ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その6

 

焚き火の灯りが深夜の森の一角を照らす。

火を囲むのはアセムと兵藤一誠の子供達。

最初は敵意を見せられていたが、今となっては和気藹々と完全に打ち解けていた。

 

「いや、打ち解けすぎだろ」

 

ジト目で漸が言う。

 

彼の前には白雪と黒茨に膝枕するアセムの姿があった。

二人ともスヤスヤと穏やかな寝息をたてている。

どうやら完全に懐かれたらしい。

 

「漸君、美味しいご飯はね、心まで暖かくするものなのだよ」

 

「餌付けしただけだよな? 次から次へとおやつ与えてさ。なんでマシュマロまで持ってるんだよ?」

 

「キャンプには必須でしょ」

 

「紅兄さん、キャンプとか言い出したぞ、こいつ」

 

「………きっと、父さんもツッコミに苦労したんだろう」

 

うんうんと頷く紅。

ちなみに彼はほとんどツッコミはしていない。

ほぼ漸に投げている。

 

アセムは熟睡している姉妹を撫でながら、二人に問う。

 

「それで、この後はどうするんだい?」

 

紅が言う。

 

「弟達の連絡を待ちます。他の弟妹もこの時代に来る予定なので。ただ、転位するポイントが少しズレてしまったようなので、もう少し時間がかかるかもしれません」

 

ふむとアセムは小さく頷く。

ルマ・イドゥラも合流ポイントよりも離れた場所に転位したと言っていた。

恐らく、兵藤一誠の子供達にも同じことが起きているのだろう。

 

「ん………父さま………むにゃ」

 

寝言を言う白雪にアセムは微笑む。

 

「勇者君………いや、君達のお父さんは慕われているみたいだね」

 

紅は少し照れた様子で言う。

 

「尊敬してますよ。父は今も先頭に立って、皆を守るために力を振るっています。ただ、ちょっと………いえ、かなりスケベなところがたまにキズですが」

 

紅の情報にアセムは吹き出す。

 

「アハハ! それは今と変わらないねぇ」

 

「この時代でもやっぱりそうなのですか?」

 

「そりゃあもう。戦場でアリスちゃんやリアスちゃんのおっぱいをつついたり吸ったりするくらいだからね」

 

漸が顔を手で覆い、呆れたように言う。

 

「その話マジだったのか………」

 

「大マジさ。それでパワーアップしてピンチを切り抜けるんだから、流石はおっぱいドラゴンだよね。僕も爆笑してさー。笑いすぎてお腹が痛くなっちゃったよ」

 

それから話される父達のエピソード。

次々と明かされる酷い内容に兄弟の顔はみるみる赤くなっていった。

アセムもそれが分かっていながらノリノリで話すものだから質が悪い。

 

たが、アセムの話した内容は脚色が一切ない事実というのが一番酷い。

 

ひとしきり笑ったところで、アセムは思い出したように言う。

 

「そういえば、君達はお父さんに鍛えられたのかい? 良い身のこなしをしているけど」

 

漸が頬をかく。

 

「たまに相手はしてもらえるけど、最近はあんまりかな」

 

「おや? 彼は忙しいのかい?」

 

おっぱいドラゴン関連だろうか。

今でも人気者なのだから、未来でも引っ張りだこなのかもしれない。

 

そんなアセムの考えが伝わったのか、紅が頷いた。

 

「ええ。冥界だけじゃなく、他の神話体系のところに行ったり、講演に、興行に………。たまにアスト・アーデにも行ってますよ。レイヴェル母さんに聞いたら、ざっと二百年先までスケジュールが埋まっているとか」

 

「うぇ、そんなに? 僕だったら過労死してるね。そんなだったら、滅多に会えないんじゃない?」

 

アセムの問いに漸が答える。

 

「意外とそうでもなくて、家には帰ってきてるよ。ただ、修行して、飯食って、風呂入ったらすぐ寝てるけど。ただ、そんな感じなんで、下の弟妹は親父よりも祐斗さんかヴァーリさんに懐いてるかな。特にイクスはヴァーリさんを『先生』って言って慕ってますよ」

 

紅が言う。

 

「そこについては父さんも嘆いてます。というより、仕事を休みたくて出張先から脱走しようとしたら、黒スーツの人に連れ戻されてたくらいですし」

 

「ブハッ!」

 

引きずられていく一誠を想像できてしまい、思わず吹き出すアセム。

どうやら、想像以上に未来の勇者殿は過酷な生活を送っているらしい。

 

寝ている姉妹を起こさないよう笑いを噛み殺すアセムに、今度は紅が訊ねる。

 

「アセムさんから見て、父はどうなんです?」

 

「僕?」

 

「母さん達や祐斗さん、周りの人から父の話は聞くんですど、敵だった人から聞くことって滅多に出来ないので」

 

少年の真っ直ぐな質問にアセムは「そうだねぇ」と空を見上げる。

流れる星を目で追いながら、静かに口を開いた。

 

「――――あり得たかもしれない僕、ってところかな」

 

「?」

 

アセムの漏らした言葉に首を傾げる紅と漸。

アセムは続ける。

 

「僕はね、彼がアスト・アーデに来たときから見ていたんだよ。ずっと………ずっとね」

 

アセムは思い出すように語る。

 

「友を失い、無力を嘆き、打ちひしがれ、それでも前に進んだ。約束のために、大切なものを失わないために、戦って傷ついての繰り返し」

 

アセムは小さく息を吐いた。

白い吐息がゆっくり消えていく。

 

「折れそうになったこともあったろう。呑まれそうになったこともあったろう。でも、折れなかった。進み続けた。そして、約束を守り続けている。今もね。………ホント、凄い男だよ彼は。だから、だからこそ僕は―――――」

 

何かを言いかけるアセム。

どこか寂しそうな瞳。

ただ、そこには強い意思を宿しているようにも見えて、

 

「アセムさん………?」

 

紅に声をかけられ、アセムは我に返る。

それから、おちゃらけるようにニヤッと笑んだ。

 

「なーんてね。僕から見てて彼は飽きないよ。だいたい何かしらの渦中にいるし♪ ………およ?」

 

ふいに上を見上げるアセム。

じっと空を眺めるアセムにつられるように紅と漸も視線を上空に向ける。

 

次の瞬間、強烈な敵意を一行を襲った。

紅は雷光を迸らせ、漸はデュランダルⅣを異空間より抜き放つ。

眠っていた白雪と黒茨も目を覚まし、戦闘体勢に移っていた。

 

漸が声を絞り出すように言う。

 

「この重圧感、奴だ………!」

 

一誠の子供達が睨む空より、高速で降下してくる物体が一つ。

強烈なプレッシャーを撒き散らしながら、それは森に降り立つ。

地面と衝突した衝撃で、激しい地響きをが鳴り、近くの木々は吹き飛ばされてしまう。

 

一行の眼前に出来た大きなクレーター。

その中央に全身から蒸気を放つ何かがいた。

 

光沢を放つ緑色の機械めいた生物。

大きさは十メートルは優に超えている。

ドラゴンのようなシルエットをしたその生物は、両腕の前腕が大きく盾のようにも見えた。

翼はないが、腰にはロケットエンジンらしきもの。

 

ドラゴン型の機械生物が音声を発する。

 

【へっ、どうやら赤い奴のガキ共がこの時代に来てるってのはホントらしいな】

 

金属で作られているであろう口元が開く。

それは、まるで獲物を見つけた狩人のような笑みを見せていた。

 

「なにあの、メタルミュータントタ○トルみたいなの」

 

緊張感のないアセムの質問に紅が答える。

 

「奴はガルヴァルダン。ルマ・イドゥラと同じ『四将』の一体です」

 

「へぇ」

 

アセムはドラゴン型の機械生物――――ガルヴァルダンに視線を向け、目を細めた。

 

感じる重圧はルマ・イドゥラと同格。

つまりは龍王クラス以上のもの。

 

「ガルヴァルダンッ!」

 

デュランダルを構える漸。

漸の声を聞いてガルヴァルダンは嬉しそうに叫ぶ。

 

【漸・クァルタ! それにクソガキども! あっちじゃ世話になったな! とりあえず―――――】

 

ガルヴァルダンの口が大きく開く。

口内からノズルのようなものが見えたと思うと、先端が赤く光り始め、

 

【消し炭になれやァァァァァァァァ!】

 

莫大な炎を吐き出した。

吐き出された火炎が射線上のものを燃やし尽くしながら、漸達へと迫る。

視界が炎で埋め尽くされた瞬間だった。

 

「おおっと、消し炭は勘弁願いたいね」

 

アセムがパチンと指を鳴らす。

すると、眼前まで迫っていた炎は初めから存在しなかったように消え失せる。

 

開幕の挨拶を一瞬にしてかき消され、ガルヴァルダンが舌打ちする。

 

【そういや通信があったっけか! てめぇがアセムか! クソ赤龍帝に負けたクソ雑魚野郎が邪魔すんなよなァァァァァァァァッ!!】

 

ガルヴァルダンは腰ロケットが火を噴き始める。

ロケットは勢いを増し、十メートルを超える巨体が一行に突撃してくる。

 

ガルヴァルダンは漸に狙いを定めると、巨腕を振り上げ―――――漸を丸ごと掴んだ。

 

【滅んだ神に用はねぇ! 俺が用があるのはクソガキ共、てめぇらだァァァァァァァァ!】

 

ガルヴァルダンは漸を掴んだまま森を突き抜けていく。

地面を大きく抉り、森の樹木を幾重にも薙ぎ倒し、真っ直ぐ飛んでいった。

 

「クソが!」

 

手の中の漸が聖なるオーラをデュランダルⅣに纏わせていく。

聖剣の鍔にあるトリガーを引くと、何かが撃ち込まれたような音が響き、薬莢が飛び出していった。

同時に聖なるオーラが爆発的に大きくなった。

 

だが、ガルヴァルダンは唐突に漸を空高く放り投げた。

 

【漸・クァルタ! 手始めにてめぇだァァァァァァァァ!】

 

ガルヴァルダンの口が大きく開き、今度は極太の光線を放つ。

空中で漸はデュランダルⅣを振り上げ、聖なるオーラを立ち登らせていた。

 

「手始めに殺されてたまるかよぉぉぉぉぉぉッ!」

 

ガルヴァルダンの光線と漸のデュランダルⅣが衝突する。

空中で激しくせめぎ合うが、僅かにガルヴァルダンが推している。

 

「漸ッ!」

 

紅は手元に魔方陣を作ると、漸目掛けて放り投げた。

魔方陣が漸に触れると、光と共に姿が消える。

すると、紅の隣に先程と同じ魔方陣が出現し、漸が現れた。

強制転移の魔方陣だったようだ。

 

「無事か?」

 

「助かったよ、兄さん」

 

攻撃を回避されたガルヴァルダンは愉快そうに言った。

 

【ま、そう簡単に死んじゃくれないわな。だが、この時代にはてめぇらの親父のような強ぇ奴はいねぇだろ。見たところ、そこのアセムって奴も手を出さない………いや、出せないのか? どっちにしろ、今のてめぇらなら、元の世界よりも楽にブッ殺せるだろうぜっ!】

 

ガルヴァルダンの言葉にアセムは「へぇ」と感嘆の声を漏らした。

言動とは異なり、自分が動かないことをしっかり見抜いているようだ。

 

ガルヴァルダンの漸への攻撃。

アセムなら止められただろう。

だが、それをしなかった。

そこから、ガルヴァルダンは判断したようだ。

 

「あくまでこれは未来から来た君達の戦いだ。そこに僕が手を出すべきではないでしょ? まぁ、サポートくらいはするけどね」

 

そう言うアセムの体が薄くオーラを纏う。

すると、オーラが広がり、森全体を包み込んだ。

――――結界だ。

 

「さて、これであのメタルミュータントタ○トルは逃げられなくなった。当然、完全防音だから、誰かが気づくこともない。さぁ、張り切っていってみよー!」

 

えいえいおー!と腕を上げるアセム。

 

「どんなテンションだよ………」

 

「でも、これで奴に集中できる!」

 

「行きます!」

 

「行くにゃ!」

 

飛び出したのは猫又少女二人。

白雪が白い炎の火車を、黒茨が黒い炎の火車を幾つも展開して、ガルヴァルダンに投げつける。

二人の火車は縦横無尽に飛び回り、ガルヴァルダンに襲いかかる!

 

【効くかよッ!】

 

火車が全身に激突するが、金属の体には傷一つ着いていない。

 

「これならどうだ。――――鳳凰よ! そして、雷光よ!」

 

紅の言葉に応じるように、巨大な炎の鳥が現れる。

霊獣『鳳凰』。

姫島家の者が代々契約を交わす伝説の存在だ。

紅の放つ雷光に合わせるように鳳凰はガルヴァルダンに突撃する。

 

【真っ向から来るか! おもしれぇっ!】

 

真っ正面から鳳凰を受け止めるガルヴァルダン。

鳳凰の炎が金属の表面を焦がしていくが、ガルヴァルダンは気にも止めずに巨腕を振って、鳳凰を殴り飛ばす。

そこへ雷光が襲い、ガルヴァルダンの全身を呑み込んだ。

ただのULであれば、今の直撃で消し飛んでいただろう。

 

【それがどうしたぁぁぁぁぁぁぉ!】

 

雷光を振り払い、巨大な口から光線を放つガルヴァルダン。

光線が着弾した箇所は一瞬で吹き飛んでしまう。

 

だが、光線の隙間を縫うようにして駆け抜けていく者がいた。

漸だ。

 

「好き勝手に暴れてんじゃねぇ!」

 

荒々しくも静かなオーラを纏うデュランダルⅣを振りかぶり、ガルヴァルダンに斬りかかる。

デュランダルが持つ破壊のオーラは新型の聖剣でも健在で、ガルヴァルダンは受け止めたにも関わらず、その衝撃を殺しきれないでいた。

 

しかも、デュランダルⅣはトリガーを引いて弾が剣に撃ち込まれる度に威力を増す機能を持っており、段階的に攻撃力を上げていくことが可能だ。

数十病後には、デュランダルⅣの纏うオーラはガルヴァルダンの全身を超えるほどになっていた。

 

更にデュランダルⅣを扱う漸のスピードはガルヴァルダンよりも上。

漸はスピードで翻弄しながら、強力な斬撃を何度もガルヴァルダンに命中させていく。

 

【調子に乗るんじゃねぇ、クソガキがァ!】

 

ガルヴァルダンの口が大きく開き、これまでよりも巨大な、極太の光線を漸目掛けて放った。

直撃すれば、跡形もなく消滅させられてしまうだろう。

たが、漸は正面からデュランダルⅣを振り下ろした。

 

デュランダルⅣより、極大の聖なるオーラが解き放たれ、光線と衝突する。

一度目は力が十分ではなかった。

しかし、今度は違う。

 

―――――チャージは十分ッ!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

デュランダルの光が強さを増し、光線を消し飛ばしていった――――。

 

 

 

 

強大な力の衝突により、一帯は完全に吹き飛んでしまっていた。

土煙がおさまり、そこにいたのは肩で息をする漸。

相当無理な力を使ったのか、その場に片膝を着いてしまっていた。

デュランダルⅣのオーラも消失してしまっている。

 

「兄さま!」

 

白雪に支えられ立ち上がる漸が煙の向こう側を睨む。

あれほどの衝突。

たとえ龍王でも受ければ、相当のダメージを負うだろう。

 

しかし――――

 

【今のはヤバかったな】

 

煙の中から現れる巨体。

右腕には先程よりも大型化した盾があった。

漸が放ったデュランダル砲を受ける直撃に展開し、身を守ったようだ。

ただ、完全には防ぎきれなかったのか所々が損傷しており、火花を散らせていた。

 

ガルヴァルダンが言う。

 

【転移の影響で大分パワーが落ちてやがる。ガキの一撃でここまでくらっちまった。だがな――――】

 

そこまで言うとガルヴァルダンは四足歩行の体勢となり、身を屈めた。

背中の一部が開き、幾つもの突起物が姿を見せる。

そして、それらは空へと撃ち上がり始めた!

 

「ミサイルっ!?」

 

飛び出したそれらは弾道ミサイルのように空中で軌道を変え、漸達に降り注ぐ。

 

【その状態じゃ、こいつは防ぎきれねぇだろッ!】

 

紅は雷光、白雪と黒茨は火車で迎撃するが、特殊な素材で出来ているのか、彼らの攻撃は全て弾かれてしまう。

 

「くそっ!」

 

力を使い果たした漸はその場から動けないでいる。

その様子にアセムは小さく息を吐いた。

 

(ここまでかな)

 

アセムがミサイルに向けて手を翳した――――その時。

 

 

「―――――ッ!?」

 

 

突如感じた気配にアセムは目を見開く。

異質な力。

ガルヴァルダンやルマ・イドゥラなど比べ物にならないほどのプレッシャー。

 

空を見上げたと同時にアセムが張った結界はガラスが割れるような音と共に砕け散った。

 

「………うそん」

 

衝撃的な光景に思わず声が漏らした。

展開していた結界は手を抜いた訳ではない。

たとえ上位の神であってもそう簡単には壊せないほどの力を籠めていたはずだった。

 

(それをいとも簡単に壊しただって………?)

 

今の衝撃でガルヴァルダンから放たれたミサイルの全てが撃墜されている。

紅達の攻撃が通らなかったものを今の一瞬で全て撃ち落としたらしい。

 

何かが天より降りてくる。

その瞬間、辺りは一斉に静まり返った。

降りてくるそれに服従するように。

風も、森も、全てが彼女を迎えるように。

 

ガルヴァルダンが声を出す。

その声はこれまでの傍若無人なものではなく、畏怖に満ちたもので――――。

 

【『天墜(てんつい)の魔女』………だとッ!?】

 

魔女と呼ばれた女性。

彼女は長い黒髪を靡かせて地に降り立った。

 

現れるだけで場を支配するほどの圧力。

これはまるで―――――魔王の降臨だ。

 

 




本編よりもアセムくんのシリアルは控えめ
理由は皆も分かるよな!
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