ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その11

 

 

「もう! どこに行っていたの? 探したんだからね?」

 

腰に手を当てて、ぷんぷんと怒るアルフィリア。

戦闘の後、彼女達はアセムを探していたようで、何度も通信が入っていた。

 

「ごめーんちゃい♪」

 

「可愛く言ってもダメー」

 

「あたっ」

 

アセムは幼い容姿を活かした必殺のぶりっ子謝罪をしてみるが、アルフィリアに額をこずかれて終わった。

 

アセムは額を擦りながら言う。

 

「ま、ちょっとした野暮用ってやつさ」

 

「野暮用って?」

 

首を傾げるアルフィリア。

 

アセムはそんな彼女を見ながら、ロキの言っていたことを思い出す。

30年後の未来に攻めてくる機械生命体UL。

その陣営には龍神すらも超える存在が複数いるという。

仮にそんな敵が一斉に攻めてくるようなことがあれば………考えずとも答えは分かる。

 

アルフィリア達はそのことを知っているのだろうか。

もう戦ったりしたのだろうか。

戦っているとすると、未来の兵藤一誠達が抑えているのだろうか。

まだその龍神クラスの敵が攻めてきていないのであれば、そこにはどんな理由があるのか。

 

異世界の観測は常にしていた。

その世界に邪悪な存在がいるということも分かっていた。

分かっていたつもりだった。

 

(だが、完全に見誤っていた。もっと観測の精度を上げる必要がある、か………)

 

自分の見積もりの甘さ、未熟さを再認識させられる。

アルフィリア達に色々と聞きたいが、今は思考を整理したい。

今後、自分の方針を決めるためにも。

 

そんなことを考えながら、アセムは言う。

 

「ふっふっふっ。こんな時間だからね。これを買ってきたのさ! この焼き立てたい焼きをね!」

 

「ああっ!? ズルい!?」

 

 

 

 

だだっ広い白い空間がある。

何もないただ広いだけの場所。

しかし、信じられないくらいに頑丈に作られている。

なにせアセムが創造した空間だ。

破壊できる者はそういない。

加えて、許可した者以外は外部からの侵入は許さない。

 

そこに複数の人影があった。

アセムと兵藤一誠の子供達だ。

そして、アセムの向かい合うように立つイクス。

 

イクスが言う。

 

「突然、お呼び立てしてすいません」

 

「気にしなくて良いさ。今の状況じゃ、あのロボ達が出てこない限り暇だしね。さて、イクス君。僕と手合わせしたいんだって?」

 

今回、この場に集まった目的はアセムとイクスの手合わせだ。

漸を通じて、アセムに連絡をしたのだ。

 

―――――俺と戦ってください、と。

 

アセムは言う。

 

「漸君から連絡を受けた時は何事かと思ったよ。あまりに突然のお願いだったしね。もしかして、両親の敵である僕を今のうちに退治するつもりなんじゃないかって勘ぐっちゃったぐらいさ」

 

イクスは苦笑しながら首を横に振る。

 

「そんなこと思ってませんよ。あなたのことは信頼しています」

 

「君と出会ったのはたったの数日前。話した回数もそう多くはない。それなのに君は僕を信用できるのかい?」

 

「もしあなたが敵なら、アルフィ姉さんのやらかした後始末なんてしないでしょう? 後ろから襲うこともできた」

 

「うーん、それだけじゃあ理由としては弱いね?」

 

「もちろん。最初はあなたを警戒していました。けど、アルフィ姉さんがあなたを認めているなら話は別です。あなたは信用できる。何より母さん達から話は聞いていましたから」

 

真っ直ぐな目で見てくるイクス。

嘘偽りのない言葉。

目の前の少年は本当に自分のことを信用してくれているのだろう。

 

アセムはクスリと笑う。

 

「わかった、いいよ。やろうじゃないか」

 

「ありがとうございます」

 

礼を言うと、イクスは鞘から紅の長剣を抜く。

鮮やかな刀身からは滅びの魔力と――――聖なるオーラ。

紅剣の名は真紅剣ガラティンⅢ改。

伝説の聖剣であるガラティンの発展型。

漸が持つデュランダルⅣと同じ最新型の聖剣だ。

 

イクスは真紅剣を正眼に構える。

 

「――――行きます」

 

言うなり、イクスの姿がその場から消える。

それと同時にアセムの周囲に紅の閃光が走る。

見ているだけで目が眩むほどの眩さだ。

前、右、後ろ、左………

 

「上かな?」

 

頭上から尋常ではないスピードで紅剣が降ってくる。

アセムが後方に跳ぶと、紅剣は地面に触れる――――その直前、軌道を変えてアセムを追う。

紅の刃が頬に触れるか触れないかの距離を通り抜ける。

 

「はッ!」

 

横凪に払われる紅剣。

それをアセムはスウェイバックで避ける。

 

「これを避けるのか!」

 

イクスの身体を纏う紅のオーラが膨れ上がった。

少年のギアが一段上がる。

剣速が更に速く、鋭くなっていく。

だが、太刀筋はブレていない。

 

(まだまだ本気じゃないってところかな?)

 

剣の軌道を目で追いながらアセムは笑む。

 

(この程度じゃ話にならないってことか!)

 

イクスは剣を振るいながら、アセムの技量に舌を巻く。

イクス自身もまだ全力を出していないとはいえ、今のところ全ての攻撃を避けられている。

掠りすらしない。

この速度の攻撃をポケットに手を突っ込んだまま、最初の立ち位置からほとんど動いていないのにだ。

 

アセムは言う。

 

「これが全力じゃないんでしょ? 今のままだと様子見で終わってしまうよ?」

 

「なら――――」

 

その言葉にイクスは一度、距離を取る。

腰を低くして重心を下げ、紅剣を脇に構えた。

 

『Boost!!』『Explosion!!』

 

赤い籠手から音声が発せられ、イクスのオーラが爆発的に膨れ上がった。

再びイクスの姿が消え、紅剣の連撃がアセムを襲う。

先程までとは比べ物にならないスピードだ。

刀身に滅びの魔力もより凶悪さを増している。

 

これほどの力を制御する卓越した技量。

天賦の才能もあるのだろう。

しかし、それだけで片付けられる力ではない。

幼少の頃から絶えず鍛え続けたのだろう。

だが――――

 

漸が頬に汗を伝わせる。

 

「本気になったイクスの剣が届かないだって………?」

 

紅剣がアセムに届かない。

これほどの剣撃を繰り広げても掠りすらしない。

 

イクスの表情に焦りが見える。

 

「ハァァァァァァァァッ!」

 

滅びの魔力を籠めた全力の一閃。

アセムは片手を前に伸ばして――――指で摘まむように受け止めた。

 

「ッ!?」

 

目を見開くイクス。

それは彼らの戦いを見ていた漸達も同様で、信じられないといった表情だった。

 

アセムは薄く笑みを見せる。

 

「熱くなりすぎだね。そのせいで相手との力差を見誤っているじゃないか」

 

イクスは紅剣を受け止めたまま、もう一方の手でピストルのポーズを取って、イクスに向けた。

指先にオーラが集まっていく。

当たればただでは済まないほどの力だ。

 

(避けられない………!)

 

イクスはその場から動こうとしたが、間に合わないことを悟った。

収束したオーラは強い光を発して―――――

 

パーン!とイクスの前でクラッカーが鳴った。

驚いたイクスはその場に尻餅をついてしまう。

呆然とする少年を見下ろしながら、アセムは笑う。

 

「アハハ♪ 僕の勝ちーってね♪」

 

「………ははは。参りました」

 

乾いた笑いと共にイクスは降参したのだった。

 

 

 

 

激しく動き回ったことによるものか、はたまた最後に死を意識してしまったせいか。

そのどちらもあるだろう。

イクスは肩で息をしながら、その場にしゃがみこんでしまっていた。

 

「完敗です」

 

「ふっふっふ。僕の偉大さが分かったかな?」

 

キラリと目を輝かせ、わざとらしくポーズを取って威張るアセム。

 

イクスとて敵うとは思っていなかったが、ここまで一方的な戦いに………いや、戦いにすらなっていなかった。

あれだけ攻撃を仕掛けていたのに、届く気配すら感じなかった。

イクスは改めて、目の前で笑っている神の、異常な力を認識した。

 

そんな彼にアセムは声をかける。

 

「イクス君。君が僕に手合わせを挑んだのは勇者君――――君のお父さんと、今の自分の力量を比較するためだろう?」

 

「な、なんで………?」

 

「なんでそう思ったのか? いやいや、僕じゃなくても気づいてるって」

 

アセムの視線が漸達の方に向けられる。

少なくとも兄、姉である漸、真、そしてアルフィリアは、弟の目的を分かっていたようだ。

 

アセムは言う。

 

「少し訂正しようか。君はお父さんのことを知りたいんだ」

 

「………」

 

目を伏せるイクスにアセムはイタズラな笑みを浮かべて、

 

「けど~、率直に聞くのは恥ずかしいから、手合わせという形で間接的にお父さんのことを知ろうとしたってところかな?」

 

「んなっ!? ち、ちが、俺は!」

 

顔を赤くして慌てるイクス。

誰から見ても図星だというのは分かる。

剣を振るっている時は勇ましい戦士なのだが、こういう面はまだまだ幼い少年だ。

 

アセムは唇に人差し指を当てる。

 

「フフフ、そんな慌てなくても大丈夫さ。この会話はお兄さん達には聞こえないようになっているからね」

 

「えっ?」

 

アセムに言われ、イクスは辺りを見渡す。

すると、いつの間にか二人の周囲には小さな結界がはられており、他の兄姉達と隔離されていた。

 

「気付きませんでした」

 

「こう見えても僕は空気が読める神様なのさ」

 

普段、シリアスな状況下であれだけボケをしておいて、どの口が言うか。

兵藤一誠がこの場にいれば、そんなツッコミが飛んできたことだろう。

 

イクスは少しの間、口を閉ざしたままだった。

顔が赤いところを見るに、まだ少し恥ずかしさがあるのか。

それとも、何が聞きたいのか、自分の中で整理しているのか。

アセムはただ黙って、少年の言葉を待った。

すると、少し言いにくそうに目をそらしながらイクスは訊ねた。

 

「父は………アセムさんから見てどんな人ですか?」

 

「紅君からも同じ質問をされたよ」

 

「兄からもですか?」

 

「まぁね。さて、その質問だけど、君にはこう答えておこう。彼はね、おっぱい大好きおっぱいドラゴンであると!」

 

「いや、そうじゃなくて!? というか、あの人、今も昔も変わってないじゃないですか!」

 

アセムは腕を組み、うんうんと頷く。

 

「いやー流石だよね。三十年経っても、おっぱいドラゴンであり続けるその姿。ファンとして、これ以上ない喜びだよ」

 

「ファンなの!?」

 

「そーだよ。グッズだってコンプしてるもんね」

 

「威張って言うことかですか!」

 

「おっぱいドラゴンの歌だってフルで歌えるし」

 

「やめて!? その歌を子守り歌代わりに聞かされた俺のこと考えてくれます!?」

 

「最高じゃん」

 

「どこが!?」

 

「よーし、それじゃあ、おっぱいドラゴンについて長々と語ってあげよう」

 

「嫌がらせじゃないですか!」

 

恥ずかしそうな表情から一転、ツッコミを繰り広げるイクス。

どうやら、ツッコミの才能を継いだのは漸だけではないらしい。

 

アセムは言う。

 

「なんだ言いたいこと言えるじゃん。その調子で本当に聞きたいことを聞いてきなよ」

 

「………っ。もしかして、今のやり取りはそのために?」

 

「いんや。おっぱいドラゴンについて語りたいなら全然語るけど」

 

「全く、この人は!」

 

「アハハ♪」

 

カラカラと笑うアセムにイクスは盛大にため息を吐いた。

しかし、ツッコミに頭を持っていかれたせいか、先程までの緊張はなくなっていて、

 

「色々、聞いてみたいことはありますが………一つだけ。あの人は家族を大事にしていますか?」

 

未来での一誠はかなり多忙のようで、家族との時間を中々持てないでいるらしい。

それ故にイクスを含めた幼い弟妹達は一誠を苦手と思う子供もいるようだ。

 

(もしかすると、『家族よりも仕事!』な~んてイメージがついちゃってるのかもね。まぁ、そんなことは――――)

 

アセムはフッと微笑む。

 

「彼は言うんだよ。守りたいものは何が何でも守り抜くって。その守りたいものの中には当然、君達や、君達のお母さんも含まれる」

 

アセムは続ける。

 

「彼はね、失う恐怖を知っているさ。だから、失わないように、後悔しないために、常に全力を尽くしているんだよ。今も、多分、未来の世界でも変わっていないんじゃないかな」

 

だから、とアセムはイクスに言う。

 

「今は中々気付けないかもしれないけどね。君の心配は無用さ。もしだ。ここで僕が君を傷つければ、彼は時空を超えて僕を殺しに来るだろうね」

 

カラカラと笑うアセムにイクスは目元をひくつかせる。

 

「そんなことを笑いながら言われても、反応に困りますよ」

 

「そう? ああ、それと僕から君にもう一つだけ言っておこう」

 

「?」

 

アセムの言葉にイクスは首を傾げる。

アセムは言う。

 

「大切な家族を傷つけられて、許せないのは分かるよ。それで突っ走ってしまうのもね。けどね、背負いすぎないことだ。君は強い。だけど、一人で出来ることには限界がある」

 

アセムは結界の外にいるアルフィリア達を見る。

 

「君には、君を心配してくれる人達がいる。助けてくれる人達がいる。それを蔑ろにしてしまえば、結果的に君が守りたい人達を傷つけることになる。これは覚えておくと良い」

 

イクスはアセムにつられるように、兄妹達に視線を向ける。

 

自分が皆の分まで戦えば良いと思っていた。

自分が全部守るんだと思っていたし、実際そうしてきた。

姉に注意されても、兄に止められても。

 

だが、アセムの言葉で思い出した。

戦いから帰った時に、家族が見せる安堵の表情を。

ケガをした時は泣かれたことを。

もし、取り返しのつかない傷を負っていれば――――

 

「君が本当に皆を守りたいのなら、周りをよく見ることだ」

 

「………はい」

 

アセムはイクスの肩をポンポンと叩くと、フードを深く被り、自嘲するように呟いた。

 

「………君も僕みたいにならないようにね」

 

「アセムさん?」

 

「なんでもないよ♪」

 

 

ちなみに、

 

 

「結構前になるけど、君のお父さんは一人で無茶をやって、アリスちゃんに泣かれた上に、グーパンチされて吹き飛ばされたことがあるから、同じ轍は踏まないようにね♪」

 

白雷のアリスパンチの恐ろしさを知るイクスは何度も頷くのだった。

 

 

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