シンデレラアイドル☆ルーラちゃん   作:いんゆめくん

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第二話『女の子はロマンチスト』

「え…………ええええ!? ……あっ、失礼」

 

 俺こと海藤一真は、今信じられない言葉を聞いていた。

 それはこの『女の子』こと路頭に迷っていたらしい木王早苗ちゃんを偶然にも見付け、何故か家に来る流れになってしまった後ファミレスで食事を奢ってあげた時の話になる。

 

 俺が何気無く自分の職業であるアイドルのプロデューサーと言う事を喋り、この前不幸な事に自分の初めてプロデュースするアイドルが誕生する予定だった審査で全員が落選、無事肩書きだけが一人歩きしているのを話したら早苗ちゃんが唐突に『私が貴方の最初のアイドルになっても良いわよ』なんて言うからつい冒頭みたいな大声を出してしまったんだ。

 

 いや、それ以外にも彼女がそう言った事に興味が無さそうな雰囲気をしていたから意外だった、と言う意味でもあるけど。

 勿論それを言うのが不味いなんてのは当たり前に分かっているとも。

 

「……文句あるの?」

 

「いやそう言うんじゃなくてね、簡単に言うけどアイドルって過酷だし結構縦社会だよ? そんないきなり……」

 

「私だってそんな事くらい知ってるわ。私は助けてもらった恩人に恩を少しでも返す事、そして何より……あ、憧れだったのよ、アイドル……」

 

「……可愛いな」

 

「はへえ!?」

 

 しまった、そう思った時には既に手遅れだった。

 堅物そうで真面目オーラがある彼女がアイドル好きだったのが、どうにもギャップがあって、恥じらってるのがやたら可愛く見えて。

 どうしてか過去、こんな可愛い女の子と話した事があるんじゃないかとふと思うまでだった。

 

 無論そんな出逢いが本当にあれば忘れてるなんて有り得ない。

 

 ……っと、取り敢えず何か弁解の一つでもしなきゃな。

 

「ア、アハハ……出来ればさっきのは聞き流して……」

 

「わ、分かってるわっ。気にしてないから良いわよっ」

 

「アッハイ……まあそれはそれとして、本当に良いのかい? そんな俺に恩とか良いからさ」

 

 たかがちょっと助けたくらいで相手の人生を決めちゃうのは流石に不味いし、何より俺が引け目を感じてしまう。

 

「だーかーら、私は恩もそうだけどやってみたかったのよ悪いっ?」

 

「いや良いんだけど、オーディション合格しないと話進まないし。言っちゃアレだけど魅力なら十二分だけど歌唱力とダンスは……?」

 

「宴会芸……じゃなくて趣味で物真似やってたから自信はあるわ。アイドル好きのおっさんから太鼓判押されたし」

 

「……まあ、早苗ちゃんがそこまで言うなら人事に話しておくよ。少なくとも俺からの紹介ならオーディションは受けられるはずだし」

 

 今宴会芸とか聞こえた気がするけど、きっと気のせいだと思いたい。

 一体何をどうしたらその明らかに成人してなさそうな見た目で宴会芸なんてやる事になってるのか、いや寧ろその見た目で社会人なのか?

 

 まあ取り敢えずはそれは置いといて、宴会芸スキルをどこまで信用して良いものか分からないが、魅力とオーラなら将来あの日高舞レベルになってもおかしくはない。

 それこそ将来性ならニュージェネレーションズ等の武内先輩がプロデュースするアイドル達に匹敵する。

 

 

 ……勝算は無い、歌唱力もダンスも分からない、そんな子だけど。

 

 いやそんな勝算が無くても彼女から溢れる自信、それが慢心だとはとても思えなくて。

 

 この子に懸けてみようと、何故かそう決心していた。

 

「お願いね。それと、受けるからには失望なんてさせないわ……寧ろ驚愕させてあげるわ、私の才能に、ね」

 

「……そりゃあ俄然楽しみになってきたな」

 

 ……そして俺は、いつの間にかこの子が合格した後について構想していた。

 まず売り出すならこのくらいの自信家で、少しきつめの負けず嫌いなタイプだろう。

 

 自信家と言えば、金城先輩がプロデュースしているアイドル『カワイイボクと野球どすえ(略して通称KBYD)』でお馴染み興水幸子ちゃんがいるが、あの子は何と言うか、背伸びしてるロリっ子と言うキャラで定着してしまった為自信家と言うカテゴリー内であるのにほぼ真逆に位置する事になる。

 

 彼女の自信は背伸びしてる訳でもない、確固たる地盤ありきの本格的な自信家キャラだ。

 自信家であり、厳しい事も言うが優しさもあり、統率の取れるリーダーポジションに置けたなら、346プロの更なる発展に繋がる起爆剤になるに違いない。

 

 次にポテンシャル……は置いとくが、誰と組ませるのが映えるかと言う話だ。

 

 それこそ金城先輩の幸子ちゃんと組ませるのも有りだし、武内先輩の神崎蘭子ちゃんだったり、それこそ男性アイドルが充実している315プロのJupiterと組ませてスタイリッシュにしたり、熱血ヤンキーユニットの神速一魂と組ませても面白いかも知れない。

 

 大田先輩がプロデュースしている年長アイドルの川島瑞樹さんと組ませても歳の差を感じさせない躍動感とインパクトを残す事も可能だろう。

 

 いや、考えただけで夢が広がっていくな。

 

 それだけで彼女には、既に才能があるのかも知れん。

 

「……どうしたのよ、考え込んだ表情したと思ったらやけに良い顔しちゃって」

 

「いや、早苗ちゃんがデビューしたらどんな子と組ませるのが面白いだとか、今のその素をキャラで売ってくスタイルが一番良いんじゃないかとか、そんな事をね」

 

「へえ、期待してくれてるの」

 

「歌唱力とダンスが並程度あれば即合格間違いなしと思ってる程度には期待してるぜ」

 

「歌唱力とダンスも期待してて良いのよ?」

 

「そりゃあ勿論だとも」

 

 まあ何はともあれ、これから楽しくなりそうである。

 

 

 

 

 

 

「はい、ここが俺の家な。マンションで悪いけど」

 

「男の人の一人暮らしなんだし、まあそんなもんでしょ」

 

 あれから約一時間と三十分弱、食事も終え自分の家に帰ってきていた。

 道中で早苗ちゃんによる生活必需品を買わないと不味いと言う発言が無かったら、あと少しで何処ぞのライトノベルの如くラッキースケベな事態になっていたと思う。

 そう思うとゾッとする、主に自分のアホさに。

 

 取り敢えずは服数着、歯ブラシや歯みがき粉、シャンプー、タオルは必要と言う事で買った。

 そこそこの金額にはなったが、これからにぎやかになる家の楽しみを思えば必要経費とも思えたのでよしとしよう。

 

「取り敢えず先シャワー浴びるか?」

 

「そうね、そうさせてもらうわ」

 

 流石に女の子より先にシャワーを浴びる程無神経な男もそういないだろう。

 特に路頭に迷ってたと言うなら、シャワーを数日してない可能性だってある訳だ。

 

「あ、ゆっくり入ってても良いよ。疲れてるだろうし」

 

「気が利くのね、ありがと」

 

「どういたしましてっと。それより家、そんな片付いてなくてごめんな」

 

「……別に散らかってるとは思わないけど。新聞が少し山になってるだけで、寧ろそこそこ簡素でスッキリした部屋に見えるわよ?」

 

「そうか?」

 

 部屋に関しては本当に片付いてないと思ってたんだが……お世辞、にしてはきょとんとしてるし本当の事……として受け取っておこう。

 

 ……しかし、なんかアレだな。

 

 すぐ近くで女の子がシャワーを浴びてる事実があって、俺は女の子と縁遠い二十三才童貞。

 滅茶苦茶緊張する訳でして。

 

 いても立ってもいられず、テレビを付けて落ち着こうとリモコンを手にし電源を押そうとした瞬間――

 

『ガタッッ』

 

 と風呂場から大きな音が聞こえ思わず心臓が跳ねた。

 いや本気でビックリしたが、それよりこれって風呂場の早苗ちゃんまずくね? って言う思考になり慌てて風呂場へと向かった。

 

「さ、早苗ちゃん? 大丈夫?」

 

「え、ええ……だ、大丈夫よ」

 

「怪我とか無いよな?」

 

「ちょっと手が滑っただけよ、心配掛けてごめんなさいね」

 

「いやそれなら良い、それなら良いんだ」

 

 心配したけど、早苗ちゃんは何とも無いらしい、良かった。

 まあ良かったには良かったのだが

 

「根本的な事は解決してねえよなあ……」

 

 俺の緊張は、解決していなかった。

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