ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その5

 

未来から来たロキとの一戦から二日が経過した。

その後、UL達の動きはなく、紅達は連中の捜索を継続しているという。

 

アセムは自室でULの解剖(もとい解析)を行っていると、ヴァルスが姿を見せる。

 

「父上、先日は随分とお楽しみだったようで」

 

「ん~なんのこと~?」

 

「しらばっくれても無駄ですよ。私をそういう風に作ったのはあなたでしょう?」

 

「それはそうなんだけどねー」

 

「それで? 彼らをどうするつもりなのです?」

 

「そーだねー。とりあえずは流れに任せてみようかなって」

 

「それは傍観すると?」

 

「ま、彼らも僕の力をあてにしているようだし、僕も力を貸すって言っちゃったからねぇ。しばらくは彼らについていくつもりだよ。あ、君達はお留守番ね」

 

「私も戦ってみたいと言いたいところですが………今回は止めておきましょう」

 

「今回ばかりはそうしてくれると助かるね」

 

未来人である彼らと関われば関わるほど歴史が歪む可能性がある。

歴史が改変されるのはアセムも望まぬところ。

それ故にアセムも積極的に手を出すつもりはなかった。

 

「あの子達の戦いっぷりを見てみたいってのが本音ではあるんだけどね。まぁ、危なそうなら僕がなんとかするさ」

 

「分かりました。ところで父上」

 

「んー?」

 

「ちゃんと部屋は片付けてくださいね?」

 

数日前よりも更に汚部屋と化した部屋を見て、ヴァルスはやれやれと息を吐くのだった。

 

 

 

 

その日の夜。

アセムはあのファミリーレストランにて、紅達と合流していた。

 

少し遅れてやって来たアセムは先に座っていた二人に手を振る。

 

「やぁ、遅くなったね。待ったかい?」

 

「いえ、それほど待っていませんよ。何にしますか?」

 

そう言ってメニューを差し出す紅。

注文を済ませ、アセムは紅、漸と向かい合う。

 

「思ってたより連絡が早くて少し驚いたよ」

 

「予定よりも用事が早く片付いたので。連絡先を教えていただいていたので助かりました」

 

二日前、アセムは別れ際、彼らに連絡先を教えていたのだった。

 

今回、集まったのは紅達がこの世界を訪れた経緯の詳細を聞くため。

まず、ロキ達の目的になるが、彼らはこの時代を軸にして、いまより数週間から数ヵ月の範囲で何度も過去に時間転移して、歴史を操作すること。

更に言えば、この時代の兵藤一誠達を殺し、未来を改変しようというのだ。

 

次に聞かされたのはアーシアについて。

 

「アーシアちゃんに呪いをかけたって言ってたね」

 

アセムの言葉に紅と漸は頷いた。

紅が言う。

 

「三十年後の世界で、脱獄したロキは自分を捕らえた父さん達へと恨みを晴らすべく、仕返しを企てました。その一つが、アーシア母さんへの呪いです」

 

漸が続く。

 

「その日、偶然、誰もアーシア母さんの傍にいなかったんです。そこをロキに狙われて………アーシア母さんは目覚めることのない深い眠りの呪いに落ちてしまった。ロキがかけた呪いは凶悪で、魔法に長けた方々でも解呪できないでいるんだ」

 

眠りの呪い。

それは次第に体を蝕み、徐々に衰弱していくもの。

解呪に時間がかかればかかるほど、対象者の身がもたなくなる。

 

墜ちても神は神。

長い時間をかけてロキが構築した術式はそれほどまでに強力だった。

 

「ロキを捕らえて解呪方法を吐かせようってことで、君達はこの時代に来たと。まぁ、僕ならサクッと解析できるだろうけど」

 

「そのためにはアーシア母さんをここに連れてくるか、あなたを三十年後の世界に連れていかなければいけません。前者は準備に時間がかかります。その間にロキ達が行動を起こすでしょう。後者は――――」

 

「僅かな時間とはいえ、僕がこの時代からいなくなることで、歴史が変わるかもしれないね」

 

結局のところはロキを捕らえるしかない。

だが、猶予はない。

呪いに侵され、衰弱が始まっているアーシアを救いだすには一刻でも早く、ロキを捕らえなければならない。

 

漸はその目に涙を浮かべながら言う。

 

「アーシア母さんはいつも優しくて、俺達を導いてくれていた。イクスのこと止めたけどさ。俺だってアーシア母さんを救うためなら、あいつを………! 皆も同じ気持ちなんだ。俺達は何がなんでもロキのやつを捕らえて、元の時代に戻る。そして、アーシア母さんを助けるんだ………!」

 

アーシアは子供達に心から慕われているらしい。

それは今の彼女を見ていても、容易に想像できてしまう。

 

アセムは「そっか」と微笑み、漸の頭を撫でる。

 

(君達は彼に………お父さんによく似ているよ)

 

他が為に力を振るおうとする心。

大切な誰かを守るために、前に進もうとするその姿は、アセムが見続けた赤い勇者のものだ。

 

「君達は何も気にせず存分に暴れると良いさ。周りのことは僕がなんとかしておくからさ。アハハ♪ 世界を滅ぼす最強の悪神様が味方についてるんだ。大船に乗った気でいなよ」

 

「そう言われると何て返したら良いのか分かりませんが………。ありがとうございます」

 

カラカラと笑うアセムに二人は頭を下げた。

そんな二人にアセムはうんうんと頷く。

 

「それはそうとしてだ」

 

「?」

 

疑問符を浮かべる紅達をジト目で見るアセム。

アセムはストローを咥えながら可愛らしく「むー」と唸る。

 

「そういうことなら、最初から僕のところに来てくれれば良かったのにー」

 

「いやいや、この時代のあんた、親父達の敵だろ」

 

「漸君、僕がそんな狭量な神様に見えるかい? 僕はね、面白そうな方につくのさ」

 

「あー………この人と戦ってた親父の気持ちが分かってきた」

 

「ハハハ………僕もだよ」

 

 

 

 

それから少し経つ。

アセム達はとある場所に転移魔方陣を使って移動していた。

転移した先はとある森の中。

背の高い木々が生い茂る森の開けたところにいくつかの影があった。

 

白い着物の少女と、黒い着物の少女。

歳はまだまだ幼く、十二歳ほどの小柄な少女達だった。

その頭部には猫のような耳がある。

 

少女達は紅の姿を見るなり、笑みを浮かべた。

 

「紅兄さま、漸兄さま!」

 

「ようやく合流できたにゃん」

 

少女達はそれぞれ紅と漸に抱きついて、猫のように甘え始める。

漸がアセムに少女達の紹介をする。

 

「この子達は妹です。白い方が白雪。黒い方が黒茨です」

 

「白雪ちゃんに黒茨ちゃんね。よろしくね~。あっ、飴食べる?」

 

「「食べる!」」

 

アセムから飴を受け取り口にほうる二人の少女。

恐らく、白雪は小猫、黒茨は黒歌の娘なのだろう。

二人も母親によく似ている。

 

白い少女――――白雪が紅に問う。

 

「ところで、紅兄さま。この方は?」

 

「彼はアセムさん。二人も名前は聞いたことがあるだろう?」

 

「「――――ッ!?」」

 

その名を聞いて、咄嗟に後ろへと飛び退く白雪と黒茨。

明らかな敵意をアセムに向けて、白雪は言う。

 

「兄さま! アセムってまさか、父さまと戦ったっていうあの――――。何を考えているのですか!」

 

「ま、まぁ、そういう反応になるよね? ちゃんと説明するから落ち着いて。確かにアセムさんは父さん達の敵なんだけど、今回は協力してくれるから」

 

黒茨が首を振る。

 

「ダメです! その人は世界を滅ぼしかけた悪い神様です! 何か企んでいるかもしれないにゃ!」

 

そんな妹の反応に漸は腕を組んで、

 

「いや、この人、何も考えないぞ。俺達と合った時もULを簀巻きにして、横でチーズ焼いてたからな」

 

「ど、どういうことにゃん?」

 

「つまりだな――――」

 

漸がとある方向を指差した。

 

指された方を見ると、あの時と同じように、枯れ枝を集め火を起こし、更にはチーズを焼いているアセムの姿があり、

 

「ほーら、チーズが言い感じに焼けたよ~」

 

漸は一言。

 

「こういうことだな」

 

「や、訳分かんないにゃん………」

 

「だろうな。俺も訳分からないし。………って、団扇であおぐなよ!? なにしてんだ!?」

 

「お腹が空く香りでしょ?」

 

「メシテロしてんじゃねぇ! あれ? 白雪はどこ行った?」

 

「兄さま、白雪、あっち行ったにゃん」

 

忽然と姿を消した妹。

彼女はアセムの隣には座っていて、

 

「………じゅるり」

 

「このチーズをパンに乗せて………フッフッフッ、これがハイジごっこの真髄さ。さぁ、召し上がれ」

 

「いただきます」

 

パンにかぶりつく妹の姿に、漸が叫ぶ。

 

「おいぃいいいいい! 俺達の妹が餌付けされてるんだけど!? さっきまで敵意剥き出しだったよな!? バッチリ戦闘体勢入ってたよな!?」

 

「兄さま達が来るのが遅かったので、お腹が空いて」

 

「待たせてごめんな! だとしても、切り替え早くない!?」

 

「この香りには逆らえません」

 

「白雪ちゃん、ヤギの乳もあるけど」

 

「いただきます」

 

「紅兄さん! 白雪がハイジの世界に行ってしまったぞ!? どうしよう!?」

 

漸は後ろを振り返り、兄に助けを求める。

しかし、そこに紅の姿はなく――――

 

「アセムさん。このチーズ、粗挽きコショウも合いますね」

 

紅、そして黒茨までもがアセムと共に火を囲み、パンにかぶりついていた。

 

「兄さん!? 何やってんの!?」

 

ツッコむ漸に紅は星空を見上げる。

三十年後の未来にいる父のことを思い出しながら、紅は口を開く。

 

「父さんが言ってたんだ。ツッコミ切れない時は放棄するのも一つの手だって」

 

「いや、ツッコミしてるの俺だけだよね!? 放棄するの早過ぎるだろ!」

 

父譲りのツッコミが止まらない漸に、アセムは諭すように言う。

 

「まぁまぁ、漸君。腹が減っては戦は出来ないって言うじゃん?」

 

「あんた、さっき、ファミレスでパフェ食ってただろ!?」

 

漸の言葉に妹達が反応する。

 

「えっ、兄さん達、ファミレス行ってたの?」

 

「ズルいにゃん」

 

「ちょ、待って? なんで、そんな目で俺を見てくるの? なんで、そんな敵を見るような目で見てくるの?」

 

「ちなみに漸君は季節のホワイトチーズケーキを美味しそうに食べてたね」

 

「「………ッ!」」

 

二人の少女の目が大きく開き、兄を捉える。

 

ズルい、なんで私達にはないんだ。

私達だって、この時代に転位してから色々動いていたのに。

私達だってチーズケーキ食べたいのに。

妹達の目は切実に、恨めしそうに兄に語りかけていた――――。

 

「あぁぁぁぁぁぁ! もうあんた黙ってろ! ていうか、俺が悪いの!? 謝らないといけない感じなの!? なんかごめぇぇぇぇぇぇん!」

 

深夜の森に漸の謝罪が響いていった。

 

ちなみに今度ケーキをご馳走するということで、漸は妹達の許しを得た。

 




もう分かっているかと思いますが、本章のツッコミ役は漸君です笑
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