遊戯王Wings「神に見放された決闘者」   作:shou9029

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第2章
ep52「第2章プロローグー報いの果てに」


 

 

―荒廃

 

 

それを、ここまで的確に表すことが出来るのかと言えるほどに…

 

かつて『街』であったであろうこの場所には、崩れた瓦礫と壊れた建物の残骸、そして悲しげに降りしきる濁った雨しかそこにはなく。

 

人の気配が一つも感じられないほどに、くすんだ空気だけが漂っているかつて街だった今の『ここ』は、もう既に人の生きられない世界なのだと…誰の目にも、そうはっきりと示しているようにしか思えないだろう。

 

…まぁ、今の『ここ』には、ソレを視認出来る命を持った者すら見当たらないのだが。

 

 

 

それは、まるで壮絶な戦いの後のような…または一方的な蹂躙のような…

 

 

そんな、この『灰色』だらけのこの場所には、空に浮かぶ雲すら白さを保てないかのよう。

 

 

 

一体『ここ』で、何が起こったのか。

 

 

 

それを聞こうにも、この場所には人どころか獣も虫も草も…最早、生物と呼べそうなモノが見当たらず。

 

今にも全てが消え去ってしまいそうな不穏な空気と、崩壊した『灰色』の世界しか『ここ』にはありはしないのだ。

 

 

 

―そんな『崩壊』したこの世界の真ん中に…

 

 

 

静かに、『人』の声が響いた。

 

 

 

 

「終わったよ…やっと…」

 

 

 

 

どこか悲しげな…それでいてどこか儚げに呟かれたこの声。

 

しかし、その感情の全てをその声から感じ取ることは出来ない。何故なら、辛うじて『男』だと分かるような、そんな『ノイズの入った声』だけがこの荒廃した『ここ』に放たれていたのだから。

 

 

…黒いフードを深く被り、決して顔を見せないようにして。

 

 

その声を漏らしたところで、返ってくるモノなど無いというのに…それでもフードの人物は、まるで独り言のようにして声を出すだけ。

 

 

 

「ようやく終わった。…でもまだだ…まだ消さなくちゃいけないモノが残ってる…まだ、終わらない…まだ、終われない…」

 

 

 

手を広げ、天を仰ぎ、悲しげに落ちてくる濁った雨すら心地よさそうにして、静かにこの滅びた『街』を哀れんで。

 

 

いや、哀れんでいるのは『街』では無いのか。

 

 

足元に転がっている瓦礫の海や、周囲で崩壊している建物の残骸や…

 

これだけ大きい街だというのに、生命の気配が全く感じられないこの場所にただ一人立ってはいても、このフードの奥から発せられる声には『街』への感情など篭ってはおらず。

 

もっと、別のモノへと向けたような…しかし、他の誰にも決して分かるはずも無いその感情は、他人など居ないこの世界でただ漏れ流しているだけ。

 

 

 

 

『…未練が、ありますか?』

「…いや、未練なんて無い。こんな……こんな『……』がいない世界なんて。」

『…そうですか。』

 

 

 

そして、フードの男のノイズの声に応えるようにして、突如として『誰も居ない』空間から聞こえてきた、この実体の無い空虚な『もう一つの声』がフードの男へと届けられたものの…

 

フードの人物は、ソレとの会話がまるで当然の事のようにして、ただ自らの空虚な感情を虚無の空間へと向けて吐露するだけ。

 

聞いている者など他には居らず、聞かせたい者など他には居らず。

 

人が居らず、命もあらず、生きとし生ける者の気配が全て消え去ってしまっているこの空間で…

 

フードの人物はとても悲しそうに、しかしとても憤慨したように、ただ空虚な『声』にノイズの言葉を返しているのみ。

 

 

 

 

「…疲れた。もう、疲れたよ。でも、終わることなんて出来ないんだ。終わらせることなんて出来ない。だって…それが…オレの…」

『努々忘れることなかれ…自分が一体何なのか…』

「…またそれか。いい加減、それはもう聞き飽きたよ。」

『…では、参られますか?『………』へ。』

「あぁ、すぐにでも始めよう。ソイツの事を考えると虫唾が走るんだ…憎い…不愉快…とても、我慢なんて出来ない。」

『…わかりました。』

 

 

 

―そして、消える。

 

 

―消え、始める。

 

 

 

『声』がそう言ったその瞬間、そしてフードの人物がそう言ったその瞬間に、この場から跡形も無く、『何もかも』が塵となって無くなっていくではないか。

 

 

その、この場に立った男だけを残して、見えるもの全てが細かな粒子となって消えていくその光景は…

 

 

まるで男の声に反応して、この世のモノというモノが存在していることを『否定』されているかのようにして、塵よりも微細な粒子となってその形を崩していくのみ。

 

 

―それは文字通りの、『消滅』

 

 

そして、『全て』が消え去った後…

 

 

 

『何もない空間』に、立っているのか浮いているのか…

 

とにかく、全てのモノが消滅したただの『虚無』に一人だけ居たフードの男は…

 

 

無感情に…しかし、怒りと悲しみ、絶望と怨嗟が溢れ出ているかのような声で、再び静かに口を開くだけ。

 

 

 

「アイツを…消し去る…全てを…消し去る…絶対に…許さない…」

 

 

 

―そうして…

 

 

 

その男もまた、ゆっくりとその姿を消し去っていった…

 

 

 

―…

 

 

 

 

 

何が起こり始めているのかを知る者は…

 

 

 

 

 

―未だ、誰も居らず

 

 

 

 

 

―…

 

 

 

 

 

 




遊戯王Wings、第2章開始となります。


第2章、第一話


明日、更新です。


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