遊戯王Wings「神に見放された決闘者」 作:shou9029
ep0「プロローグ」
どこかの世界、どこかの場所、どこかの時間。
古代エジプトから蘇った王もいなければ、宇宙で破滅の光と正しき闇は争ってはいない。
5000年周期で行われる神々の争いも無ければ、魂のランクアップは起こらない。
それに、世界は4つに分けられてはいないが、それでも唯一つ、どんな世界においても変わらないものがある。
デュエルモンスターズ。
例えば、全く同じような世界が二つあったとしても、片方の世界はたった1枚のカードから生まれ、もう片方は1枚のカードから生まれてはいない。そんな似た違う世界であったとしても、世界の中心にあるもの。
それがデュエルモンスターズ。全てにおいて、そこにあるもの。
―これは、他のどれとも違う「遊戯王」の物語。
―…
「先生……、これは……」
「う、うむ……私も初めてだ……」
とある病院内、そのとある診察室でのこと。
その診察室にはドクターらしき白衣を着た人物と、その助手が二人。
…そして、就学前であろう年齢の少年が一人、彼らの方を神妙な顔をして見つめていた。
それはまるで、これから自分の病気の宣告を受けるのを、じっと待っている患者のよう。いや、もしかしたらただの病気の方が、彼にとっては幸せだったかもしれない。
なにせ、この沈黙の原因が病気だったならば、まだ彼には治る可能性もあったのだろうが…
これからの話は、彼にとっては今後の長い長い人生において、一生に渡って付きまとってくる事実かもしれないのだから。
「……天城くん、その…」
そして、意を決したようにドクターが口を開いて…
それは、とても言いづらそうに、そしてとても憐れんだ眼をしていて…
「残念だけど…その…」
今から伝えられることは、この年齢の子供には酷過ぎる事実。
少なくともこの世界に生きる、自我が芽生えている人間ならば絶対に聞きたくない言葉。
このドクターとて、こんなことを絶対に口に出したいわけがないことだろう。
それを、こんな年端のいかない少年に聞かせなければいけないなんて…今この時ほど自分がドクターをしていたことを呪ったことはなかったと言わんばかりに、眉間にしわを寄せて目の前の少年を哀れんで。
しかし、これは事実。この証明されてしまった現実には、例え何度調べ直したとしても逆転することはないのだ。
そして…意を決したようにして、重々しくもドクターが口を開いた。
「君に……えぇと……エクストラ…適正は……その…『ない』…みたいだね……」
ー言った、言ってしまった。
その恐るべき事実を、そのあまりの哀れみを。
そして、まさにドクターから言葉が飛び出たその瞬間、少年の目の前は突如として真っ暗になり、腰かけていた椅子から倒れ落ちる。
なにせ、この世界にいて、死刑宣告を食らったのと同じような物を突然突き付けられたも同然なのだ。
とても、就学前の子供が耐えられる宣告ではない。いや、例え誰であっても耐えられるようなものではない。
慌てふためくドクター達の叫びを遠くに感じながら…
少年の意識は、段々と薄れていった。
そして物語は、それから10年後…
――