もはや人間ですらない俺はどうすればいいでしょう!   作:アヴェストロ

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前回のあらすじ。

黒人「やっべ、全然整備できねぇねわ」
名瀬「うちと一戦やろうってのか?」
オル「喧嘩は売った。あとやるだけだ」
ラフ「脆弱ぅ! 脆弱ぅ!」
ミカ「無駄に速いな」
バル「そろそろ反撃しようぜ」


#8 黒人の次は爺かよ!

タービンズのMS百里に乗る女性パイロット、ラフタは困惑していた。

さっきまでは頑なにワイヤークローで機体にへばりついてまで追い続けていたのに、隕石に衝突させようとしたのだがそれっぽい爆発がない。

おまけにさっきまであったエイハブリアクターの反応が消えているのだ。

 

「……隕石にぶつかった機能停止してる。とか?」

 

それならば少なくとも、あれほどの隕石ならば衝突のエネルギーでどこか流れていくはずだがそのような変化はない。

なにかおかしい。

そう感じとった時だ。

 

ビー! ビー!

 

コクピットうちに警笛が鳴る。

エイハブウェーブの警笛ではない。

射撃などによる、弾道の警笛だ。

 

「ちぃ!」

 

すぐに回避行動をとろうとするが、隕石群の中で思い通りに回避することはできない。

しかし、被弾したものが

 

高機動性能がこんなところで裏目に出るとは。

 

「どこから撃って……」

 

広域レーダーにかけて索敵。

しかし反応がない。

百里の索敵システムよりも遠くから狙撃した?

しかし、そんな遠くへ行く暇を与えた覚えがない。

 

では、敵はどこへ……?

 

ビー!

 

再び警笛が鳴ると同時に衝撃が走る。

 

「くぅ!」

 

狙撃されたのだ。

この隕石群の中から。

ラフタの所属するタービンズのお抱え元であるテイワズは木星圏に拠点を構える。

木星圏では、デブリ帯やこのような隕石群などいくつも存在する。

元々百里とは、小惑星帯やデブリ帯に於ける哨戒及び偵察任務を主観に置いて開発された機体であり、戦闘に於いては高い機動力を駆使した一撃離脱戦法を得意とするのである。

それゆえ、単純なMS戦闘ならばラフタの実力も相まって、アリアンロッドの正規兵でも出てこない限りは負けはしないだろう。

しかし、今の状況は今まで経験したことのない戦闘だ。

何せ、先ほどまで存在していた敵の反応がなくなったと思えばどこからともなく狙撃してくるのだ。

この視界を遮るものが多い隕石群の中、こうも正確に自分の位置をピンポイントで狙撃してくるのだ。

 

ピピ!

 

「また!?」

 

コクピットに衝撃が走る。

次第にラフタの中で焦りが生じ始める。

 

どこから狙撃している?

それよりも、敵はいったいどこへ?

なんで索敵にひっかからない?

エイハブウェーブにも反応がないのに、どうして?

 

彼女の中で先ほどまで手玉に取っていた存在に、小さな恐怖が芽生える。

 

「ん~!! 敵が顔を出さないなら、あのエビを落としに行けばいい! あのMSの相手はそれからでも遅くない!」

 

自分の頬をヘルメット越しにぱんぱんと軽く叩き、進路をエビもといイサリビへと変える。

現状のことだけに流されず、先を見据え幾度も戦闘を行ってきたラフタだからこその決断であった。

 

だからこそ……。

 

 

 

『へぇ、やるじゃん』

 

読まれるのだ。その行動を。

 

「ッッ!?」

 

先ほどまで反応がなかったエイハブウェーブが急に増大しはじめる。

メイスをギリギリまで引き絞りラフタを迎え撃つ形をとる、白い悪魔が隕石の陰から姿を現した。

 

『そろそろ終わりにしよう』

 

「なめんなぁー!」

 

横凪にフルスイングされるメイスを、ラフタは百里のバックパックに収納されている腕を展開。コクピットを守るようにガードする。

しかしあの高硬度製のレアアロイで作られたメイスだ。質量は申し分ないほどにまである。

その大質量から生み出される衝撃を殺せるわけもない。

ラフタの乗る百錬の機動性を生かし衝撃を緩和させ、体制を整える。

その体制を整える間に白いMSがメイスを振り上げスラスターを噴かす。

そしてメイスが振り下ろされる時だ。

 

バチ!

 

敵のMSの腕部からスパークが上がり一瞬、動作が止まった。

 

「こんのぉぉおおおお!」

 

ラフタは一瞬のスキを見逃さず、一気にスラスターを噴かし白いMSへ突貫。

急な動作に白いMSがついてこれず虚を突かれた形となり、隕石と激突する。

百錬の脚で白いMSのコクピットのマウントを取る。

 

『くっ……!』

 

「私の勝ちね」

 

両サイドに装備されているライフルの照準をコクピットに合わせる。

 

「バイバイ、少年」

 

『まだ―――――――!』

 

敵のパイロットが動き出す前に、ラフタが引き金を―――――――――。

 

 

 

『もういいラフタ! こいつらの話を聞くことにした』

 

聞きなれた音声通信がラフタの耳に入る。

 

『手間をかけたな。ミカ。戻ってきてくれ』

 

急な停戦に戸惑いを隠せないが、内心安堵している。

 

 

―――――危なかった。

もしあの時、体勢を立て直す時間がなかったら?

もし機体の整備が完全に行き渡っていたら?

もしあの時、敵のMSが狙撃に徹していたら?

 

 

考えただけで身震いがする。

 

 

「……なんなの? あの機体」

 

独り言を呟きながら自分たちの母艦、ハンマーヘッドへ帰島するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

さぁ種明かしの時間だ。

なんで俺たちがこの隕石群の中で、敵さんに見つからずに狙撃を繰り返すことができたか。

狙撃といっても、そんなに大それたモノは使っていない。

というか狙撃に使うはずの滑空砲、思いからワイヤークローで引っ張られてる時に切り離したんだよね……。

唯でさえ、バカみたいに重いメイス持っての慣性制御。余分な荷物は減らすが吉だ。

 

狙撃……というよりは投擲に使用してるのは、そこらに浮いてる手頃な小隕石だよ。

それを投げては相手から直接見られないように、大きな隕石の陰に隠れるの繰り返し。

 

ただそれだけ。

 

相手は高い機動力を持っているから、何もないただの宇宙戦闘なら今のコンディションだと確実にタコ殴りにされる(というか既にやられた)

相手の動きを封じるにはどうするか?

ざっくり言ってしまおう。

障害物があればいいのだ。

100Mが物凄く早い人がいたとしても、障害物競争になると一気に遅くなるのと一緒だ。

相手がこの隕石群の中へ入らなかったら、このプランはできなかった。

逆に言うと、隕石群に入ってなかったらあのまま壊されていた可能性もある。

そのあたりは正直、運だめし状態だった。

 

あの機体の高機動性が仇となったな。

そして、なぜ俺が相手の索敵に引っかからずに隕石を投げ続けることができるのか?

 

そりゃ簡単だ。

 

リアクターの運転を止めればいい。

 

 

なに?

そうしたら動かなくなるだろって?

 

まぁ、一般的な機械にしろ何にしろ電源を入れエネルギーを生み出さないと動きはしない。

しかし例外が存在する。

例え電源を入れずとも、別のところかエネルギーを持ってくるものが。

 

誰もが一度は使用したことがあるもの。

そう! 予備バッテリーである!!

 

そんなおんぼろの身体にそんな大層なものがついているわけないだろうって?

残念。それがついてるんだよ!

 

例え電源を落としても、今まで無尽蔵に生まれるエネルギーを蓄え必要な時に使うことができる機関が俺の身体には備わっているんだよ!

 

いやー、300年前に気づいていれば社畜街道を歩まずにどこか好きなところへ行けたというのに……。

発見するのが遅かったのが悔やまれる。

 

補足とというか大事なことを言っておく。

この世界における索敵とは、俺の心臓といえるエイハブリアクターが生み出すエイハブ粒子の粒子崩壊で生まれた素粒子が、超高速で拡散することで発生する磁気嵐。エイハブウェーブを捉えることで索敵を行っているのだ。

 

言ってしまえば、リアクターを動かさないとその振動は生まれない。

 

今の俺は言ってしまえば、有り余っていたエネルギーで活動はしてるが、電源は切れているからリアクターは稼働していない。そこら浮いているデブリと同じように認識される。。

 

リアクター反応は誤魔化しきれないが遮蔽物の多い隕石群。そしてこの近くにはデブリ帯があるみたいだから、その過去のMSのデブリが流れ着いてきてもおかしくはない。

 

結論から言うと、俺は最近やった自閉モードになって、今まで貯めてきたエネルギーで動いている。というわけですよ。

 

……それでもどこまで誤魔化しがきくか分からない以上、早々に決めたいところだ。

 

「こっちにはまだ気づいてないみたいだ」

 

そうかい、そうかい。それはいいことだ。

そこらへんに浮いていた石の塊を手に取る。

 

そんじゃまぁ景気よく振りかぶってぇ~投げるぅぅぅうううう!

 

隕石はものすごい速さで敵さんへ飛んでいき……激突する。

ストライックッ!

そしてすぐさま隠れる!

 

あ、敵さんイサリビのほうへ向かい始めたな。

 

「……オルガの邪魔はさせない」

 

ミー助、本当にそればっかだね。まったく。

メイスを手に取り、ガスを調整しながら気づかれないように先回りしてっと……。

 

よし、3,2,1、今です! で飛び出すんだぞ。

 

「わかった」

 

3……2……1……

 

 

今です!!

 

「へぇ、やるじゃん」

 

ドンピシャア!

完全に敵さんの虚を突いた感じだな。

俺のリアクターの電源を入れる。

リアクターに再び火がともる。

やっちまえ!

ギリギリまで引き絞ったメイスで迎え撃つ形をとり、あとはフルスイングだけだ。

 

「そろそろ終わりにしよう」

 

『なめんなぁー!』

 

敵のパイロットの叫びとともに、バックパックに収納されていた腕が展開。

コクピットを守るように覆われる。

 

バチン! バチン!

 

俺の両腕から聞こえてはいけない音が聞こえた。

ええい! ままよ!

このまま振りぬいて、一気に畳み込めばいい!

その辺の操作は任せるぞ!

 

「……まかせて」

 

ミー助の操作に従い、背部のスラスターを噴かしメイスを振り降ろそうとした瞬間だ。

 

バチ!

 

俺の腕からスパークが上がり、機能が停止した。

 

まずい!

 

すぐさま俺は復旧作業とりかかるが、敵さんがそれを待ってくれるはずもなく……

 

『こんのぉぉおおおお!』

 

げふふふうううう!?

 

身体に衝撃が走る。

敵さん、自棄を起こして突貫してきやがった。

虚を突いたから、それをお返ししたというのかっ!?

 

ぐほぉおおおおお!

 

近くにあった隕石にスラスターから激突する。

激突の衝撃が体を揺さぶり、コクピットに伝わる。

 

痛い! 本当に痛い!

背中もそうだけど、両腕ほんとうにやばい!

マジで動かない!

 

人間で言ったら腱が切れた感じ。

 

そしてこの笑えない状況。

敵さんにマウントポジション取られる+中心たるコクピットを足で押さえつけられる。

 

「くっ……」

 

『私の勝ちね』

 

くぐもったミー助の声が響く。

それとは対照的に勝ち誇ったような声音の敵パイロット。

敵の両サイドのライフルの照準はコクピットに向く。

あ、これ詰んだわ(今更)

 

『バイバイ少年』

 

「まだ――――!」

 

ミー助が俺の腕を操縦しようとするが、動かない。

本当に機能を停止している。

 

本当に終わったわ。

 

 

……次生まれ変われるなら生身の人間がいい。

俺があきらめモードに入った時だ。

 

『もういいラフタ! こいつらの話を聞くことにした』

 

初めて聞く音声がコクピットに響く。

 

『手間をかけたな。ミカ。戻ってきてくれ』

 

この声は、前髪いかつい野郎の声だ。

……終わった?

ミー助。終わったらしいぞ。

 

「………」

 

おーい、ミー助! 終わったぞ~。さっさと帰ろう。この身体はマジでシャレにならん。

 

「…………」

 

……わかったよ。

 

ま。こーやって苦汁を飲むのも人生? ってやつの醍醐味だからな。

隕石が邪魔で全然見えないが、無限の宙に散らばっている星を見上げ、今日ついた黒い星に意味を見出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

俺ことバルバトスはいま、命の危機に瀕している。

 

 

 

 

助けてほしい。

 

 

 

 

 

 

こうなったのには理由があった。

 

あの戦闘の後俺は、イサリビへ回収されまた焼け石に水の整備が始まるのかとおもったらそれすら始まらなかった。

どうやらあの敵さん。

木星圏内を牛耳ってるテイワズって組織に属するタービンズってところと、俺たちはやりやったらしい。

そのタービンズの頭の名瀬・タービンってやつが、自分の属するテイワズのトップ。マクマード・バリストンに話をつけてタービンズと鉄華団で兄弟盃を交わしたらしい。

兄弟盃を交わす場所はテイワズの本拠地、歳星のマクマード亭だ。

MSの俺がその式に入れるわけもなく、大人しく格納庫でお留守番してた。

イサリビの格納庫で大人しくお留守番してると、黒人が急に俺をクレーンとレッカー車で運び出し始めた。

 

そこからが悪夢の始まりだった。

 

最初は何をするのかわからなかったが、MSの格納庫見たいところに運び込まれたと思った時は既に遅かった。

 

俺に装備されていた装甲はあっという間にすべてへっぴがされ、生まれたばかりの姿をさらしてしまったのだ。

 

完全にフレームだけの姿を晒していると、一人の老人がハイテンションで近づいてきたのだ。

 

「むふぉおおおおおおお! まさか、この手でバルバトスを弄ることができるなんてッッ! このフレームのデザイン! ツインリアクターによる高出力を可能としているがとても汎用性の高いフォルム! そして現代のMSとは一線を画すこのシルエット!! たまらん! 生きててよっかた~!!」

 

度し難いレベルのど変態が俺の身体を嘗め回すように這いずり回っているのだ。

いやぁぁぁぁぁああああああああ!

 

こ、黒人はまだぎりっぎりの許容範囲内だったけど。この爺はむりっ! 生理的に受け付けない!

それをずっと見守っている黒人と、今やってきた金髪ボーイズ(片方は片目隠れ君)が唖然としている。

 

「あの、このMSってそんなにすごいんですか~?」

 

片目君が爺に訊ねる。

その言葉に爺は片目君に食らいつくように、熱弁を始める。

 

「すごいも何も! このMSは300年前の厄災戦を終わらせた72機のうちの1機なんだよ~ッ! 今じゃ資料が少なくて幻の機体だなんて呼ばれている! そんな、レジェンド級の機体を予算の上限なしで整備できるだなんてぇぇぇええええええええええ! 整備士冥利に尽きるといっても過言じゃありません!」

 

あ、この人あかんやつや(今更)

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。なんでも、三日月がテイワズのボスに気に入られたらしい」

 

まさか、あのミー助が?

……テイワズのボスに何を言ったのやら。まぁ、俺の知ったことではないか。

 

「見ててくださいっ! 消耗品の全交換は勿論、フレーム、リアクターの再調整! この世に残るすべての資料を集めて集めて集めつくして! 厄災戦時のバルバトスの姿を復活させることを約束しましょ~!!! むふ、むふふふふふふふふふふふふ」

 

 

 

 

 

 

た、たすけてぇぇぇえええええええええええええ!!

 

俺の悲痛の叫びは、誰にも届か居ないのであった……。

 




最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の話でバルバトスが行った、貯蓄式活動は鉄血のエネルギー系の設定がガバガバ故にできた力技みたいな感じです。後悔はしていない(`・ω・´)

いつぞやの感想にございました、これから待ち受ける2度に渡る骨格レベルの改造。そして……

次回 #9 体が軽いんじゃー!!

訳アリ。って感じだな~。
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