ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
アセム達が転移したのは、とある山奥の採掘場跡地だ。
ここにULが出現したという。
まだ日が出ているというのに、異様な波動を感じることができる。
どうやらこの一帯は小規模であるが、異空間と化しているようだ。
一行が転移した先に、紅髪の少年はいた。
彼は採掘場を見渡せる物陰に身を潜め、様子を伺っていた。
アイリが言う。
「ちゃんと待っていたわね」
「………アイリ姉さんには逆らえないからね」
「それはそうと今度、アルフィ姉さんとお風呂の刑ね」
「なんで!?」
「勝手に突っ走ろうとした罰よ」
「ウフフ、背中流したあげる♪」
ウキウキしてるアルフィリアに顔を赤くするイクス。
彼は頭を振って思考を切り替えると、前方を指差した。
「今、五つ目が転移してきたところだよ」
地面に大きな魔方陣が輝いており、その上空にも同じものが浮かび上がっている。
魔方陣の一つから黒光りする物体が今まさに出現していたところだった。
既に同じような黒い物体が四つ点在しており、それらは全て極太の円柱のような形をしていた。
漸が言う。
「あれは『羅睺七曜』レッズォ・ロアドの『四将』。その一角の『ベゥバ・レコルグ』の一部です」
『羅睺七曜』。
異世界の邪神メルヴァゾアに仕える七体の眷属だ。
そしてその眷属達は、それぞれ『四将』という僕を従えている。
先に遭遇したルマ・イドゥラとガルヴァルダンもその『四将』であり、今転移してきている物体も同じ『四将』らしい。
アセムは言う。
「一部ってことは巨大ロボみたいに分離合体でもするのかい?」
「はい。ベゥバ・レコルグはその特性を持ったULです。今みたいに体を分離して、一つ一つ転移させることが可能なんです」
「元が大きい分、ああやって小出しでしか転移できないのよ。大きければ大きいほど、転移に要するエネルギーも膨大になる。だから、そのまま転移する方がよほど時間がかかってくるの」
真とアルフィリアの解説にアセムは「なるほどね」と納得する。
パーツが全て揃えばあの円柱は合体して元のサイズに戻るのだろう。
「特撮好きとしては合体シーンも見てみたいところだねぇ」
呑気に言うアセム。
イクスが息を吐く。
「馬鹿なこと言わないでください。奴の能力は戦略兵器といっても過言じゃないんです。もし、この時代で合体してしまえば………」
「その時はこっちも巨大怪獣を召喚して特撮の撮影に入ろう」
「漸兄さん、ツッコミ頼むよ」
「なんで俺!?」
アセムは改めて視線をベゥバ・レコルグのパーツに向ける。
パーツを守るように配置するUL。
それと鈍い銀色に体を持つ別の機械生命体が複数。
体は細長く、蛇のような見た目をしている。
「あれは初めて見るね」
アルフィリアが目を細める。
「私対策ってやつね。アンチマジックが施されてるから魔法が通じにくいのよ。一、二発くらいは耐えるわね」
「姉さんの魔法に耐えるのか。雑兵って考えると厄介だな」
「本当に面倒なのは、魔法を吸収してカウンターを放ってくることかしら。しかも、絶妙に威力とタイミングをズラしてくるから、やらしいのよね」
「魔法使いの天敵みたいな奴らだな。姉さんはどうやって対処したの?」
「これよ」
漸が問いにアルフィリアは拳を握って返す。
「あ、ああ………そう」
目元をひきつらせる漸達。
魔法使いの格好をしたインファイターというのはいかがなものなのか。
前線で戦う彼女の姿を見て、魔法使い=武道家のイメージがつきそうで、他の魔法使いからクレームが来るのではないか。
そんな、妙な不安を抱える漸達であった。
「今回は私にもやらせてもらうからね」
と、アイリが取り出したのは打撃用のフィンガーグローブ。
手に付け、何度か握り感触を確かめ、勇ましく宣言する。
「行きましょうか」
言うなり、アイリは飛び出して、UL達の方へ向かいだした。
アイリに気づいたULは、彼女に攻撃を仕掛けていく。
目から例の赤い光線を放ちつつ、金属の腕を振るう。
しかし、アイリはその全てを避けて、ULの懐に入り――――
「はっ!」
拳を打ち込み、ULの一体を破壊した。
そこから流れるような動きで一体、また一体と砕いていく。
地に足をつけ、腰を入れた確かな拳打。
インパクトの瞬間にオーラを爆発させて打ち込んでいた。
幼い頃から鍛練し、磨いてきたのだろう体術がそこにはあった。
「姉一人に任せるわけにはいかないな」
次の瞬間、イクスが紅色の閃光となって、戦場を駆けていた。
閃光が通った場所にいたULは細切れにされ、消滅していった。
アルフィリアが唸る。
「うーん。可愛い妹と弟の活躍を録画したい気持ちはあるけど………それはまたの機会にしましょうか」
そう言うと、彼女は地面に手を起く。
すると、彼女が纏う青白い光が、地面を通してこの一帯に広がっていった。
この一帯に彼女の力を流し、強力なフィールドとして作り替えたのだ。
これでアイリ達が暴れても、この採掘場跡地が破壊されることはないだろう。
合わせて、強力な結界を展開したので、外部に被害が及ぶことも、知られることもない。
「ありゃ、僕の役割がなくなっちゃったじゃないか」
「ウフフ、ごめんなさいね。あなたは見物でもして、のんびりしていてね」
アルフィリアに続くように、漸と真が言う。
「そういうこと。ここは兵藤一誠の子供である俺達の仕事さ」
「元々そのはずだからな。俺達も行こうか」
漸はデュランダルⅣを構える。
真は純白の天使の肩翼と、ドラゴンの肩翼を生やして、両手に二振りの日本刀を握った。
日本刀からは聖なる波動が放たれている。
二振りとも聖剣の類いだろう。
アイリとイクスに漸と真が加わり、魔方陣の周囲にいたUL達を蹴散らしていく。
奴らがビームを放とうとも、金属のボディで直接攻撃をしようとも、子供達は意に介さず、次々と倒していく。
アルフィリア対策と用意された新型のULも、魔法を使わない拳や剣といった直接攻撃に対しての抵抗力は通常のULと比べてもあまり差がないらしく、子供達は新型をも容易く倒してしまう。
『Boost!!』『Explosion!!』
覚えのある音声が響き渡る。
それはイクスが装着している赤い籠手からだ。
籠手から何かが撃ち込まれる音が聞こえ、薬莢が飛び出していく。
刹那、籠手から莫大なオーラが解き放たれ、イクスと紅剣を包み込んでいった。
すると、イクスの動きが更に速く強力になり、ULを斬り滅ぼした。
アセムが呟く。
「人工神滅具『赤龍王太子の籠手』、ね」
幾度か紅達と話すなかで教えてもらった未来の技術による産物『人工神滅具』。
まだ成功例は少なく、本物の神滅具と比べても性能は劣る。
だが、通常の人工神器と比べたら段違いに強力な性能を持っている。
(技術面的な興味も尽きないが、変に手を出すと歴史が変わりそうだしねぇ)
アセムが結界の維持に務めるアルフィリアに問う。
「君は出ないのかい?」
「ここはあの子達で十分よ。それよりもこっちに専念した方が良さそうだし」
アルフィリアが視線を向けた先にはベゥバ・レコルグの一部。
あの円柱が動くことを警戒しているのだろう。
そして、彼女の判断は正しかった。
兵士のULの殆どを倒したところで、既に転移していた黒光りの円柱が輝き、鳴動し始める。
すると、円柱の外装というべきだろう箇所がスライドし、何かに変形していった。
それは人型であり、四足歩行の獣であり、巨大な鳥のような形になった。
その変形した機械生命体の纏う雰囲気は他の兵士とは違い、異様な波動を発している。
「来たわね。皆、注意して!」
アルフィリアが声を上げると同時に、人型へと変形したULが動く。
人型の両腕が形を変えて、砲身になるやいなや、光が収束し始め―――――放たれる。
紫色の太い光線が漸を襲う。
漸はデュランダルⅣで受け止めるが、重たい衝撃が彼の体に響いた。
「くっ! 一部でこの威力かッ!」
デュランダルⅣを振り、光線は弾かれる。
「やってくれるな!」
真が天使とドラゴンの翼を羽ばたかせ、人型に迫る。
そこへ獣型が割り込んだ。
獣型の背には突起物がビッシリと生えており、それらが火を噴いて飛び出した。
「またミサイルか! 真!」
「わかってる!」
真は空高く飛び上がり、複数のミサイルが彼を追う。
空に光の軌跡を描きながら、真は舌打ちする。
「えぇい、面倒な! これでもくらっとけ!」
周囲に光の矢を成形し、射出する。
放たれた矢とミサイルが衝突し大爆発を起こした。
空中に黒煙が立ち込める中、獣型が追加で放ったミサイルが今度はアイリ達に――――否。
「逃げ場のない面制圧攻撃か」
雨のように降り注ぐミサイルと光線の数々。
一発一発が馬鹿げた威力の攻撃だ。
本体の一部とはいえ、戦略兵器と呼ばれるに相応しいもの。
たとえ防御魔方陣を展開したとしても、この物量では突破されてしまうだろう。
アセムはアルフィリアに問う。
「耐えられそうかい?」
「上等よ」
アルフィリアは両の掌を合わせて気の高速循環と圧縮を繰り返し、爆発させる。
「この一帯を保護しつつ、全てを撃ち落せば良いだけでしょう」
採掘場跡地の各所で強い光の塊が現れ、光の柱が空へと伸びる。
青白く輝く気の奔流が豪雨のような攻撃の全てを呑み込んでいく。
「おまけよ」
アルフィリアが天に向けた掌を下ろした。
すると、天に伸びた光の奔流が上空で軌道を変える。
その軌道は人型、獣型目掛けて落ちる――――。
しかし、
「今のを防ぐか。思ってたより硬いわね」
アルフィリアは鋭い視線を敵に向ける。
彼女が放った気の奔流は鳥型が展開したシールドによって阻まれてしまう。
その光景に、イクスが紅剣と籠手を構えた。
すると、アイリがイクスの籠手に手を沿える。
「イクス、その『赤龍王太子の籠手』を至らせるのはやめなさい。まだ、不安定なのでしょう?」
「けど!」
食い下がろうとするイクスに、アイリは首を横に振る。
「ここは私が行くわ。アルフィ姉さんも良いよね?」
勇ましく言うアイリ。
妹の言葉にアルフィリアは親指を立てる。
「アイリちゃんが出るなら、私は下手に手を出さない方が良さそうね。守りはお姉ちゃんに任せて、存分にやりなさいな」
「ありがとう。お姉ちゃん、大好き」
アイリは満面の笑みを浮かべると、全身から黄金のオーラを発した。
彼女は力ある呪文を唱え出す。
「我が声に応えよ、黄金の鱗を持ちし、偉大なる汝よ。共に眼前の敵を殴殺せんがために――――御身を我が前に――――!」
黄金の魔方陣が、アイリの顔、手、足に浮かび上がる。
あの魔方陣はドラゴンを召喚する龍門。
黄金と言えばあのドラゴンだろう。
五大龍王の一角に数えられる伝説のドラゴン――――。
「ファブちゃん、こっちに来て早々、朗報よ。お母さんの呪いをかけた連中とやり合えるわ」
光が更に強くなり、彼女を覆う。
その姿はまるで羽衣を羽織ったようで、
「私の人工神滅具『黄金龍君の羽衣』。そして、これが――――」
羽衣から発せられるオーラがドラゴンのシルエットを浮かび上がらせる。
ファーブニルだ。
『俺様、アイリたんに力を貸す!』
アイリが羽衣を纏い、その場で舞うように回る。
オーラが高まり、二人が共に叫ぶ。
「『
刹那、アイリの纏うオーラが爆発する。
黄金の輝きは形を成し、全身鎧となる――――
アイリが黄金の鎧を着込んで、眼前の敵に構えた。
「
黄金のオーラによる嵐が吹き荒れた。