ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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やっぱ主人公って頭おかしい

ミヅキとイリマの勝負を見届けてから気付かれないようその場を去った僕は、その後何食わぬ顔をしてミヅキと合流し、漸く行けるようになった2番道路へと足を踏み入れていた。

ククイ博士曰く、ハウはメレメレ島に慣れているから、この島では出来るだけミヅキのサポートをして欲しいとのこと。そっちの方が僕の目的にも適しているので、一切の躊躇いなく引き受けた。「君に初心を思い出させるためさ」とか言ってたが、ならばここら辺の生態系壊さなきゃいけないんだが。ククイ博士は僕に何をさせたいんだ?

 

 

「ポケモンバトルではトレーナーの一瞬の躊躇いが勝敗を分けることがある。囲碁や将棋とは異なり対戦相手は待ってくれず、ポケモン交代の時でも長考するうちに積んでくるヤツもいる。だからトレーナーは拙速を尊ばなければならない。だからといってロクに考えないなど論外だ。

勝負において必要なのは、自らにとって何が脅威になるのかという理解と、それをされた時にどういった行動をするのかという対処法。突き詰めればこの2つに落ち着く。

これはあくまで例だが、相手に初っ端状態異常にさせられて起点にされるなど論外だ。相手のパターンに嵌められたとすれば即座に打開策を練らなければならない」

 

「ぐはぁっ!

…………ユウキさん、もしかしてあれ見てました?」

 

 

さて、なんのことやら。

 

移動中の時間を無駄にするという選択肢はない。ただでさえ足止めを食らったために想定よりも時間がかかっているのだ。詰め込めるうちにできるだけ詰め込まなければならない。

 

今回説明するのはトレーナーとして必要な心得だ。今のところの予想だが、ミヅキは戦闘型のトレーナーだ。相手が強いポケモンだろうと場や技を使って勝利する巨人殺し(ジャイアントキリング)。ならばこそ、トレーナーには上手く活用するための知識が必須なのだ。ポケモンを活用出来ない戦闘型トレーナーなどコイキングにも劣る(いない方がマシだ)

 

 

「ほう、早速心当たりがあるようだな?なら話は早い。

実力の高いトレーナーの先鋒は基本的に自分の攻撃の起点にでき、かつ相手の起点を潰せるポケモンになる。こいつらをどうにか処理出来なければ敗北は確実だと言っていい。天候操作、壁貼り、トリル、バトンと例を挙げればキリがないが、打開策は明確に存在する。

最悪なのは戸惑って何も出来ずに起点にされることだ。野生ならともかく、人の所持するポケモンは自分からの攻撃が出来ない。人に飼われているうちに本能が衰えたからな。指示を出さない限り行動できない以上、トレーナーの隙はポケモンの隙になる」

 

「ぐっはぁっ!

って絶対見てたでしょ私のバトル!なんかあのため息をついて離れていく人誰かに似てるなぁと思ってたけど、あれ間違いなくユウキさんですよね!?」

 

「さあ、誰のことだろう?少なくとも僕は紙耐久ポケに眠らされて交代もせずに棒立ちしてたら積まれまくった挙句バトン繋がれて結局レベルの暴力でなんとかしたトレーナーなんて知らないな」

 

「ごふっ………………!」

 

 

へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 

先程からの教育的指導(言葉の暴力)を受け続け、最後に特大のダメージを食らって瀕死へと陥ったミヅキを見下す。そもそも物理的なダメージは食らってないのだが支障はないだろう。

僕は先程のバトルを思い返す。

 

どれだけ才能があっても、やはり初心者は初心者でしかなかった。全体的に経験が足りない(・・・・・・・)。だからボサッとして1アクション(ターン)まるっと余裕を与えるんだ。ポケモン勝負におけるこの猶予はあまりにも大きすぎる。

 

とはいえ見つかったのは課題点だけではない。課題点の方が圧倒的に多くはあるものの、光るものの存在を確認出来た。

 

…………ミヅキのヤツ、ステータスランクの変化を理解している。

 

そもそもトレーナーはポケモンのステータスランク変化を厳密には把握できない。ゲームではあるまいに、明確な描写がされるはずもないからだ。だから大多数のトレーナーは変化技の効果を知らず、存在意義を認識出来ずにフルアタにする。

これを認識出来るようになるのは最低でもエリートトレーナー(・・・・・・・・・)になってからだ。その頃になると手持ちのポケモンへの理解も深まり、普段とは違うちょっとした変化に気付けるようになる。たとえ対戦相手のポケモンでも、それが見慣れた種族ならばランク変化も読み取れる。トレーナー同士のバトルなら出された指示から変化を推察することも可能だろう。だが――――

 

 

見慣れない種族の特性による、それも命中率や特防などというクッソわかりにくい箇所の変化を見破れるのは極々1部――それこそ四天王(・・・)クラスでもないかぎり不可能と言っても過言ではない。

ミヅキはなんかそんな感じがしたからと言っていたが、それはつまり、直感的にそう思って動きを見るとそれっぽかったからそうだと結論付けたという事だ。それだけではなく、能力変化から逆算して相手の特性を見破るなど最早人の領域ではなく――――ある男の姿が連想される。

 

 

曰く、最強。

曰く、伝説。

曰く、原点にして頂点。

 

その名は、リビングレジェンド(・・・・・・・・・)のレッド。

 

 

優秀で才能があると思っていたが、まさかレッドの領域が見えていると思うわけがないだろう。カントーか、カントーが突然変異個体を量産しようとしてるのか!?

判明した事実に軽く戦慄しつつ、ならばもっと詰め込んでも問題はないなと結論付けて、僕は直ぐに立ち直ってアブリーを追いかけているミヅキを見るのだった。

 

 

***

 

 

「うぅ…………頭が、頭がぁっ!!」

 

 

ユウキさんがスパルタ過ぎる。あの勝負は自分でも反省してるんだからもうそれでいいじゃないか。「素質はあるから2度と同じミスしないように詰め込むか」なんて人間の行いじゃないよ絶対。鬼畜!外道!ユウキさん!!

 

 

「中二臭いぞ。右腕がぁ!ではないぶんまだマシではあるが。そんな年齢じゃないだろう?」

 

「中二でいいもん。実年齢よりも大人っぽいし」

 

「あ、なるほどコイツ理解してないな」

 

 

?よくわからない。

私は12歳だから、中学2年生はむしろ歳上扱いされてる気分になるんだけど。

疑問の眼差しを向けると、ユウキさんは何故か狼狽するかのように1歩後ろへと下がった。

 

 

「ああ、いい。わかってなくとも問題はない。だからそんな純真無垢な瞳を僕に向けるな。頼むから」

 

 

珍しい。さっきまでは実践でしか身につかないもの以外は全部理解出来るまで叩き込まれていたのに。わからなくても問題はないなんて言われると逆に興味が湧いてくる。もしかして、これも実践を経験することで――――

「やめろ、今すぐやめろ。もし実践してみようなんて思うなら、僕は全力でお前を叩き潰さなければならない」

――――唐突な殺気に先程までの思考を無理矢理停止させる。

セルフで地雷撒き散らすとか正直勘弁して欲しいなぁって思うのですよユウキさん。

 

 

「ハッ、元はと言えばお前があんな醜態晒すのが悪い」

 

「ここにきてまさかの開き直り!?最早見てたことを隠す素振りすらないし!!」

 

 

確かに私が色々やらかしたのは事実ですけど、それ以降の展開は大体全部ユウキさんが主導権握ってたじゃないですか!それにあのバトルにしたって初心者に求めるレベル高すぎますって!

 

 

「頑張れとは言わない。出来ろ」

 

「しかも命令形!?」

 

 

理不尽だ…………。

ぐでぇっと地面に倒れ込み、ユウキさんを仰ぎみる。…………こうして見ると、案外子供っぽい顔立ちしてるんだなぁって思う。それもそうだよね、ユウキさんは私とそんなに歳の違いもない、まだ子供と言ってもいい年齢だ。それなのに、あんなにも凄い実力を持っている。積んだ努力は計り知れない。

それはイリマさんだって同じだ。あの時のバトル、if(もしも)の話は禁止と言われていたけれど、やはり考えてしまう。もしムラっけで上昇していなのが命中率でも特防でもなく、素早さだったとしたら。私は間違いなく敗北していただろう。レベルが圧倒的に劣る相手に、だ。

それがポケモンに上手な指示を出せるトレーナーの領域だってなら、私もまだまだだなって思う。

 

これから頑張らないと、と決意して自分の世界から戻って来ると、痛む頭を抑えるように手を当てたユウキさんとバッチリ目があった。ユウキさんはやっと戻ってきたとばかりに重厚な溜息を吐きながら、私へと告げた。

 

 

「スカートなら姿勢に気をつけろ。もしくは下に短パンでも履いておけ」

 

「?……………………………あっ」

 

 

絶叫が2番道路へと響き渡った。

 

 

***

 

 

一体どうしてこうなった?

たった今起きた急展開に目を瞬かせながら疑問を投じる。

 

 

「試合形式は1vs2のマルチバトル。僕のポケモンは1体で充分だ」

 

「え、ちょっ…………ユウキさん!?」

 

「そちらは2人のままで構わない。すべての道具の使用も認めよう。僕は持たせた道具以外は使わない」

 

「な、なあアンタ、本当に助けにきてくれたんだよな?そんなルールで大丈夫なのか?」

 

「これはターン制バトルではない。そしてオープンレベルだ」

 

「だ、だからって何が出来るんだ!?」

「そ、そっちから倒されに来てくれるなんて無謀ッスね!ポケモンも1匹しか出さないなんて、よよ余裕のつもりッスカ!?」

 

「それではバトルを始めよう。

誹謗と策略と智謀の限りを尽くし、どうにかまともな勝負を成立させてみせろ。できないのなら直ちに死ね。自分がなんら関わりを持っていない矮小な命を不誠実にも奪おうとした罪、その身で購ってもらう」

 

 

――――逃げて!

スカル団の人の 超逃げて!!

 

どうしてこうなった!?

辺り1面満遍なく包まれているせいで漠然としか感じられない膨大な殺意。向けられているのは私ではないはずなのに、余波だけで震える体を両腕で抱きしめて、私は過去を振り返る(現実逃避する)

 

 

***

 

 

きっかけは、私たちの傍に来た1匹のデリバードだった。

 

 

「あれ、このデリバード……なんか、私達を誘ってませんか?」

 

「…………みたいだな。近くにはきのみ農園がある。このデリバードもそこから来たみたいだし、行くだけ行ってみよう。つきかけてるきのみの補充もしたいしな」

 

「どう考えても最後の一言が本音な予感。それよりもどうしてきのみ農園から来たとわかるんですか?」

 

「言ってろ。

このデリバードからは本来自然には共存しない複数種類のきのみの匂いがするんだ。それもだいぶ古くから染み付いたもので、体臭と馴染んでる。だから人に……それもきのみ農家に飼われているポケモンだとわかる。この辺りには1件しかないから確定だ」

 

「え、どうしてそんな匂いに気付けるんですか?」

 

「トレーナーは五感が優れていないとやっていけないんだ。僕は初めからそちら側だからよくわからないが、曰く一般人と一流のトレーナーは感じている世界が違うらしい。やたら物事に敏感になって普通では(・・・・)気付けない(・・・・・)ことに(・・・)気付ける(・・・・)んだ。まあ、相手の力量によっては全くわからないこともあるがな」

 

「………………………トレーナーって、一体何なんだろう」

 

「トレーナーはトレーナーだ。ポケモンがいないとなにも出来ない木偶の坊に過ぎん」

 

「アッハイ」

 

 

あまりに常識の埒外なことをぶっちゃけ過ぎるユウキさんのトークにドン引きしながらも、最早慣れたものなので足取りは緩めずに歩き続ける。この島巡り序盤からトレーナーとしての価値観が順調に壊れてきたけれど、それも島巡りの目的の一つなんだろうなと言うことで納得する。ハウも今頃他のアドバイザーに詰め込まれているんだろうか?

 

 

「それは知らん。とまあこのように、大体の感情も察したり出来るな。特化した奴は人間の感情を完全に把握したり、ポケモンと会話したりできる。知り合いに幼い頃からポケモンと話せた電波がいるんだが、まあ置いておこう」

 

 

なるほどなるほど、と頷いてそれを頭の中で二転三転。ふと思い浮かんだのは当然の疑問。必ず聞かなければならないそれを表出させる。

 

 

「え、なら私下手な思考出来なくないですか!?」

 

「大多数は多少察せるって程度だし、それに僕は人よりもポケモンの感情の方が察しやすい。育成型(ブリーダー)だしな。極端に心配する必要はないさ。お前の感情がわかるのは単純にわかりやすいからだ。なんで真顔なのにそんな感情を出せるんだ?」

 

「そんなの私が知りたいよ!!」

 

 

つい口調が荒くなってしまうも、それを気にするつもりはない。なんで私が真顔なのに感情を出せるかって?私が知りたいよそんなこと(泣)

 

ともかくそんなこんなを繰り広げ、ついにきのみ農園へとたどり着いた私達の耳に聞こえる声。

聞き覚えがある。この周囲の迷惑も考えず辺り1面に響き渡らせた声は――――

 

 

――――声は、

 

――――――――この、声は…………

 

 

 

 

 

 

……………………………えっと、誰だっけ?

 

 

***

 

 

A.スカル団。

 

 

「あー、そういえばそんな人がいたような」

 

 

農園にいる彼等の姿を見た時に咄嗟に出たのがその言葉だった。なるほどねぇと納得し、忘れていた理由を理解する。

そりゃ忘れるよ、直後にイリマさんとバトルした挙句、ユウキさんに知識をやたらと詰め込まれたんだから。

 

なるほどなるほどと頷いているうちに、ユウキさんの引き攣った表情に気付く。疑問に思って見つめると、ユウキさんは何も言わず、こめかみに手を当ててスカル団員ABの方を指差す。

視線の先には愕然とした表情でこちらをみる彼らの姿があった。

 

あまりにも視線が強烈にすぎるので、できる限りの微笑みを浮かべて軽く手を振る。こらユウキさん、小声で「いや表情筋微動だにしてないから」とか言わないでください。後でお話(リアルファイト)しますよ。実は話しながら歩くのに慣れてなくて少し疲れているの見破ってるんですからね。悪いけどそんな状態じゃ生身の私が勝つよ?これでも戦闘民族(スーパーマサラ人)ですから。

 

 

「忘れるなよ!ハウオリの港でバトルしただろうが!!」

 

「そう、だね…………イリマさんにあんなにスルーされていたのに、私が忘れちゃったら話してくれる人いなくなっちゃいますしね」

 

「「グフォッ!!」」

 

 

何故かはわからないけど、私の言葉は彼らの弱点を巧みに抉ってしまったらしい。少し反省。ユウキさんと話した後だと少し攻撃的(・・・・・)になってしまう自分がいる。

 

そんな傍目から見たらコントみたいな事をしている私達を尻目にユウキさんは周囲を軽く確認し、蚊帳の外になっていた男性と言葉を交わす。

 

そして戻ってきたユウキさんは、あの身も凍るような莫大な殺意を持って戻ってきたんだ。

 




Q.どうして母親が年端もいかない我が子に自分の知らない地に到着して速攻旅を許可したの?
A.ぶっちゃけ子供がそこらの人間やポケモンよりも強いからだ!

カントーでミヅキが遠巻きにされていたのは真顔だからじゃなくて身体能力が誰よりもスーパーマサラ人だったからです。生身でイシツブテどころかゴローニャを持ち上げて平然としている奴はマサラでもオーキド博士やレッド、グリーン、あとミヅキくらいしかいない。


ユウキによるトレーナー=人外論ですが、そりゃ能力ランク変化を微妙な動きから正確に見破ったり、HPの割合を把握するためにはそんくらい出来ないと。ポケモン世界においてポケモンと人のルーツは元々同列視されているので、強いトレーナーは大体先祖(ポケモン)返りだから身体能力その他諸々が優れているという脳内設定。マサラは先祖返りが多い土地で、Em世界のホウエンは地方全体がゲンシカイキしかけてる土地です。メガシンカはなくてもゲンシカイキはあるんだね(白目)

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