Fate/Grand order 人理の火、火継の薪   作:haruhime

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予定よりも遅れてしまった。

今回は召喚タイム。


炎上汚染都市 ー冬木ー 炎の先達者

 火継の王との簡易契約を結ぶために、Dr.ロマンの誘導を受け、拠点となりうる武家屋敷に到着した。

 

 かつて魔術師の工房であったのだろう優れた霊地の上にある屋敷には、感知系統の魔術が施されていた痕跡があった。もっとも、門を含め、様々な部分が崩れている今、その役割を果たすことはできないだろう。

 

 火継ぎの薪との出会いの後、その霊格を目にして恐慌状態にある所長を背負ったまま、頑丈そうな土倉の中に入る。土倉は雑然とした物置の様相を示しているが、不思議と埃臭くなかった。

 

『マシュ、魔法陣が書かれている中心に、その盾を設置してくれ。そこを召喚サークルとして固定する。』

 

「はい、……これでよろしいですか?」

 

『上出来だ、これで召喚サークルは固定できた。カルデアからの観測と魔力供給はさらにスムーズになるはずだよ。』

 

 ドクターの言葉と同時に盾と魔法陣から光が放たれ、自分の中に膨大な魔力が流れ込んでくるのがわかる。さっきまで流れ込んでいた魔力も相当だとは思っていたが、サーヴァントを使うとなると足りていなかったからありがたい。

 

『立夏君、魔力的には空きがある。彼との契約のほかに、もう一騎は召喚したほうがいいんじゃないかい?』

 

 ドクターの問いはもっともだ。けれど、

 

「火継の薪の魔力消費はかなり激しい、ですよね?」

【然り、宝具の開帳すらままならぬ今ですら、主が支えるには厳しかろう。】

【しかし、我がスキルたる最初の火による供給がある。戦闘における魔力の負担は決してかけぬことを誓おう。】

 

 火継ぎの薪によれば、あの青白い光を燃料に魔力を生成できるという。彼が契約に伴う魔力以外を自給できるというなら、戦力の拡充を急ぐべきだろう。

 

【ゆえに召喚するべきと、進言させてもらおう。我が主よ。】

【手数が多いに越したことはなく、何より、貴殿の真価は多くの英雄を従えてこそなれば。】

 

 僅かに喜悦を感じさせる響きのある彼の言葉には、わからない点もある。俺が英雄たちの主としての才覚を持っているとは思えない。しかし、この英雄が言うのだから、何かしらの意味はあるのだろう。

 

 複数人を部隊として指揮し、運用する訓練を積んでおけということだろうか。これから先の事を考えれば、指揮の経験は少しでも早く積んでおくべきだろうし。

 

「ドクター少なくとも一人、召喚を行います。」

『了解、召喚と行こう!』

「はっ!?」

 

 部屋の隅でぶつぶつ言っていた所長が復帰したらしい。

 

「待ちなさい!ここはどことかそいつは何とか私の許可なしに召喚しようとするなとか勝手に指揮とってるロマニ後でぶっとばすとか私を無視して話を進めないでさびしいじゃない構いなさいよとかいろいろ言いたいことはあるけど、そもそもあなた召喚詠唱を知っているの?」

 

 すさまじい剣幕でがなり立てる所長。ん?

 

「えっ。」

「あっ、先輩まさか。」

『アッ!?教わってないのかい!?』

 

 召喚詠唱って、なに?

 

「やっぱり知らないで事を進めようとしていたじゃないのよ、やだー!?」

【我が主よ……。】

 

 やめて、罵倒しないであきれた感じを出さないで!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、長いお説教を泣きながらする所長から召喚詠唱を教えてもらった。火継の薪とマシュ、ドクターのとりなしもあってどうにか所長も落ち着き、所長が持っていた虹色に輝く金平糖もとい聖晶石を盾の十字架、その四隅に据える。

 

 通常の召喚であればこれでも十分だが、

 

【始まりの火よ、我が主に祝福を。】

 

 火継の薪が、スキルによって生み出した幻想の火。それがこの土倉を焼き、祓う。明らかに体感できるほどに、空間が浄化されゆがみが消えていた。

 

『霊脈が整調されている。これは良い縁を引き寄せられそうだ。始めよう。』

 

 カルデアからの魔力を全身の魔術回路に供給する。

 

 最初は、教えられたとおりに詠唱するつもりだった。

 

「素に火と闇。」

 

 だが、口から出たのは違う言葉。

 

「礎に竜と火継の大王。」

 

 俺の中の火が言うのだ。

 

「祖には我が先人■■■■■。」

 

 正しき縁を結べと。

 

「何をしてるの!?止めなさい!?」

 

『今から止めるのは無理だ、近づかないで所長!』

 

 魔法陣から放たれる光は、あたたかな火の粉に代わる。

 

「降り立つ灰には杯を。」

 

 俺は知る、知ってしまった。

 

「四王の瞳は閉じ。」

 

 薪となる前の不死を。

 

「火炉より出で。」

 

 不死に課せられた使命を。

 

「火継に至る炎環路は循環せよ。」

 

 彼らが旅したこの世の地獄を。

 

『異常な魔力反応確認!真エーテルとしか思えない!?』

 

「先輩!」

 

 輝く三本の輪は、白銀から黄金へ、そして炎環へと変わっていく。

 

 体の内が熱い、宿った火が活性化しているのか。

 

照らせ。照らせ。照らせ。照らせ。照らせ。(翳れ。 翳れ。 翳れ。 翳れ。 翳れ。 )

 

 心折れた者たちの慟哭を。

 

「繰り返すつどに五度。」

 

 抗い死にゆく者たちの怨嗟を。

 

「ただ、救われる世を破却する。」

 

 薪となった者たちの諦観を。

 

「ーーー対炎熱、結界、複数、指定、起動!」

 

 中央の光の塊はさらに輝きを増し、吹き出す炎熱もそれに従う。所長が結界を張ってくれたようだが、俺には効果がないらしい。直接縁を結んでいるんだ、焼かれもするだろう。

 

 ああ、魂が焼ける。

 

「Anfang」

 

 ゆえに

 

「告げる」

 

 ゆえに

 

「告げる」

 

 俺は呼ばなくてはならない。

 

「汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。」

 

 至らぬ俺を先導してくれる者を。

 

「篝火の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば答えよ。」

 

 足らぬカルデアに教えを垂れる師を。

 

『神代並みの魔力濃度だ、立夏君は大丈夫かいマシュ!?』

 

「ハイドクター!今のところ外傷、出血は見られません、バイタルは大丈夫ですか!?」

 

 吹き荒れる炎熱は、いよいよ耐えがたいほど吹きすさぶ。熱風が俺を押しのけようとするが、それに耐える。

 

「誓いをここに。」

 

 遠き彼らに続くものとして。

 

「我は常世全ての火と成る者。」

 

 決して恥じぬ功をなすための力を得るために。

 

「我は常世全ての闇を敷く者。」

 

 守りたいものを守る力を得るために。

 

「汝原初の真火を纏う七天、火継の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 力を貸してくれ、深淵なる火の伝道者よ!

 

 炎塊と化した魔力の塊が、詠唱の終わりと共に爆発する。

 

 チリチリと音を立てる地面、それに反して俺を含めた生き物たちに目立った被害はない。

 

 土煙が立ち込める中、その向こうに人型が見えた。

 

「ふん、私を呼ぶとは物好きもいたものだ。」

 

 魔力の高まり。

 

 明らかに強力な力が一瞬で収束し、灼紅が土煙を焼き払う。

 

「サーヴァント・イザリスのクラーナ、キャスターとして現界した。」

 

 現れたのは、明らかに高級そうな、しかし薄汚れたローブを纏った背の高い女性。その右手に宿るのは、神代の神秘が結晶したような紅蓮の火。人の魂を照らし出すような、どこか恐ろしくも美しい火だった。

 

 きっとあの火とは違うのだろう。それはわかる。

 

「うまく使え、それがお前にできる唯一のことなのだからな。」

 

 そして、おそらく彼女は優れた指導者だ。我ながらこの状況に適した良き縁を引き寄せた。

 

【しかり、我が主よ。善き人を引き当てたものだ。ひさしいな、我が師よ。】

 

 召喚サークルの向こう側、必殺の構えでもって構えていた彼が、剣を下す。

 

「ん?貴様、バカ弟子か!?」

 

 その金音に反応して振り返った彼女が驚きの声をあげた。どうやら火継の薪にとっても師にあたる人らしい。

 

「よくもまぁ、そんなモノに成り下がって。―――言ったろう、自分を大切にしろと。」

 

 彼女は火継の薪に近づき、彼の胸に手を当てる。その手つきにも、声にも明確な親愛の情があふれていた。

 

【だが、】

 

「そうだな、為すべき事を成したんだ。……お疲れ、よくやったなバカ弟子め。」

 

 何度か胸をたたき、突き放すようにしてこちらに向き直る。

 

【師よ、我が主に呪術を教えてやってほしい。】

 

「なに、呪術を教えろ?仮にも主を殺す気か!」

 

 クラーナは即座に振り返り、彼の襟をつかんで揺さぶる。女性としては長身だが、2m近い彼が相手だと、ぶら下がっているようにも見えた。恐ろしい剣幕である。

 

 だが、ここで逃げることは許されない。

 

 彼女に懇願するために、彼女に向かって歩みだす。

 

 さっきも感じた力不足。せめて一撃の援護を可能にしたい。仲間を、所長を、そしてマシュを助けるために。俺は足手まといにはなりたくない。どうか俺に、あなたの英知を授けてくれ。目の前まで近づいた彼女に懇願する。

 

「どうか俺に貴女の英知を授けてくれ。呪術の火を。戦う術を授けてほしい。」

 

「この火は呪いだ、分けられれば、一生お前について回る。制御に失敗すれば丸焼けだ。」

 

 彼女は殺気を発した。右手の呪術の火は大きく燃え上がり、俺の頬に触れるほどに近い。彼女がその気なら今頃火だるまだろう。そして灰も残るまい。

 

「最初の火を見た。俺の中には、あの火がある。今更そんな火を恐れはしない。」

 

 だが、あの偉大なる火が俺の中にある。ならばそんな火になど臆することは、目をくれることはない。

 

「ふ、いい覚悟だ、死んでも使い物にしてやる。覚悟しろよ?」

 

 それを聞いた彼女は火を消すと、明らかに不機嫌な声で言う。

 

「お前は呪術の火を恐れないといったな。なら受け取れ、授業その一だ。」

 

 彼女の右手が、俺の胸に触れる。強烈な火が、呪術の火が俺の中に流れ込んだ。

 

「呪術の火を恐れなければ、火はお前を飲み込み、焼き尽くすだろう。」

 

 何か大切なものが燃えていく。何を焼かれた?わからない。焼かれたことだけが残っていく。

 

「まずは火を恐れることを知れ。そこからだ。」

 

 激痛と焦熱に意識が飛ばされる。

 

 暗転する視界の中、力なく崩れ落ちる俺を誰かが抱えてくれた事だけはわかった。

 

「まったく、世話のかかる奴らだな。」

 

 やわらかい声を最後に、意識は闇に飲まれる。

 

 




何だバカ弟子。すべての呪術を教えてやったというのに、いまさら何用だ?

これは。

頭を下げるな。

姉がお前の間に立ちふさがった。

お前は使命のために討ち果たした。

それだけだろう。

立って進め。お前に出来る贖罪があるならば、ただそれだけだ。

まぁ、お前からの贈り物、確かに受け取ったぞ。

ありがとう、うれしかったよ。

―――お帰り姉さん。お疲れ様。
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