もはや人間ですらない俺はどうすればいいでしょう! 作:アヴェストロ
とても励みになります!
~前回のあらすじ~
バル「あー、社畜つらいわー」
グレ「よっしゃ、基地にいるお嬢様捕獲作戦開始!」
オル「起動しないとはどういうこった!? ああ!?」
バル「面倒だから(鼻ほじ)」
クー「お願いします! 私のために戦ってください!」
バル「まかせろ」
ミカ「さっさとかたずけるよ」
分かりにくかったらすいません。
ギャラルホルンに所属する、実働部のクランク・ゼントは戦慄していた。
元教え子たるオーリスがやられたことに怒りを感じてはいるが、指揮官として出る時が遅かったからMW隊にいらぬ損害を出した。
それは人が生き死にする戦場にとって、些細なことであった。
それ以上に驚いたのは、ここにMSが存在していたこと。
そして、何一つ躊躇わずに振り下ろさせたメイス。
人というものは、命のやり取りに対して一瞬、躊躇いが生じたりする。
幾度の七を乗り越えてきた、歴戦の戦士とて同じだ。
だがあのMSにはその‘躊躇い’がなかった。
もはや脅威でしかなかった。
あのMSは危険だ。
軍人としての本能が警笛を鳴らしている。
「アイン! お前は私の援護だ!」
「はい!」
クランクの駆るグレイズがスラスターを噴かし、バトルアックスを振るい白いMSに接近する。
白いMSはメイスを振りかざしクランク機に迫る。
が、白いMSはクランク機の目前で急停止した。
「なっ!?」
クランク機は一瞬、驚きの表情を見るが、そこは歴戦の軍人その驚きすぐさまをぬぐい捨てバトルアックスを振りぬかんと腕のアクチュエータをフル稼働させる。
だが、彼らにとってその一瞬で十分といえた。
白いMSは待ってましたとばかりに、大質量のメイスを野球のバッターのように、コクピットめがけて横なぎに振るわれる。
いくら最新鋭のグレイズとて、あの大質量のメイスの直撃をもらえば、先ほどのオーリスのグレイズの二の舞となる。
クランクはバトルアックスをスナップで投擲。
白いMSの右肩に刃の部分が突き刺さる。
白いMSの右肩から小さなスパークが上がる。
「くっ!」
クランク機は両腕でメイスをガードし、後ろへ飛ぶことでコクピットへの衝撃を和らげることに成功する。
その代償として、機体にダメージを負う。敵MSによるメイスの直撃を受けた左腕は完全に破壊され、右腕はかろうじて機能をともっている状態だった。
クランク機は敵MSと距離を開け、ダメージ量の算出にかかる。
「クランク二尉! くそ! あのMSめ!」
「まてアイン! そいつは――――」
危険だ。という前にアインのグレイズのライフルの照準を敵MSに定めるよりも早く距離をとり、ある場所へ移動する。
そして、クランクは今、ようやく気づいた。
不自然に距離を取った理由を。
「アイン! そっちは……!」
「はっ! 撤退中のわが軍のMW隊!?」
敵MSはいくつかのMWを踏み潰し、肩からバトルアックスを引き抜き、バトルアックスとメイスを構える。
はやくこいよ。びびってるのか?
と言わんばかりに器用に顎をくいくいし始める。
「くそ! 撤退中のMWを狙うなんて、卑怯なっ!」
「アイン! 私が行くまで待て!」
「待てません! あんな卑劣で、野蛮な奴に!」
アイン機はバトルアックスを振るい、脚部スラスターを噴かし敵MSに接近する。
敵MSはそれに答えるように、メイスとバトルアックスを振りかざし接近する。
が、ここでもまた予想外の行動をとる。
敵MSが己の兵装たるバトルアックスを投擲したのだ。
「己の武器を投げるなんて!」
アインはバトルアックスで投擲されたバトルアックスををはじき上げ、敵を再確認するがいない。
「やつが!?」
いないのだ。さっきまで己の前にいた敵が姿を消したのだ。
「上だ!」
上官のクランクの言葉でとっさに上を見る。
そこには、メイスを手に取り、こちらに振るわれる瞬間だった。
とっさに回避行動をとる。
そのかいもあって、バトルアックスと左腕を失っただけで済んだ。
叩きつけられたメイスが地面を叩き土煙が舞う。
今がチャンスとばかりに、クランク機はバトルアックスを右手に持ち替え、敵MSに肉薄する。
「どこから持ち出してきたかは知らんが、そんな旧世代の骨董品でこのギャラルホルンのグレイズの相手ができるとでも―――――――」
『本当にうるさい……それに、もう一人死んだみたいだけど』
敵MSとつながる回線。
その声にクランクは動揺した。
「その声、貴様まさか……子供か?」
『そうだよ。あんたたちが殺したのも……これから、あんたたちを殺すのも』
敵MSの出力が上がっているのか、ギャラルホルンの最新鋭機のグレイズが押され始めた。
「くっ、押し負けるっ」
「クランク二尉!」
味方の回線が入る。
アイン機がライフルを手に取り、敵に向かって発射。
それをすぐに回避行動をとり、距離をとる。
が、相手のスラスターの調子が悪いのかスラスターから火が消える。
敵はすぐに体勢を立て直す。
そして、メイスで地面を抉り、土煙を舞わせる。
「無駄だ! この距離なら照準も……」
「アイン、下だ!」
アインは視界を下に落とすと、敵Msが土煙に紛れ低い体勢でメイスをコクピットめがけて突き上げる。
そこでアインは死を覚悟した。
だが、死は訪れなかった。
代わりに、左肩に鈍い痛みが走った。
クランク機が右腕でアイン機の肩をつかみ重心を後ろに倒したため、敵の狙いがそれ頭部の破壊で済んだのだ。
そしてクランク機はそのままアイン機を抱え、脚部スラスターを噴かし土煙を舞わして徹底行動に入る。
「アイン、無事か?」
「あ、はい」
部下の無事を確認すると、そのまま命令を下す。
「よし、このまま撤退する」
「な、なにを!?」
驚きの命令にアインを狼狽する。
自分たちの目的は、敵の拠点にいるクーデリア・藍那・バーンスタインの身柄の確保だからだ。
1個中隊の戦力を割いておきながら、むざむざ撤退するのというのは……。
「敵はスラスターが不調だ。これを機に撤退する。MW隊も安全圏まで離脱できた。撤退するなら今だ」
「しかし……」
「撤退だ」
「……はい」
アインは自分のふがいなさを呪いながら、クランクは自分の甘さに歯噛みしながら基地へ戻った。
* * *
やっべー。なんか勢いで敵さんやっちまったけど、大丈夫かな?
というか、コクピット潰しちゃったから、生きてるわけないか。
メイスをゆっくりとメイスを引き抜く。
えーっと、エイハブリアクターの反応が2基。つまり敵さんは2機と……。
とっとー! なんか一人こっちに来たよ!
どうする、ミー助!
「オルガ! みんなを下げてくれ!」
「わかった!」
ミー助の言葉で、前髪が変に決まっているガキが少年兵たちを下がらせる。
俺はスラスターを噴かし、敵のMSに接近する。
言っちゃあれだけど、鍔迫り合いで勝てるとは思えない。
なので……。
「ん? なにこれ」
過去戦闘データによるこういう時はこうしなさい。的なマニュアル。
「そう。それいいね」
ミー助は急停止、そして……。
「こいつ、邪魔だ」
そうだな。
メイスを野球のバッターの如く振りぬいた。
その時、敵さんがスナップだけで投げたバトルアックスが俺の右肩に突き刺さる。
いってぇえぇえええええええええ!!
なにこれ! ねぇちょっと! 痛いんだけど!
肩にバトルアックス突き刺さってんだけど!?
痛いよ! 割とマジで!
「ちっ、浅いか」
メイスの一撃を、躱す敵に舌打ちするミー助。
いや、俺の傷は浅くないよ!?
吹き飛ばした敵さんと同じ機体がライフルの照準を合わせ始めた。
やべ。ライフルとかぜってー痛い。
「そう。なら……」
ミー助の操縦に従い、俺はスラスターを噴かす。
そして、ある場所に到達すると着地する。
なるほど。うまいな。
俺のしたには敵さんのお仲間のMW隊が撤退中だ。
結構踏みつぶしてます。
子供のころ、ありんこを踏みつぶす感覚で。
『ほらほらービビってんのか?』
器用に顎をくいくいする。
そう。挑発である。
ほーらほらー! そのままだとこのMWがもっと粉々になっちゃうよー!
地味にMWを破壊する俺。
「うるさい。少し黙って」
ミー助に怒られる。久しぶりの娑婆の空気だから、許してほしいもんだね。
すると、敵さんは怒ってバトルアックスを振りかざしてこちらに接近しはじめた。
やっきになんなよ。
―――――そっちだってさんざん踏みつぶしたじゃないか。
ミー助の操縦に従い、俺を痛めつけたバトルアックスを投擲。
躱すかと思いきや、自分のバトルアックスではじき上げた。
はいはい。上手にできました。
その隙に、俺は高く跳躍する。
おお! 体ががギシギシいっている頃に夢に見た高く舞い上がること!
まさかこのような形で実現するとは……。
そう感傷に浸る俺を差し置いて、ミー助はメイスを握り直し下で呆けているMSに向け叩きつける。
「浅いか」
敵さんはとっさに回避行動をとったらしく、腕一本で済んだみたい。
地味に腕一本って言っているけど、絶対に痛いだろうなぁ……。
叩きつけたメイスが地面を割り、粉塵が舞う。
そしてその粉塵の中からエイハブウェーブの反応が増大する。
さっき吹き飛ばした敵さんがバトルアックスを振りかざしているのだ。
『こんちきしょー! こちとら風邪気味状態で酷使されてんだぞ!』
と歎きながらもメイスで鍔迫り合う。
『どこから持ってきたかは、知らんがそんな旧世代の骨董品でギャラルホルンのグレイズの相手ができるとでも―――――』
回線に入り込んできたのは、敵の指揮官的な人か?
その前に、人が気にしてることをさらっていったよな? こいつ。
『誰が骨董品じゃぼけぇぇええ!』
「本当にうるさい……それに、もう一人死んだみたいだけど?」
『その声、貴様…まさか子供か!』
あたり。大正解。俺に乗ってるのはとんでもねぇクソガキだよ!
「そうだよ……さっきあんたたちが殺したのも。これから、あんたたちを殺すのも」
俺の怒りと、ミー助のイラつきでエイハブリアクターの出力が増大する。
どこの機体か知らねぇが、どうぜエイハブリアクターは1基だけだろ!
それなら、出る出力の違い……格の違いってもんを教えてやるよ!
『なっ……押し負ける!』
このままつぶされちまえ!
ビービー!
危機を知らせるアラートが鳴る。
ミー助!
「わかってる」
敵さんが撃ってきたライフルの射撃を躱し、スラスターを噴かし距離をとる。
プス……
あれ? なんか、体が重くなって……。
すぐにシステムに確認する。
っておい! スラスター、ガス欠じゃん!
さっき補充してくれなかったの!?
ミー助の操縦で体勢を立て直しメイスを構えなおす。
「ガス欠……どうするの?」
『スラスター使わずに倒すしかないだろ』
「そうしよう」
満場一致の結果です。
ミー助に戦闘データを送りそれを実行するようだ。
メイスで地面を抉り、粉塵を舞わせる。
その間に低姿勢で相手に悟られぬように、接近しコクピットを破壊。
完璧すぎる。
俺はミー助の操縦に従い、地面を縫うようにして敵さんに接近。
敵さんが気付いたときは、もう遅いわ!
メイスをコクピットを貫かんばかりに突き上げる。
が、もう一機が肩をつかんで重心をずらしたせいで、攻撃が相手の頭のカバーを吹き飛ばすだけで終わった。
……俺がやられてたら発狂してるな。
敵さんがスラスターを大げさに噴かし土煙を舞わせる。
あ。徹底するのね。
「逃がすわけないだろ……」
いや、ここらでいいじゃん。
奴さんらは帰るようだし。
つか話聞けって。
聞き分けのないガキンチョには……こうだ!
「逃がさな―――――」
大量の情報を無駄に流し、パイロットを気絶させる。
ふぅ……。
これでひとまずひと段落か。
システムの電源を落とす。
それに伴って、先ほどまで輝いていた翡翠のツインアイがハイライトを失い機能を停止する。
つか、俺の右肩から地味にスパーク上がってるの、誰か早く治してくれませんかね?
* * *
『お――――――』
……
『おき――――――』
………
『さっさと起きんか!』
パリ!
「っっ!」
「ああ。目ぇー覚めたか?」
眼を開けると、そこには何度も見ている顔があった。
おやっさんだ。
「ああ。ちょっと待て。お前さんが目が覚めない間、こいつとのリンクは切れなかったんだよ」
おやっさんが自分の背中に接続している阿頼耶識システムの切断にかかる。
そして、自分はしばらく気を失っていたのだと気づく。
「……何人死んだ?」
「参番組は48人。壱軍は68人だ。お前とこいつは、よくやったよ」
自然と、拳に力が入った。
おやっさんと一緒に、バルバトスから降り、基地へ戻る。
……これからどうするのか、オルガに聞かないと。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は初戦闘とということで、少し描写に自信がないのですが楽しんでいただければ幸いです。
今回の参番組の被害が少し多かったのは、主人公が起動するのをためらったからです。
おかしな描写などがありました、ご報告いただけると幸いです。
次回 #4 そのフレーム置いてけ
その肩パーツよこせぇぇええええ!