Fate/Grand order 人理の火、火継の薪   作:haruhime

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お久しぶりです。

リアルが忙しすぎてまったく書けなかった。


封鎖終局四海 -オケアノス- 二人旅

 

奇妙な夢を見た。

 

どこまでも暗い場所で、異形たちと戦う夢を。

 

周りを埋め尽くす闇は、暖かく俺を迎え入れていた。

 

けれども、そこにあるのは、俺ではない何かだけだった。

 

だから、ただ俺が俺であるために。

 

獣でないことを証明するために。

 

この闇を打ち払わなくてはいけなかった。

 

光り輝く盾を置いて、友が去っていく。

 

力が足りなかった自分を置いて。

 

自分のためだといって、深淵からの守りを捨てていった友。

 

彼と共に有れない悲しみと、己の力不足を胸に抱き。

 

己の最後の時を待つことにした。

 

彼はきっと帰ってこれない。

 

きっとそう思っていたのだ。

 

だからこそ、自分に生きろと言い残していった。

 

必ず帰ると、言わなかった。

 

手足にまとわりついた深淵を払うことをしなかったのだ。

 

己に別れを告げていったのだ。

 

認めない。

 

認めたくない。

 

自分より先に友が死ぬなど、想像もしていなかった。

 

あれだけの強さであっても。

 

この先にいるモノは、勝ちを拾うこともできない。

 

癒えぬ傷を胸に。

 

絶望の淵で、己の死を待つ。

 

じわりじわりと、盾を覆わんと迫る深淵。

 

逃げ出すこともできない恐怖と共に。

 

決して帰らぬ、友の帰りを待ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙な夢を見た気がする。

 

内容は覚えていないが。

 

軽く伸びをしようとして、思い出した。

 

強い風が全身を叩き、尻にはごつごつとした鱗の感触が返ってくる。

 

俺は今、大型のワイバーンにまたがり、無限に広がる海の上を飛んでいるのだった。

 

 

 

 

 

今回のレイシフトで、案の定みんなとはぐれた俺。

 

その傍らには、ジャンヌがいた。

 

正確には地面にたたきつけられた俺の上に、座る形で転移してきたわけだが。

 

そのあと色々あって、ワイバーンの群れをジャンヌが使役し、いくつかの島を渡り歩いているわけだ。

 

「起きたわね。」

 

右に、ジャンヌの顔が有る。

 

「ごめん、寝てたみたいだ。」

 

どうやらすっかり眠っていたらしい。

 

「そうね、人に探索を任せて寄りかかり、ずいぶんと気持ちよさそうにね。」

 

幾分拗ねているような声色だった。

 

ま、探索も騎乗も一人に任せて、同乗者が眠っていたら機嫌も悪くなるか。

 

「あったかくて気持ちのいい枕だったよ。」

 

ジャンヌにもたれかかるような形で、眠っていたようだ。

 

体の正面で感じるジャンヌの柔らかさと体温に心地よくなってしまったらしい。

 

寒かったからね、是非もないよネ。

 

「ええそうでしょうねぇ。」

 

ジャンヌが小刻みに震えている。

 

大きく頭を横に振ると。

 

「ふん!」

 

頭に被ったサークレットを叩き付けるように横頭突きしてきた。

 

「㏉a!?」

 

目の前に星が飛ぶ。

 

一瞬意識が飛びかけ、ワイバーンの背中から落ちそうになる。

 

慌てて、ジャンヌに腕を巻き付ける。

 

「んうっ!?」

 

両手に、とんでもない柔らかさが返ってくる。

 

え、なに。

 

「片手で、あふれる!?」

 

おいおい、全然掴みきれねぇ。

 

なんだこの持ち手。

 

あらゆる角度からチャレンジするが、全く成功しない。

 

ワンダフル。

 

ん?なんだか先端に硬いものが、

 

「いつまで揉んでんのよ!?」

 

「アベシ!?」

 

顔を真っ赤にしたジャンヌの、肘うちがめり込む。

 

レバーはダメだろ。

 

レバーは。

 

「何落ちようとしてんのよ!?こいつホントろくなことしないわね!?」

 

滑り落ちる俺の襟首をジャンヌがつかんだらしい。

 

いかん、首が締まる。キュって鳴った。

 

「ちっ!ワイバーン、正面の島におりなさい!」

 

彼女の号令に従い、ワイバーンが急降下し始める。

 

正面に見えていたのは、これまでで最も大きい島だった。

 

 

 

 

森をかすめるように飛び去るワイバーンから手を離され、砂浜を空き缶のように転がる。

 

木にぶつかって止まったが、全身が痛い。

 

銀猫の指輪がなかったら、高度的に死んでた。

 

「ざまぁないわね。」

 

対するジャンヌは、三点着地を華麗に決めていた。

 

巻き上がった砂を払うと、見せつけるように立ち上がる。

 

ドヤ顔決めやがって。

 

「まぁ、今回は俺が悪かった。」

 

「両手で虚空を揉みしだきながらほざいてもね。」

 

侮蔑の表情を浮かべるジャンヌ。その冷たい視線に、新しい何かが!

 

おっと、手が勝手に。

 

両手を後ろ手に組み、ジャンヌから見えないようにする。

 

「もういいわ。それより、ここで四個目の島ね。」

 

「何か特徴は見えた?」

 

「大量のワイバーンがこの島にいる、たぶんドラゴンも。あと道中で海賊船が一隻いたくらいかしら。」

 

彼女は、肩をすくめる。たいした手掛かりなしか。

 

ドラゴンを従えられれば、かなりの戦力強化になるけど。

 

「この特異点、海賊船だけは山ほどいるからね。何か情報は得られた?」

 

「取りあえず焼いといたけど。」

 

「なんてことを!?」

 

取りあえず人間がいるんだから情報のやり取りはしなきゃ!?

 

どうして初手暴力で殲滅しちゃうの!?

 

道理で十匹以上いたはずのワイバーンが減ってるわけだ。

 

「仕方ないでしょ!いきなり銃、だったかしら?あれで撃たれたんだから!」

 

「それに気持ち悪かったし。」

 

「ならいいや。」

 

いくらジャンヌが美人だからって気持ち悪い顔してたら死ねばいい。

 

そして、こんな美人相手に銃をぶっ放すような海賊には死がお似合いだ。

 

盛大な焚火になったことだろう。

 

「最終的に大爆発してたし、かなり遠くからでも見えたんじゃない?」

 

それは何より。

 

「これまで通り、あの山の頂上に向かいましょう。」

 

「行こうか。」

 

島の中央に位置する、かなりの高台。

 

周囲は比較的浅い林に囲まれているが、高台には下草程度しか生えていないのがわかる。

 

まずは、あの高台に上るとしようか。きっと頂上にドラゴンがいるはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

時折ゾンビ、獣人に襲われつつ、林を進む。

 

既に何度もこんな経験を積んだ俺とジャンヌのペアにかかれば、この程度の林で戦闘をしても方向を見失うことはない。

 

ローマの森に比べれば、ピクニックにもならないだろう。

 

あそこでは、木々が密集して空が見えず、定期的に追いかけまわされてルートから強制的に外れる羽目になったからな。

 

シフがいなかったら一生あそこにいたかもしれない。

 

それにしても、獣人とゾンビの相性が悪すぎる。

 

同時に追いかけられても、速度に差がありすぎて勝手に分断されるし、ゾンビが近くにいると、こっちの匂いをかぎ分けられなくなるらしい。

 

余程のことがない限り、戦闘することなく潜り抜けられる。

 

流石に草を踏み分ける音なんかは聞こえるみたいだが。

 

現に、ジャンヌが踏み折った枝の音に引き寄せられた獣人の一団と戦っているわけだし。

 

「アンタも手伝いなさいよ!」

 

旗槍で獣人を数体まとめて打ち飛ばしつつ、ジャンヌが吠える。

 

そうは言っても、君の不手際なんだけど?

 

後ろから襲ってくる獣人の斧をステップで回避し、振り向きざまの横薙ぎで、相手の首元を断ち切る。

 

吹き出す血を抑えようとするが、気道と頸動脈の片方を切断されたら助からない。

 

動くこともままならずそのまま倒れ、獣人は息を引き取る。

 

「動いてるじゃないか。」

 

「アンタに、襲い、かかって、くる、やつだけ、でしょうがぁ!」

 

ジャンヌは立て続けに襲ってくる獣人を、薙ぎ、払い、蹴り、殴り、燃やし、貫く。

 

随分と経験を積んだらしい。

 

召喚されてすぐとは、比べ物にならない槍捌きだった。

 

「まぁ、あのいけ好かない!青い犬ころに!教わりましたし!」

 

おお、三連突。

 

防御しようとする剣や腕をすり抜けて、致命の一撃が三連で突き込まれた。

 

「大体、これくらいできないと!」

 

倒れ行く死体をよけながら迫る正面の敵集団に、大きく薙ぎ払い。

 

獣人たちは、その槍を一歩下がることで回避する。

 

ジャンヌは呪いの火を纏った昏い槍を地面から突き出し、もう一度踏み出そうとする敵をけん制する。

 

「アンタの隣に立てないでしょうが!」

 

槍は昏い光を放ち、爆発する呪いの火が包囲された獣人たちを巻き添えにした。

 

地面を転がり、火を消そうとする獣人たち。

 

しかし、呪いの火は、彼らの魂を薪として燃える。

 

心身を焼き尽くされた獣人達が、折り重なって崩れ落ちた。

 

敵集団の心理的空白を突いて、俺とジャンヌは背中を合わせる。

 

「俺の隣に立ってくれるんだ。」

 

「背中預けてるのがその証!」

 

ジリジリと音を立てて燃える旗槍と、電撃が走る剣先を前に、獣人たちは逃げ腰になっていた。

 

しかし、彼らの背後から、ゾンビたちが迫っている。

 

俺たちとゾンビに挟まれ、逃げ場を失いつつある獣人たち。

 

正直なところ、迫ってくるゾンビと接触するまでに獣人を片付けるのは無理だろう。

 

戦闘中に、何度も俺を射すくめた視線の持ち主がいる。

 

「グワゥ!」

 

獣人たちの奥にいた、黄金の槍を持つ黒い獣人が吠える。

 

周囲の獣人より二回りは大きな体、片目がつぶれているが、それを感じさせない隙の無さ。

 

その目が放つ殺気は、戦闘中に何度も感じたそれだった。

 

獣人たちは一斉に森の奥に消え去り、黒い獣人も一度だけ俺を見据えて消えていった。

 

「なによ、あれ。」

 

ジャンヌの方を見ると、震えていた。

 

それもそうだろう。

 

「獣人にとっての英雄、かな。」

 

最後にいた獣人は、サーヴァントに匹敵する力量の持ち主だった。

 

あの群れの長がいる限り、俺たち二人の苦戦は免れない。

 

奴が戦うという選択肢を捨ててくれて助かった。

 

殺気だけでこちらを一瞬拘束できる実力者と決戦なんて、冗談じゃない。

 

()()()()()()()()()()()()

 

命を度外視して戦いそうだった。

 

回復も蘇生もできない今、やるべきことじゃない。

 

「ア”あ”あ”あ”あ”あ”!」

 

獣人たちが消え去った後、これまた無数のゾンビたちが、木立の隙間から現れる。

 

今回のゾンビは新鮮らしい。

 

肌色もましだし、動きもそれなりに機敏だ。

 

おかげで臭いは少ない。

 

「あ”~!くさい!」

 

それでも我慢できなかったのか、ジャンヌの旗槍がさらに燃え上がる。

 

「燃え散れ!」

 

腰だめに構えた旗槍から、火炎放射器のように呪いの火が噴出した。

 

その見た目は、太さと言い長さと言い、炎の柱だが。

 

粘性を持った炎に触れるそばから燃え、押しのけられ砕けていくゾンビたち。

 

膨大な魔力がジャンヌによって搾り上げられる。

 

度重なる拡張を受けても、大量の魔力供給はかなり負担が大きい。

 

あ、今胃に炎症できた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、すっきりした!」

 

「ヨカッタネ、うぷ。」

 

会心の笑みを浮かべながら、大きく伸びをするジャンヌ。

 

それを見て、吐き気を我慢する俺。

 

俺たちの目の前には、焼け野原となった元林が広がっていた。

 

お前、焦げ跡の先に海が見えてるんだが?

 

どんだけの射程距離でぶっぱなしやがったんだ。

 

当然、直撃を受けたゾンビの群れなんて跡形も残っていない。

 

この一撃を見て、獣人の群れや野生動物たちも周辺から逃げ出している。

 

辺りは、一時的に安全になったわけだ。

 

「じゃ、行くわよ!」

 

「ちょっとは休ませろ。」

 

「あ”?」

 

張り切って山に向かおうとするジャンヌを引き留める。

 

振り返ったジャンヌは、引き留められて不機嫌そうだった。

 

「誰かさんがバカみたいに魔力を絞ってくれたおかげで、胃が痛いんですが?」

 

ダヴィンチちゃん特性万能内服薬のおかげでかなり楽にはなったが、いまだに痛いものは痛い。

 

それに魔力回復速度が明らかに落ちている。

 

「うぐっ!?で、でも魔力は回復したじゃない!」

 

「聖晶石砕いてな。」

 

確かに先ほどの戦闘で拾った聖晶石を一つ砕いて魔力は充填してあるが?

 

貴重な聖晶石をわざわざ魔力回復に使う羽目になった原因は何かな?

 

「ぐぬぬぬぬ。」

 

「ジャンヌだって疲れてる、今は休もう。」

 

これまたダヴィンチちゃん謹製の天幕型魔術礼装をつかって簡単な野営地を作っておく。

 

見張り無しで休憩する以上、これくらいの用心はしておきたいものだ。

 

警戒用結界魔術礼装を四方に突き刺し、先端の結晶から緑のラインがそれぞれにつながったことを確認して、天幕内に座り込む。

 

「ほら。」

 

「ふん。」

 

自分の横に敷き布を置き、手で示すと、彼女も座った。

 

カルデアから持ち込んだ紫色の魔力回復薬(グレープジュース味)を渡し、橙色の疲労回復薬(オレンジジュース味)を飲む。

 

ちょっと苦みがあるが、大まかにオレンジジュースなので飲みやすい。

 

胃に落ちると同時に、暖かな波動が駆け巡り、消耗していた体力が急速に回復していく。

 

「あ”~、効く。」

 

「おっさん臭い声出してるんじゃないわよ。」

 

「やかましい。」

 

体の節々が緩んで変な声が出てしまった。

 

さぁ、栄養補給タイムだ。

 

「どうぞ。」

 

「ありがと。……これ嫌いなのよね。」

 

「我儘言うなよ。」

 

ジャンヌは受け取ったエナジーバーを嫌そうな顔で食べ始める。

 

確かに、ダダ甘でおいしくない、実にステイツな代物だが背に腹は代えられない。

 

極彩色のエナジーバーとなぜか輝く栄養タブレットを残りの疲労回復薬で流し込み、エネルギー補充も済ませる。

 

どうやら高空で冷えた体に森歩きと戦闘はきつかったらしい、全身が悲鳴を上げ始めた。

 

自分でマッサージして、固まった筋肉をほぐしておかないとな。

 

まだ、あの山を登らなきゃいけないわけだし。

 

「ねぇ。」

 

自分でふくらはぎをほぐしていると、ジャンヌが声をかけてきた。

 

「マッサージ、してあげようか?」

 

なぜか目をそらしながら、そう告げてきた。

 

よろしくお願いします。

 

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