遊戯王Wings「神に見放された決闘者」   作:shou9029

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ep99「裏側の真実」

暗い…とても暗いどこかの場所。

 

ここが『どこ』であるのか。ソレを知る者などこの世界には居ないのではないかとさえ思える、暗闇がどこまでも広がっているそんな『とある場所』に…

 

 

 

「戻りましたよぉ、えぇ。」

 

 

 

1人の男の、捻じれた声が零された。

 

 

 

「いやぁ、ホント疲れましたねぇ。やる事の多いこと多いこと…けどやぁっと終わりました。はぁ、これで少し休めますかねぇ。」

 

 

 

飄々と、それでいてどこか疲れているかのように。

 

胸糞悪くなる声質でそう言葉を零すこの男の声は、どこからともなくこの漆黒の空間に現れたにしては嫌に馴染んでいるかのような闇との一体化を見せながら…

 

何やら一仕事終えてきたかのような態度を見せたかと思うと、深く溜息を吐き始め…

 

 

 

「…さて、これで『契約』は果たせましたかねぇ。全く、面倒な仕事を押し付けられたものです、えぇ。」

 

 

 

それはこの世の誰よりも捻くれているとさえ思える、性根からして捻じれきっているであろう他人に苛立ちを与える不躾な声。

 

およそ『人間』が発しているとは思えないような、耳に入れた瞬間に嫌悪を覚えてしまうようなその声はあまりに耳障りでどこまでも気分が悪く…

 

…そんな捻じれた声の持ち主など、この世界には該当する者は1人しか存在しない事だろう。

 

 

そう、この光なき漆黒の空間に現れたのは他でもない…

 

 

胡散臭さを具現化したような、悪意に満ちた紫のスーツ。

 

異様に長いその手足と指と、骨と言っても差し支えないほどに絞り込まれたその肉体には『無駄』を通り越して『必要』なモノすら追いついてはおらず…

 

そして、ソレ以上に特徴的なのは…何処からどう見ても第一印象が『捻じれている』と思ってしまう、その気持ちの悪い佇まいだろうか。

 

 

 

そう、このどこかもわからぬ漆黒の空間に、慣れ親しんだように飄々と現れたのは他でもない…

 

 

 

世界最悪の大犯罪者、性根の腐った捻じれた男、裏決闘界融合帝―

 

 

 

【紫影】―

 

 

 

―竜胆 蛇蝎

 

 

 

「しかしまぁ、流石に人使い荒すぎじゃありませんかねぇ?不意に目が覚めたかと思えば、いきなりあんな大仕事を押し付けられるとは…全く、自分が生き返ったという事実を飲み込む暇もありません、えぇ。」

 

 

 

しかし、一体【紫影】は『何』へと向かって声を漏らし続けているのだろう。

 

現在の時間で言えば、未だ【決島】の中継が急に途切れ世界が混乱の中にあり…そしてソレ以上に、【決島】が行われていた島はまだまだ乱戦の中にあるはずだと言うのに…

 

 

―そう、ついさっき、今この瞬間まで、【紫影】は紛れも無く【決島】の中にいたはず。

 

 

いや、【決島】の中と言うか…そもそも刹那の寸前まで、【紫影】は間違い無くイースト校の2人の少年達とモンスターが実体化した中で命がけのデュエルをしていたはずなのだ。

 

…そうだと言うのに、全くもって傷付いてもいない裏決闘界の融合帝、【紫影】。

 

デュエルディスクを装着していた左腕は、最後の【D-HERO Bloo-D】の実体化した攻撃によって千切り飛ばされたはず。

 

けれども、ここにいる【紫影】は五体満足であり…学生達の【決島】を滅茶苦茶にした罰を受けたはずなのに、どうして【紫影】は何事もなかったかのようにして謎の空間に『帰って』きたと言うのか。

 

突如としてこんな空間に現れ、そしてこの空間に居るであろう『誰か』へと向かってそう口を開いている様子は…

 

間違いなくこの世のモノとは思えない程の狂気となりて、どこまでも虚無の中へと放り続けられていて…

 

 

 

すると…

 

 

 

 

【紫影】が、その言葉を吐ききったからか―

 

 

突如として、何もなかった黒の空間の中にもう1つ濃い『黒』の何かが現れたかと思うと。

 

 

どこから、ともなく…

 

 

 

更なる声と姿が、現れた―

 

 

 

 

 

 

 

 

「カカッ、生き返らせて貰ったっつーのに文句言ってんじゃねーよ。つーか、勝手にコトをデカくしたのはテメーだろうが。」

「…まさかあそこまで大規模になるとは想定外だったんですよねぇ。時の流れは恐ろしいモノです、私の時代とは大違いですねぇ、えぇ。」

「ま、けどとりあえず及第点の出来だったって言っといてやるぜ。今だけはテメェを褒めてやってもいい。感謝してもいいんだぜ?」

 

 

 

 

 

【紫影】の言葉に応えるように、現れたのは『人』の姿。

 

それは漆黒の空間の虚無に良く響く、特徴的なる渇いた笑いと…

 

そして、この暗闇の空間の向こうから。まるで『酔っている』かのようにしてフラりと現れたその姿は、どこか歴戦を感じさせるような歴戦の男の声であり…

 

また、【紫影】の捻じれた声にぶつかってもなお折れることも曲がる事も歪む事もなく。その声は、他の誰にも染まることの無い強い芯のようなモノが感じられるではないか。

 

 

…そう、現れたのは、歴戦を感じさせる凄まじき存在感。

 

 

この漆黒の空間に現れ、【紫影】と会話し始めたのは紛れもなく―

 

 

 

 

 

豪放磊落、天下無双、世界最強のエクシーズ使い…

 

 

 

 

 

 

―エクシーズ王者【黒翼】、天宮寺 鷹峰

 

 

 

 

 

 

「…貴方に褒められるなんて違和感しかありませんねぇ。元々敵同士だったというのに。」

「おうおう、相変わらずの捻くれモンだなテメーは。折角俺様がテメェみてぇな屑を褒めてやったっつーのによ。」

「ソレですよソレ。私の感覚では、ついこの前まで殺し合いをしていたと言うのに…いきなり老けた貴方が現れたかと思えば、フレンドリーに接してくるなんて鳥肌しか感じませんって。」

「カッカッカ、別にフレンドリーになんて接してねーだろーが。テメーだって自分が死んでたってことをすぐ飲み込みやがってよぉ…狂って襲ってきたら躊躇無くブッ殺してやろうと思ってたってのに、流石は『狂人』の蛇蝎坊だこったぜ。」

「…ま、歳を取っていても『貴方』だとすぐに分かったから大人しくしていたんですが…しかし、いきなり生き返ったかと思ったら【黒翼】、貴方の弟子を鍛える踏み台になれだなんて一体何の冗談かと思いましたがねぇ。貴方が弟子…ふふっ、時の流れを感じましたよ、えぇ。」

 

 

 

 

 

しかし、【紫影】の言った通りに元々は敵同士だったはずの【黒翼】と【紫影】が、一体どうしてこんな場所で落ち合い会話を重ね始めたのか。

 

決して相容れぬはずの間柄、表と裏の頂点として文字通り『殺しあった』はずの仲。

 

鷹峰がどうやってこの漆黒の空間に現れたのかは定かでは無いが、その口ぶりから察するにおよそ【黒翼】が【紫影】と繋がっていたのは最早確実絶対であり…

 

【裏決島】という、学生達にとって地獄を作り出した張本人である裏決闘界の融合帝【紫影】に対し…よもや表の王者たる【黒翼】が、裏で繋がっていただなんて、決して許されざる事実ではないと言うのに。

 

けれども、そのまま鷹峰はどこまでも普段通りに乾いた笑いを零しつつ。

 

正反対の世界に生きるはずの二人は…いや、二匹は…

 

更に続けて、言葉を交わす。

 

 

 

「カカッ、生き返れたってんだから文句言うんじゃねぇってんだよ屑野郎。つーか、俺が鍛えろっつったのは遊良だけだっただろうが。任せろっつーから任せたけどよ、相変わらず余計な事ばっかしやがって。」

「おや、派手にやって良いと言ったのはそちらのハズですがねぇ。…ふふっ、折角の【決島】と言う舞台、コレを利用しない手はありません。…ま、【白鯨】の邪魔が入るのは予想していましたが、まさかトウコ先輩までしゃしゃり出てくるのは私も予想外でした。おかげで余計な労力を使わされました、えぇ。」

「んで苦し紛れに岩で押し潰したってか?屑らしい下らねぇ手だぜ。」

「だって仕方ないでしょう?貴方達に科せられた『制約』の所為で、思うようにデュエルできなかったんですから。なんですか、『リーシャドール』や『ノェルシャドール』、その他色々使わせてもらえないなんて。」

「カッカッカ、それぐれーしねーとテメェ、好き勝手にやりすぎるだろーが。ガキ相手には良いハンデだったろ。」

 

 

 

話す…

 

 

 

「…モノは言い様ですねぇ。子ども達の相手ならまだしも、『烈火』や『逆鱗』を抑えるのは本当に大変だったんですからね?使えるモノかき集めてようやくでしたよ、えぇ。」

「まっ、トウコのババアが出しゃばって来るのはコッチも誤算だったがなぁ。けど無理もねぇか。烈火兄ぃの怨みはとんでもなく深いみてぇだしよ。カカッ、何ならそのまま消されてても良かったんじゃねぇか?」

「…簡単に言ってくれますねぇ。トウコ先輩とのデュエル、本気でどうしようかと思ったんですからね?貴方達に課された『誓約』の所為で本当にギリッギリで…ま、『制約』のせいで誰も殺せないし、あんな子供だましの『軽石』ではどうせ死なないのはわかってましたが…殺す気で動かないとコッチが消されてしまいましたからねぇ、あの時。」

「あ、つーかテメェ、トウコのババアだけじゃなくウチのまご…クソガキまで潰しやがったろ。」

「だから別にそれぐらいいいじゃないですか。あんな『軽石』じゃ、どうせ潰されたって死なないんですし。それに貴方の孫なら殺しても死ないでしょう?…しかし、たかが孫と正直侮っていましたが、私の方と違い中々どうしていい素材をお持ちのようで、そちらの孫は。」

「ケッ、あんまりクソガキを褒めるんじゃねぇよ。デュエルの最中も言ってやがったけど、あんまり言うと調子に乗るだろうが、あのクソガキ。」

「…と言うより【黒翼】、そもそも貴方の弟子を鍛えるだけなら何も私でなくとも良かったのでは?【黒獣】でも【白夜】でも、裏の適当な実力者を生き返らせてあてがえば…」

「いいや、テメェだからこそだぜ【紫影】。テメェが一番下種で小物で性根が腐ってて…そんでもって『悪意』しかねぇテメェだからこそだ。ぬるま湯しか知らねぇ遊良やクソガキの相手をさせるには、屑のテメェが一番持ってこいだったんだよ。」

「ふふっ、褒められている気がしませんねぇ。」

 

 

 

話す…

 

 

 

「ま、それに【白夜】のジジイは生き返らせたとこで砺波への恨みしかねぇし…【黒獣】の野郎にいたっては、奴さんまだ生きてっからなぁカッカッカ。」

「ほ?【黒獣】…え、鋼真さん、生きてるんですか?」

「おう、奴ぁ今もデュエリアに隠れ住んでんぜ?テメェも【決島】ん時に【黒獣】の孫のデュエル見てんだろうが。」

「孫…あぁ…あぁ!だから鍛冶上 刀利に何やら見覚えがあったんですねぇ。【地の破王】…確かに彼、雰囲気が鋼真さんに似ていましたものねぇ、えぇ。」

「つーか、そもそも【白夜】も【黒獣】もガキにぶつけたら抵抗も出来ずに潰されしまうだろうが。だからガキを甚振る趣味のあるテメェが適任だったってだけで、最初からテメェ以外にゃ選択肢が無かっただけだっての。カッカッカ、流石は世界最悪の犯罪者だこった。2000人以上殺した奴は躊躇無くガキども甚振りやがる。屑過ぎて反吐がでらぁ。」

「…私も、自分勝手な貴方にだけは屑だなんて言われたくないんですがねぇ…まぁ、否定はしませんが。」

「カカッ、しかもご丁寧に、遊良だけじゃなくウチのクソガキも底上げしてくれるたぁ、俺様からしても嬉しい誤算だったぜ。…岩で潰した事は置いといても、おかげで予想していたよりも早く階段を上がってきたぜ、あのガキ共。」

「…貴方の孫は勝手にしゃしゃり出てきただけでございます。…それより底上げも何も、予選の時点での天城 遊良の実力がまさか『壁』を超えた程度だった事の方が驚きました。貴方の弟子と言うから期待していたと言うのに…」

「あぁ?そりゃどう言う意味だ。」

「そのままの意味ですよ。いくら貴方に依頼された事とは言え、『壁』を超えた程度の実力では適当にデュエルしたところで簡単に潰れてしまってましたからねぇ…少なくとも『先』には進んでいてくれないと、私も甚振るにも甚振れなかっただけでございますよ、えぇ。」

 

 

 

話す…

 

 

何もない空間で、交わされる会話は宿敵との話し合いと言った雰囲気などでは断じてなく…

 

どこか懐かしさを交わしているかのような、どこか同窓会のような雰囲気にも似たモノとなりて重ねられていることだろう。

 

まぁ、その会話の中には馴れ合いや気を許しているような素振りは無く、お互いに心を全く許さずにただただ威嚇し合っているだけにも見えるものの…

 

 

 

「…ま、ルキをあんな目に遭わせるたぁ俺様もちっと想定外だったがな。…ルキになんかあったら俺がテメェを殺してたぜ。まっ、俺様の弟子ならテメェの愚策ぐれぇ捻じ伏せるなんざわけねぇがな。」

「ふふ、結果的にあの少女も生きているんだからいいじゃありませんか。」

「おう、ソレだソレ。何が『結果的に』だ。昨日、ルキの奴ぁガチで死にかけてたじゃねーか。制約だ何だつって誤魔化そうとしてんじゃねぇよ。俺様は誰1人として『殺すな』…そう言ったはずだぜ?」

「そう言われましても…『赤き竜神』の少女が死にそうになった事に関しては、別に私の所為じゃありませんし。今回彼女に関しては私、完全にノータッチですからねぇ、ええ。」

「あ?テメェがルキに何かしたから神が暴走したんじゃねぇのか?」

「ふふっ、ソレとコレとはまた別問題なんですよねぇ。その辺りは【無垢】と世界のソレはソレはややこしい話がうんぬん…」

「あー…またテメェら『裏』の訳わかんねぇ事情って奴か?表裏戦争ンときもゴチャゴチャ言ってたが…」

「えぇ、ええ、その通りでございます、えぇ。」

 

 

 

それでも、何もない『黒』の空間で淡々と交わされているのは、他の誰も知らない『裏側』の真実。

 

…あの地獄の様な【裏決島】を体験していた当事者たちがソレを聞いたら、怒り狂うどころの話ではない。

 

 

そう、誰が気付けるものか―

 

 

学生達が犯罪者たちに襲われ、今もなお混乱が続いている最中の【裏決島】…

 

その地獄を作り出した張本人である【紫影】に、あろうことかソレを指示したのがエクシーズ王者【黒翼】だったという、その事実に。

 

…いや、鷹峰の口ぶりと、【紫影】の悪気の無い物言いから。

 

あくまでも【裏決島】の惨劇は【紫影】が勝手にやっただけで、【黒翼】が直接あの惨劇を指示したわけではないのだろう。

 

それでも、多数の怪我人に攫われた学生達、下手をすれば死傷者が出ていたであろう【裏決島】に、エクシーズ王者【黒翼】が関わっていただなんて決して許されざる事ではないはずであり…

 

…また、どこまでが真実でどこまでが嘘なのか分からぬ【紫影】の言葉が、更につらつら述べられるものの。

 

【黒翼】と【紫影】の会話の中に、何やら反応するワードが出てきたからか。

 

不意に、重ねられ続ける会話に割って入る様に…

 

 

 

『もう1人』の声が、闇から聞こえてきて―

 

 

 

「別にいいじゃないですか鷹峰さん。昨日も今日も、中々に面白い見世物だったんですから。」

 

 

 

鷹峰たちの会話に割って入る様にして、突如この漆黒の空間に現れたのは対照的なる『女性』の声。

 

そう、先の天宮寺 鷹峰のように…この空間に、新たにもう1人の…否、もう1匹のモノが、不意に声をかけてきたのだ。

 

それはこの漆黒の空間だからこそ余計に映える、夜よりもなお深い漆黒の髪と…

 

暁よりも影に溶け込む浅黒い肌が、その美しい顔立ちと魅惑的な肉体をより一層妖しく見せつけている、あまりに高圧的過ぎる存在感を持った存在。

 

かつて当時の王者であった前【紫魔】である紫魔 憐造と、【白鯨】と呼ばれる砺波 浜臣、そして鷹矢の祖父である【黒翼】天宮寺 鷹峰までをもその手で降したという正真正銘の【化物】…

 

 

 

 

 

―釈迦堂 ラン

 

 

 

 

 

 

「【無垢】…懐かしい名だ。」

「あぁ、そういえば釈迦堂 ラン…貴女、【無垢】を倒してしまったんでしたっけ?ホント、とんでもない事をしてくれましたよねぇ、えぇ」

「そう言われてもね。年甲斐もなくはしゃいでしまった結果だよ。…そう言えば貴方は【無垢】を蘇らせると『アレ』に言っていたが…」

「あぁ、ソレは言葉の方便というモノですよ。それに、あながち間違ったことはやっていませんし。【無垢】は蘇らせるとかではないですからねぇ…あくまで概念といいますか記録と言いますか…」

「あぁ…フフッ、確かに。」

「何言ってんだテメェら…理解できねぇ。」

 

 

 

不意に現れた釈迦堂 ランと、それに応じる【紫影】との会話は、理解し難い内容となりて漆黒の空間に消えていく。

 

その会話の内容を理解出来る者など、およそこの世には居ないのではないかとさえ思え…

 

…釈迦堂 ランのみが知る、裏決闘界の皇帝【無垢】の最期。

 

…一体、過去に何があったのか。一体、【無垢】とは何なのか。

 

それは今この場ではこれ以上詳しく語られぬ事とは言え、それでも裏決闘界の【三帝王】として【無垢】に関わりがあった【紫影】もまた、ランと同じだけの見解を持ちつつそれに同調する素振りを見せつけるだけであり…

 

…すると、【紫影】へと視線を向け直した釈迦堂 ランが。

 

再度、目の前の捻じれた男へと向かってその口を開き始めた。

 

 

 

「フフッ、【紫影】、やはり貴方を蘇らせて正解だった。鷹峰さんの言う通り、面白いモノが見れたからね。」

「…【邪神アバター】…便利なカードですよねぇ。死者の魂を呼び戻し、闇で仮初の肉体を造り死者をこの世に生き返らせるとは。」

「蘇ると言っても、半分は私の操り人形のようなモノだがね。それに、誰でも蘇らせられるわけでもない。」

「あー…邪神に魅入られる程の実力と、現世に相当の執念を持った魂だけが肉体を与えられる、だったか?…カカッ、れんぞーと言い【紫影】と言い、スマした顔してても実は執念たらたらじゃねぇか。」

「やれやれ…【黒翼】、やはり貴方は苦手です。私はまぁ…別にこの世に未練なんてありませんでしたけどもねぇ、死など単なるアクセサリー…死んだら死んだで、私という存在がこの世に生きていたという証明をしてくれるだけの話ですので、えぇ。」

 

 

 

また、ランたちの会話からは俄かには信じがたい事実が淡々と零されるものの…

 

今この空間には、『蘇らせる』だとか『生き返った』だとか言った超常的なる非現実的な『異常』に対し、口を挟む者など存在すらしないのか。

 

釈迦堂 ランの持つ『邪神』…一度だけ、天宮寺 鷹矢とのデュエルにて使用したソレとはまた違う『神』の名を1つあげつつ。

 

この『異常』な事態を引き起こしたであろう張本人、釈迦堂 ランは更に続けて…

 

 

 

「昨日の『赤き竜神』を賭けた天城 遊良のデュエル…それに『王』と弟子達の決勝に【裏決島】…この二日間の催しは実に良い退屈凌ぎになった。いい見世物だったよ、【紫影】。」

「釈迦堂 ラン…貴女も実に物好きですねぇ。出来るだけ『派手』にやれと言ってくれたのも、単なる『退屈凌ぎ』だったとは。」

「ふふっ、あなたのおかげで天城 遊良と天宮寺 鷹矢…彼らが着実に育ってきているのがわかった。この先が実に楽しみだ。」

「ケッ、あの馬鹿弟子ども、俺様から言わせればまだまだだぜ。手ぇ抜いた【紫影】相手にいい様にボコられやがって。」

「…私も何度か死にかけたんですがねぇ。それに手を抜いたも何も、ソレもコレも【黒翼】、貴方の『誰も殺すな』という制約と、誰が相手でも『ギリギリ』になってしまう枷を掛けられた所為なんですが…」

「あぁ?蘇らせたつっても、別にテメェに好きにさせるつもりなんざハナからねぇんだよ。自分が昔何やってきたのか忘れたわけじゃねぇだろ?」

「…だから昔と言われても、ついこの間のような感覚なんですがねぇ…」

 

 

 

そう…誰も知らない真実が、ここにはある。

 

それは紛れも無く、今回の学生達の祭典を襲った恐るべき事態の元凶が、紛れも無く釈迦堂 ランの指示であったということに他ならない。

 

しかも、ランは言った…『良い退屈凌ぎになった、いい見世物だった』…と。

 

アレだけの惨劇、アレだけの惨状を【紫影】に指示しておいて、まさかその実態がよもや【化物】の退屈凌ぎであっただなんて、きっと誰であろうと納得できるわけがないと言うのに。

 

退屈に塗れた【化物】の渇望、学生達の身に何が起ころうとも、自分には関係無いのだとして…

 

自分の欲求の結果あの地獄が生み出された事に対し、犯人である【化物】はどこまでも悪びれも無く。寧ろ清清しいまでの満足感を得ながらも、どこまでもただ虚無に塗れるのみ。

 

 

 

「しかし、流石は裏決闘界の融合帝だよ【紫影】。制約を掛けられてなおアレだけの催しが出来るとは恐れ入った。」

「…ふふっ、ご主人様に楽しんでいただけたのなら幸いでございます。…とは言え、私の描いたプランからは大きく外れてしまいましたが…」

「あ?おいおい、あんだけ好き勝手やってた癖に、最初はどんな筋書きだったんだ?」

「えぇ…私の描いたプランでは、目の前で幼馴染の少女を失った天城 遊良はその怒りと絶望で一度は心折れるものの、私への復讐心によって『先』へと至り…怨嗟に飲まれ、私を殺しに向かってくる…と言ったモノだったのですがねぇ。まさか『プラネット』を従え自力で『神』を抑え込むとは驚きました。」

「フッ、こんなにも早く私が預けた『プラネット』を扱えるようになるとは。だから鷹峰さんの弟子達は面白い。…さて、コレで貴方もとりあえずは合格と言った所か…」

「…恐縮ですねぇ、えぇ。」

 

 

 

そして…

 

未だ謎を数多く残しつつも。

 

ソレらをこれ以上この場で語り合う気は【化物】達にら無いのか、それとも漆黒の空間で交わされる密会もどうやらそろそろ終演の時間が近づいてきたのか。

 

人間ではない【化物】達も、話の区切りがついた雰囲気を見せ始めたかと思うと…

 

徐々に…そう、ゆっくりと。

 

この『どこでもない』謎の空間が徐に揺らぎを見せ始め、ソレに応じて【紫影】が仕事を全うしたかの様な開放的な気持ちを見せ始めたではないか。

 

そのまま、最後に再度。

 

【紫影】は、2匹の【化物】達へと向かって口を開き始め…

 

 

 

「では【黒翼】、貴方と交わした契約はコレでひとまず果たしましたよ?ふぅ、やぁっと自由になれますねぇ。『弟子とデュエルして鍛えろ』という、貴方らしくもないぬるい契約はこれで終…」

「いいや、まだ終わってねぇぜ?」

「…はい?」

 

 

 

いや…

 

まだ、終わってはいない―

 

 

 

「【紫影】、貴方には【決島】の他にまだまだ働いてもらう事がある。…いや、蘇らせたのは鷹峰さんではなく私なのだから、寧ろこっちが『本命』だがね。」

「あぁ…なるほど…ふふ、あの【無垢】を倒したという【化物】…いいでしょう、デュエルで私を再度冥界に送り返すというわけですか…生憎、デュエルディスクは置いてきてしまったわけですが…」

「いいや、それも違う。」

「…ほ?」

 

 

 

契約完了に際し、どこかへと消えていこうとした【紫影】を天宮寺 鷹峰が止めたかと思うと。

 

徐に、今度は釈迦堂 ランが【紫影】へと向かって声を投げかけ…

 

 

 

「私は『合格』と言ったはずだよ?【紫影】…死すら自らのアクセサリーと言い張る、捻じれた思想を持つ貴方とのデュエルもそそられるが…ソレは私の『願い』が果たされてから、ゆっくりと味わわせてもらうとしよう。」

「…願い?」

 

 

 

謎の空間の揺らぎを止め、【紫影】に再度『話』を持ちかけ。

 

…一体、ランは【紫影】に再び何を命じようと言うのか。

 

【裏決島】という、ろくでもない最低最悪の地獄を作り出した張本人へと…更なる仕事を命じるなど、とてもじゃないが正気の沙汰とは思えないと言うのに―

 

 

 

 

 

 

そうして…

 

 

 

 

 

「カカッ、そもそもディスク置いてきたのもわざとの癖によ。お前さん、スターヴ・ヴェノム置いてくるのも目的の一つだったんだろ?」

「えぇ、まぁそうなんですが…それで釈迦堂 ラン、貴女の願いとは一体…」

「ふふっ、ゆっくりと説明してあげるよ。折角『仲間』になったのだから。」

 

 

 

 

 

誰も邪魔者が居ない漆黒の空間、およそ常人は存在できない謎の場所で…

 

 

 

 

 

ランは怪しく…そして妖しく、『何か』を待ち遠しく望みながら―

 

 

 

 

 

「さぁ、共に世界を面白くしよう。」

 

 

 

 

 

…と、危なげにそう語り始めたのだった―

 

 

 

 

 

―…

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、遊戯王Wings

ep100
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