ソードアート・オンライン ~天翔る竜騎士~ 作:ふとっちょマックス
「――――ごめん」
ほんのさっきまで、《実》を叩き割る瞬間まで
如何してこんな事を! と俺は直ぐに疑問と怒りが複雑に混じった糾弾の声を上げたかった。隣に居るキリトだって、少なくともそう思った筈だ。
だけど、今眼前に広がる現実が、俺の精神を狂わせる。
コペルの向こう側から幾つも幾つも現れる、カラー・カーソル。キリトとコペルの情報が正しければ、あれは先程周囲に放たれた独特な煙によって集結しようとしている、リトルネペントの大群だ。エリア中のリトルネペントの大半が此処へ向かって来ている。視界から判断するにその数、約三十体。
安全を確保するなら此処で逃走の選択肢を選ぶのが常套手段。しかし奴等の
コペルなら《実》を割ればこうなると、理解していた筈だ。なら如何して?
元βテスターとしての知識が、彼の頭の中にはあった筈だ。なら何故こんな事を?
様々な憶測と疑惑が頭の中を幾度も過っては消失する。だけど本当に分からない。さっきまで共に闘い続けて来た仲間が、如何して俺達を裏切ったのか理解出来ない。一体何故………。
悩み続ける俺や隣に立ちぼんやりとコペルを見つめるキリトにも視線を向ける事無く、コペルは直ぐ近くの藪へと飛び込んだ。その時一瞬だけ見えた表情の色に、絶望と恐怖の色は無かった。恐怖の波に呑み込まれる事無く、彼はまだ生きようと抗いている。
「―――無駄だよ……」
不意に呟いたのはキリトだ。意味を聞かなくともその言葉の真意は分かる。周囲を見渡せばありとあらゆる方向からリトルネペントが徐々に徐々に迫っている。この包囲網を抜けようと、敵と敵の隙間を潜り抜く事や県で押し切って行くのは―――今現在のレベルでは―――無理に等しい。しかしそれを知っている筈であろうコペルは立ち止まる素振りも無く進んで行く。まるで、確定的な自信があるかの様に。
とそう考えていた矢先、コペルのカーソルが突如として―――――
「なっ……消えた!?」
流石の俺でも、疑問の声を上げずにはいられなかった。
何かのアイテムを使い
「――――《
「特殊、効果?」
冷静に俺の疑問に答えるキリト。聞き返すと彼は静かに頷き言葉を続ける。
「プレイヤーからはカーソルを消し、モンスターからはターゲットにされない効果。コペルは二つ目のスキルスロットを空けてたんじゃない。俺とカインに会う以前に、既にスキルを習得してたんだ。だからあの時背後に居たコペルに気付けなかったんだ………」
「じ……じゃあ、コペルが《実》を割ったのはただの事故じゃなくて、まさか………」
元βテスターではない俺でも、MMORPGはこれまで幾度プレイしている。だからこそ《隠蔽》スキルを知って漸く理解出来た。コペルが如何して《実》を割り、俺達を置いて此処から逃亡したのかを。それは単純明快な事実。
「俺達を、《MPK》で
《MPK》―――――通称、"モンスター・プレイヤー・キル"。モンスターを使用して、自身の手を汚す事無く他プレイヤーを故意に殺害する行為を指す。
元来《PK》には二つの種類がある。一つは直接的に他者が他者を殺す場合。もう一つはモンスターを利用して他者を殺すこのMPKだ。このSAOに限定した事では無く、古いMMORPGからこの手段は存在していた。
人が集まれば社会ができる。それMMORPFGでも同じ事。そしてその中での実利を求めて、あるいは感情的な理由から、他人を害する行為を行おうとする動機は常に、昔から存在している。コペルも例外ではなかった。
動機はキリトの持つ《胚珠》。今キリトは胚珠をポーチの中に入れている為、もし死ねばその場でドロップするのは明白な事実。コペルはそれを手に入れて村に戻り、クエストをクリアする……。
「………馬っ鹿野郎がッ」
遂に姿を現し始めたリトルネペントの大群が刻一刻と迫る中、俺は表情を強張らせ呟く。
―――コペル………お前は最初から自分の事だけを考えたんだな。生きる為に、生き延びる為に俺達を利用した。最初から協力する気なんて、一片も無かったんだな。
心中は怒りと憎悪で膨らんでいた。俺達を裏切り利用し、自分だけが生きようなどと………許せる筈も無かった。
けど、隣に立つキリトは冷静な表情をしていた。まんまと"罠"に嵌められたと言うのに、静かに佇んでいる。
「コペル……知らないんだな」
不意にキリトは小声で呟いた。まるで、語り掛けるような口調で。
「《隠蔽》スキルは確かに便利だ。だけど万能じゃない。一つだけ大きな《穴》があるんだ。あれは
「………!」
彼の言葉に偽りはない。その証拠に、リトルネペントの大群の一部がコペルが飛び込んだ藪の中へと進んで行く。その速度は凄まじい。幾らコペルでも引き離す事は不可能だ。
無言のままキリトは後方へと振り返った。前方のリトルネペントの大半はコペルの方へと進んで行くので数は前方程多くは無い。だがそれでも、此方に進むリトルネペントが存在するのもまた事実。
「――――カイン」
キリトは振り向く事無く俺の名を呼ぶ。それが何を意味するか、馬鹿な俺にだって直ぐに理解出来た。
「分かってる。――――後ろは任せな」
「あぁ………助かる」
互いに背中合わせの状態のまま、俺とキリトは迫り来るリトルネペントを真っ直ぐ見据える。
しっかりと握りしめるスピアの刃は購入した時よりも随分と汚れ、刃こぼれしている。長い柄の部分も傷が目立つ。この状態で大雑把な扱いをすれば、その瞬間にボキッと折れる事は確定的に明らかだ。
故に放つ一撃は確実に弱点部位を狙い、その一撃で仕留めなくてはならない。もし出来なければ手痛いカウンターを受け――――
最初の一匹が前方まで辿り着くと同時に、コペルが飛び込んだ藪の方向からリトルネペントの咆哮とコペルの咆哮が轟いた。きっと、あちらでも闘いが始まったのだろう。
しかしもう、思い止まる事は出来ない。俺は再び槍を握りしめ、眼前に迫り来るリトルネペントの大群に全神経を集中させた。
あれから何体のリトルネペントを撃破したのか、何回 《スラスト》を発動させたか、相手の繰り出す攻撃を何回避けたか………この戦闘全ての詳細はきっと、後から思い出そうとしても決して思いだす事は無いだろう。
無駄な思考は決して抱えない。ただ只管に突き続き、ただ只管に攻撃を避ける。脳からアバターに送る命令はそれだけしかない。
ネペントの攻撃モーションを視認すればそれが何処に繰り出されるかを予測し、放たれる攻撃を最小限に避け、カウンターの《スラスト》で弱点部位を穿つ。
だがそれでも、完全に避け続ける事は不可能だ。ツルがジッと掠る時もあり、巨大な口から放たれる腐蝕液が地面に着弾すると共に飛沫が舞い、その一部が身体の至る部分に直撃する。それと同時にじわりじわりと減る、俺の
――――死にたくはない。
そう、死にたくはない。いや、
"本当の現実"に還らずにこの"
だから俺は闘っている。生きる為に、此処から絶対に生き延びて還る為に、槍を握りしめて精一杯の力を込めて突きを放ち続ける。躊躇や迷い等、一切ありはしない。
だが………"これ"は何だ? 心の奥底からじわじわと溢れて来る、"この感情"は。この様な絶体絶命の状況下で、一体何の"感情"を抱くのだろうか?
これは……"恐怖"? "絶望"? 違う……これはもっと単純な………楽観的な"感情"……。
まさか、"幸福感"?
このゲームを始めた事に後悔しながら、先程まで"現実逃避"の如くネペントを狩り続けていた俺は、この様な生と死の淵で、"幸福"を感じているのか?
いや、違う。俺は――――"満足"しているのだ。
握る槍は"偽りの現実"の中では本物。身体は偽りの姿でも此処ではそれが真の姿。この身体は現実(リアル)とは違う、この世界での"
その時に気が付いた。俺はただ我武者羅にこの世界で"生きよう"とした訳じゃないと。
俺はこの世界で"生きて"、そして"強くなりたい"んだと。更なる高みを、己の限界を超えたいと。
知らぬ間に俺は、一種の強迫観念に囚われていた。だけど嫌な気分じゃない。確かにレールを脱線すればその先に待つのは"死"だが、脱線しなければ、レールが続く限り突き進んでいく。
その道が終わるのはきっと―――――"
「だ……ぁぁぁあああああ!!!」
"必ず生きて、そして強くなる"。
ただ"生きる事"から昇華した新たな思いを抱きながら、俺は全力の《スラスト》を放つ。
漆黒の線が虚空に刻まれる直前にはもう、ネペントの捕食器は地面に崩れ落ちていた。そして殺気立ちながら新たなネペントを視認しようと索敵を開始した瞬間――――突如耳に響く、ポリゴンの破砕音。
しかしモンスターの破砕音とは違う、鋭い破砕音だった。モンスターではないとしたら、考えられるのはただ一つ――――
「………」
声を上げなければ、その破砕音があった場所へ駆け寄る事もしない。
破砕音を耳にした直後に、眼前現れたネペントを撃破した所で漸く俺は構えを解き、その破砕音があった場所へ視線を向ける。
藪の中から現れる七対のネペント。それ以外のモンスターの姿は無い。当然、
「―――――お疲れ」
俺の隣に佇み、俺が向けていた場所に視線を向けたキリトは小さく呟いた。その言葉は俺に向けてではなく、一人のプレイヤー――――コペルに向けての言葉だと理解するのは、ほんの一瞬で充分だった。
そう、彼は生き残る為に俺達を騙し利用し、そしてネペントと闘い、"死んだ"。同時に彼を操っていた一人の人間もまた、ナーヴギアによって脳を焼き切られる"処刑"を受けたのだろう。尤も、それを確かめる術等ありはしないが。
最初に比べてネペントの大群は、大分個数が減っていた。このまま逃走を図る事も不可能ではないが、隣に立つキリトはその様な素振りを見せはしない。かく言う俺も、このまま逃げるのは
俺とキリトの視界の先に映る物はきっと同じだ。頭の上に真っ赤な《花》を咲かすネペントを、俺達は見ている。
二体目の《花つき》のネペント―――――裏切りなどせず、俺達と共に地道に乱獲を続けていたらきっと、コペルも自身の《胚珠》を得たに違いないだろう。しかし今更俺が如何思っても、それを選んだのは彼自身。全ては彼が選んだ事なのだ。
HPは二人とも少ない。カウンターを受ければ即死のHPだ。
しかし俺とキリトの表情に焦りや恐怖の色で染まる事は無い。腐蝕液を放とうとしている二体のネペントを前に俺達は駆け出し、ほぼ同時に二体を撃破。
そして僅か数十秒で残る五体を撃破し、戦闘を終えた。
コペルが《ログアウト》した場所にはまるで遺品の如く、スモールソードと円盾が転がっていた。ほんの数分前までコペルと言うキャラクターはこれを装備し闘っていた。最後の時まで、"生きる事を諦めずに"。
キリトと俺はその剣と円盾を運び、周囲の木々の中で最も大きな樹木の根元に突き刺した。そしてその剣の近くに、彼が欲していた《胚珠》を置いた。
「お前のだ、コペル」
「……お疲れさん、コペル」
告げると共に、キリトは屈んでいた身体を起こし踵を返す。
そのぼろぼろになった背を目にしながら、俺は黙って後を追った。
「凄いな………それが報酬武器か」
「あぁ……」
あれから数十分後。モンスターとも遭遇(エンカウント)する事無く、俺とキリトは村―――ホルンカの村と言うらしい―――に辿り着いた。村の中央には既に他のプレイヤー達―――恐らく元βテスターが大多数だろう―――もおり、俺とキリトは気付かれない様に依頼主の居る家へと向かった。
家には一人の女性が何かをグツグツと煮込んでおり、キリトはその女性に《リトルネペントの胚珠》を差し出した。何度も何度も女性は頭を下げた後、彼女は報酬武器である片手剣をキリトに授けたのだ。
その剣は見るからに重量がありそうだった。紅の鞘に包まれたそれは見事な存在感を醸し出していた。片手剣にはあまり興味のない俺だが、一瞬欲しいと思ってしまった程だ。
そのままキリトはこの家を飛び出して行くのかと予想していたが、彼は直ぐ近くにあった椅子に座りこんだ。恐らく先程の戦闘で、かなりの気力を削ってしまったのだろう………俺も彼の隣の椅子に座り、疲労に支配された身体を休める。眼前では今も尚、この家の主である一人の女性が何かをグツグツ煮込んでいる。
「………なぁキリト。あれ何を煮込んでるんだ?」
「確か………市販の薬草を煎じてるらしい。何でも、娘を病気から治す為に。だけどそれでも治らなかったから、あの《胚珠》が必要だったそうだ」
「……成程ね」
俺と同じく疲労困憊の状態であるキリトに、先程彼が受けていたクエ《森の秘薬》の概要を教えて貰っうと、視線の先で薬を煎じていた女性の挙動が変わった。木製のコップを取り出し、それに鍋の中身をおたまで注いだのだ。
ほのかに湯気が立つそれを女性は大事にそうに持つと、奥のドアへと向かって行った。
するとキリトは無言のまま立ち上がり、その方向へと歩き始めた。如何してあの女性の後を着いて行こうと彼が思ったのかは理解出来ないが、一人此処に残るのも何だか疎外された気分になる為、俺も立ち上がりキリトの後を追った。
女性が開いたドアの向こうにあったのは、一つの小部屋だった。壁際にはタンス、窓際にはベッドしかない。誰かの寝室である事には間違いなさそうだ。
そのベッドに横たわるのは、顔色の悪い少女ただ一人。あの子がこの女性の娘で、病気を患っている本人だろう。母である女性の手によってゆっくりと起き上る少女。キリトはベッドの傍に立っているが、クエをクリアしていない俺はキリトよりもやや距離を置いて、壁に凭れ掛って腕を組み、事の行く末を見届ける。
「アガサ。ほら、旅の剣士様が森から薬を取って来て下さったわよ。これを飲めば、きっと良くなるわ」
「………うん」
年相応の可愛らしい声と共に差し出されたコップを受け取り、両手でそれを支えながらゆっくりと飲み干す。飲み干した瞬間に彼女の顔は一気に太陽の如く輝き、病気だったのが嘘の様に元気溌剌になる――――等と言う、まるで童話のオチの様な展開にはならなかった。だけど僅かだが、彼女の顔には輝きが戻っている様にも見えた。
そして少女はコップを女性に渡すと、キリトの方へと視線を向け、小さな口で感謝の言葉を紡いだ。
「ありがとう、お兄ちゃん………」
「………あ………」
彼女の感謝の言葉に対しキリトは何の言葉も返さず、それどころか大きく両目を見開いた。
お礼の一言ぐらい言ったら如何なんだ、と言おうとした瞬間、彼の身体は大きくよろけ、ベッドに両手を置くとそのまま床に膝を着いたのだ。慌てて俺はキリトに駆け寄る。
「ど、如何したんだキリト。いきなりお前………」
問いには答えない。代わりにただ低い声を漏らし、全身を震わせ続けるだけだ。
コペルの裏切りにも慌てる事無く冷静に対処した彼が、突如として悲しみの感情に包まれたのか―――――それはきっと、先程のアガサの言葉が原因だ。あの『お兄ちゃん』と言う言葉………。
これは憶測だが、もしかしたらリアルのキリトには弟か妹が居るのだろう。でなければ、先程の言葉に対してこの様な反応を見せる事は無い。そして思ったのだ、その子に"会いたい"のだと。俺も珪子(シリカ)が居るから、その衝動は痛い程良く分かる。"大切な人に会いたい"と言う衝動は、この世界に閉じ込められた人間ならば誰だって思う筈だろう……。
「………どうしたの、お兄ちゃん?」
無垢なる声でアガサは呟き、小さな掌でキリトの頭を撫で始めた。何度も何度も。俺はその光景をすぐ傍で見守り続けた。キリトが泣き止むまで、ずっと―――――。
「――――気は済んだか?」
「あぁ………えっと……」
「心配しなくても、お前が泣いてた理由を問い詰めるつもりはないよ。大体予想はつくからさ」
「………すまない」
「謝るなって。誰だって、悲しい時には泣くもんだ。それが人間の本質だからな」
アガサの家から出た俺とキリトは、村のはずれの野原に佇んでいた。
キリトは暗い表情のまま、体育座りで俯いている。対し俺は大の字で横たわり、上空を見上げていた。
「……お前も会いたいんだな、家族に」
「……あぁ、会いたい。今直ぐ……会いたい」
「俺も会いたい。母さんに、親父に。妹と一緒に本当の家に帰りたい」
「……妹………?」
首を傾げ疑問の表情を浮かべるキリト。
「実はさ」俺は起き上り、キリトの方に顔を向ける。「このゲーム、妹と一緒にダイブしてるんだ」
「妹………妹さんと、一緒に?」
「あぁ。二人で喜んでこのゲームをプレイした直後にこれだ。もう帰れないって言われてアイツ、泣き出すからさ………凄い後悔してんだ。こんなに妹を悲しませるなら買わなきゃ良かった、って」
「………」
今の俺の気持ちを吐露し、遣る瀬無い気持ちを紛らかす様に俺はまた上空を仰いだ。
すると「……俺も」と、キリトは不意に言葉を紡いだ。
「俺も、妹が居るんだ。まぁ、従妹なんだけど………」
「成程ね。じゃあさっきのあれは、あの子の言葉を前に言われたんだな。その妹さんに」
「………」
キリトは答える事はせず黙り込んでしまった。もしかしたら心中でその妹さんの姿を、思い浮かべているのかもしれない。だとしたらこのままこの話題を続けると、更に彼を悲しませてしまうと感じた。
何か話題を変えようと必死に模索した結果――――一つの言葉が、勝手に口から飛び出した。
「―――なぁキリト。もし良かったら……"友達"にならないか?」
またしても俺はしまった、と心の中で後悔した。初めてキリトと出会い彼に着いて行く事になったのも、口から出てしまった突拍子も無い言葉が原因だった。それを二度も繰り返すとは………。
当然キリトは俺の方を向いて怪訝そうな表情を浮かべた。俺は慌てながら言葉を続ける。
「い、いや、此処でお別れってのはあまりにも寂しいし、せめて相互でフレ登録しようかーと思ったんだが………駄目か?」
「………」
やはり直ぐに答えは返っては来ない。あの時は一人でも多い方が効率が良かった為に承諾してくれたが、今回に限ってはそう上手くはいかないだろう。
心中で諦め始めた時、キリトは小さく笑うと共に口を開いた。
「……良いよ。色々とカインには世話になったし、その………お前と居ると楽しそうだな、って思えたから」
「……マジで?」
「あぁ、嘘なんかじゃない。マジ、だ」
そう言ってキリトは、右手を差し出して来る。それが握手を求める合図だと理解した俺はすぐさま左手を差し伸ばし、固く握り合った。
「へへっ……お互いに妹を持つ同士、これからも宜しくな。キリト」
「いや、だからこっちは従妹だって……まぁ、宜しく。カイン」
こうして俺とキリトは、"友達"になった。
だけど俺はこの時から薄々と感じていた。この関係が何れ、"親友"にまで発展する事を。
こうして俺の、この"
明日も始まる。俺の、この世界での"物語"が――――。