ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その8

 

 

「改めまして、私は兵藤・アルフィリア・美咲。気軽にアルフィって呼んでね。それと、弟妹達を守ってくれていたこと、感謝するわ」

 

紅からのお説教を終えて、アルフィリアはアセムに自己紹介をしていた。

胸に手を当て名乗る姿は堂々としていたもので、身に纏う黒衣も合わさって様になっている。

 

アセムが言う。

 

「僕はアセム。詳しくは言わないよ。この名は君も聞いたことはあるだろうし」

 

紅や漸だけでなく、まだ幼い白雪と黒茨も自分のことは知っていたのだ。

彼らの姉であるなら、当然知っているだろう。

 

アルフィリアは頷く。

 

「ええ、あなたのことはよく聞いているわ。まさか、会える日が来るなんて思わなかったけれど」

 

「それは僕の台詞さ。まさかまさか、勇者君の子供達とこうして話すことになるなんてね」

 

「ホントびっくりだよね」とアセムは付け加える。

これは嘘偽りのない彼の本心だ。

敵である男の子供達とこのように自己紹介をし合う日が来るなど誰が予測できるだろうか。

しかも、自分はサポート役とはいえ、その子供達と共闘することになるなど分かるはずもない。

 

(これも運命というなら、僕もまだまだ翻弄されそうだ)

 

アセムは彼女に問う。

 

「君の名前は、君のお祖母さんからとった名前かな?」

 

「あら、私のお祖母ちゃんのこと知ってるんだ」

 

アルフィリアという名前に、アセムはどこかで聞き覚えがあった。

つい先程まで思い出せなかったのだが、彼女の戦う姿でハッキリした。

彼女の名前は魔王シリウスの妻、つまりは彼女の祖母の名前だったのだ。

 

アルフィリアは誇らしげに言う。

 

「結構気に入ってるのよ、この名前。もちろん『美咲』って名前もね」

 

「うん。大切にするといいさ。それと君に聞きたいことはもう一つ。君の魔法、あれは普通の魔法と違うね? 錬環勁氣功を組み込んでいるのかな?」

 

アセムの問いにアルフィリアは目を開く。

 

「………驚いた。たった数撃しか使ってなかったのに。あれだけで見抜かれるなんて」

 

「アハハ♪ 解析は僕の得意とするところだからね♪」

 

軽く笑うアセム。

しかし、内心では彼女の卓越した技量に舌を巻いていて、

 

(多分、錬環勁氣功を取り入れた魔法はアルフィリアちゃんのオリジナル。血統だけに魔法の才能はあったんだろうけど………)

 

錬環勁氣功は万物の気を操ることができる。

自身の気を爆発させるとこも、周囲から気を取り込んで増大させることも可能だ。

そして、アルフィリアはというと、集めた気で魔方陣を描いて魔法を行使している。

気で描かれた魔方陣は周囲から気を取り込むことで、爆発的にその威力を上げるようだ。

 

(理屈は分かる。けど、その発想は僕にもなかったものだ。恐らく開祖であるグランセイズも)

 

紛れもなく天才。

それも魔王シリウスと並ぶか越える程の。

 

(魔王シリウスだって、もし退場しなければ僕に届く存在になっていただろう。つまり――――)

 

目の前の女性はいずれ自分に届く存在になるだろう。

彼女にはそれだけの力と才能がある。

 

他の子供達だってそうだ。

紅、漸、イクス、白雪、黒茨。

これまで出会ってきた未来の子供達も、若くしてその才能を感じさせる。

既に高い実力を持っているが、この先、更に伸びていくだろう。

 

アセムはフッと笑む。

 

(これが勇者君達が得る未来、か………)

 

などと考えていると、アルフィリアがずいっとアセムに迫り、フードの下にある彼の顔を覗き込む。

まじまじと自身の顔を見てくるアルフィリアに、アセムは訊ねる。

 

「僕の顔に何かついてるかい?」

 

問われたアルフィリアは少しの間、アセムの顔を覗き込んだままだった。

彼女の行動に紅達も頭に疑問符を浮かべている。

 

アルフィリアが口を開く。

 

「………綺麗な目」

 

「え?」

 

彼女の言葉にアセムはつい聞き返す。

すると、アルフィリアは続ける。

 

「あなたの目、すごく綺麗ね。優しくて、強くて、でも、どこか寂しげな………守ってあげたくなるような、そんな目だわ」

 

「――――ッ」

 

じっと目を見て語る彼女の言葉にアセムは言葉を詰まらせる。

彼女の青い瞳は、こちらを―――――心の奥底に隠した感情すらも見透かすような、そんな目をしていた。

アセムは目をそらしそうになるのを堪え、小さく笑みを浮かべた。

 

「未来の世界で、最強と称される魔女様に綺麗だと言っていただけるとは光栄だね」

 

「フフフ、恥ずかしがっちゃって。私はあなたの目、好きよ?」

 

「君達のお姉さんは少し天然らしいね?」

 

「そうです」

 

「紅君!? お姉ちゃんのこと、そんな風に思ってたの!?」

 

アセムと弟妹達の笑い声が森の奥から聞こえたのだった。

 

 

 

 

ガルヴァルダンとの戦闘から数日が経った。

戦闘の余波で破壊された森と、アルフィリアが放った魔法で赤く染まった空の修復。

そして町に住む住民達の記憶はアセムがどうにか改変し、事態を無かったことにした(・・・・・・・・・)

 

それからもう一つ。

未来からの侵略者である機械生命体『UL』は各所に現れていた。

それらはアセムと未来の子供達と分担して、倒しているため今のところ騒ぎになっていない。

 

「流石にくたびれたよぉ………。これはご褒美に回らないお寿司でも連れていってもらわないと割に合わないね」

 

ジト目で見てくるアセムに漸が苦笑する。

 

「まぁ、事態が片付けばまた食事でも行きますか」

 

「そうするためにも、まずは君達の他の兄妹と合流する必要があるわけだけど………紅君はもう出たのかい?」

 

「少し前にね」

 

未来から転移するにあたり、想定していたタイミングがかなりズレていたらしい。

紅は修正した座標をもとに朝から転移ポイントに向かっているようだ。

 

紅を除いた一行は駒王町から少し離れた町にある公園で待機している。

 

「で、僕達も別の兄妹君と合流するためにここにいるわけだ。………君達の兄妹って何人いるのさ?」

 

アセムが出会った子供達は六人。

そして、これから会う予定のメンバーが数人。

この時点でそれなりの数が確認できている。

 

漸が言う。

 

「この時代にくるのは予定どおりに行けば十二人。他にも来るかもしれないけどね。戦えない兄弟も合わせると結構な数かな」

 

「わーお。超子沢山じゃん」

 

三十年後の未来で兵藤家は大家族になっているらしい。

もしかすると、家族でサッカーリーグが開催できるんじゃないだろうか。

 

(というか、勇者君、搾り取られて干からびてるんじゃ………あ、いや、一応は生きてるのか)

 

複数の女性を迎え、子供の面倒を見るのは大変だろう。

苦労している一誠の姿を想像して「くくく」と笑っていると声が聞こえてきた。

 

「ほら、おばあさん。その場所はここの近くだと思うわ」

 

公園から出たところ。

道路で高齢の女性の手を退いている長い金髪の少女と、その後ろに栗毛の少年がいた。

老婆は少女と少年に頭を下げて礼を言うと、そこで別れる。

そして、少女はあたりを見渡すと、こちらに気付いたようで、元気よく手を振ってきた。

 

漸は「ったく、姉さんってば………」と言いながらも少女に向けて手を振り返す。

すると―――――

 

 

「アイリちゃぁぁぁぁぁぁぁん! 真くぅぅぅぅぅぅぅぅん!」

 

 

突如、突風が吹き、弾丸のごとき何かがアセムの前を通りすぎていく。

その何かとは言うまでもなくアルフィリアだ。

 

「げっ!? 姉さん!?」

 

「アルフィ姉!」

 

目をひきつらせる栗毛の少年と、その場を駆け出す金髪の少女。

金髪の少女はアルフィリアに抱きつき、嬉しそうな声をあげる。

 

「アルフィ姉、無事だったのね!」

 

「アイリちゃんも! 会いたかったよぉ!」

 

紅達にしたように高速頬ずりを発動するアルフィリア。

前回と違うのはアイリと呼ばれた少女が嫌がっていないという点だろう。

 

「やんっ、姉さんってば相変わらずね」

 

「えへへ、アイリちゃんも相変わらず可愛くってお姉ちゃんは幸せよ!」

 

和気藹々とする姉妹の邂逅を放置して、漸は栗毛の少年に言う。

 

「真、おまえがついていながら………。おおっぴらにこの時代の面前に出るなんて」

 

「無理言うなよ。相手はアイリ姉さんだぞ」

 

と、ここで栗毛の少年とアセムの目が合う。

栗毛の少年が漸に問う。

 

「話は聞いてたけど、この子………いや、この人が?」

 

「そうだ」

 

頷く漸。

少年はアセムと向き合い挨拶をした。

彼の胸には十字架がかけられていて、

 

「赤龍帝の兵藤一誠と紫藤イリナの息子、紫藤真といいます。お話は父達から伺っています」

 

栗毛の色は母親譲りで、彼女の面影もある。

ただ、この時代の母親と比べると天真爛漫といった雰囲気はなく、落ち着いた様子だ。

 

真に続き、アルフィリアと抱き合っていた少女もアセムに自己紹介をした。

 

「はじめまして、アセムさん。私は兵藤愛理といいます。母は兵藤アーシア………この時代ではアーシア・アルジェントでしたね。父、兵藤一誠の娘です」

 

「ああ、君は一目で分かったよ」

 

アセムは差し出されたアイリの手を取り、握手をかわす。

アイリの容姿はこの時代のアーシアに瓜二つだ。

この兄妹達の中で、最も母親に似ている。

ただ、性格はアーシアのような大人しいものではなく、元気ハツラツといった感じだ。

 

「姉さま」

 

「お姉ちゃんにゃ♪」

 

猫娘二人はアイリに懐いているようで、彼女に抱きついていた。

アイリは白雪と黒茨の頭を撫でながら、アルフィリアに言う。

 

「でも、本当に姉さんが無事で良かったわ。転移する直前まであいつらとやり合っていたから」

 

アルフィリアは胸を張って言う。

 

「ふふん。この私があの程度に遅れを取るわけがないでしょう? 徹底的にぶちのめしてあげたわ!」

 

「さっすが、姉さん。姉さんのそういうところ大好きよ」

 

姉妹の会話に苦笑する弟達。

二人の反応にアセムはあることに気付いた。

 

「どうやら、君達の中でも女性陣のパワーが強いようだね?」

 

アセムの問いに真はどこか諦めたように言う。

 

「見ての通りですよ。アルフィ姉さんもアイリ姉さんもイケイケドンドンで………」

 

「俺達じゃ止められないよな」

 

漸も深くため息を吐いた。

二人は中々に苦労しているようだ。

 

ここで、漸の耳元に小型の通信魔方陣が展開した。

他の兄弟からの連絡だろう。

 

「ん? ああ、おまえか。………なに!? イクス、おまえ!」

 

通信相手はイクスのようだ。

漸の手元に別の魔方陣が展開して、地図らしきものを投影させた。

 

漸は慌てた様子で叫ぶ。

 

「勝手な行動は慎めと言われてるだろう! ここは俺達がいた世界じゃないんだぞ!?」

 

通信魔方陣が消える。

イクスが通信を一方的に切ったようだ。

 

「あいつ! また勝手に!」

 

アイリが漸に訊く。

 

「イクスがどうしたの?」

 

「………『UL』と遭遇したって。相手に『四将』の手の者もいるんだけど、あいつ、先に一人でやるって………! 場所だけ送ってきて、切りやがった! ったくよ!」

 

毒づく漸だが、アイリはカラカラと笑うだけだ。

 

「ま、あの子らしいわね。いいわ、私が連絡するから」

 

アイリはそう言うなり、耳元に通信用魔方陣を展開させ、イクスに繋いだ。

 

「イクス? 私よ。私達もそこに行くから少しだけ待ちなさい。一人で動かないように」

 

そこから通信用魔方陣を通してイクスが何か言っているようだが、アイリは無言だった。

そして、アーシアそっくりの笑みを浮かべて、たった一言。

一言だけ口を開いた。

 

「――――私の言うことが聞けないの?」

 

刹那、背筋が凍りそうなプレッシャーがアイリから撒き散らされた。

先程までアイリに抱きついていた白雪と黒茨は慌ててアルフィリアの後ろに隠れ、青い顔をしていて、

 

「アイリ姉さま、怖い………」

 

「うにゃ………アイリお姉ちゃんを怒らせたらダメにゃ………」

 

見れば、漸と真も青ざめていた。

アルフィリアだけは平然としていて、

 

「きゃー! 白ちゃんと黒ちゃんが私にくっついてきて………んもぅ、可愛いんだから!」

 

思う存分、シスコンを爆発させていた。

 

一拍置いて、アイリが満面の笑みを浮かべる。

 

「分かったのなら良いわ。良い子ね。じゃあ、私達が行くまで待つように」

 

そのやり取りで通信が終わる。

やはり、女性陣のパワーは強いようで、イクスも姉の言うことには逆らえないようだ。

 

アルフィリアが手を叩く。

 

「さてさてさーて。話は纏まったようだし、さっさと行って、ちゃちゃっと倒しちゃいましょうか」

 

「ええ。漸と真もついてきなさい。『UL』をぶっ飛ばすわよ」

 

アイリの指示に弟二人が応じる。

アルフィリアは自身の後ろに隠れている妹二人の頭を撫でながら言う。

 

「白ちゃんと黒ちゃんはここで待機ね。来る時は紅君達と合流してから来ること」

 

頷く白雪と黒茨。

 

姉二人の指示により、一行は準備を始める。

アルフィリアは迫力のある笑みを浮かべていて、やる気満々といった表情だ。

 

「相手がその気ならとことんやってやろうじゃない」

 

「私もいるんだからね? 全部取らないでよ、姉さん?」

 

アーシアの顔で、戦闘意欲溢れる言葉を述べるアイリ。

流石のアセムもこれにはポカンとしていて。

彼の視線に気づいたアイリは怪訝な表情で訊ねた。

 

「どうしたんですか? 私の顔に何かついてます?」

 

「いやぁ、あのアーシアちゃんの娘って考えると不思議な光景だなと思って」

 

「あははは、よく言われます。うちのお母さん、あんな感じでのほほんとしてますからね。なんというか、『私がお母さんを守らなきゃ!』って感じになっちゃって。つい前に出ちゃってます」

 

「アハハ♪ そういうところは君もお父さんから強く受け継いだらしいね。けど、この時代のアーシアちゃんはあれでいて時折、強い目をする時がある。君の目はその時の彼女にそっくりだ」

 

アセムがそう言うと、アイリはきょとんとした。

そして、本当に嬉しそうに、

 

「ありがとう。最高の言葉だわ―――――優しい悪神様」

 

 

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