ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その10

 

鬼手化に鬼手。

人工神滅具版の禁手化と禁手となる。

但し、禁手が均衡を崩す力の解放に対し、鬼手は人工神滅具の不安定な力を持ち主の力によって強制的に安定化させることで至ることができるらしい。

 

本物と比べると確かに出力は劣るのだろう。

だが、こうして見る限りでは十分すぎる力を秘めているようだ。

 

鎧を着こんだアイリが言う。

 

「私が突っ込むから、皆はフォローをお願いね」

 

漸と真は了解と応じるなり、翼を広げて飛び出していく。

漸は獣型、真は人型とそれぞれ相対し、衝突する。

 

漸は空高く跳躍すると、獣型も追いかけるように跳躍する。

獣型が漸に迫るその直前、ブースターらしきものが展開し、火を噴く。

瞬間的に加速した獣型に、漸は目を見開きながらも、すんでのところで回避する。

 

「っぶね………ッ! このやろ………!」

 

漸は空中で回転し、体制を整える。

同時に高速移動による連続攻撃を獣型に叩き込んでいった。

 

一方、真もまた人型と激しく火花を散らしていた。

黒光りの円柱の一つが変形し、巨大な剣と化した。

人型は大剣を握り、真に振り下ろす。

 

だが、真も二振りの得物で受け止め、押し返す。

 

「剣でくるというのなら、面白い! 受けてたつぞ!」

 

十字で斬り付け、人型を吹き飛ばす真。

ふいに一つの影が人型の真上に現れる。

 

「くらえぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

叫ぶと同時に莫大なオーラをデュランダルから放出する漸。

人型は手に持った大剣で受け止めようとして――――真っ二つに斬られた。

 

漸が不敵な笑みを見せる。

 

「デュランダルに断てぬものなしってな!」

 

そんな漸に今度は獣型が襲いかかるが、横合いから真が蹴り飛ばした。

 

「漸!」

 

「ああ、やるぞ!」

 

漸と真は互いに背中を預け、人型と獣型に斬りかかる。

二人は互いにフォローしながら、抜群のコンビネーションで人型と獣型を追い詰めていく。

その姿はまるでゼノヴィアとイリナのようで――――。

 

アイリはというと、黄金の軌跡を生み出しながら、神速で動き回り、巨鳥型を一方的に殴り付けていた。

敵もかなりのスピードで空を駆け回るが、アイリはそれ上回るスピードだ。

アイリは巨鳥型の頭上を取り、真上から拳を叩き込んで、巨鳥型を地に墜とした。

 

地面にめり込む巨鳥型は再び空へと戻ろうとするが、時既に遅し。

アイリの追撃が巨鳥型へ撃ち込まれ、彼女の拳は金属の体に深々と突き刺さり、黄金の光が内側から巨鳥型を消し飛ばした。

 

鬼手になった直後。

早くもアイリが一体倒してしまった。

 

更に―――――

 

「どうやら、コンビネーションは俺達の方が上らしいな!」

 

デュランダルⅣに弾丸が撃ち込まれ、聖なるオーラが爆発的に大きくなる。

漸の言葉に真が笑む。

 

「ははっ! 母さん達にあれだけ叩き込まれたんだ、この程度で負けられないってね!」

 

周囲に光の矢を展開し、同じく二振りの刀に聖なるオーラを纏わせる。

 

「聖なる加護を受けし名刀にして霊刀、加州清光と大和守安定の切れ味、とくと受けるが良い!」

 

「デュランダルの力もなッ!」

 

二人の斬撃は同時に人型と獣型を叩き斬り、撃破した。

 

これでこの時代に送られてきたベゥバ・レコルグのパーツはあと一つ。

残る一つは上半身は人型、下半身は四足歩行の獣型、そして背には翼。

半獣半人型といったところか。

 

アイリ、漸、真の三人が半獣半人型に歩み寄る。

 

「………お母さんは」

 

アイリは切々と語り出す。

 

「お母さんは花を育てるのが好きで、縫い物も料理も得意だった。いつも笑顔で、優しくて、怒ることなんてなくて。でもだからこそ、私や皆で守ってあげなきゃって」

 

アイリは拳に黄金のオーラを集めさせる。

その声は泪で震えていて、

 

「お母さんをいじめる奴は絶対に許さないッ!」

 

『アーシアたんは、絶対に守る!』

 

アイリの声に応じるようにファーブニルの叫ぶ。

これに漸、真、イクスの三人が続く。

それぞれが自身の得物を眼前の敵に向けた。

 

「アーシア母さんは絶対に救う!」

 

「当然! アーシアママの料理が二度と食べられないなんて想像もしたくない!」

 

「その通りだ! ロキだろうが、四将だろうと、羅睺七曜と関係ない。俺の、俺達の家族を傷つける奴は斬り滅ぼすッ!」

 

三人の弟達が得物のオーラを高めて振りかぶる。

姉のアイリは―――――

 

「赤龍帝一家を舐めるな、このバカァァァァァァァッ!」

 

極大のオーラが周囲を照らす中、アルフィリアが言う。

 

「本体に伝えなさいな。私達があなた達を滅ぼすとね」

 

『四将』ベゥバ・レコルグの一部とされるULは成す術もなく、光の中に消えていった――――。

 

 

 

 

この採掘場跡地に現れた全てのULが消滅し、戦闘が終わった。

あれほど大きな力が衝突したにも関わらず、この場所はほぼ無傷と言っていい状態だった。

これもアルフィリアが展開していた結界によるものだ。

 

鎧を解いたアイリが言う。

 

「やりすぎちゃったかな?」

 

アルフィリアが首を横に振る。

 

「ううん。ナイスファイトだよ。漸君も、真君も、イクス君も。良い戦い振りだったわ」

 

アルフィリアは微笑み、四人の頭を順に撫でていく。

少し恥ずかしそうにしながらも、漸が言う。

 

「姉さんの結界があったからね。周りのことを気にせず戦えたのは大きいさ」

 

「弟妹達を守るのもお姉ちゃんの役目。でも、その背中を推すのもお姉ちゃんの役目ってね」

 

だけど、とアルフィリアは続ける。

 

「まだ終わりじゃない。レッズォ・ロアドの『四将』はまだ残ってる。多分、ガルヴァルダンもまた出てくるでしょう」

 

その言葉に漸が訝しげな表情を浮かべる。

 

「奴は姉さんが倒したはずじゃ………?」

 

「残念ながらね。手応えがなかったから、直前に転移して逃れたんだと思うわ。けど、次は逃がさない」

 

アルフィリアが強い瞳で言う。

 

「必ず仕留める。ロキもね。皆で、アーシアお母さんを助けよう」

 

「「「「はい!」」」」

 

強く応える弟妹達。

すると、何かに気づいたのか、アイリがアルフィリアに訊ねた。

 

「そういえばアセムさんは? アルフィ姉さんと一緒じゃなかったの?」

 

「えっ?」

 

言われて振り返るアルフィリア。

先程まで側にいたアセムの姿は影も形もなく、忽然と消していた。

 

この事実にアルフィリアは驚愕する。

 

(嘘でしょ………? 私に気づかれずにいなくなるなんて………?)

 

常に周囲の気配を警戒していた。

当然、弟妹達だけでなくアセムの気も居場所を把握していた………はずだった。

 

「私の探知を潜り抜けたってこと?」

 

珍しく戸惑う姉の姿に弟妹達も驚愕した。

漸が辺りを見渡しながら言う。

 

「一体、どこに行ったんだ………?」

 

 

 

 

遥か上空。

雲を抜けたその先。

真っ白な雲海を見下ろすように、そこにある一つの影。

禍々しいオーラを滲み出しながら、その男は憎々しげに言う。

 

「忌々しい赤い龍の一族め」

 

その男――――ロキは遥か上空から兵藤一誠の子供達とULの戦いを眺めていた。

結果は子供達の圧勝。

誰一人欠けることなく、機械生命体を完膚なきまでに叩き潰していた。

 

「本体の一部とはいえ、『四将』ベゥバ・レコルグを退けるか。『真紅剣の神滅龍子』に『天墜の魔女』、聖剣の使い手、黄金の龍王より加護を受けし者。このままでは、こちらの損害が大きくなる………か。準備を急ぐ必要があるな」

 

ロキは雲の上から地を睨む。

そこへ一つの気配が現れる。

 

ロキは振り返ることなく、その名を呼んだ。

 

「何のようだ――――アセム」

 

ロキの背後に現れたフードを被った少年。

アセムはカラカラと笑う。

 

「なにやら、上からの視線を感じたんで気になって来ただけだよ、ロキ。しっかし、こんな高い場所から観戦かい? 観戦するなら、もっとよく見えるところで、ポップコーンとコーラを用意しなきゃダメじゃん。それとも――――」

 

アセムは口角を上げる。

 

「彼らを恐れているのかな?」

 

「我はレッズォ・ロアドとの約定により、手を出さなかったまでのこと。先日は時空を越えた転移の影響で力が落ちていたが、それも既に回復した。約定が無ければ、今頃、皆殺しにしている」

 

「なんか、負け惜しみに聞こえるけどねぇ。そう言うことにしといてあげるよ」

 

ふざけた笑みを浮かべたままのアセムとロキは対峙する。

ロキは静かな口調でアセムに問う。

 

「貴様の目的はなんだ?」

 

「目的?」

 

「なぜ、己を滅ぼす赤龍帝の子らに手を貸すのだ。」

 

「この間、言ったじゃん。成り行きだって」

 

アセムの回答にロキは鼻で笑う。

 

「成り行きで敵と馴れ合う者がどこにいるというのだ」

 

「ここにいるじゃん♪」

 

アセムは頬に指を指してニカッと笑う。

 

相変わらずふざけた神だ。

しかし、目の前の神は目的のために、己を滅ぼす男の子供達と手を組んでいるのは明らかだ。

それは確実に自分達の障害になる。

 

ロキは苛立ちと侮蔑の目をアセムに向ける。

 

「全くもって度しがたい。愚かな神め。いいだろう、そんな貴様の目を覚まさせてやる」

 

「およ? まさかと思うけど僕とやるのかい?」

 

アセムの問いにロキは首を横に振る。

 

「この場で貴様を滅ぼしてやりたいが、約定がある以上そうはいかぬ。貴様には情報をくれてやる」

 

「情報?」

 

アセムは首を傾げる。

 

ロキはアセムの目を覚まさせると言った。

それは恐らく、アセムが知り得ない未来の情報だろう。

だが、なぜそのようなことをするのか理解できない。

情報とは武器だ。

この状況でアセムに情報を与えるなど、敵に塩を送る行為に等しい。

 

ロキの言葉に怪訝な表情を浮かべるアセム。

そんなアセムにロキが言う。

 

「貴様らが戦ったガルヴァルダン。その主については聞いているな?」

 

「『羅睺七曜』だっけ? この時代の神話の主神クラスの力を持っているとか」

 

「そうだ。そして、その一柱であるレッゾォ・ロアドもこの時代に転移してくるだろう」

 

「へぇ………」

 

アセムは目を細めた。

 

各神話の主神クラスの力を持った者がこの時代で暴れるとなると、被害は未曾有のものになるだろう。

仮に倒し、被害を最小限に止めたとしても、歴史は大きく歪むのは確かだ。

 

アセムはロキに問う。

 

「その情報を僕に渡して、どうするつもりだい?」

 

「別に。今のはさして重要ではない。我が貴様に教えるのは更に上の存在。『羅睺七曜』を従える神メルヴァゾアについてだ。奴の力は―――――かの龍神すらも遥かに超える」

 

「なっ………!?」

 

アセムは目を見開き、声を漏らした。

更にロキの口から無慈悲な言葉が紡がれる。

 

「かの邪神の陣営には他にも龍神と並ぶか、超える神が複数いると言えば、貴様はどう感じる?」

 

無限の龍神オーフィス。

全盛期のオーフィスは、グレートレッドを除けば、この世界において最強の存在。

真っ向からやり合えば、どんな攻撃も通用しない。

あの龍神を相手に真っ向勝負を挑むのであれば、世界中の戦力を投じてやっと五分になれるかどうかというところだろう。

アセムとて全盛期のオーフィスには及ばない。

 

ULを従える邪神メルヴァゾアの陣営にはそんな龍神以上の存在が複数いるという。

それが意味するところは―――――

 

ロキは邪悪な笑みを浮かべる。

 

「ようやく貴様の顔からふざけた笑みが消えたな。貴様は赤龍帝の子らを守ろうとしているようだが、無駄だ」

 

ロキは手を広げて、高らかに言う。

 

「メルヴァゾアが動けば、どのみちこの世界は滅ぶ! ここで貴様が何を企もうとも、何を守ろうとだ! 全ては滅びに繋がっているのだ!」

 

ロキはアセムを指差した。

 

「貴様が我らの障害になると言うならそれでも良い。貴様は赤龍帝に滅ぼされる運命だが、その前に我らが滅ぼすだけだ」

 

それだけを言い残すとロキは転移の光に消えていった。

 

その場にただ一人残されたアセムはフードを深く被り、ポケットに手を突っ込んだ。

すると、ポケットが次第に赤く染まっていった。

 

少しして、アセムは手から力を抜き、息を吐いた。

 

「まいったね」

 

アセムは頭上に輝く太陽に向けて、小さく呟いた。

 

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