ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その12

 

 

アセムとイクスの手合わせが終わり、二人は他の兄妹のところに戻った。

戻ったイクスに漸がタオルを手渡した。

 

「お疲れ。想像以上だったな」

 

漸の視線は隣であくびをしているアセムに向けられる。

汗だくで消耗しているイクスに対して、余裕そのもの。

グレモリー家最強の剣士と称されるイクスでさえ、アセムの力を引き出すには及ばなかったようだ。

 

イクスはタオルで汗を拭う。

 

「漸兄さんも戦ってみると良いよ。あまりにも当たらないから途中で嫌になる」

 

「それを聞いてヤル気が起きるかよ。って、嫌になった割には良い顔してるな?」

 

「そうかな? まぁ、思いっきり体を動かせたし、他にも色々………ね?」

 

「うん?」

 

頬をかきながら照れくさそうにしている弟の表情に、疑問符を浮かべる漸。

その横ではアルフィリアがアセムに耳打ちしていて、

 

「ありがとね。イクス君にアドバイスしてくれて」

 

「んー、なんのことだい?」

 

「またまた、誤魔化しちゃって。お姉ちゃんだから、分かっちゃうんだよね」

 

アルフィリアは自身の唇を指差した。

 

(ありゃ、不可視の結界にしなかったのは失敗だったかな?)

 

どうやら、読唇術が使えるらしい。

アセムとイクスの唇の動きを読んで、会話の内容を理解していたようだ。

 

アセムは唇を尖らせる。

 

「それ、お姉ちゃんだからとか関係ないんじゃない?」

 

「そんなことないもん。遠くにいても、皆の言ってることが分かるように修得したんだもの。愛のなせる技ってところかしら」

 

「あ、愛なのかなぁ?」

 

シスコンとブラコンが行くところまで行くと読唇術を修得できるらしい。

この様子だと他の技も獲得していそうだが、流石のアセムもこの先を聞くのは怖いので止めておいた。

 

「イクス君は汗だくだろうから、お風呂でも入ってきなよ。作ってあるから」

 

「助かります。汗を流したかったところで――――ッ!」

 

イクスはそこで言葉を詰まらせた。

それはある視線に気付いたから。

キラリと目を光らせる姉、アルフィリアの視線を――――。

 

先程まで流していた汗とは別の汗が流れ始める。

イクスは目元をひきつらせながら、後ずさった。

 

「ア、アルフィ姉さん? なんで、こっち見てくるの?」

 

イクスが問うと、アルフィリアはニッコリと満面の笑顔で返す。

 

「えへへ♪ お風呂入るなら、お姉ちゃんも一緒に入ろうかなって。久し振りに背中流してあげる♪」

 

「ひ、久し振りって何年も前のことだよね?」

 

「大丈夫。たったの数年なんて、悪魔からすれば一瞬の年月だから」

 

「そうじゃなくてね!? この歳で姉とお風呂入るとか流石に嫌だよ!」

 

「えっ………嫌なの?」

 

「当たり前だろ!」

 

言いきるイクス。

思春期を迎えた少年が姉と風呂に入るのは恥ずかしい。

それは至極当然の反応だろう。

 

しかし、行き過ぎた弟愛を持つアルフィリア(超ブラコン娘)に世間一般的な話は通用しない。

弟にハッキリと拒絶されたアルフィリアは――――ポロポロと大粒の涙を溢し始めた。

 

「うぇぇぇぇぇぇぇ! イクス君がグレたぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

滝のような涙が流れ、アルフィリアの足元に大きな水溜まりを作り出す。

これにはイクスも困惑して、

 

「ね、姉さん!? そんなに泣くこと!?」

 

「だって、だってぇ!」

 

「あーあー、イクスがアルフィ姉泣かせたー」

 

「ホント、イクスってば意地悪なんだから」

 

「漸兄さん!? アイリ姉さん!?」

 

「イクス兄さん、最低です」

 

「お姉ちゃんを泣かせたらダメにゃん」

 

「ちょ、なにこの流れ!? 俺が悪いの!? 俺が悪い感じなの!?」

 

兄、姉、妹二人からのブーイング。

完全なる四面楚歌だ。

 

漸の場合は都度、イクスに振り回されているので、その意趣返しのつもりなのだ。

アイリは先日のULの一件で宣告した通り、イクスが先走ろうとした罰のつもりで。

白雪、黒茨は兄と姉に同調して。

 

「真兄さん、助けてよ!」

 

「あー………いや、うん。が、頑張れ?」

 

「弟を見捨てた!? 少しは援護してくれても良いじゃないか!」

 

「無茶言うな」

 

アルフィリアとアイリが組んだ時点で勝ち目などないのだ。

アイリがイクスの肩に手を置く。

 

「汗臭いし、アルフィ姉とお風呂行ってきなさい」

 

「………はい」

 

ズーンという音が聞こえてきそうなイクスと、先程とは一転して鼻唄まで歌っているアルフィリアの背中を見送る兄妹達だった。

 

 

 

 

それから少しして。

 

「~♪」

 

「うっ、うぅ………」

 

湯気を立ち上らせて帰ってきた二人は対照的だった。

アルフィリアは牛乳片手にご機嫌な様子で、イクスは顔真っ赤にして。

 

アルフィリアは腰に手を当て、瓶の中の牛乳を一気に飲み干す。

 

「ぷはー! お風呂あがりの牛乳は最高ね! イクス君も可愛かったし、今日はこれで終わりで良いかも」

 

「とんでもない目にあったよ………」

 

イクスの呟きにアセムが訊ねる。

 

「そんなに嫌かい? つい最近まで一緒に入ってたんだから、彼女の裸は見慣れてるんじゃないの?」

 

「何年も前の話ですよ? 今回はそ、その………久し振りに見たというか」

 

「あー、アルフィちゃん美人だし、おっぱいも大きいからね。お姉さんとはいえ、意識しちゃうと」

 

「ぶほっ! た、確かにそうですけど………って、そうじゃなくて!」

 

「お姉ちゃんは全然気にしません!」

 

「姉さんは黙ってて!? というか、こっちの歳を考えて!?」

 

「弟は何歳になっても可愛い! 以上!」

 

「そうじゃなくて! って、抱きつかないでくれる!?」

 

などとイクスがアルフィリアに翻弄されていると、空間に魔方陣が展開する。

転移魔方陣だ。

転移の光が弾けると共に現れたのは複数の男女。

そのうちの一人は紅だった。

 

「遅くなりました………ってどうしたんだ、イクス?」

 

涙目の弟の様子に首を傾げる紅。

しかし、湯気を立てるイクスとアルフィリア、更にご機嫌な姉の表情を見て状況を理解した。

 

「あ、うん。言わなくていいかな」

 

ここで下手に掘ると弟の精神が死ぬ他、自分も巻き込まれかねない。

紅の判断は早く、そして正しかった。

 

紅はコホンと軽く咳払いしてアセムに言う。

 

「少し時間がかかりましたが、無事に残りの兄妹と合流できました。紹介します。まずこちらが家の長男であるレオスです」

 

紅に紹介されたレオスと呼ばれた男性。

歳は二十代半ばといったところか。

後ろで雑に括られた茶髪、翡翠色の瞳、長身痩躯。

少しよれたシャツに黒のスラックス。

なぜか着けているアイマスク。

お世辞にも身なりが整っているとは言えない出で立ちだ。

本人も半分眠たげで今も盛大なあくびをかいていた。

 

アセムが顎に手をやって唸る。

 

「ちょっと待って。今当てるから。誰との子供なんだろ………」

 

「なに悩んでるんだか。クイズじゃないんだってば」

 

「漸君、ここまで来たら当てたいのが人情ってものだよ?」

 

「レオス兄はアリス母さんとの間の子だよ」

 

「当てる前に言わないでよ。って、アリスちゃんがお母さんなのね」

 

言われてみれば面影はあるが、今まで出会った子供達と比べると、どちらかと言えば父親似だ。

ただ、これまで一誠のことを見続けていたアセムでも、ここまで覇気のない姿は見たことはないが。

目など死んだ魚のようだ。

 

「レオス兄さん、流石にだらしないですよ?」

 

紅が注意するが、レオスは詫びる様子もなく返す。

 

「くぁぁぁぁ………そう言うなって、弟よ。こっちに来る前に散々働いた後なんだぜ? 一睡もしてないんだぜ? もーちっと、兄ちゃんを労ってくれ………て………も………」

 

「兄さん?」

 

「Zzzzzzzz………」

 

「兄さん!? 立ったまま寝ないで!?」

 

「んあっ」

 

紅のツッコミにレオスの鼻桃燈が割れる。

レオスは眠たげな目を擦り、フラフラと辺りを見渡した。

アセムに、弟妹である黒茨、白雪、漸、真、アイリ、イクスと順に追っていく。

そして、最後にアルフィリアに視線が向いた瞬間――――欠伸で涙を浮かばせていた目が大きく見開かれた。

 

 

「アァァァァァルゥゥゥゥゥフィィィィィィッ!」

 

「やっほー! 兄さんも無事に――――」

 

アルフィリアが言い終わる前に、レオスの手が彼女のこめかみを掴んだ。

メリメリメリ………と指が食い込み、アルフィリアが悲鳴をあげた。

 

「イタタタタタタタッ!? えっ!? なんで!?」

 

抗議するアルフィリアに、怒りのマークを額に浮かべたレオスが言う。

 

「『なんで!?』じゃねぇだろぉぉッ!? このバカちんが! オメーがこっちに来る前に散々暴れたその後始末、誰がやったと思ってんだ!?」

 

「だってだって! 皆が心配だったんだもん! お姉ちゃんとしては何を優先しても追いかけるべきじゃない!?」

 

「ダァァァァホゥ!? 加減もせずにバカスカ撃つから、その影響で転移の設定がズレてたじゃん! 危ないから止められてたじゃん! それを無理矢理実行しやがって! どんだけ心配かけたと思ってんの!?」

 

「えっ、兄さん心配してくれたんだ? ちょっとキュンってなっちゃう」

 

「反省してないな!?」

 

「イタタタタタタタ!? してるしてる! 海底よりも深く反省してます!」

 

「そういう例えする奴って大抵反省してねーんだよ。大体なぁ、そのシスコンブラコンもうちっとなんとかならんのか? 心配するのは良いが、あいつらのことになると考えなしに行動するのマジでやめてくんない?」

 

「兄さん、それは無理な相談だよ。だって、お姉ちゃんだもん。キラーン」

 

「よーし、このまま頭潰しちゃおっかな☆」

 

「妹に対して言う言葉じゃないよ!?」

 

「つーか、よくよく考えたら君。元々、留守番の予定だったよね?」

 

「な、なんのことかなぁ?」

 

大量の冷や汗を流し、目を泳がせるアルフィリア。

 

その様子に漸達は「あー」と何か思い出したようだ。

実は今回、アルフィリアはこの過去の世界に来る予定はなかったのだ。

彼女はアスト・アーデ側に現れたULを対処した後は未来の世界で待機するはずだった。

それを強引に予定変更して、弟妹を追いかけてきたというのが事の真相だった。

 

ちなみに一足先に転移したイクス以外は背景を知っているし、姉の行動は読めていたので特に驚きはなかった。

 

それはさておき、

 

「そもそも、おまえが留守番って言われてたのは色々やらかすからじゃん! どうせ、もうやらかしてんだろ!?」

 

「酷い! この人、妹をバーサーカーか何かと思ってるのかな!? そんなに暴れてないよ!?」

 

「もう手遅れだよ。姉さん、合流早々に盛大にやってくれたから」

 

「漸君!? お姉ちゃんを売ったね!?」

 

「ほら見たことか! 一体、何をやったんだ!?」

 

「真夜中の空を真っ赤に染めました」

 

「何しとんのじゃ、おまえはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「イタタタタタタタ!? 割れちゃう!? ホントに頭ぺしゃんこになっちゃうッ!? 助けてママ!」

 

ぎゃーぎゃーと騒ぐ兄姉を前に紅は苦笑する。

 

「なんかすいません」

 

「アハハ♪ 全然構わないよ。この時代でも似たような光景は見るしねぇ。しっかし、あのアルフィちゃんに敵わない人っていることが意外だよ」

 

「アルフィ姉さんが敵わない数少ない人の一人ですからね。まぁ、兄さんは兄さんで、ある意味問題児なんでしょうけど」

 

「ふぅん?」

 

アセムが疑問符を浮かべている中、アルフィリアが涙目で叫んでいた。

 

「うぇぇぇぇぇん! レオス兄が苛めるぅ!」

 

「やっかましいわ! 優しい優しいお兄ちゃんから愚妹に鉄拳制裁のプレゼントじゃい!」

 

握った拳で相手の側頭部を挟みねじり混む――――通称『グリグリ攻撃』が天墜の魔女を撃沈した。

 

 

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