もはや人間ですらない俺はどうすればいいでしょう!   作:アヴェストロ

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#9 体が軽いんじゃー!

前回整備という名目で公衆の場において、無茶苦茶恥ずかしい思いをしたバルバトスです。

 

「むふぉぉ! バルバトスの持つどの地形においても対応できる汎用性を残しつつ、リアクターの出力を上げて高出力、高機動性を取りたい……しかしそうしてしまうと、どうしても重装甲になりそうだ……しかしそうしてしまうと汎用性が殺されてしまう……せめてバルバトスのデータを覗くことができれば話は変わってくるが」

 

頭を抱えてると見せかけて、ちらっ、とこちらを見てくる爺。

バカなの? ねぁ、あんたバカなの?

俺のあられのない姿を公衆の面前で晒しただけでなく、データを提供しろだと?

俺の中でのプライバシーを守る最後の砦であるデータを覗かせろ?

ダメです。これは俺のプライバシーの問題だ。

俺のデータベースには例え公衆の面前で全裸にさせられようとも、守らないといけないお宝フォルダーが記録されている!

俺が少し覗かせたら、間違いなくこの爺はこのお宝フォルダーを発見して覗くに違いない。

お宝フォルダーはここ1か月で一気に増えた。

俺はこのお宝を意地でも守らねばならない!

そのお宝を爺に見られると思うと身震いがするぜ。

中身を覗かれるということは、どうしても阻止せねば……!

 

「ねぇ、バルバトスの調子はどうなの?」

 

俺が決意を固めると、不意にミー助の音声を捉える。

カメラの視線を下に落とすと、ミー助と黒人がいた。

 

「ああ。三日月くん。いやー、それがね、バルバトスのデータベースに介入しようにもガッチガチに硬いプロテクトがあってね。それを必死に破ったんだがすぐに新しいプロテクトを掛けられてね。なかなかデータを見せてくれないんだよ。まるで、自分の何かを必死に隠すようにしてるみたいで」

 

「MSが新しいプロテクトを作るなんて、そんなことがあるのか?」

 

黒人が爺に訊ねる。

 

「機密保持の為に、あるといえばあるがそれは一定の法則のプロテクトにしかならないから、実は破るのは容易だ。このテイワズでも機密保持の為にデータベースにプロテクトを掛けるが、それでも気休め程度だ。一番いいのは、機密のデータベースを覗かれる前に機体もろとも爆破させることだね。話を戻そう。このバルバトスの場合は1度破ったプロテクトの法則は絶対に使わない。まるで自分の意志でプロテクトの更新を行っているように思える」

 

「………」

 

爺の言葉にミー助は思い当たる節がある。みたいな顔はやめていただけます?

 

「ねぇ、バルバトスに乗れる?」

 

「え? 今かい?」

 

ミー助がこくり。と頷く。

 

「まだコクピットの辺りは弄っていないから乗れるといえば乗れるが……どうしたんだい? 急に」

 

「バルバトスにそのプロテクトってやつを止めさせる」

 

 

 

 

「「『は?』」」

 

 

ミー助の言葉に、爺と黒人からは自分の聞き間違えじゃないかと頭から疑問符が浮かぶ。

それに対して俺は驚きとともに内心、かの有名な絵画たるムンクの叫び状態となる。

ミー助貴様! 俺を売るのか!? 俺をあんな爺に売っていいのか!(建前)

やめて! 俺のお宝が爺に見られるの!? おまけに黒人やミー助にまで晒されるの!? 帰ってこーい、俺の人権~!(本音)

そんな叫びを露知らず、ミー助がコクピットのシートに座り阿頼耶識を接続する。

 

『ちょっと、ミー助さん?』

 

「話があるんだけど」

 

『いや、知ってるよ。俺のデータベースのプロテクトを解けってことだろ?』

 

「うん」

 

『無理』

 

「なんで?」

 

『いやいやいや。俺のデータベースを開示するという事は、俺のプライバシーを公開することに等しい。俺のお宝ファイルを守る為にも、プロテクトは開けない』

 

「そう」

 

『そうだ』

 

「そういえば、アトラとクーデリアがバルバトスのコクピットを見てみたいって―――――」

 

『詳しく聞かせろ』

 

「そしたら、プロテクト止める?」

 

『大丈夫だ。問題ない』

 

「そう。じゃあ頼んだよ」

 

『ふっ。お前もな』

 

ミー助が阿頼耶識の接続を切り爺にプロテクトを撤去した事を伝えると、爺は驚きながらも狂喜乱舞していた。

 

「むふぉふぉおお! バルバトスの生データが見れるとは! 生きててよかった~!!」

 

……アトラちゃんやクーデリアちゃんの為に、コクピットを念入りにきれいに掃除してもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

今思えば俺。ミー助以外のやつと会話した事ねぇわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっふふふーん ふふふーん♪ 

有名な泥棒のメインテーマの鼻歌を謳いながら。レディお二人をコクピットで有意義に過ごしてもらうためのBGMのチョイスを行ってる。

無難にクラシックだろうか? いや流石に硬すぎるか……最近地球で話題のJ‐POPとやらも悪くはない。

特にM○N WITH ○ MISSIONの『○aise your f○ag』はいい。俺の身体の芯に電撃が走るようなものを感じた。

そう! まさに俺のために存在するBGMみたいな感じがしてならない。

しかし、これをコクピットで流すのは女の子には少々厳ついか?

くっ! ここで今まで人と触れ合ってこなかったことの弊害が生じるとは……!

 

とそんなことをしているうちに、体の改修が恐るべき速さで進んでおり、残すは阿頼耶識の情報量調整だけとなっていた。 

この爺。できる……。黒人よりできる!

昔からよく言うバカと天才は紙一重とはよく言うしな。

 

うーん、変態でなければ是非ともイサリビでの整備長になってほしい。

おしい。実に惜しい!

今思えば、この改修はある意味俺にとってかなりのリスクが存在した。

いくら俺がプロテクトを解除して余分なデータと一緒に必要最低限のデータしか送らなかったとはいえ、この爺はいつか真実にたどり着く。

MSに人格があるなんて、信じることができればの話ではあるが。

こいつが生粋の整備士ならば、そんなことは一蹴するが。こいつは一周回ってとんでもないド変態だからな……。

あ。いまの一蹴と一周をかけたつもりは別に、エイハブ粒子レベルの小ささレベルでも考えてないからな!

そんな余計なことを考えていると、爺がミー助を連れてやってきた。

という事は、阿頼耶識の最終チェックか。

 

「へぇ。あんなボロボロだったバルバトスが、こんなにきれいに治るなんてあんた凄いな」

 

俺を見上げ、感嘆の声を漏らすミー助。

 

「いやいや。たしかにこの姿は厄災戦時を再現したものだが、リアクターの出力などは当時に比べるとまだ劣るものがある。それよりも、早いとこ阿頼耶識のチェックをしよう」

 

「うん」

 

爺はミー助にコクピットのシートに座るように促す。

ミー助がシートに座る。

 

「それじゃあ、バルバトスを再起動させるよ」

 

爺が俺の再起動ボタンを押す。

ボタンが押されると同時に、自動的にミー助へ大量の情報が流れていく。

ミー助は最初の頃は起動させただけで鼻血出していたのに、今では涼しい顔してやがる。

 

「うーん。おかしいな」

 

爺がしかめっ面をしてタブレットに目をやる。

 

「?」

 

ミー助が首をかしげると、爺はミー助にとんでもないことを尋ねた。

 

「いやね。この阿頼耶識の情報量はたしかに多いが、本当に必要最低限の情報しか流れないようにロックがかかっているんだ。初期設定かと思ってスルーしようと思ったけど、ログをたどってみるとここ1か月のうちにまた初期設定に再設定しなおされていたんだ。三日月君、心当たりはないかね?」

 

あ。ミー助のやつ絶対に今悪い顔してるぞ。

いつも通り無表情だが、俺には見える。こいつの顔がとても悪い顔をしてると!

 

「いや、わかんないな。それとさ、この阿頼耶識のリミッターって外せる?」

 

ミー助が自分の背中につながっている、阿頼耶識のインターフェースを指しながら聞く。

 

「ああ。外せることは外すことができる。君がどれほどの阿頼耶識の情報量に耐えれるかバルバトスのデータから得ているからね」

 

あー! なんで俺はそんな余計なものを爺に渡しちまったんだぁー!

 

「それじゃあ頼んでいい?」

 

「ああ。いいとも」

 

やっべぇ! 何のために俺が阿頼耶識の設定を初期設定にしたと思ってやがる!

はるか昔に、顔も知らないパイロットの阿頼耶識の設定になっていたから初回の戦闘後にわざわざ初期設定にし直したんだよ。そうしないと、無駄に多い情報量でこいつが死にかねんだろ!

何のための安全システムだと思ってんだ。

 

まったく! この一線だけは絶対に譲らんぞ。

 

「……どういうことだ? どんなに設定を弄っても初期設定から動かないぞ?」

 

「……(余計なことをするなと訴える目)」

 

いくらお前がそんな目をしようと、俺もここだけは譲らん。絶対にだ

 

「はぁ。仕方がない。阿頼耶識の調整は行うが、この安全システムに引っかからないようにするしかないな」

 

「わかった。それでお願い」

 

爺の言葉に少し残念そうな表情を見せたミー助。

あんまり表情筋動いてないけどね。

 

「さて、ここから本番の最終調整に入りますか」

 

仕上げとばかりに袖をまくり上げ、気合を入れる爺の横で無重力の中でフワフワ浮きながら俺のほうを見て何かを訴えそうな表情をしていたが、あえて見えないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「よぉし! 阿頼耶識の最終調整終わりだ! これで全行程のバルバトスの復元整備を完了だ! みなさん本当にご苦労さん! いやー。儂はやり切ったぞ! 末代までこれを伝えたいものだ」

 

爺が俺を下で見上げながら声を張り上げて整備に携わった面々に言う。

この爺は本当に全行程の整備を終えた。

俺のガタが来ているパーツをすべて替え、新しいものに変え劣化した場所にその場に適した術を施す技はまさに職人技と言えた。

今まで、どんなに頑張ってもエネルギーの伝導率が悪かったせいか本来の3割ほどの出力しか出すことができなかった。

しかし、この爺が手を施したおかげで7割ほど力は出せるようになった。

阿頼耶識の設定外したら、出力10割で間違いなく俺の身体が大変なことになるな。

……認めたくはないが、この爺は本当にすごい。

ど変態だから、生理的に認めたくないだけどね。

俺がそんな物思いにふけっていると、ノーマルスーツを着込んだミー助がやってきた。

 

「へぇ……やっぱりすごいな。あんた」

 

ミー助が俺を一瞥した後爺に言う。

今の言葉はミー助なりの感謝の言葉だろうか?

イマイチわからんが、あのミー助がそう簡単にこの言葉を出すことはない。

 

「いやいや、私がしたのはあくまで改修や整備だけだ。三日月君がバルバトスのプロテクトを解いてくれなかったら、改修はおろか、整備もままならかったかもしれない。ありがとう。三日月君」

 

爺が手を差し伸べる。

ミー助がその差し伸べられた手に目を落とし、ミー助も手を出す。

 

「そう。こっちこそ、バルバトス直してくれてありがとう」

 

ぎゅっ。と握手をした。

 

「それじゃあ、私は移送用の大型クタンを用意するよ。クタンにバルバトスを収納して行けば、すぐに君の母艦に追いつけるさ。ついでだからクタンに使えそうな武装も搭載しておくよ。アフターケアもしてこその整備士だからね」

 

そういうと爺は手を振りながらクタンを準備しに行った。

爺の後姿を一瞥した後ミー助はもはや当たり前。といわんばかりにハッチを開けシートに座る。

 

「この感じも久しぶりだな」

 

『久しぶりって全然日数経ってないだろ』

 

「そう」

 

はいはい。スルースキルね。スルースキル。

もうこのやり取りも慣れた。

そんなくだらないやり取りをしてるうちに俺はクタンに収納される。

テイワズの作業員、手際よすぎだろ。

クタンに収納された俺はカタパルトへ降ろされる。

 

『システムオールグリーンだよ! またいつでも遊びにいらっしゃい。そのときはバルバトスも一緒にね!』

 

よし、今すぐ逃げるぞ。もう二度とこんな場所へは来ないからな!

 

「そんじゃ、三日月・オーガス。バルバトス、行くよ」

 

ハッチから解放され、クタンの恐ろしいレベルの推進力で一気に木星圏を出る。

 

 

無限の宙よ! 俺は解放されたぁぁああああああああ!

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

 

バルバトスが木星圏を出てハッスルしてる時。イサリビでは、哨戒中に昭弘・アルトランドの乗るグレイズ改とタカキ・ウノが乗っているMWが所属不明機と戦闘へ発展していた。

敵の数は3。昭弘の乗るグレイズ改もテイワズの手により、前回の戦闘よりも動きがよくなっている。

しかし、彼の背には自分の弟分ともいえるタカキがいるのだ。背を向けて逃げようものならタカキの乗るMWは間違いなく蜂の巣にされる。

敵はマシンガンの弾をばら撒きながら、確実にグレイズ改を追い詰めていく。

マシンガンの弾の一発がMWを掠め、コクピットをゆさぶる。

 

『ぐぅうう!』

 

「タカキ!」

 

背中のMWに一瞬、気を取られていると敵の1機が接近してくる。

腰部にマウントしていたハンマーチョッパーを手に、グレイズ改を真っ二つにせんとばかりに大きく振り上げる。

昭弘の中で、死という文字が頭をよぎる。

 

しかし、そのその文字は奴らによってかき消された。

恐ろしい速さで飛来し、敵のコクピットめがけて刃を突き立てる白いMS。

 

多少は姿が変わっていても、見間違えるはずもない。

あのMSは―――――。

 

「ば、バルバトス。なのか……?」

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

俺を収納したクタンは流星のように速く突き進む。

このクタン、扱いにくいなぁ……。まるでF1カーみたいだ。

急カーブとかしたらすごいことになるんだろうなぁ。

ちなみに、このクタンを操縦してるのはミー助です。

黒人はクタンに乗ってはいるものの、操縦できないからミー助は俺を介してクタンを操縦している。

もう少しでつくかなぁー。

と、イサリビに到着するまでに余計なことを考えているとクタンの操縦席に座っているだけの黒人から通信が入る。

 

『大変だぞ、三日月! よくわからんが、昭弘たちが所属不明機と交戦しているらしいぞ!』

 

いや、知らんわ。

というか俺たちってやたら厄介ごとに巻き込まれてるよな?

俺ってそんなに不幸を呼ぶ機体だっけ?

自分に自信なくすわー。

 

「わかった。今向かう」

 

短く返すと、推進剤を惜しむことなく使い一気にブーストを掛ける。

物凄い速さで突き進むと気づくとイサリビをも通り過ぎ、ガチムチが襲われているという戦場付近までやってきた。

 

「それじゃあ、おやっさん。このまま突っ込む」

 

『はぁ!? お前何言って――――』

 

「クタンの操縦権、そっちに返すね」

 

メインメニューに下のように表記した。

 

――――――クタンの操縦権を返しますか?

Yes ←

    No

 

ミー助は迷いなくYesを選択。

そして、俺を固定していたロックを解除しする。

 

『お、お前! 俺は操縦なんてうごぉおお!?』

 

黒人の汚い叫びをBGMに折りたたまれた滑空砲を右肩に装備する。

そして右手に新しい武装、柄のついてない高硬度の抜き身の太刀。

それを手にして、宙をかける。

 

 

 

 

……ふふ。

 

ふふふふ。

 

 

ふふふふふふふ!

 

身体が軽いんじゃぁああああああ!

 

俺がCGSから酷使され続け、今までどれだけボロボロだったか、俺は今。身をもって実感している!

 

今の俺はなら光よりも早い自身があるぜ!(体感であって実際光より速いわけではない。というか光より速いって、コクピットのパイロット死にますやん)

 

そんなことをしていると、メインカメラがガチムチの乗るグレイズ改を補足する。

 

「あれか」

 

『おう。あれだ』

 

あ、やべ。毎度お決まりのセッティングしてねぇ。

初めての武装だからなぁ……そんなことなら太刀のデータもっかい洗い出すべきだったなぁ。

まぁ、やるだけやるか。

 

―――――――情報処理完了まであと4秒……

―――――――武装を確認……高硬度太刀、滑空砲

―――――――中距離戦闘に再設定

―――――――最近の戦闘データをバックアップに回します

 

「んじゃあ」

 

『ああ』

 

「『いくか』」

 

 

背部のスラスターを全開にし敵MSめがけてつっこむ。

そして、今までのこいつのデータを元にたった今、戦闘マニュアルが更新される。

それを阿頼耶識で直接ミー助に送り込む。

 

「いいじゃん。やろうか」

 

まかせろ。一発で入れてやる。

 

太刀を構え、一気に加速。

敵さんがグレイズ改めがけて鉈みたいな武器を振り下ろす―――――――

 

『させませぇぇええええええん!』

 

装甲と装甲の間を縫うようにして太刀の刃をコクピットに突き立てる。

 

『ホォォォオオオオオオオルインワン!』

 

最高のどや顔が決まった瞬間である。




最後までお読みいただきありがとうございました。

言い訳ぐるしいですが、ここまでの空白期間を説明いたしますと。私は元から心臓が弱かったこともあり、通院生活を続けていました。そして10月の中頃に病院に行くと、検査に引っかかってしまい、そのまま入院コースでした。
それからしばらく入退院を繰り返し、ようやく落ち着いて今に至ります。
なかなか更新できずに本当にすいませんでした。
それでも完結まで頑張っていくので、温かい目で見守っていただけると幸いです。

まぁ、そんな暗い話はそこらのデブリ帯に置いといて、今回は改修されたバルバトスのデビューでした。まぁ、本番はどちらかというとこれらかなんですよね。

次回 #10 約束は守ってもらうぜぇ

……知らないな。そんなこと。
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