をそうあしらうと会計の店員に向かって言った。
「これを購入するんで会計をお願いします」
「あ、は~い」
「 い、一夏あああああああああ!!! 」
箒の絶叫が店内に響き渡った。
店内からクスクスと笑い声が箒の耳に入り、箒はさらに赤く成る。
会計が終わった一夏は、箒の所に戻ると
「それじゃあ、行こうか」
と提案し、箒はコクリと頷くだけであった。
デパートから出た一夏と箒が次に向かった場所は、公園だった。
公園に着くともう夕暮れだった。
どうやらデパートで服を買うのにかなり時間を掛かってしまったみたいだった。
一夏は、公園に着くと遂に訊ね始めた。
「 なあ、箒。俺の事好きか? 」
突然の一夏の問いに箒は、混乱した。
あの、あの唐変木の一夏が私に自分の事が好きか尋ねただと!
今日の一夏は少しおかしい。いつもの一夏じゃない!!
だが、一夏は一夏。これは、現実だ。
「 箒、頼む教えてくれ!お前の本心を!! 」
いつもの雰囲気とは少し違う。どちらかと鬼気迫る表情で一夏は箒に尋ねた。
箒は、鬼気迫る表情で尋ねられ遂に本心を言ってしまった。
「 わ、私は、お前の事が好きだ一夏!! 」
遂に箒は、本心を一夏に言ってしまった。
断られたらどうしようと思いながら頭が困惑していた。
「そうか…………ありがとな箒」
一夏は、そう言うと箒を抱きしめた。
そして箒の耳元で囁いた。
「 ごめん。今は答えを出せない。だが、必ず答えを出すから待っていてくれるか? 」
「分かった。待っているぞ。お前の口から答えを聞く日をずっと待っているぞ」
そう言った箒の眼には、少しだけ涙がこぼれていた。
ずっと、ずっと好きだった相手に、一夏に告白できた喜びに涙が自然と流れたのだ。
「箒、帰ろう」
一夏は、そう言うと箒に手を出した。
箒が出された手を掴むと一夏は、歩き出した。
「帰ろうIS学園に」
二人は、手を繋ぎ歩き出す。
箒は、いつまでもこの幸せな日々が続けばいいと思っていた。しかし、その願いもやがて終わる。
箒の願いは、虚しくも叶わなくなる。一時の夢であったかのように、そして始まってしまう現実が。戦いが………
影は、動く。彼女の願いなど知らないとばかりに動く。自分たちの正義を貫くために動く。
ストーリは、最悪の方向に進む。そして、影により最悪がもたらされる。
★ ★ ★
昨日、箒の本心を聞いた一夏は今日の放課後、鈴に捕まり拉致されていた。
「 ちょっと一夏!これどういう事よ!! 」
そう言う鈴の手には、一枚の写真が握られていた。
その写真は、昨日の箒とのデートの最中を撮られたもので一夏は、いつの間にか許可も無に撮られたことにいつ撮られたんだろうと考えていた。
一夏の目の前にいる鈴は、わなわなと肩が揺れていてツインテールも逆さまに成っているのではないか?と思わす様なすごい形相と成っている。
「 いや、見たまんま普通に箒とデパートに買い物に行っただけだけど? 」
一夏がそう言うと鈴は、その言葉に反応した。
「 そ、そ、そ、それって、それってデート!? 」
「そうとも言う」
一夏の発言にしばし鈴は無言になったが、すぐに反応を示した。
鈴は、一夏の胸ぐらを掴むと
「 なんで、なんで箒なのよ!! 」
と言った。鈴のその目に涙が溜まっていた。
「 なんで私じゃなくてsecondじゃなくてfirstなのよ!なんで私じゃ駄目なのよ!! 」
鈴の悲痛な心の叫びに一夏は、しばし無言と成った。
「 ねえ、答えてよ一夏!!! 」
鈴は、再び一夏に問いかける。
「 なあ、鈴。俺のこと好きか? 」
予想外の発言に鈴は、困惑した。
なぜこのタイミングで言うのか?
どうして?どうして?どうして?どうして?
いくら考えても分からない。ならば!と思い、鈴はついに本心を打ち明けた。
今までずっと好きだった者に。初恋だった人に
「 ええそうよ!私は、あんたのことが好きよ!ずっと好きだったのよ!! 」
鈴は思った
今更本心を打ち明けても何も変わりはしないだろう。遅かったのだ。いや、遅過ぎたのだ。
彼は、箒が好きなのだから。ならば、いっそこの胸のモヤモヤを無くなればいい。散ればいい。私の初恋とともに
しかし、それは叶わなかった。
「…………そうか。ありがとなこんな俺を好きになってくれて。俺は、今は答えを出せないから待っていてくれ」
「 そうよね。あんたには箒がって、ええええええええええええええええええええええええええ!!! 」
一夏のそばで鈴の絶叫が響いた。
「 一夏、あんた箒と付き合ってないの!? 」
信じられないという顔で鈴は、一夏に尋ねる。
「 俺がいつ、箒と付き合っていると言った? 」
「 え、でも昨日あんた達デートをしたんじゃないの!? 」
「したぞデート」
「 え、でも付き合ってないの!? 」
「 ああ。昨日箒にも俺の事を好きかって聞いただけだぞ? 」
「 そ、それで箒は、なんて答えたの? 」
「俺のこと好きだって。だから俺は、今は答えを出せないから待ってくれと言った」
「 そ、そうなの? 」
「 ああ。それでさっきの答えだけどごめん待ってくれないか? 」
「 えっ! 」
「 今は、決められないんだ。だが、絶対に答えを出すから待ってくれ!! 」
「………分かったわ」
「ごめんな鈴」
「 まあいいわ。でも、絶対一夏の口から答えを聞かせてもらうんだからね!! 」
「ああ。約束だ。なあ鈴」
「何よ一夏」
「 今からデート行くか? 」
「 へ? 」
「箒とデートしたんだからさ」
「 い、今から? 」
「ああ。都合が悪いならいいけど………」
「都合が悪いわけじゃない。ただ急だったから少し驚いただけ」
「 そうか。なら行くか? 」
「うん」
それから一夏は、鈴と放課後デートをした。
限られている少ない時間だったが鈴はとても嬉しそうにデート中笑っていた。まるで無邪気な子供の様に………
俺は、この笑顔を………いや、皆の笑顔を守りたい。守ってみせると一夏は一人、心の中に決める。
彼の愛する者を、いや、者たちを守る為に。大切な場所を守るために彼は、織斑一夏は戦う。