ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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原作編の続きを書こうと思ったけど、先に番外を投稿です!


平和な波乱

[三人称 side]

 

 

その日、ティアマットは思った。

 

「使い魔なのに、ほとんど出番がない………。数少ないお姉さんキャラなのに………」

 

あの最終決戦、確かに主のエスコートという大役を果たした。

主と共に仲間の危機に駆けつけることは素晴らしい役目だと思う。

 

『乳の宴』にも参加した。

イグニスの提案によるあの色々な意味でとんでもない巻き込まれ、胸を吸われた。

 

もう一線を越えた中だ。

それくらい、今更どうってことない。

しかし、しかしだ………。

 

「私だって………もっと出番がほしい。もっと………イッセーとの触れ合いが欲しい………」

 

ティアマットは覚悟を決める―――――。

 

 

 

 

その日、イグニスは思った。

 

「本当の名前も教えたんだし、そろそろ私がデレるイベントがあってもいいと思うの」

 

最後の戦い、イグニスは本当の名前を一誠に明かした。

それはイグニスとって非常に大きな意味があるのだ。

世界のため、かつては封じた真の名―――――エクセリア。

その名前を知る者は一誠のみ。

 

キスと共に大切な名を明かす。

これは最高のシチュエーションだろう。

 

「さてさて、そろそろイグニスお姉さんも本気を出しちゃうゾ☆」

 

ついに駄女神が動く―――――。

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

リアスと朱乃の卒業式が終わってすぐのことだった。

三月になってからは、チーム『D×D』として動く案件はなく、基本的な悪魔の仕事だけという、割と平和な日常を過ごしている。

 

「………どこが平和よ。全然、平和じゃないんですけど」

 

「うん、俺の心読むな、アリス」

 

午前の授業を終え、今は昼休み。

授業から解放された学生を待つのはお楽しみのランチタイム。

普段なら、俺達も颯爽と昼食の準備に取りかかるのだが………。

俺、アリス、美羽の三人は机に突っ伏していた。

突っ伏したままピクリとも動かない俺にアーシアが話しかけてくる。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか? お疲れのようですけど………」

 

「………うん。アーシア………俺はもうダメだ。何もやる気が起こらないんだ。というか、何もしたくないんだよ………」

 

「はぅ! イッセーさんの目が真っ黒です! 闇に呑まれてます! しっかりしてください、イッセーさん!」

 

涙目で俺の体を揺するアーシア。

その隣ではイリナとゼノヴィアにアリスが泣きついていて、

 

「もうヤダァ………働きたくないよぉ………グスッ」

 

「元とはいえ、一国の王女様とは思えない発言ね」

 

「あ、ああ………上級悪魔の女王とはこんなに酷いものだっただろうか?」

 

更にその後ろでは美羽がレイナに泣きついていた。

 

「うぅぅぅぅ………なんで、ボク達だけあんなに書類が覆いのかなぁ………」

 

「アハハハ………。ま、まぁ、仕方ないと言うか………アグレアスを半壊させたのが、三人だし………ね?」

 

そう、俺達がここまで苦しんでいる理由。

それは―――――アグレアスを半壊させたことで、各方面へ提出する書類に追われているからだ。

 

アセムとの戦いの前、俺達はリゼヴィムの本拠地であるアグレアスに強襲を仕掛けた。

全てのケリをつけるため、チーム『D×D』のメンバーは総力をあげて、アグレアスに乗り込み、激闘を繰り広げた………繰り広げ過ぎた。

あの戦いで俺は変革者に、美羽とアリスは神姫化を果たすに至った。

新次元に踏み込んだ俺達の力は他を超越したものだったのだが………そのせいでアグレアスは凄まじいダメージを受けてしまったのだ。

特に美羽が落とした隕石。

あれのおかげで、アグレアス全体にヒビが入ったらしく、もう一つ落としていたら、どうなっていたか分からない………そんな状況になっていたのだ。

アグレアスの修復をしようにも、隕石をどうにかするのに時間がかかったらしく、復旧にはまだ時間がかかるとのこと。

 

それを受けて、サーゼクスさんが、

 

『君達に責任はない………責任はないのだが、各方面へ提出する書類だけはやってもらえないだろうか。あまりに多すぎて、我々だけでは対処しきれないのだ。………すまない、イッセー君』

 

映像越しにそう言ったサーゼクスさんの表情はよく覚えている。

責めようにも責められず、かといって何もなし、というわけにもいかない………そんな、何とも言えない表情だった。

場所がレーティングゲームの聖地だけあって、奪還のため、リゼヴィムを倒すためとはいえ、半壊させたのはやはり不味かったらしい。

 

というわけで、事務所に送られてきた山のような書類に対応すべく、俺達はここ最近、ハードな日常を送っていたのだ。

俺達が授業で事務所にいない間も、ニーナを中心にリーシャとワルキュリア、サラ、モーリスのおっさんが書類を片付けてくれている。

 

俺は盛大にため息を漏らした。

 

「はぁぁぁぁぁ………今日も送られてくるとか絶望でしかねぇ。もう、ヤダ。現実逃避して良い? 良いよね?」

 

「げ、元気だしてください、イッセーさん。私も手伝いに行きますから」

 

「うん、ありがとう………いつまでも待ってるよ」

 

とりあえず、アーシアちゃんをギュッとしよう。

アーシアに癒されたい。

今の俺には癒しが必要なのだよ。

 

そう思った時だった。

 

教室中がざわめき始めたのだ。

そりゃあ、休み時間だし普段から賑やかなものなのだが、今のクラスから感じるのは戸惑い、疑問だった。

 

「こ、子供………?」

 

「うわぁ、すっげぇ可愛い………」

 

「双子かな?」

 

「というより、誰かの妹さんかしら?」

 

などという声が教室のあちこちから聞こえてくる。

 

子供?

双子の女の子?

クラスメイトは口を揃えて可愛いと言っているが………。

 

気になった俺はクラスの注目が集まっている教室の前側の入口に目を向けた。

そこにいたのは皆が言うように二人の少女だった。

いや、少女というよりは幼女と言う方が正しいか。

 

傷一つない白く綺麗な肌。

フワリと柔らかそうな長い髪は太ももの辺りまで伸びており、それぞれ綺麗な赤色と青色の髪色をしている。

二人とも年相応に小柄で、胸もペタンコだが、無垢を体現したような、そんな清楚さを感じさせる。

二人の幼女の顔立ちは愛らしく整っていて、将来は間違いなく美人さんになるだろうと確信さえ持てるほどだ。

そんな幼女二人はじっと教室の中を見渡していく。

 

クラスの女子が幼女に話しかけた。

 

「えっと、初等部の子かな? 誰か探してるの?」

 

と、尋ねられた幼女の内、赤い髪をした幼女が言った。

 

「えーと………あっ、いた!」

 

幼女が指差したその先にいるのは―――――俺。

 

………は?

えっ、ちょっと待って。

なんで、俺?

っていうか、あの赤い髪の幼女、どこかで―――――。

 

そこに思考が至ったのと同時だった。

二人の幼女は小走りで俺のところに駆け寄って、

 

「「パパ――――――!」」

 

などと元気な声で言いながら抱きつきてきた!

 

沈黙する教室。

クラスの視線は当然、俺と俺に抱きついいる幼女二人に向けられている。

その視線の中には美羽、アリス、アーシア、ゼノヴィア、レイナ、イリナのものも含まれていて………。

 

硬直する教室の空気などお構いなしに、赤髪の幼女が言う。

 

「ねぇねぇ、パパ、どうしたの? せっかく、会いに来たのにぃ」

 

青髪の幼女もそれに続く。

それはもう無邪気な声音で言った。

 

「わぁ、パパってば嬉しくてしょうがないんだね! 私達のこと、こんなにギュッてしてくれるんだもん!」

 

いや、あの………飛んできたものをただ受け止めただけなんですけど。

というよりね、さっきから『パパ』を連呼してるけど、それは――――――。

 

『ええええええええええええええええええええええ!? パ、パパァァァァァァァァァァッ!?』

 

皆の声が一つになった!

女子生徒が詰め寄ってくる!

 

「ひひひひひひ、兵藤君!? パパって!? パパなの!?」

 

「知らぁぁぁぁぁぁん! 俺には身に覚えが………ない!」

 

「今、ちょっと詰まったよね!? 最近、ちょっと良いかなって思ってたのに! もう、子供が二人もいるなんて!」

 

「やっぱり、兵藤君はケダモノだ!」

 

「兵藤ぉぉぉぉぉぉぉぉ! 誰の子だ!? 一体、誰との間の子なんだ!?」

 

「知らん知らん知らん知らんんんんんんんん!」

 

「まさかと思うが、ヤり捨てとか………最低だぞ、おまえ!」

 

「勝手な憶測はやめろぉぉぉぉぉぉ! その時は最後まで責任は取るわ、ボケェ!」

 

「じゃあ、この美幼女達はなんなんだ!」

 

「そうよ! 兵藤君のこと、パパって言ったし!」

 

「俺に聞くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺が知りたいわ!

身に覚えがない、ことはないが普通に考えておかしいだろ!?

俺の歳でこんな大きな子供がいるわけないだろぅ!?

 

赤髪の幼女が唇に指を当てて、辺りを見渡した。

 

「あれぇ、ママがいないよ? パパ、ママはどこにいるの? ここにいるんでしょ?」

 

『な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』

 

赤髪の幼女により、もたらされた新たな情報に教室内はパニックになる!

 

「ま、マジか! まさか、この学園にママがいるのか!?」

 

「ちょっと待って………あの赤い髪って」

 

「うん、私も思った。少し違うけど、あの子って―――――」

 

『まさか、リアス先輩との子供!?』

 

なんでだよ!

確かに赤と紅で似た髪色はしているけど!

 

「じゃあ、あの青い髪の美幼女は!」

 

「ええ、間違いないわ!」

 

『ゼノヴィアさんとの子供か!』

 

皆の視線がゼノヴィアに集まっていく。

この流れだとそうなるのは見えていたけど!

本当にバカだろ、おまえら!

根本的なところを考えろ!

 

注目を向けらたゼノヴィアは腕を組むと一つ頷いた。

そして、青髪の幼女の隣に立って、クラスの皆に向けて口を開いた。

 

「この子が私とイッセーの子供? なにを馬鹿なことを言っているんだ。普通に考えたら分かることだろう?」

 

そうだよね。

普通に考えたらおかしいよね。

仮に俺とゼノヴィアの間に子供がいたとしても、ここまで大きい子供がいるはず―――――。

 

「無論、私達の子供だ!」

 

「おまえ、少し黙ってろ! 余計ややこしいことになるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

涙を流してのツッコミだった!

こいつ、マジで何言ってくれてるの!?

馬鹿なの!?

おまえもなの!?

 

「イッセー! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ! リアス先輩とゼノヴィアちゃんとの子供だとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! おまえには天誅をくだしてやる! イッセー撲滅委員会会員よ! かかれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 兵藤ぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

「おまえら、少しは人の話を聞けやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

突撃してくるイッセー撲滅委員会会員(駒王学園のほとんどの男子生徒)に向かって、俺は突貫した。

 

 

 

 

「アハハハハハハハ! もう最高っ! イッセーの周りの子達は本当に面白いわ!」

 

旧校舎、オカルト研究部の部室に場所を移した俺達。

部室には赤髪の幼女の笑い声が響いている。

甲高い声色は幼い幼女だが、その口調はいつもの聞きなれたあいつのもので―――――。

 

「お! ま! え! は! なにを考えとんのじゃ、この駄女神ぃぃぃぃぃぃ!」

 

俺はそう叫ぶと共に赤髪の幼女―――――幼女化したイグニスの頬を引っ張った。

泣きながら。

 

俺が教室で起きた騒ぎを抑えるのにどれだけ苦労したと思う?

話を聞かない男子生徒に、話を勝手に盛り上げる女子生徒に、殴りかかってくるイッセー撲滅委員会。

ただでさえ疲れてるところにこれだぞ?

泣きたくもなるわ。

 

そんな心身ともにボロボロの俺の問いに駄女神は―――――。

 

「イグニスじゃないもん、ロリニスだもん」

 

「そういうことを聞きたいんじゃないんですけど!?」

 

なんだよ、ロリニスって!?

すると、青髪の幼女―――――幼女化したティアが元気よく言う。

 

「私、ロリア!」

 

「聞いてないよ! ティア姉も何を考えてるの!? つーか、なんで、もれなく『ロリ』が名前に入ってるんだよ!?」

 

確かにロリだけども!

あのナイスバディなお姉さん達が今ではツルペタなロリっ娘だけども!

 

美羽が苦笑しながら言う。

 

「イグニスさん、前にも幼女化したことあったけど………微妙に年齢変えてきたよね」

 

年末、朱乃が管理している神社の大掃除を行った時にもイグニスは女神パワーとやらで幼女化していた。

………が、その時とは微妙に年齢を変えているのか、前回と雰囲気が違っていたので最初は気づかなかった。

恐らく、その辺りも含めて幼女化したのだろうが………やってくれたな、駄女神。

もう学園中で噂になってるよ。

なんなら、さっき放送で職員室に呼び出されたよ。

 

最近はスケベ行為も控えていたから、女子達からの評価もかなり良くなっていたのに………。

 

「高校二年生(子持ち)………だね」

 

レイナちゃん、やめてくんない?

シャレにならやいから、本当にやめてくんない?

なんだよ、高校二年生(子持ち)って。

 

柳葉魚(ししゃも)みたい」

 

「美羽さん、ナイス例え!」

 

全然ナイスじゃないし!

イリナ、おまえのその辺りの感性は未だに理解しかねるよ!

 

俺は盛大にため息を吐いた。

 

「ったく………二人共、なんだってこんなことを? イグニスは駄女神としても、ティア姉まで」

 

「イグニスじゃないもん、ロリニスだもん」

 

「それはもういい! なんだ!? 気に入ってるのか、それ!?」

 

俺がツッコミを入れると、イグニスがフフフと笑んだ。

 

「最近、イッセーと触れ合いが少なかったじゃない?」

 

「え?」

 

俺が聞き返すと、ティアが言う。

 

「イッセーは治療で人間界にいないことも増えたし、溜まった書類の対応で家にいる時間も減っただろう? それに、家では基本寝ていることが増えたじゃないか」

 

「まぁ、そうだな」

 

実は、最近は忙しいというのとは別に疲れやすくなっている。

やることが少ない日でも、疲れが溜まることが多く、すぐに眠る日が増えているんだ。

そのため、学校にいる間や事務所では美羽達との関わりは持てているが、この二人との関わりというのは以前と比べると確かに少なくなっている。

 

ティアは少し頬を赤くしながら、小さな声で言った。

 

「おまえは姉属性より、妹属性だ。だ、だから………ちっちゃくなれば………その………かまってくれるかなって………」

 

指先を合わせて、恥ずかしそうに言うティア。

 

か、かまってほしくて、幼女化したって………。

何とも発想がぶっ飛びすぎてるような気がするのだが………。

 

俺はやれやれと息を吐く。

 

「あー………なんというか、悪かったよ。最近、あんまり話してなかったし………うん、ごめんな?」

 

「う、うむ………。許す代わりと言っては何だが………今日、一日は私達に付き合ってくれないか? 忙しいのも分かるし、美羽達の気持ちも分かるのだが………」

 

申し訳なさそうに美羽達を見上げるティア。

美羽達はお互いの顔を見合わせて頷くと微笑んだ。

 

「分かった。お兄ちゃん、仕事はやっておくから、今日は二人といてあげてね」

 

「その代わり、明日は私の分をやってもらうからね?」

 

「おい、普段から丸投げしてくるんだから、これくらいタダでやってくれよ」

 

そんなやり取りをしながら、俺は苦笑する。

今日は二人のお姉さんへのサービスデーってことなのかな?

やることは多いけど………たまにはこんな日があっても良いだろう。

 

俺は幼女となったティアの前に屈むと、その小さな手を取った。

 

「それじゃあ、今日は一緒にいるか」

 

すると、

 

「うん! ありがとう、イッセー!」

 

満面の笑顔で返してくるティア。

 

………ど、どうしよう。

今の笑顔、反則級に可愛かったんだけど。

俺のハート、一撃で撃ち抜かれたんだけど!

これがティア―――――否、ロリアの力ということか!

 

俺はシスコンであってもロリコンじゃない。

でも、この美幼女の前では………クソッ!

ロリコンに目覚めても仕方がないというのか!

 

「ロリは―――――正義よ」

 

同じく幼女化したイグニス―――――ロリニスの言葉は俺を頷かせるに十分だった。

 

 

 

 

ところで………。

 

「なぁ、俺が妹属性だから幼女化したんだろ? なんで『パパ』なんだよ?」

 

俺の問いにティアは、

 

「い、いや、最初は『お兄ちゃん!』って言おうと思っていたんだが………イグニスが………」

 

「その方がインパクトあるでしょ☆」

 

「インパクトでかすぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 


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