もはや人間ですらない俺はどうすればいいでしょう! 作:アヴェストロ
バル「俺は売られるのか……」
ミカ「そんなこと言わずに働け」
アイ「クランクの仇ぃ」
ミカ「知らん」
ガリ「骨董品め覚悟しろ」
バル「あいつ絶対に売り飛ばす」
ギャラルホルンの艦隊のブリッジでは、セブンスターズの1家であるボードウィン家の跡取り息子、ガエリオの駆るシュヴァルベグレイズを相手に、一歩も引かぬ敵のMSに興味を示す人物がいた。
その名は同じくセブンスターズの名家、ファリド家の跡取りとして養子に迎えられたマクギリス・ファリドだ。
「ボードウィン特務三佐、交戦を開始しました」
オペレータのモニターをのぞき込むマクギリス。
そのモニターには、白と青のカラーリングを施された二本の角とツインアイが印象的なまったく見慣れないMSが、ガエリオの攻撃を躱しながら味方のグレイズを破壊していく様だった。
「見ない機体だな……照合できるか?」
「距離が離れていますが、リアクターの固有周波数は拾えています……照合結果出ます」
モニターに表示された、無機質な文字にマクギリスは息をのむ。
『GUNDAM BARBATOS
GUNDAM FRAME 』
「ガンダムフレームだと?」
「個体コードは『バルバトス』。マッチングエラーでしょうか? 300年前の厄災戦時の骨董品と呼べる機体です」
「いや、これは必然かもしれない……この名を冠する機体は幾度となく歴史の節目に現れ、人類史に多大な影響を与えてきた。火星の独立を謳う、クーデリア・藍那・バーンスタインがそれを従えている……」
「どうなされますか。特務三佐」
「……名も知らぬ火星の兵士と革命の乙女か。なかなかに面白い。船は任せるぞ。私もシュバルべで出る」
不意にこぼれる笑みを殺し、ブリッジの乗組員にそう告げた後自らの愛機の元へ向かう。
滾る? いや違う。これは興奮に近い何かだ。
「マクギリス・ファリド。シュヴァルベグレイズ、出るぞ」
ガンダムフレームにとり憑かれた男が出る。
* * *
幾度かバルバトスのメイスと敵のランスがぶつかり合い、火花を散らす。
敵の紫色のMSの攻撃は確かに鋭いけれど、躱せないことはない。
力技で強引に敵をはじく。
敵は後退しながらランスに内蔵されているマシンガンを斉射してくる。
阿頼耶識システムで生身の身のこなしで、弾丸を躱していくが何発か被弾する。
『チクチクと痛いわ! ランスにマシンガンとか卑怯くせぇ! こちとら遠距離兵装がないんだぞ!?』
俺にはメイスがあるからそれでいいと思う。
それに、
『それはそれ、これはこれだ!』
あ、そ。
『その素っ気ない態度どうにかしろよ! 慣れつつあるけど―――――――ミー助!』
「ッ。もう1機増えた……」
バルバトスから阿頼耶識を介して送り込まれてくる情報。
もう1機、別の機体が現れたみたいだ。
バルバトスによれば、今戦っている奴と同じ機体らしい。
『敵さんもようやく本腰入れてきた。ってとこだろ』
……別に1つが2つになっただけだ。どうってことないよ。
『はいはい。そーですね。俺の身体がボロボロになってもコクピットは基本無事ですからね』
くる……。
『無視かーい!』
* * *
紫のMSが宇宙を駆け、装備されているライフルを構える。
そしてライフルの照準を敵の白いMSにセットする。
「ほぅ、あれか。ガエリオめ。ああも可笑しな動きでよけられればムキになるのもわかるが」
マクギリスは自分の金色の前髪を弄りながら、コンピューターを使い敵のことを分析し始める。
「こちらの照準システムに異常はない。やはり奴の問題か。姿勢制御プログラム特有の回避パターンはない……」
モニターに映る白いMS。
名をガンダムバルバトス。
厄災戦を終わらせた英雄。アグニカ・カイエルが乗っていたガンダム・バエルを筆頭に、厄災戦を終わらせるために生み出された兵器。ガンダム。
その72機の1機が自分の目の前にいるのだ。
「まるで生身のような重心動作が、回避行動を最小限に抑えている……」
ガンダムフレームを扱ううえで生まれたシステム。
仏教において人の無我の領域を表し、MSと人間を直結させ機体の空間認識能力はてには、反応速度を向上させるシステムが存在した。
「かのガンダムフレームであれば可能性としては低くない。空間認識能力の拡大を謳った阿頼耶識システムだったな――――――む?」
前髪を弄るのを、止める。
バルバトスの背部の外部スラスターをアップで確認する。
「外部スラスターの部分だけナノラミネートアーマーの消耗が激しい……そうか!」
そしてマクギリスは行動を起こす。
ライフルの照準を、バルバトスの背部スラスターに合わせ引き金を引く。
「生身の身体にスラスターなど、ついてはいまい」
確信とともに引かれた引き金より放たれた、弾丸はバルバトスの背部スラスターに―――――――――――――――
「……は?」
間の抜けた声が、宇宙に吸い込まれた。
* * *
あっっぶねぇな!!
回避動作を起こすのが少しでも遅れたら、当たってよな!?
今の弾。
「今のどうやって躱したの? 俺、そんな動きしてないけど」
ミー助め。なにを言ってんだこのバカちんが!
さっきのお前の動きじゃ当たるから、俺が無理やりに回避行動を起こしたんだよ。
バックアップに回している膨大なデータから、無理やり引っ張り出してそのデータでスラスター通じて回避行動を起こしたんだよ!!
あとコンマ数秒データの慣性制御の計算が遅かったら被弾しとるわ!
「へぇー……そうなのか」
珍しく、というか初めて聞くミー助の声音。
いつもは適当にあしらっていたこいつがだぞ?
とりあえず、さっきの音声は記録されてるはずだから。別のデータベースに移動っと………。
はっ!
これだけは弁解として言わせてくれ。
俺はホモじゃねぇぞ?
もう一度言う。俺はホモじゃないぞ?
大事なことだから2度言いました。
間違っても『腐』の関連に繋げるんじゃないぞ?
「何をさっきからごちゃごちゃ言ってるの? うるさいから黙ってて」
サーセン。
それにしても、多数の相手には不本意ながら慣れつつあるとはいえ、それはあくまで一般兵だから通じたことだ。
今は隊長的なポジションの人間が2人。
おまけにカスタム仕様だ。
間違っても弱いわけがない。
俺を中心にぐるぐると円を掻きながら、少しずつその距離を縮め確実に仕留めに来てる。
うぉーい!
2対1とか卑怯くせぇぞ!!
俺の声など届くはずもなく、ランスを装備しているMSが左腕に装備しているワイヤークローを射出してきた。
回避動作を起こそうにも、完全に整備が行き渡っていないのと、さっきの無理やりの回避でもう1度回避することはできない。
「ちぃ」
左腕でクローを受け止める。
クローが左腕をぎりぎりを圧迫し始める。
いたたたたたたた!!
ちょっ!?
俺の左腕の装甲、仕事して!?
これを好機と見た敵のMSは接近しながらライフルで撃つわ、撃つわ。
本当に痛いわ!
地味に痛い。
人間で例えるなら、輪ゴム鉄砲を何発も食らう感じ。
「ッ! 仕方ない」
チョッ!?
ミー助さん!!!???
それはあか―――――
バキョ。
いたたたああああああああああああああああっっっ!!??
俺の左腕の装甲を犠牲にして、ミー助は敵のMSの突進の攻撃をメイスで受け流す。
フレームがむき出し状態の俺の左腕……。
いや、今の痛み。並々ならぬ痛みだったわ。
そう。まるで脱臼したような痛み―――――。
『ほぅ。致命傷は避けたか。いい判断だ』
敵のパイロットの通信が記録される。
既に致命傷だ! あほ!!
「あいつは他と違う」
とりあえずあいつの左腕を次の腕にしよう……。
シュル
ん? なにか腰の周りにワイヤーのようなものがぁぁぁあああああ!?
なにこれ。いつの間に俺の腰部にワイヤーなんてひっかけたの。
そしてじりじりと落とされながら、通信が入る。
『大人しく投降すれば、しかるべく手段で貴様らを処罰してやるぞ』
え? もしかして俺もされんの?
というか、投降する理由がないだが。
「投降はしない。する理由がない」
『そのくそ生意気な声。あの時のガキか!』
「そう言うあんたはチョコレートの隣の人」
え? なにお二人知り合い?
「知らない」
左様ですか。
『このくそ生意気なガキめ! 俺の名前は、ガエリオ・ボードウィンだ!』
「誰もそんなこと聞いてない」
『これだから火星人はッ……! 火星人は――――火星に帰れー!』
こっちのほうが出力は上のはずなのに、どうしても押し負ける。
くそぉ! 上に上がらねぇぞ。
すると急に回線が開き、通信が入る。
見たことない通信信号だな……。
『よく持ちこたえてくれた! 今からそっちに向かう! なんとか敵の隙をついてくれれば俺らが迎えに行く!』
あの前髪のおかしい野郎からの通信だ。
「わかった。こっちも早く片付けるよ」
相変わらず、この前髪の野郎の言うことはすぐに行動するんだよなぁー。
というか、この状況でどう片付けると?
「……」
静かに目を閉じ、腹をくくっかのようにカッ! っと目を開く。
身体を反転させ、ワイヤーが緩んだ処を脱しそのままチョコの隣の人改めガリガリの乗るMSに向かい突貫してく。
『気でも触れたか、宇宙ネズミが!』
ランスと一体化しているライフルの斉射を回避。
弾丸の雨を回避し手の持っているメイスを投擲。
ガリガリは左腕で受けるが、如何せんあの質量をMSの腕1本で受けきれるわけもなく、左腕のワイヤークローを犠牲になんとか受け流す。
しかし、受け流しても衝撃は残っておりコクピットを揺らす。
その隙に、指定してきたポイントでしばらく待機する。
……え?
なんか赤色の強襲用装甲艦が迫ってきてるんですが?
向かえってあれですか?
『ミカ。悪いがお前を直接回収してる暇はねぇ。とりあえずどこか掴まっていてくれ。後で回収する』
「わかった」
いやいや、よくねぇーよ!
俺の抗議もむなしく、ミー助の操縦に従い強襲用装甲艦の尾の部分に掴まる。
「……そうか。あっちはチョコレートの人か」
何がチョコレートの人なのかよくわからないけどな。
とりあえず、戦闘区域から脱した俺たちは強襲用装甲艦―――――――『イサリビ』に回収されたのはこれから30分後のことだった。
* * *
格納庫では、英雄の如く称えられましたよ。
――――――――ミー助とよくわからん奴が。
……社畜には厳しい職場のようだ。
そして事件は起こった。
そう。それは俺が格納庫に回収されてから間もなく起こった。
俺はいつものように、コクピットのロックを開錠する。
そしていつもの黒人がミー助の阿頼耶識を解除する。
ここまでは変わらない。
変わらぬ風景だ。
しかし。ここからが違った。
「「三日月!」」
2つの麗しいボイス。
俺は知ってる。この麗しいボイスが、誰のものであるかを。
我が癒し。アトラちゃんとクーデリアちゃん。
その2人がこの格納庫までやってきたのだ。
クーデリアちゃんがミー助に訊ねる。
「三日月、お怪我はありませんか?」
「別に。怪我はしてないよ」
「そうですか……よかった」
素っ気ない態度はいつものミー助だ。
その素っ気ない態度を見て、よかった。と安どの表情を見せるクーデリアちゃん。
あれ……?
まてまて。
どういうことだ。
「み、三日月! 今は何が食べたい!? 私、なんでも作るよ!」
アトラちゃんが負けじとミー助に近寄りミー助のリクエストを聞く。
「そうだな……火星ヤシが切れたから。新しいの頂戴」
……女の子が作ってくれるって、言ってるのに
それよりも……ミー助。
いつの間にこんなにフラグおっ立てたの?
アトラちゃんは昔からのなじみだとして、クーデリアちゃんに至っては最近知り合ったばかりでしょ?
ミー助。実は一級フラグ建築士だったのか……。
「それにしても、クーデリアさんが三日月さんのことを心配するなんてな」
誰かがふいに漏らしたこの一言。
それに釣られたことにより生み出される、悪魔の言葉。
「実は、三日月さんのことが好きだったりして~」
「「なっ!?」」
場の空気が固まった。
「い、いえ。わ、私は別にそういうわけでは……」
もじもじしながら弁解の言葉を探すクーデリアちゃん。
「……そうかぁ。ライバルが増えちゃったなぁ……でも、負けられない!」
と少し落ち込みながらも決意を新たにするアトラちゃん。
なにこの空気。
ほら周りを見てよ!
他の野郎どもが苦笑いしたり、腹抱えて笑ったりしてるぞ!?
しかもそれを間近で見せられる俺の気持ちを考えろ!
こんな空気は……こうだ!
シュゥゥゥーッ!!
唐突に噴射されたガスにその場にいた全員が驚く。
そりゃそうだろ。誰も乗っていないMSが勝手にガスを噴射したんだからな。
「ごほっ、ごほっ。おいヤマギィ。ガスの調整ミスったのか?」
黒人が片目隠れの少年兵に聞く。
「いや、そのあたりは触ってないけど……」
「んだとぉ?」
ぼりぼりと頭の後ろを掻く黒人。
「……」
そんな不思議な空気が漂う中、ミー助だけは俺を見据えていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ガンダムバーサスでグシオンリベイクが追加されるそうですね。
グシオンリベイクもいいが、とりあえずフラウロスはよ。
不自然な描写などがありましたら、報告いただけると幸いです。
次回 #7 体がガタガタ、もうヤヴァイ
遅いってーの!