ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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アセム君のシリアスパート その13

 

 

「きゅぅぅ………」

 

涙目で床に伏せるアルフィリア。

兄より受けたお仕置きによって、彼女の頭は赤くなり、煙が出ている。

『天墜の魔女』として畏れられる彼女も、兄には敵わず、完全にノックアウトされてしまっていた。

といっても、全ては彼女が招いたこと。

自業自得とも言えよう。

 

当然、姉を助けようなどと殊勝な心を持った人物は弟妹達の中にはいない。

 

「流石はレオス兄さんだな」

 

「やっぱ、アルフィ姉に勝てるのは兄さんだけだよな」

 

「もう少し早く来てくれれば………」

 

「来ても結果は変わらないぞ? イクスはアルフィ姉とお風呂の刑なのは確定だからな」

 

「なんでさ!?」

 

「どのみち、アイリ姉さんから命令されるから」

 

「ぐっ………」

 

ズーンと床に手をつくイクスだった。

 

一方、アルフィリアをしめてスッキリしたのか、レオスはというと、

 

「ぐごごごごご………ずぴー………」

 

どこから出したのか枕に頭を預け、爆睡していた。

アイマスクに加え耳栓まで装着したフル装備状態で。

初対面のアセムの前、しかも挨拶すらしていない。

 

紅がこめかみを抑えて言う。

 

「ホントすいません」

 

「僕は構わないけどねぇ。少し話してみたかったけど、しょうがない。しっかし、どうやら君は苦労人体質のようだね?」

 

アセムの言葉に紅は苦笑する。

 

「上がだらしないと下がしっかりするんだよ………ぐごごごごご………」

 

「いや、なんで君が答えてるのさ? しかも寝てるし。というか、上にいる君がそんなこと言っちゃうのね」

 

漸がジト目で言う。

 

「兄さんの座右の銘は『働いたら負け』だからな。尊敬する人はファルビウム様だって良く言ってるし」

 

現四大魔王のファルビウム・アスモデウス。

冥界最強の戦術・戦略家として知られる魔王なのだが、その実、『働いたら負け』が口癖の男である。

そんな魔王を尊敬し、座右の銘も同じときた。

とてつもない怠け者である。

 

彼の母であるアリスもめんどくさがりな性格だが、彼の性格はそれを超えているようだ。

彼は彼で問題児というのはこういうことらしい。

 

アセムが言う。

 

「君達のお父さん達は何も言わないのかい? 彼らのことだから何かしらツッコんでそうだけど」

 

「以前は凄かったんですけどね………。眷属を得てからはこんなになっちゃって」

 

「えっ? レオス君『王』なの?」

 

「そうなんです。こんな感じでも『王』で………というか楽をするために『王』を目指して頑張ったみたいで。ファルビウム様を倣って、眷属集めに全力出してその後は………」

 

紅の視線が床で爆睡するレオスに向けられる。

呆れが籠った視線など感じることなく、大きな鼻提灯を作っていた。

 

超怠け者の長男。

超シスコンブラコン娘の長女。

赤龍帝一家の将来は不安だ。

弟妹達がしっかりしているのが不幸中の幸いだろう。

 

紅がやれやれと苦笑していると、少女が話しかけてきた。

 

「お兄様。そろそろ私達にも紹介していただけますでしょうか?」

 

「ああ、ごめんごめん。君達のことも紹介しないとね。アセムさん、彼女も僕の妹です」

 

紅の紹介を受けて金髪の少女がスカートの裾を両手で軽く持ち上げながら挨拶する。

 

「ごきげんよう、神アセム様。わたくし、ロベルティナ・ヒョウドウといいます。父である兵藤一誠と母であるレイヴェル・ヒョウドウの間に生まれた娘です」

 

「ヒョウドウ? レイヴェルちゃん、兵藤姓になったの?」

 

「はい。母はフェニックス家を出た者ですから、フェニックスを名乗るわけにはいきません。そのため、お父様が冥界で使われている苗字のひとつをいただいたのです。ちなみにイクス君とは同い年です」

 

「苗字のひとつ? いくつか名前があるということかい?」

 

「たまに自分の呼ばれ方が分からなくなると口にしています」

 

クスリと小さく笑いながらロベルティナはそう返した。

未来の赤龍帝には二つ名含めて呼び名が色々とあるようだ。

今度はヴァルキリーの鎧を着た少女が前に出る。

特徴的な銀髪を三つ編みに纏めており、整った顔立ちも母譲りなのだろう。

少女の母親は聞くまでもなく分かった。

 

「私はヘルムヴィーゲ。赤龍帝の兵藤一誠と元ヴァルキリーのロスヴァイセの娘です。漸君と真君とは同い年になります」

 

「君もひと目で分かったよ。その鎧の形は赤龍帝の鎧を参考にしているのかな?」

 

「はい。といっても、倍加の力はありませんけどね。あくまで形だけです」

 

未来の技術なら何かしらのギミックは組み込めそうだが、制約があるのだろうか。

それともヘルムヴィーゲとの相性が悪いか、扱う技量を考慮してか。

とにもかくにも赤龍帝の鎧のような能力はないらしい。

 

ヘルムヴィーゲが言う。

 

「戦闘の出来る兄弟として、魔法の使い手もいるんですが……そちらは未来に残って今回の時間転移の調整をしてくれています」

 

「あの子、聖王剣の使い手に選ばれたというのに魔法使いの道を行くんですもの。非常に勿体ないわ。才能の無駄使いよ」

 

ロベルティナの不満げな言葉に、ヘルムヴィーゲは肩をすくめる。

 

「あの子にはあの子の生き方があります。それに魔法の才能だってあるのですから、才能の無駄使いということもないでしょう。ただ、コールブランドからの選択には逆らえないでしょうから、将来は魔法剣士にでもなるのではないのでしょうか」

 

「あの子、イクス君よりも自由気ままですものね。もう、お父様やお母様方の評判を落としてはいけません! イクス君もいいですね?」

 

ぷんぷんと怒りながらイクスに指を突きつけるロベルティナ。

イクスはまた始まったと言わんばかりにうんざりそうな表情を浮かべていた。

 

「ルーティは一言うるさいって。それに俺よりも自由な人がそこにいると思うんだけど?」

 

イクスが視線を向けた先には未だ爆睡中の兄レオス。

 

「レオスお兄様もいい加減起きてくださいまし! というか、誇り高き赤龍帝一族の長兄が床で寝るとはどういうことですの!?」

 

ロベルティナはイクスの肩を叩いて起こそうとするが、当の長兄は変わらずイビキをかいている。

 

ヘルムヴィーゲが首を横に振って息を吐く。

 

「無駄ですよ。レオス兄さんは逆立ちしながら眠れる人ですから。ちょっとやそっと揺らすぐらいでは起きません」

 

「まったくもう! 真剣な時は素敵な方ですのに、なんで普段はこうもだらしないのかしら………」

 

「そこは遺伝もあるでしょうし、尊敬する方があの方ですからね」

 

苦笑するヘルムヴィーゲ。

 

アセムが訊ねる。

 

「ちなみに、さっき話に出てきた子はルフェイちゃんとの間の子供だと思うけど………一体、何人奥さんがいるのさ?」

 

「たくさんです。この場にはいませんが、レイナーレお母さんやサラお母さん、ニーナお母さんにリーシャお母さんとの間の子供もいますし」

 

「わお、ホントに冥界の少子化解決しそうじゃん」

 

かつて、アザゼル達が冥界の少子化問題を託そうとしていたが、本当に解決するんじゃないだろうか。

 

「未だに母さん達とイチャイチャしてるからな。今後も弟妹は増えるだろうな」

 

近くで聞いていた漸からの追加情報だった。

冥界の未来は間違いなく明るいものになりそうだ。

 

アセムがうんうんと一人頷いている時だった。

ヘルムヴィーゲの足元に魔方陣が突如展開する。

魔方陣の紋様が目まぐるしく動きだし、それは不穏な雰囲気を感じさせた。

 

ヘルムヴィーゲが険しい表情で言う。

 

「京都方面で『UL』の反応を捉えました」

 

「「「「―――――っ」」」」

 

彼女の報告に他の子供達の空気が変わる。

先程までの緩い雰囲気から一変、彼らの意識は既に戦闘態勢に入っているようだった。

 

紅がヘルムヴィーゲに問う。

 

「数は分かるか?」

 

「正確な数は分かりませんが、それなりかと。複数の地点に反応を観測しました」

 

「こちらの戦力を分断させるのが狙いか? それとも………どちらにしても向かうしかないか。よし、それじゃあ――――」

 

紅が弟妹達に指示を出そうとした、その時――――。

 

 

「行くのは俺とヘルムヴィーゲ。残りは待機な」

 

 

後ろから聞こえた言葉。

振り向けば、いつの間に目が覚めたのか、レオスがアイマスクの下から目をこちらに向けていた。

上半身を起こし、「もうちっと寝てたかったのによ」と文句を言いながら背伸びをするレオス。

 

そんな彼にイクスが言う。

 

「俺も行くよ」

 

「ダメー」

 

「なんで!? あんな奴ら、俺が――――いたっ」

 

食ってかかる弟の額にレオスはデコピンをくらわせた。

ひたいを擦るイクスにレオスは言う。

 

「落ち着けっての。なにも意地悪で言ってるんじゃねーよ。ヘルムヴィーゲ、ロキの気配はあるか?」

 

兄の問いにヘルムヴィーゲは魔方陣を更に展開し、気配を探る。

しかし、ヘルムヴィーゲは首を横に振った。

ロキの気配は確認できなかったようだ。

 

「だろうな。あの姑息な神様のこった。どーせ、裏でコソコソやってるだろうよ」

 

紅がレオスに問う。

 

「ロキが仕掛けてくると。僕達が残るのは奴が動いた時に対処するためですか?」

 

「さっすが、デキる自慢の弟。そういうこと。いつでも出れるように準備はしておいてくれ」

 

レオスは紅にそう言うと、イクスの頭に手を乗せる。

 

「俺が戦闘中にあいつが仕掛けてきたら、イクス。その時は頼むぜ?」

 

「っ! はい!」

 

レオスに頭をポンポンと撫でなれ、イクスは力強く返した。

弟の返事に一つ頷くと、レオスは腰を捻ってストレッチを始めた。

 

「さぁて、めんどくせーけど片付けてくるかねぇ。ヘルムヴィーゲ、頼むわ」

 

「もう準備は出来ていますよ」

 

「オケー。で? アセム様はどうするよ?」

 

話を振られたアセムは笑みを浮かべて言う。

 

「そりゃあ行くよ。君の戦いっぷりも見てみたいしね」

 

「そうか? あーんまり面白いもんじゃあねーぞ? ま、別に良いけど」

 

「そうこなくっちゃね♪」

 

などと言い、ヘルムヴィーゲの展開した魔方陣に乗るレオスとアセム。

今回はこの三人で向かい、レオスとヘルムヴィーゲが出現したULに対処することになる。

 

アセムは紅に訊ねる。

 

「それにしても、レオス君達二人で行くことに反対しないんだね?」

 

その問いに紅はどこか自慢げな笑みを見せる。

 

「ええ。普段はダラダラしてますけど、ここぞと言う時に頼りになりますからね。アセムさんもきっと驚きますよ。僕達の兄さん――――『閃神』は凄いんです」

 

「それは楽しみだ」

 

紅のお墨付きだ。

レオスの実力は相当なものなのだろう。

 

魔方陣の光が強くなり、転移する直前、レオスがアルフィリアに言った。

 

「あ、言い忘れたけどロキ達が動いても、アルフィは街中での戦闘禁止ね」

 

「酷いわ、兄さん! なんでよ!?」

 

「やらかすからに決まってるだろぉっ!?」

 

「「「「それは納得」」」」

 

「皆、酷くない!?」

 

アルフィリアの抗議の声と共に転移魔方陣の光が弾けた――――。

 

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