遊戯王Wings「神に見放された決闘者」 作:shou9029
「先生…理事長が負けたのって【白竜】じゃないの?」
鷹峰が放った言葉の意味が分からず、思わずルキが聞き返した。
しかし、そのルキの疑問も尤もであり、当時シンクロ召喚使いの頂点に立っていた【白鯨】こと砺波 浜臣が、謎の不調から「天才」と謳われていた今の【白竜】に敗北を喫し、そしてそのまま引退を表明してしまったことは、過去に大きなニュースとなっていたのを覚えているからだ。
それに【白竜】は男性、その名前は鷹峰の言った「ラン」という物では断じてない。
「大人には色々あんだよ。」
「…それは、先生が前に言っていた、「あの人」のことですよね。…まさか理事長にも勝っていたなんて。」
遊良とて、この「ラン」という名は今初めて聞いたが、しかしその人物のことは知っている。何せその人物のことを、絶望していた時期に鷹矢がたまたま鷹峰の話から聞いていなければ、微かな希望を持てずに今まで自分はデュエルを続けていないのだから。
弟子入りしてからも、鷹峰が楽し気に話してくれた化物の話。世界最高峰と名高い【黒翼】である師と、Exを使わないのに勝ったり負けたりを繰り返すことができる唯一の【化物】のことを。…鷹峰のことも、何度も化物と思ったが。
…まぁ、すでにこの町にはいないことも知っていたため、会うことは叶わなかったが。しかし、まさか鷹峰だけでなく砺波とまで接点があったなんて遊良は知らなかった。
そして、当の砺波はと言えば、苦々しい顔をして鷹峰をにらみつけている。
「私の前でよくその名を口にできるものだ。」
「ケッ、勝手に潰れて、そんで調子崩して琥珀のガキにまで負けて…。そんで今お前さんがやってることは、ただのガキの八つ当たりってんだよ砺波ぃ。」
「減らず口を。それと天城君の事は別問題です。私の学園にExデッキを使わない者は必要ない。」
「カッカッカ。それを八つ当たりってんだ。Exデッキを使わない奴に負けたのが悔しくて、Exデッキを使えない遊良を追い出すのはなぁ。」
そして、話が平行線へと流れ始めるが、お互いの主張を曲げる気がない大人二人に対して、現在、遊良とルキにできることは皆無。あまりに格上の人間同士の会話の為、下手に話に入ることもできず、途方に暮れるしかないということか。
―まさに、そんな時だった。
「おい遊良!こんなとこに居たのか!探したぞ!…む?何をしているんだ?」
突如、部屋の外から声が響き、見れば部屋の外には鷹矢の姿。しかし状況を全く理解していない鷹矢は、重苦しい空気にも構わずに部屋に入ってくると、鷹峰を見据えて言い放った。
「なんだジジイ、久しぶりだな。いつ帰ってきたんだ?」
「あぁん?このクソガキ、年上をちゃんと敬えってんだ。ったく、誰に似たんだ可愛くねぇ。」
「親父がキレていたぞ。ちゃんと行先を言ってから行方不明になれクソジジイ。」
「ケッ、てめぇのガキに心配される筋合いはねーってんだよ。」
流石に親族だけあって、鷹峰相手に全く物怖じしていない鷹矢。遊良が鷹峰に師事したときに、もちろん一緒に鷹矢も鍛えてもらっていたのだが、遊良とルキが「先生」と呼んでいても、鷹矢に敬う気持ちは無い様子だ。
まぁ、昔から悪い意味で問題が多いことで有名な【黒翼】ではあるが、世間に知られている以上に親族にかかった迷惑はその比では無いのだろう。遊良も過去に鷹峰が、鷹矢の父親と会うたび常にガミガミ言われていたのを何度も見ていた。
「…天宮寺くん、今は取り込み中なのですがね。見てわかると思いますが?それに、もう授業も始まっている時間でしょう。」
そんな話の途中で急に割って入った鷹矢に砺波が問いかけた。確かに、もう授業も開始されている時間だし、そもそも今来たのなら完璧に遅刻だ。よく遊良がここにいると分かったものだが、当の鷹矢は鷹峰に話すがの如く、全く物怖じせずに砺波に向かう。
「理事長、外まで聞こえていたんだが、遊良が退学とは本当なのか?そんな馬鹿な話は聞いていないぞ。」
「…これだから天宮寺の人間は…そうですが、君には関係のないことでしょう。いいから教室に戻りなさい。」
「いや関係ある。遊良が退学するなら俺も退学にしてくれないと困るからな。」
「鷹矢、お前何言ってんだ?…ん?」
そして、その鷹矢の言葉が遊良には信じられなかったが、まさか鷹矢がそこまで考えていてくれるなんて、一瞬そう考えはしたものの、ふと考えるとこの馬鹿がそこまで考えているわけがなく…
「大体遊良が退学になったら俺の飯はどうなる。誰が洗濯をして、誰が掃除をしてくれるんだ。」
「そっちかよ!」
「…はぁ、ほんとおバカなんだから鷹矢は…」
敬語も使わずそう答えた鷹矢の呆れはてるような理由に、遊良は思わずツッコまずにはいられず、ルキは頭を抱えた。…まぁ、きっと遊良への横暴な決定に対する、鷹矢なりの抵抗なのだろうが、しかしどうにも話の仕方が下手な奴だ。
それに物怖じしない性格は結構なのだが、どうも的を射ない反論に、言われた砺波も思わずため息をつく。
「…はぁ、いくら君が鷹峰の孫でも君まで退学にはするつもりがありません。それに、君は決闘祭の代表なのですから、今退学されても困ります。」
「む?」
すると、砺波が言った「決闘祭」と言う単語が耳に残ったのだろうか、鷹矢はふと考えるような素振りを見せると、再び砺波に向かった。
「理事長、決闘祭の代表は夏休み明けにまず学年選出してから候補が決定するのではないのか?」
「あぁ、確かに他のクラスはそうですが。しかしエクシーズクラスは担当教員からの推薦で、満場一致すでに君に決まっています。エクシーズクラスのトップを入学すぐに倒していますからね。君もそう聞いているはずですが?」
「お、おい鷹矢、それ本当なのか?」
そんなこと、遊良だって聞いていないことだ。遊良が決闘祭に出たいという話をしたときに、鷹矢だって聞いていたはずなのに。
もしかしたら、その時にはこいつなりに気を使ったのかとも考えたが、しかし先ほどの退学云々の台詞や、普段の鷹矢の性格からして遊良に気を使うはずが無いことを思い出す。そして本人も、まるで初めて聞いたといわんばかりの顔をしていた。
「知らん。そういう事は遊良に伝えてくれないと忘れるに決まっているだろう。俺に言われても困る。」
「…君のことでしょう?」
「このクソガキ誰に似たんだマジで。」
悪びれも無く、ただそう言った鷹矢の言葉に嘘は感じず、ただ単純に…馬鹿なだけだった。
「まぁそれはいい。しかしそれならこちらも条件がある。」
「条件?…一体何を言っているのですか?」
そんな鷹矢の言い分に、疑問しか沸かない砺波。決闘祭の代表にまで選ばれているというのに、むしろありがたく思えばいいものを、まるで取引材料を得たかのような鷹矢の顔は若い頃の鷹峰そっくりに見える。下手に若く、そしていつだって要らないことをしでかして周りを迷惑させていたあの頃の破天荒な男にそっくりだ。
「俺に決闘祭に出て欲しくば、遊良の退学を取り消すんだ。」
「…はい?」
「それが出来ないのであれば俺も退学する。」
「…はぁ…いいですか天宮寺君、全く交換条件になっていないですよそれは。…もっと考えてから物を言いなさい。」
呆れた顔をして言い聞かせるように、砺波は溜息をついた。確かに、鷹矢の言ったソレは取引でもなんでもない。鷹矢の決闘祭の代表選出は、いわば学園から鷹矢への依頼ではなく、学生としての出場権利を学校が与えただけ。別に鷹矢が出なくとも、決闘祭に出たい生徒は数多く、また他の生徒を選出すればいいだけに過ぎない。何せ、鷹矢に敗れた元エクシーズクラストップの3年生も、実力自体なら申し分ないのだから。こんな条件は、砺波からしたら痛くもなんとも無いことだ。
―しかし、そんな鷹矢の軽い条件を、重い取引材料に変えられる人間が、ここに一人。
「カッカッカ。面白れぇこというじゃねーかクソガキ。」
「鷹峰…何を考えているのですか。」
「いや何、どうせアレだろ?俺の孫が辞退したって他の生徒出せばいいだけだもんな、お前はよ。」
「そうですが、それが何だというのです?」
含みを持たせてそう言った鷹峰から感じる圧力が、より一層強くなる。この男がこういう顔をするときは決まって、ろくでもない事を仕出かそうとしているときに違いない。それを経験から砺波は感じるが、それを気にせず鷹峰は続けた。
「…じゃあ他の生徒も全員出られなくなっちまったらよぉ、お前さんは困るってわけだ。」
「なっ!?鷹峰、あなた何を!?」
鷹峰の言葉に、初めて焦った声を出した砺波。
しかし、鷹峰の言葉の意味を理解できていない遊良達と違って、砺波にはそれの意味することがはっきり分かってしまう。それは、決闘祭への参加は、いわば生徒からすれば権利でも、運営する学園側には【決闘世界】から課せられた義務であって、それに学生を出さないことは、その決闘学園の必要の無さを意味する。
裏では莫大な金の動くイベント、各界の注目も高く、そして何より超巨大決闘者育成機関【決闘世界】が、そんな事態になった学園を許すはずもない。そうすれば、下手をすれば責任者である自分自身の命すら危ぶまれることとなるのを、砺波は理解している。
構成員になること自体が生易しい道ではなく、しかし入れれば莫大な富と安寧。それに反して、望む結果が出ないのならば必要なく消される。
―世界最大の超巨大決闘者育成機関【決闘世界】とは、そういう所なのだから。
「カッカッカ、俺がこの学園の生徒全員に引導を渡してやる。お前さんみてーに、トラウマになるくらいぶっ潰して、んで全員仲良くデュエルなんて出来ねぇ体にしてやんよ。まぁそんな事になったら、確実にイースト校は大変だぁな。」
「そんなことを…私が許すとお思いで?」
馬鹿げた話だ。しかし、それを本当に出来てしまうが故に、それを本当に実行しようとする気があるが故に、笑い飛ばして好きにさせるわけにはいかない。なまじ権力と実力を兼ね備えた悪人ほど、性質の悪いものはない。
何せ、この男と普通に話すことが出来る学生がこの学園に居るはずもなく、学生程度など、本気で中てられればトラウマレベルではない。下手をすれば廃人だ。
圧倒的強者とは、人を導く道に進むものもいれば、人を壊すことになんの抵抗もない者がいる。鷹峰も、今でこそ遊良たちを弟子と言ってはいるが、本来は後者。なんの悪びれも無くそう言う鷹峰を、苦々しい顔で砺波は睨んだ。
「ジジイ、正直引いたぞ。性根が悪い。」
「私も…先生ってば心が汚い。」
「流石にドン引きです。」
「うるせぇ!ガキはすっこんでろ!」
自分の弟子にまで引かれているが、しかしそんなことなどお構いなしにこの男ならやりかねない。虚偽はともあれ、過去にプロで彼に潰され力の差を思い知って、引退はまだしも自ら命を絶った人間もいたという噂だってある。学生レベルを廃人にしたところで、なんの罪悪感も無いだろう。それを咎められない権力を持っているのが余計に。
「あなたは…こんな少年一人の為に他の子ども達を犠牲にしてもいいと?」
「おう。どうせここの奴のほとんどが雑魚以下だ。俺とは無関係なガキなんて消えたってどうでもいいだろ?それに上がってこれねぇ奴は消し飛ばしても問題ねぇってんだ。上がれる奴を残そうとして何が悪い。」
「フッ…本気で天城 遊良が上がれると思っているんですか?Exデッキも使うことも出来ないこんな…」
「何言ってやがる。Exデッキの有無に強さが関係ねぇことはお前さんがよくわかってんだろが。」
そして鷹峰のその言葉に、砺波の口が閉じた。認めたくないが、知ってしまっている。釈迦堂に敗北し、Exデッキの有無に関係なく強者は強者なのだと。
それでも、認めるわけにはいかなかったのだ。鷹峰と違って、自分の歩んできた道を、考えを、簡単に変えられるほど適当な人生を過ごしていない。だからこそ、王者を引退した後も、ありとあらゆる…考えられる手を全て使ってでも釈迦堂を調べた。その名も、その人生も、その痕跡も、その全てを。
―彼女を否定するために、彼女を降すために。
鷹峰の手は借りなかった。自分がこうなってしまった元凶の一つであったし、元々ソリも合わず仲も悪い。自分で全てを解決したかった。
しかし、いくら調べても知りえたのは表面上のことだけ。家族もおらず、一人施設に居たことしかわからず。またその施設の責任者も、釈迦堂を知る大人の全てがこの世にはいなかったため、それ以上はわからなかった。
【白竜】に敗れた後、折られた心が癒えてきた頃。研鑽を再開し、また強くあるようにも努めてきた。それでも、再び相まみえることはなかったが。
「…私は、あなたがなぜこの子にここまで入れ込むか不思議でたまりませんね。他人を気遣うなど、あなたらしくもない。」
「カッカッカ。気遣ってなんてねーさ。ただ楽しみなだけだ。」
そう言って、鷹峰は後ろに控える己の弟子たちを見る。
…一人は、言うことを聞かない才能溢れるクソガキ。
…一人は、とある理由から本気を出せない少女。
…そして一人は、Ex適正が無いのに諦めないガキ。
そんな弟子たちを見る鷹峰が、これまでに見たことのない顔をしていることに砺波は気が付く。不本意ながらも長い付き合いだが、まるで本当に保護者面をしているその顔は、全く持ってこの男に似合っていない。それを感じつつ、砺波は言った。
「楽しみ?一体何をしようとしているのですか。」
「長げーこと決闘してっけどよ、相手になる奴がほとんど居ねーのはつまんねーもんだ。ランだってフラフラどっか行きやがるから偶にしかヤレねーしよ。…んだったら作りゃあいい。俺が鍛えて、俺の相手になるやつをよぉ。それがExデッキを使えねぇガキでも、幸いExデッキが無くても強ぇ奴がいるのは知ってたからな。ついでにもう何人か鍛えたが、相手になる奴が増えれば万々歳ってなもんだ。」
それは自己満足の為の行為ではあったが、そう言う鷹峰も、遊良達からすれば昔から言われてきたことであり、特に今更何も感じていない。理由はどうあれ、過去に自分を見捨てずにいてくれたこの人が、今でも師であることに変わりはないのだから。
…流石に、学生全員にトラウマを植え付けようとするのはやりすぎだと思うが。
「それでどうすんだよ。他のガキ共もろとも遊良を退学させるか?お優しい理事長先生よぉ?」
「…ふむ。」
まさか孫の言った戯言に、下手な力を持った輩が本気になるとは。しかし、それを簡単に笑い飛ばしてしまえば、確実に学生はおろか、今度は【決闘世界】によって自分の命すら危うい。釈迦堂を潰すまでは死ねないというのにと、砺波は思考を巡らせて、そして考えが纏まったのか、鷹峰を見て言った。
「ではこちらからも条件があります。当然呑んでくれるんでしょう?」
「やぁっと同じ土俵まで降りてきやがったな。ったく、椅子の上で踏ん反り返ってやがるから頭までガチガチに固まっちまうんだよ。…何だ?」
「あなたの要求を呑む代わりに、現時点での退学は一旦保留にしてあげましょう。しかし、それも決闘祭が終わるまでです。」
それは、確かに遊良の退学を取り消してはくれている。しかし、単純に退学が即刻か年明けに伸びるかの違いだ。それでは、根本的な解決にはなっていない。鷹峰も、それに食い下がる。
「ダメだ。それなら今退学と変わらねぇ。退学処分を取り消さねぇと、どっちみちヤってやる。…ったく、ホントに遊良を追い出してぇんだな。」
「…ふん、当たり前でしょう。Exを使わないデュエルなど、見ていて虫唾が走るだけだ。」
「…じゃあもう一個サービスしてやるか。…もし遊良が決闘祭で優勝でもできなきゃ、俺が引退でもなんでもしてやるよ。」
「…なっ!?」
「引退、してやんよ。カッカッカ。」
そして、鷹峰の口から出てきたその言葉に、聞いた砺波も思わず絶句の表情を隠せなかった。いや、砺波だけではない。それを聞いた遊良達さえも、突然の言葉に慌てふためく。
「いったい何考えてるんですか先生!?」
「ちょっと!そんなこと条件にいれちゃっていいの!?」
「そうだ!俺も出るんだから遊良が簡単に優勝できると思うなクソジジイ!」
「鷹矢…今はそうじゃないだろ…」
一人の的外れな心配を除いて、遊良とルキには、師が何の躊躇もなく自身の人生の軌跡を閉じることが信じられなかった。砺波とて同様で、まさか弟子を庇うために出す条件にしては、あまりにも不釣り合い。世界に轟く一人の王者と、出来損ないの学生を天秤にかけるなど、どう見ても条件として釣り合いが取れていないというのに。
「王者の座を降りてでも…そこまでの価値がこの子にあると?」
「さぁな。そこまでかは俺にもよくわかんねぇ。でもまぁ、切り捨てるには早いだけってんだよ。」
「…なるほど。」
それを聞いた砺波は、またもや考える素振りを見せ始める。まさかこの男が他人の為にここまでのモノを賭けてくるとは思ってもみなかったのだろう。しかし、歴戦の王者の一人に、自分の手で引導を渡してやれることも面白くはある。天城が優勝など出来るはずがなく、どうせ退学にしてやるつもりなのだ。それなら、特典が多いことに越したことは無い。
そして、再び向かいあう。
「あなたがそこまで入れ込んでいるのなら、益々退学にしてやりたいですね。それと、あなたのデュエリスト人生にも私は終止符を打ってやりたくなった。」
「カカッ、そう来なくちゃぁな。」
そういうと砺波は、渇いた笑いで楽しげな鷹峰を見てから、懐からディスクを取り出すとどこかに電話をかけ始め、一呼吸おいて話し始めた。
「私です。今進めている天城 遊良の退学手続きを一旦止めます。…二度も言わせないで下さい、理由はあなたが知ることではありません。…あぁ、でもすぐに退学させられるようにはしておいて下さい?どうせすぐに必要になりますので。では…。…はい、これで条件は呑みましたよ?まぁ、天城君が決闘祭に出られなかったら、その時点で彼は退学、あなたもそれで引退ですけども。」
「構わねぇぜ。あと残ってる出場枠は2枠だったか?」
「えぇ。我が校きってのシンクロ使いと融合使いを送り出すつもりですが。現在選出中です。」
そう、イースト校では決闘祭の代表を送り出すにあたり、それぞれの召喚法から1名づつを出場させている歴史がある。別に、決闘祭のルールに召喚法での人数制限などなく、全て同じ召喚法のクラスから選出してくる学園だってあるのだが。
それを知ってか、鷹峰は続けた。
「じゃあもう一つ条件だ。代表の選出は平等にやれ。その結果でおんなじ召喚使う奴が被っても、Ex適正が無い奴が勝ってもだ。」
「おや、条件は呑んだのだし、もうあなたにそこまで決められる筋合いはありませんが。後は学園側の事務ですので。」
「いいからやれ。…テメーも潰すぞコラ?」
「あなたが、私を?…フッ、頭と同じで冗談のレベルまで低いとは。面白くも何ともない。」
―…
「んだゴラァ!!テメェ下手に出てりゃぁ調子乗り腐りやがって砺波ゴラァ!」
「貴様こそいい加減ここから消えろ!私の学園で大きな顔をすることが目障りでならん!」
そして、今まで溜め込んだモノが決壊したように、胸倉をつかんで威嚇しあう大人二人。しかし、鷹峰にしてはよく持った方だ、砺波の態度に最初からキレていてもおかしくはなかったのだから。
そんな師と理事長を見て、呆れながらも遊良達は違った意味で為す術なく固まっているだけだった。
―…