私の名前はラベンダー   作:エレナマズ

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第十話 ダージリンと島田愛里寿

 観戦会場は割れんばかりの歓声に包まれていた。

 上品なお嬢様が多い聖グロリアーナでは珍しい光景だが、彼女達が興奮するのも無理はない。愛里寿は一対五という不利な状況を難なく覆してみせたのだ。その圧倒的な個の力強さは、彼女達の心を大いに揺さぶったようだ。

 

「私達と一緒だったときとはまるで動きが違う。あれが愛里寿の本気なんだな」

「マジですごいですわ。島田流はあんな神業みたいな動きができるお方ばかりなんですの?」

「愛里寿ちゃんだから完璧な動きができるんだよ。私は島田流の人と戦ったことがあるけど、あそこまで自由自在に戦車を操れる人はいなかったもん」

 

 みほは中学時代に島田流を学んでいる学校と試合をしたことがある。西住流では邪道とされるような方法で奇策を仕掛けてきたのだが、みほは労せずそれを打ち破った。西住流の王道の前では、多少の小細工など何の支障にもならない。

 愛里寿の持っている技量はあのとき戦った相手とは段違いだ。あの高い個の力が島田流の真骨頂だとすると、臨機応変に策を用いるのは単なるおまけにすぎないらしい。

 

「数の上ではダージリン様達がまだ有利だけど、愛里寿ちゃんには勝てないかもしれない」

「そんなことはありませんわ! ダージリン様は愛里寿さんに一矢報いてくれるはずですわ」

「一矢報いるだけじゃだめだろ。それだとダージリン様が負けることになるぞ」

「ダージリン様が負けるなんて嫌ですわ。ダージリン様ー! がんばってくださいましー!」

 

 ローズヒップは大型ビジョンに向かって大きな声援を送っている。

 ダージリンのマチルダ隊は依然として森を進軍中。このまま進んでいくと、森を抜けて小高い丘が並ぶ丘陵エリアに出る。

 大型ビジョンに大きく映し出されているダンデライオンのクルセイダーは、その丘陵エリアへと向かっていた。

 

 

 

 

『ダージリンさん、もうすぐ丘陵エリアに到着します。合流準備は整っていますか?』

「こちらもまもなく合流地点に到達するわ。さすがはクルセイダー隊の隊長ね。予定時間ぴったりに合わせるその手腕、お見事ですわ」

『そ、そんなにほめても無駄ですよ。あたしはダージリンさんのことなんて、なんとも思ってないですからね!』

「何をそんなに怒っていますの?」

 

 ダンデライオンが突然語気を荒げたことにダージリンは首をかしげている。

 

『なんでもありません。それより、あとはお願いしますよ。クルセイダーはリミッターを解除しちゃったので、長くは持ちませんからね』

「あなたのがんばりに報いるためにも、最善を尽くしますわ」

 

 ダンデライオンとの通信を終えたダージリンは、ティーカップ片手にキューポラから身を乗り出した。

 五輌のマチルダⅡはもうすぐ小高い丘を登り切る。登ってさえしまえば、あとは傾斜を滑るように下るだけだ。

 

 丘の頂上にたどり着いたダージリンの目に映ったのは、クルセイダーを追跡しながら丘のふもとを走るクロムウェルの姿だった。

 

「『じっくり考えろ。しかし行動するときが来たなら、考えるのをやめて、進め』。全車、目標に向かって全速前進。チャンスはこの一度きり、必ず仕留めなさい」

 

 フランスの皇帝、ナポレオンの格言のあとにダージリンは突撃命令を下した。

 ダージリンの命令を受けたマチルダ隊はいっせいに丘を下り始める。足が遅いマチルダⅡだが、丘の傾斜を利用したことで普段よりも格段にスピードが上がっていた。陣形はダージリンの隊長車を先頭にして傘型に広がる楔形陣だ。

 

 勢いよく丘を下るマチルダ隊はクロムウェルに向かって砲撃を開始。クルセイダー隊も行っていたお得意の行進間射撃である。

 高地から奇襲を仕掛け、クロムウェルの装甲が薄い箇所である上面装甲を狙う。どうやら、これがダージリンの立てた策のようだ。卑怯な奇襲に見せないために、時間を計算して偶然鉢合わせたような演出まで行うなかなかの策士ぶりであった。

 

「アッサム、しっかり狙いなさい。この作戦の成否は、あなた達砲手の腕にかかっていますわよ」

「わかっています。囮になってくれたタンポポ達の苦労を無駄にはできませんわ」

 

 この試合に参加しているマチルダ隊はチーム内でも上位の実力を持っており、砲手も命中率が高い生徒がそろっている。行進間射撃で動く目標に命中させるのは難しいが、撃破できる可能性はゼロではない。

 

 クロムウェルはブレーキと転回を巧みに使って砲撃をかわしていくが、クルセイダーを追跡していた最中に突然の奇襲だ。愛里寿もすべての砲撃をかわすことはできず、ついにクロムウェルがこの試合で初めて被弾した。

 それでも、クロムウェルから白旗は上がらない。クロムウェルが被弾した箇所は、装甲が厚い正面装甲だったのである。

 愛里寿は避けきれないと判断した砲撃を正面で受け止めたのだ。

 

「攻撃を続けなさい。相手に考える時間を与えてはダメよ」

 

 丘を下り切ったマチルダ隊は追撃の手をゆるめず、積極的に接近戦を仕掛けていく。 

 火力の低いマチルダⅡの2ポンド砲でも、近距離で命中させればクロムウェルを撃破できる。初めての被弾で相手が動揺しているであろう今が好機であった。

 

 普通の対戦相手であればこの時点で勝負ありだったが、島田愛里寿はそうやすやすと勝てる相手ではない。

 クロムウェルは接近してくるマチルダ隊の砲撃をかわしながら砲塔を回転させ、的確に反撃。装甲が厚いマチルダⅡとはいえ、至近距離で側面や背面を撃たれては防ぎようがなく、次々と撃破されて白旗が上がっていく。

 わずか数分で、マチルダⅡはダージリンの隊長車のみになってしまい、形成は一気に逆転した。

 

「おやりになりますわね。でも、ここまでですわ」

 

 僚車がすべて撃破されてもダージリンは涼しげな顔をしており、ティーカップもしっかりと握られている。

 その余裕を裏付けるように、クロムウェルの背後から一輌の戦車が猛スピードで迫っていた。ダンデライオンのクルセイダーMK.Ⅱである。

 

『ダージリンさん、助けにきました!』   

「タンポポ、クロムウェルの動きを封じてちょうだい。やり方はあなたに任せるわ」

『えぇー! そんなこと丸投げされても困りますよ』

「丸投げとは人聞きが悪いですわね。あなたを信じているから、任せるのよ」

『……こうなったら一か八かです。クルセイダーをクロムウェルに体当たりさせます。みなさん、衝撃に備えてください』

 

 クルセイダーMK.Ⅱは車体を横滑りさせてクロムウェルに体当たりを敢行。

 背後から急接近されたことと、先ほどまでマチルダ隊の対応に追われていたことで、愛里寿の反応は一歩遅れた。機敏な動きを見せていたクロムウェルは、最高速度のクルセイダーの体当たりを側面に受け、一瞬動きを止めてしまう。

 

 そのわずかな隙をダージリンは見逃さなかった。

 

「『ダービーはつねに強い馬が勝つ。だが、一番強い馬が勝つとは限らない』。愛里寿さん、この勝負は私達の勝ちですわ。アッサム、側面の装甲が薄い部分を狙いなさい」 

 

 英国のことわざと共にダージリンは攻撃命令を下した。動きが止まったクロムウェルの側面をアッサムは正確に砲撃し、装甲の薄い部分を撃たれたクロムウェルからは白旗が上がる。

 

 愛里寿の島田流を披露するという名目で始まったこの試合は、ダージリンとダンデライオンの勝利という形で決着がついたのであった。

 

 

 

 

「やりましたわ! ダージリン様が勝ちましたわー!」

「うわっ、急に抱きつくな。びっくりしたじゃないか」

 

 大喜びでルクリリにハグするローズヒップ。喜びを表すのに抱擁を選ぶあたりが感情表現豊かな彼女らしい。

 

「抱きつくぐらいは許してほしいですわ。本当ならキスしたいほどうれしいのでございます」

「それだけは絶対にやめろ。なんで私のファーストキスをお前に捧げなくちゃいけないんだ」

「安心していいですわよ。わたくしもファーストキスでございますわ」

「そういう問題じゃない!」

 

 ローズヒップとルクリリがいつものように騒ぎ出したが、みほの視線は大型ビジョンに釘付けになっていた。

 大型ビジョンには愛里寿の表情が映し出されている。試合に負けた愛里寿の表情に変化はなく、感情が乱れているようには見えない。

 しかし、みほにはそんな愛里寿の表情が普段と少し違うように思えた。この一週間、誰よりも愛里寿のそばにいたみほだからこそ、愛里寿の表情の微妙な変化にも気づけたのだ。

 

「愛里寿ちゃん……」

 

 ──愛里寿ちゃんは私とは違う。

 ──負けただけで落ちこむわけがない。

 ──必要以上に心配するのはお門違いだ。

 

 みほは自分にそう言い聞かせるが、胸の中のもやもやは消えてくれなかった。

 

 

 

 試合終了後、観戦会場はお茶会の会場へと早変わりした。

 今日は愛里寿の体験入学最終日。すべての生徒が一緒にお茶会に参加し、愛里寿が最後にあいさつをする形で体験入学を締めくくる予定になっている。

 

 今日のお茶会は試合に出場していた生徒がゲスト役、それ以外の生徒がホスト役であった。

 みほ達はティーフーズを用意するチームに配属され、会場近くに特設された調理場で懸命にサンドイッチを作っている。今日は人数が多いので、いつもより多くティーフーズを用意しなくてはならないのだ。

 

 みほがちらりと会場に目を向けると、愛里寿は多くの生徒に囲まれていた。紅茶を用意するチームに配属された生徒は比較的早く準備を終えたようで、すでにお茶会に参加していたのである。

 それを見たみほは早く愛里寿と会いたい思いを抑え、一心不乱にサンドイッチの具材であるキュウリを切り続けた。

 

「ラベンダーさん、キュウリを切るのは少し待っていただけませんか? こちらはまだ準備が整っていなくて……」

「あ、ごめんね」

 

 みほの隣でパンにキュウリを挟んでいたシッキムから、申し訳なさそうに声がかかる。みほのスピードにシッキムはまったくついていけず、キュウリが山のようになっていた。 

 

「シッキムさんはローズヒップと持ち場を交代したほうがいいみたいですわ。ローズヒップ、頼んだわよ」

「了解でございますわ。シッキムさん、選手交代ですわ」

 

 ルクリリとスコーンを作っていたローズヒップがみほ達の元へやってくると、シッキムはみほに向かって頭を下げた。

 

「ラベンダーさん、ごめんなさいね」  

「ううん、シッキムさんは悪くないよ。私がもっと周りをよく見るべきだったの」  

 

 一つのことに夢中になると冷静な判断ができなくなるのはみほの悪い癖だ。

 みほはこの悪癖で何度も失敗を繰り返しているが、いまだに治せていない。愛里寿のようにクールに振舞うのは、簡単にできるようなことではないのだ。

 

「ラベンダー、ぼーっとしている暇はないですわよ。わたくしも本気を出すので、じゃんじゃん切っちゃってくださいまし」

「わかったよ、ローズヒップさん。私も本気で切るからね」

「かかってこいでございますわ」

「やけに物騒な掛け声ですわね。張り切るのはいいけど、怪我だけは気をつけてね」

 

 ルクリリは二人を心配していたようだが、みほとローズヒップは難なくサンドイッチを完成させてしまった。クルセイダーという快速戦車を操る車長と操縦手だけに、物事を素早くこなす二人の息はばっちりだったのである。

 

 

 

 無事にティーフーズを作り終えたみほであったが、すぐに愛里寿のところへは行けなかった。愛里寿の周囲には黒山の人だかりができていたのである。

 今日のお茶会はニックネームを与えられていない生徒にとって、普段話せない相手と会話ができる絶好の機会。試合であれほどの活躍を見せた愛里寿が人気なのは当然であった。

 

「愛里寿ちゃんのところにはまだ行けそうもないね。お茶会が終わる前に会えるといいけど……」

「ダージリン様のおそばも無理そうですわね。わたくしの俊足をもってしても、あの包囲網は突破できそうにありませんわ」

「ニックネーム持ちの生徒はみんな囲まれてるな。ひと気がないのは私たちの周りくらいか」

 

 みほ達のところに来る生徒は誰もいない。これは三人がチーム内で嫌われているからではなく、単に優先順位が低いのが原因だ。

 

「まあ、もう少ししたら人もばらけるだろ。それまでサンドイッチとケーキでも食べてのんびりしよう」

「それもそうですわね。ではさっそく、いただきます!」

「ローズヒップさん、待って待って。最初にケーキを食べちゃダメだよ。始めはサンドイッチから食べるのがマナーなんだから」

 

 ケーキを勢いよく食べ始めたローズヒップにみほはストップをかけた。

 三段になっているケーキスタンドは下からサンドイッチ、スコーン、ケーキの順に並べられている。一番下のサンドイッチから食べ始め、スコーン、ケーキの順に食べていくのがティーフーズの作法なのだ。

  

「わたくしとしたことが、ついうっかりしてましたわ」

「気をつけろよ、ローズヒップ。今のがアッサム様に見つかったらまたお説教だぞ」

「あらあら、今のはいただけませんわね。お茶会の作法を身につけるのは、聖グロリアーナの生徒にとってとても大事なこと。まだ一年生とはいえ、そろそろマスターしなければいけませんよ。それと、公の場で言葉を乱すのも感心しませんわ。誰が聞き耳を立てているかわからないのですから、あまり油断しないようにしてくださいね」

 

 ローズヒップとルクリリをたしなめたのは愛里寿を連れたアールグレイであった。

 

「ラベンダー、愛里寿さんは少し気分が優れないそうなの。悪いのですが、彼女を保健室に案内してくれませんか?」

「わかりました。大丈夫? 愛里寿ちゃん」

「大丈夫……」

 

 口では大丈夫と言っているが愛里寿の顔色はあまりよくない。それでも決して表情をつらそうに歪めないあたり、愛里寿の精神力の強さが見てとれた。

 

「ラベンダー、わたくしも一緒に行きますわ」

「私も行くわ。人数が多いほうが対処しやすいはずよ」

「二人とも、ありがとう。愛里寿ちゃん、自分で歩ける?」

「うん……」

 

 みほは愛里寿の手を握ると四人で保健室へと向かった。

 今まで愛里寿という天才の偉大さばかりを感じていたみほであったが、今の愛里寿からはそれを感じられない。そのことにみほは言い知れぬ不安感を覚えながらも、努めて冷静に保健室への道を急いだ。

   

 

  

 残念なことに養護教諭は外出中であった。保健室のカギが開いていたのは不幸中の幸いである。

 

「先生いないね……」

「わたくしがひとっ走りして探してきますわ。学校中を走り回れば見つかるはずですの」

「それは効率が悪すぎるだろ。緊急時の連絡先がどこかに書いてあるはずだから、まずはそれを探すぞ」

 

 みほ達は保健室を捜索しようとしたが、愛里寿がそれに待ったをかけた。

 

「必要ない。これは精神的なものだから……」

 

 愛里寿はそこで言葉を区切り、何かを考えているような顔で宙を見つめている。

 保健室にしばらく無言の時間が流れたあと、考えがまとまったのか愛里寿はぽつぽつと語り出した。

 

「あの試合、私はどうしても勝ちたかった。たぶん、初めてできた友達にいいところを見せたかったんだと思う。それなのに私は負けた。それが悔しくて体調のコントロールができなくなったの」

 

 愛里寿がコントロールできていないのは体調だけではない。愛里寿の目からは大粒の涙がこぼれ落ち、声も震えていた。言葉にしてしまったせいで、感情のコントロールもできなくなってしまったようだ。

 

 愛里寿が泣いているのを見たみほはすぐさま駆け寄り、愛里寿を優しく抱きしめた。

 みほが泣いていたときはローズヒップとルクリリが助けてくれた。今度はみほが友達を助ける番である。

 

「愛里寿ちゃんは私達にカッコいい姿を見せてくれたよ」

「でも、私はあれだけ大きな口を叩いて負けた……」

「負けたっていいんだよ。聖グロリアーナの戦車道で大事なのは試合に勝つことじゃないんだもん」

 

 愛里寿は不利な状況にも関わらず、正々堂々と真っ向勝負でダージリン達と戦った。

 小細工などいっさいしない優雅で華麗な戦いかたは、聖グロリアーナが理想とする戦車道そのものだ。愛里寿が恥じるようなことは何一つない。

 

「だから、大丈夫。誰も愛里寿ちゃんを悪く言わないよ。不安になる必要なんて全然ないの」

「……ありがとう」

「今日は試合とお茶会で疲れたよね。少し横になろうか」

「うん」 

 

 愛里寿はみほの言葉にうなずくと、保健室のベッドに横になった。

 みほは左手で愛里寿の左手を握り、右手で愛里寿の頭を優しくなでる。みほの優しさに安心したのか、愛里寿は目を閉じるとすぐに穏やかな寝息を立て始めた。

 

「よっぽど疲れてたんだね」

「あれだけの試合をしたあと、すぐにお茶会でございましたからね。きっと気の休まる暇がなかったんですわ」

「今日のお茶会は初めての顔も多かったからな。人見知りの愛里寿にはお茶会のほうが大変だったんだろ」

「私も話すのは得意じゃないから、愛里寿ちゃんの気持ちがよくわかるよ。おつかれさま、愛里寿ちゃん。今はゆっくり休んでね」

 

 みほ達に見守れながら眠る愛里寿の顔はとても安らかだ。

 みほは今まで愛里寿の強い部分ばかりを見てきたが、よく考えてみれば彼女はまだ小学生。弱いところがあるのは当たり前である。

 それに気付かず愛里寿を特別視していたのをみほは恥じた。みほがやるべきなのはティーフーズを作ることではなく、愛里寿を励ますことだったのだ。

 

 みほは助けてあげられなかったのを心の中で謝罪し、片手で握っていた愛里寿の左手を優しく両手で包みこんだ。 

 

 

 

 愛里寿の体験入学はこうして終わりを迎えた。

 みほは愛里寿との別れに一抹の寂しさを覚えたが、二人の関係はここで終わりではない。長期の休みになったらみんなで遊びに行く約束を交わしたし、秋に行われる文化祭にも招待した。みほと愛里寿は友達なのだから、そう簡単に絆は途切れない。

 次に会える日を楽しみに思いながら、みほは笑顔で愛里寿と別れたのであった。

 

 この日から、みほの部屋の棚には新たに一つ写真立てが増えた。

 その写真立てには愛里寿と別れた日に撮った写真が収められている。三人の友達に囲まれた写真の中の愛里寿は、クールな無表情ではなく花咲くような笑顔だった。

 

 

 

 愛里寿と別れてから数日後、アールグレイからある発表があった。一年生同士を戦わせる毎年恒例の練習試合の対戦相手が決まったのだ。 

 今年の対戦相手は黒森峰女学園。

 戦車道全国高校生大会九連覇中の名門校であり、みほの姉である西住まほが隊長を務めている学校であった。


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