ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その4

 

熾烈な様相でロキに斬り込んでいく紅髪の少年剣士イクス・グレモリー。

歳は十五、六くらいだろうか。

まだ幼さが残る彼は、髪、身に纏うオーラ、手に持つ剣までもが紅色だった。

 

「くっ! 我に傷を………! どこまでも忌々しい奴め………!」

 

イクスにやや推され気味のロキ。

そんなロキを援護するつもりか、生き残っていたULが両手をイクスに向けて突き出す。

前腕の至るところがカシャカシャとスライドし、形態を変えていき、銀色の腕から砲口が現れた。

 

砲身と化した腕から紫色の怪光線が放たれる。

怪光線はロキに詰め寄っていたイクスに向けて突き進むが、命中することなく、ただ空にその残光を残すだけに留まった。

着弾の瞬間、イクスは高速で移動して避けたのだ。

 

(今の光………もしかして、他にもギミックがあるかもね? それはそうとして)

 

アセムは空に佇むイクスを見上げる。

 

――――強い。

それが彼に感じた率直な感想だった。

あのロキを相手に一人で善戦している。

未来の世界では連合軍とやらのエースだと言うが、納得の実力だった。

 

(まぁ、ロキの方も何か隠してそうだけどね………)

 

ULの攻撃はイクスだけでなく、紅と漸にも向けられる。

ULから放たれる紫色の怪光線は着弾した場所を大きく抉り去っていく。

これが異世界における技術なのだろう。

 

(どうりでただの防御魔方陣じゃ素通りする訳だ)

 

アセムは紅達に目を向ける。

二人はというと、

 

「甘い」

 

「この程度、俺のデュランダルⅣには効かない!」

 

見たことのない魔方陣を展開して、攻撃を防ぐ紅。

漸はデュランダルⅣと呼ばれた聖剣でULの攻撃をかき消していた。

どうやら少年達にとって、ULは敵にもならないらしい。

 

「君達も中々だけど、イクス君は頭一つ抜けているのかな?」

 

イクスが繰り広げている高速剣技。

真紅の長剣に魔力を纏わせており、斬ると同時にその箇所を削り取ってしまう。

この歳にして、この実力。

 

「末恐ろしい子だねぇ」

 

アセムの呟きに紅も「全くです」と苦笑していた。

 

使役していたULの全てを少年達に凪払われ、ロキは歯噛みする。

イクスは怒りに満ちた声音でロキに告げる。

 

「ここまでだな。大人しくアーシア母さんにかけた呪いを解け。そうすれば楽に消してやる」

 

「神を相手に言ってくれるな、紅髪の剣士イクス」

 

「この場で斬り刻まれないだけマシと思え」

 

ロキの頬に冷や汗が流れる。

ロキもイクスの実力はよく分かっているらしい。

彼に自身を滅っせるだけの力があることも。

 

紅と漸もロキを取り囲むように配置についたため、ロキは完全に追い詰められていた。

三人がロキを捕らえようとした時だった。

 

ロキの近くの空間が大きく歪み始めた。

歪みは次第に大きくなり、そこな青い光が生まれる。

光はやがて人型になっていく。

光がやむとそこには人の形をした機械のような存在が現れた。

 

「なにあれ、ターミ○ーター?」

 

首を傾げるアセム。

 

それは青色を基調とした機械の体をしていた。

頭部には三本の角、目はバイザーでおおわれている。

背中には右側に翼のようなものが三枚生え、左側にはキャノンらしき砲身があるというアシンメトリーな格好。

 

(この力………龍王クラス。いや、それ以上かな)

 

人型機械はイクス達を視界に捉える。

 

【まさか、ここでも《赤い龍》の子らが現れるとは】

 

ULと同様に機械的な声。

ただ、その声には明らかなプレッシャーを感じることができる。

 

新たに現れた人型機械にロキが安堵の顔を見せる。

 

「ルマ・イドゥラ! 遅かったではないか!」

 

【合流ポイントより離れた位置に転移したため、少々手間取った。あの魔女め、厄介なことこの上ない】

 

ルマ・イドゥラと呼ばれた人型機械の登場に紅と漸は険しい表情となる。

 

「………レッズォ・ロアドの『四将』か」

 

レッズォ・ロアド。

どうやら今、現れたルマ・イドゥラが仕える上位の存在がいるらしい。

 

ルマ・イドゥラがロキに言う。

 

【勝手に動かれては困るな。我らが揃うまでは手を出さぬよう我が主より申し付けられたはずだが】

 

「分かっている。今回は偶然、奴らと出くわしただけのことだ」

 

紅と漸が警戒を強める中、イクスはルマ・イドゥラとロキを相手に不敵な笑みを見せる。

 

 

「ルマ・イドゥラか。ちょうど良い。おまえも滅んでいけ」

 

【変わらずの大胆不敵ぶりだな、イクス・グレモリー。だが、まだ父達ほど迫力を纏うには早いようだ】

 

「なら試してみるか?」

 

イクスの纏うオーラが更に強くなる。

このまま本当に敵を滅ぼしそうな勢いだ。

 

そんなイクスとロキ達の間に――――アセムが割って入る。

 

「やっ、ロキ。久しぶりじゃん」

 

突然、姿を見せたアセムにロキは大きく目を見開く。

今までイクスに気を取られていたせいか、アセムの気配に気づかなかったようだ。

といっても、アセムも意図して気配を抑えていたのだが。

 

「貴様、アセム………!? なぜここにいる? なぜイクス・グレモリー達に手を貸しているのだ!」

 

「そんな怒らないでよ。成り行きだよ、成り行き」

 

やれやれとアセムはため息を吐く。

 

「随分余裕がないじゃないか、ロキ。君ってそんなだっけ?」

 

「ふん、そう見えるか?」

 

「今の君を見れば、誰でもそう感じると思うけどねぇ。それと」

 

アセムの視線がルマイ・ドゥラに移る。

アセムはわざとらしく大きなモーションでお辞儀をした。

 

「はじめまして、僕はアセム。以後お見知りおきを………なんちゃって」

 

ルマ・イドゥラのバイザーが怪しく輝いた。

 

【アセム………データを見たことがある。既に滅んだ神ではないか】

 

「あれれ? もしかして、僕ってば未来でも有名人?」

 

【世界を滅ぼしかけた強大な力を持つアスト・アーデの神。しかし、貴殿は我らの世界には存在しない。赤龍帝により滅ぼされているからだ】

 

ルマ・イドゥラの言葉にロキが笑みを浮かべて言う。

 

「そうだ! 貴様はそこにいるイクス・グレモリーらの父、赤龍帝の手によって滅ぼされるのだ! だが、我らと来るならその未来を回避できるぞ?」

 

「というと?」

 

「分からぬか。我らと手を組めば、貴様は滅びを免れるということだ。共に赤龍帝とその一族を滅ぼそうではないか。貴様程の力があれば、この場でそやつらを皆殺しにすることも可能だろう」

 

ロキはアセムに向けて、手を差し向ける。

 

「共に来い。我らが貴様を救ってやろう」

 

悪魔の囁きにも似たロキの言葉。

彼らが言うにはアセムの消滅は確定している。

ここでロキ達に協力すれば、彼の言う通り、アセムは自身の消滅を回避できるのだろう。

 

ロキの提案に今度は紅と漸が焦りを見せる。

そんな彼らの反応に、ロキは逆転の確信を得て――――

 

アセムはロキに言う。

 

「え? やだよ?」

 

「は?」

 

あまりに短い回答にロキは間の抜けた声を出してしまう。

拒まれるとは思っていなかったのだろう。

ロキが言う。

 

「我らは貴様を救ってやると言っているのだぞ?」

 

「いや別に求めてないって」

 

「このままいけば、貴様は赤龍帝に滅ぼされるのだぞ!」

 

「それが?」

 

「ッ!?」

 

アセムの答えに、ロキは理解できないといった表情となる。

歴史を変えない以上、アセムに未来はない。

それを理解していながら、拒むなどあり得ない選択だ。

 

アセムは呆れたように言う。

 

「あのね、僕は僕のやりたいようにやってるの。それで滅びるなら、それはそれで僕の選択さ」

 

「貴様、正気か?」

 

「正気さ。だいたいね、君ら程度で僕は救えないよ」

 

ふざけた笑みを見せるアセムにロキは怒りの表情となる。

ルマ・イドゥラが言う。

 

【己の滅びすら受け入れるか。読めない神だ】

 

機械の体では表情は変わらないが、その声には明らかな不快感が含まれていた。

 

「やりたくないことはハッキリ断りましょうってね。僕は不満の残る生より、満足のいく滅びを選ぶのさ。まぁ、君らに付くよりはこの子達に付いた方が面白そうなのは確かだけどね」

 

【我らと敵対するつもりか?】

 

「アハハ♪ そうなるのかなー」

 

【その思想、貴殿は危険だな。そこのイクス・グレモリー以上に。放置しておけば面倒なことになるか――――】

 

ルマ・イドゥラから放たれるプレッシャーが強くなる………が、一転してすぐにアセム達に向けた圧力が消えた。

 

それと同時に、ルマ・イドゥラが自身とロキを覆うようにドーム状のバリアーを発生させる。

その足元には陣が出現していた。

 

【ここは退かせてもらおうか】

 

「懸命な判断だね」

 

【言ってくれる。だが、我らも使命がある。貴殿のデータを取るのはまたの機会にしよう】

 

やがてまばゆい輝きが辺りに広がり、光が止んだ時にはルマ・イドゥラとロキの姿はなかった。

どうやら転移したらしい。

 

ロキ達が消えたことで、紅達の緊張も解ける。

紅がアセムに問う。

 

「あなたなら、奴らを捕縛できたのでは?」

 

「さぁ、どうだろうね? あのロボットも最初から撤退する気満々だったし、どのみち逃げられていたと思うよ?」

 

「………そうですか」

 

アセムの解答に何か言いたげな紅だが、この場はこれ以上問うことを止めた。

 

イクスは息を吐くと、剣を鞘に納める。

 

「そう簡単に仕留める訳にもいかないか」

 

そう漏らすと、踵を返してこの場から去ろうとする。

イクスの行動に、漸が叫ぶ。

 

「イクス! 単独行動は控えろとヴラディさんから言われてるはずだぞ!」

 

イクスは振り返りもせずに言う。

 

「漸兄さん、紅兄さん、俺は俺で動かせてもらう。一人で敵討ちをしようだなんて思ってはいないよ。奴らを見つけたら連絡するから」

 

そのまま去ろうとするイクスだが、そんな彼に漸があることを告げる。

 

「おまえなぁ………! アルフィ姉さん、メッチャ怒ってるぞ」

 

「えっ!?」

 

ギクリと体を硬直させるイクス。

今の今までのクールな印象と変わり、一気に滝のような汗を流し始めていて、

 

「ア、アルフィ姉さん、来るの?」

 

「そりゃそうだろ」

 

「………」

 

イクスは何も言わず、その場から去っていった。

 

漸は盛大にため息を吐く。

 

「あーあ………。あいつ、後で死ぬな」

 

アセムが問う。

 

「その『アルフィ姉さん』ってのは君達のお姉さんかい?」

 

紅が苦笑しながら言う。

 

「ええ。普段は優しくて良い姉なんですが」

 

「怒ると、ね。多分、会えるとは思うけど………さっき、ルマ・イドゥラが言ってたし」

 

「あー、そういや、魔女がどうのって言ってたっけ? その人が?」

 

アセムの問いに二人は頷いた。

どうやら他にも兵藤一誠の子供達がこの世界に来ているようだ。

 

不意にあることをアセムは思い出す。

 

(あれ? アルフィって名前どこかで聞いたことがあるような………まさかと思うけど、その子の母親って――――)

 

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