予約するのを忘れていました。
サブタイ変更しました
6/22、最後の下りを追加しました
「ネンドール、だいばくはつ」
開幕1番でネンドールにだいばくはつを指示する。場所は茂みの洞窟の丁度真ん中、足場のない空中だ。一切の自重をやめた最大威力が全方位へと撒き散らされ、洞窟内のすべてのポケモンはレベルの差も相まってすべて瀕死へと陥る。
すべての力を使い果たしたネンドールも瀕死となり、黒い煙を上げてゆっくりと地面へと墜落する。だが、僕がげんきのかけらをオーバースローで思いっきりぶん投げたため復活。直ちに浮上し、僕の元へと戻ってくる。
これでたぶん前座は倒した。この行動を試練サポーターはどう見るのか疑問に思ったが、どうやらだいばくはつの余波で気絶しているらしい。足止めされないと都合よく認識し、洞窟の奥地へと向かう。
奥地には天井がなく、晴れ渡る空がよく見えた。周囲を包み込むように巨大な岩が圧迫感を感じさせる。その中に多くのポケモンの存在を感知して――――指示を出す。
「じしん」
躊躇いはいらない。容赦もいらない。
――――ああ、ホント、
「これだから野生との戦いは好めない。想定通りに過ぎて退屈なんだよ。
――――だいばくはつ」
その抵抗の一切は
巻き起こった大爆発がすべてのポケモンを飲み込み、纏めて一気に瀕死へと陥らせる。
無数のポケモンが一面に倒れ伏す光景をどうでもいいと歯牙にもかけず、僕は台座に置かれたZクリスタルを手に取った。
***
「イリマの試練達成おめでとうございます。ではちょっといいものを見せましょう」
「いいもの………………珍しいポケモンか?ポリシー的にノーマルタイプだろうから、メロエッタとか」
「ノリが完全にロケット団!?ユウキさんがそうなったら洒落にならないのでやめてください!!」
ノリでそう言った僕を必死に止めるミヅキ。まったく、彼女は僕をなんだと思っているんだか。そんなことになったら無闇やたらに敵が出来て…………
いいかもな、それ。強いトレーナーとの勝負が出来そうだ。この世界だとしがらみもないんだ、楽しめそうな気がする。
本気でそっちの道を進もうかと悩んだ僕は、イリマの声を受けて我に帰る。
「いえ、流石に幻のポケモンは無理かなぁ、と。
僕が見せるのはキャプテンミニゲートです。あちらをご覧下さい」
指さした先にあるのは3番道路を塞ぐように配置されていたバリケードだ。初見の時はてっきり珍しいポケモンの足跡が見つかったから侵入禁止なのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
話を聞くに、どうやら島巡りを行うものはZクリスタルを入手しないとあそこを超えられないらしい。1種の制約だな。専ら試練の行われる場所のすぐ近くに置かれているとの事だ。
それが撤去されて漸く行ける3番道路。まあでも、イリマと勝負をしようと声を掛けようとしたところで――――見知った人影が近付いて来ることに気付く。
「――――ククイ博士、何かあったのか?」
「おお、ミヅキにユウキか。試練を達成したようで何よりだよ」
その人物とはククイ博士だった。
彼は少し焦ったように周囲を見渡しながら、そう僕等に挨拶する。
何かあったことはすぐに読み取れた。元より彼は……というか、アローラの住民の多くはおおらか過ぎて感情をあまり隠さないから読み取りやすいんだ。
「会えてよかったよ、試練が終わったばかりの君たちに言うのもあれなんだが…………リーリエがいなくなっちまったんだ」
「リーリエが!?」
「あっ(察し)」
リーリエが迷子か…………。
いつかそうなるだろうとは思っていた。方向音痴の人間に好奇心旺盛なポケモン。どう考えたって迷子になるに決まってる。それが起こらないようにここ1ヶ月、ククイ博士がいない時は僕も注意していたのに…………。
「発信機は?」
「年頃の女の子にそれをつけれるとでも?
2番道路は1通り確認したから、いるとしたら3番道路だね」
「了解。念のため博士はもう1度2番道路を確認して欲しい。ミヅキ、僕等は3番道路に行くぞ」
「わかった」「はい!」
***
3番道路に着いた僕等は直後に二手に別れてリーリエの捜索をすることにした。勿論その間の指導はなしだ。リーリエはなんてめんどくさいことをしてくれたんだと思ってしまう。イリマとは結局バトル出来なかったし。
そもそも僕にとってのリーリエとは、ロクな興味もわかない相手である。才能自体は光るものがあるが性格的にはそれを生かすことが出来ず、所持しているポケモンは珍しいとはいえ戦闘には向かない。もしも普通に出会っていたならば、僕はきっと彼女に一切の興味も持たなかっただろう。
とはいえ捜索の手を休めるつもりはない。今彼女と繋がりを持っているのは単にククイ博士への恩義のためだ。借りを作ったままなのは性にあわない。
加えて、早く見つけられればそれだけ指導の時間が増える結果に繋がる。基礎はだいぶ教えたとはいえ、まだ不足している点も多い。これ以降の島では別行動をとる必要があるんだ、その時に必要なものはすべて教えなければならない。
暫く探していると、ククイ博士から渡された携帯端末に着信が入る。相手は…………ミヅキからか。話を聞くと、どうやらリーリエは見つかったらしい。そのタイミングで丁度博士やハウと合流したため一緒にリリィタウンまで戻るとも。
正直指導の時間が短くなることに苛立ちを覚えるも、予想外のことが起こるのも旅の醍醐味といえばそうである。加えて同年代との会話は精神的に重要な役目を果たす上、そもそもミヅキは引っ越したばかりで関わりのある相手も少ない。
ここは先達の余裕で見逃しておこう。そう思いつつも、僕は指導メニューの強化を決意した。
***
ぶるり、と一瞬過ぎる猛烈な寒気に身を震わせる。冷や汗が背筋を舐める感覚が妙に生々しい。この地方に来て――正確にはユウキさんと関わってから割と頻繁に起きるこの感覚に未だ慣れることはない。慣れたら終わりな気もするけれど。この感覚が起きた時はたいてい翌日の指導が厳しくなっていたため、明確に指導をサボる結果となった今回は尚更地獄をみるかもしれない。
いや、ありがたいんだよ?ただ厳しい上に最先端過ぎてヤバいだけで。カントーで齧った程度の知識よりも洗練されすぎてるんだ。私のトレーナー像が絶賛崩壊中です。
三値ってなに?SAN値のこと?
ポケモンに関する数学?私まだ
伝説って?ああ!それってハネクリボー?
まるでわけがわからない。経験を通して理解すれば良いとユウキさんは言ったけど、
ま、先のことはさておいて。
3番道路を過ぎるとリリィタウンは目前だ。今は
…………ところでリーリエ、吊り橋恐怖症は治ったの?どうやらこの先吊り橋あるっぽいんだけど。
***
「よろしくお願いします、ハラさん」
「ええ。お互いにゼンリョクで戦いましょうぞ!」
大試練。それは島巡りに挑むトレーナーが、その島での経験の成果を島キング・クイーンに確認してもらうという試練である。
勿論トレーナーにとって成果を確認してもらうとは、ただ見せるだけで済むはずがない。トレーナーは口よりもなお雄弁に、瞳よりもなお純粋に、
舞台の逆側に立つのは島キングであるハラさんだ。最初は温厚そうな人だと思っていたけれど、こうして対等なフィールドに立つと、この島の頂点を名乗るに相応しい純粋で膨大な闘気が私を襲う。
それは今の私が真正面から受け入れるには余りに圧倒的過ぎて及び腰になり――――カタリ、とホルダーにつけたボールが音をたてた。
冷静さを取り戻した私は軽い深呼吸を行い、ボールを手元へと持ってくる。
…………うん、大丈夫。私は1人じゃないから。
軽く頷くと、どうしてかボールの向こう側のポケモン達も頷きを返してくれた気がした。
「それでは、大試練――――始めっ!!」
響く審判の声に我へ帰る。
あれだけプレッシャーに固まっていた体が急に解れたようだ。心音はいたってフラットで、思考は靄が晴れたように澄んでいる。
ベストコンディションだ――――負ける気がしないね。今ならきっと、私はどこまでも行ける。
思いをそのままに、私は先鋒のポケモンが入ったボールを勢いよく舞台へと投げ入れた。
***
「…………ついに始まったか。
リリィタウンのどこかの民家の上、広場のすべてを視界に移せる場所で僕は試合を見ようとしていた。
この大試練はミヅキがこの島で得られたものを提出し、島キングが採点する――――要するにバトルだ。大抵の事はバトルで要約できるトレーナーの単細胞っぷりよ。人のこと言えないが。
ともかく、そんな機会を僕が見逃してたまるものか。この島での経験には自ずと僕の指導の成果も含まれている。勿論大試練が終わってもアーカラ島に着くまでは継続するが、そこからは1人で旅をすることになる。だから僕にとってのこれはある意味卒業試験とも言えるだろう。
「さて…………どうなるものか」
イリマの時のような醜態は晒してくれるなよ。
視線はけしてフィールドから離さずに、僕はそう呟いた。
***
「行って、ケララッパ!」
「ゼンリョクですぞ、マンキー!」
試合形式は3vs3。道具はなしでポケモン交代は
ハラさんが格闘タイプ使いであるということはハウから聞いてわかっていた。だから先鋒を務めるのは格闘に有利な飛行タイプであるケララッパだ。ノーマルタイプも兼ねているから被ダメは等倍だけど、それは覚悟している。どんなにポケモンのレベルが低くても、強いトレーナーが指揮することで
「きあいだめですぞ!」「ついばんで!」
まったく同時に放たれた2つの指示。マンキーはその場で気合をためて、ケララッパは相手に突撃してその巨大なくちばしで啄もうとする。
きあいだめは格闘タイプの多くが覚える技だけれど、それを使うトレーナーは驚くほど少ない。ユウキさん曰く、レベルが低い時に覚える技であるためその頃のトレーナーは変化技の存在技をわかっておらず、逆にある程度の実力があるトレーナーは積むならもっと有効な技を覚えさせるかららしい。剣舞とか蝶舞とか竜舞とか。
そんな技を使うハラさんに一瞬疑問が浮かんだけれど、なんらかの目的があるんだろう。それは知識が足りない今想定しきれはしないし、そもそも私のケララッパは覚えている技の殆どが攻撃技だ。基本攻撃しかしないから相手がなにをするにせよ対処法に変化はない。突っ込んで殴る。
「中々といったところですが…………まだまだたりませんなあ。
マンキー、からてチョップですぞ」
だけどそれはカウンター気味に放たれたからてチョップによって叩き落とされた。自らの攻撃の威力が加わったうえ、急所にあたったために勢いよく吹き飛ぶケララッパを見ながら、私は自分の失策を悟る。
――――格闘に特化したトレーナーとポケモンが、至近距離での攻防に反応できないはずがないだろう。
暴論と言ってしまえばそれまでだけど、それが出来るのが島キングなんだ。レベルは低くても練度が高い。闇雲に突撃するだけでは勝利はないだろう。
「距離をとりながらロックブラスト!」
なんにせよ、まずは考える時間が欲しい。幸いケララッパは戦闘の継続は可能なようなので、時間稼ぎにロックブラストを撃たせ続ける。あわよくばこれでダメージをとも思ったが、全弾からてチョップに叩き落とされてまともな直撃は一個もない。正直ないわー。
はあ、とため息を吐いて思考を切り替える。物理技は通じない。なら、これはどう?
「ちょうおんぱ!」
「ぬっ!?」
ケララッパが放ったのは大多数の人間には聞こえない、だけどポケモンには聞こえる高周波数の音波だ。脳漿をかき乱されるような不快な音。物理的な迎撃しか出来ないマンキーはそれを防ぐことができず、激しい混乱に陥る。
――――そんな技があるなら最初から使っていればいいんじゃないかって思う人もいるかもしれないけれど、出来れば私はこの技を使いたくはなかった。先ほど言ったように、大多数の人間にこの音は聞こえない。でも、私はその音が聞こえる少数派に属しているために、混乱するってほどではなくても少し思考が鈍るんだ。でも、これは勝利のための必要経費なんだろう。そうでなくてはやっていけない。
「この隙に…………ケララッパ、ついばむ!」
そして放たれたついばむを混乱したマンキーでは迎撃することができずに、瀕死の状態へと陥った。
それを受けてハラさんは次のポケモンを繰り出す。
「出番ですぞマクノシタ、ねこだましっ!」
「早っ――――ケララッパ!?」
直後に繰り出されたマクノシタによるねこだまし。体力が限界の状態にあったケララッパでは受けきること叶わず墜落する。
あっという間に2vs2。やっぱりそう楽には行かないなと思いながら、ホルダーに取り付けられたボールに手を伸ばし、そして繰り出した。
「フクスロー!」
繰り出したのはあの日ハラさんから貰った私の初めてのポケモン――――その進化系であるフクスローだ。ユウキさんに知り合いのポケモンソムリエに似ていると言わしめた顔つきには今、微笑みが浮かんでいない。真剣な表情の彼に内心頼もしさを覚えながらも、先の反省を活かして無策に突っ込むことはしない。まずは様子見に、
「はっぱカッターで牽制して!」
「つっぱりで撃ち落とすのですぞ」
無数のはっぱカッターが繰り出されるものの、マクノシタは直撃するものとそうでないものとを見分け、超高速で放たれたつっぱりが直撃コースにあったものだけを撃ち落とす。
その判断速度と迎撃能力といい、さすがという他にない。
まがりなりにも変化技を覚えていたケララッパとは異なり、フクスローは完全完璧フルアタ構成である。相手が相手である以上は下手な小細工も通じない。
だからこそ――――
「フクスロー、つついて!」
――――カミカゼ上等っ!!
つっぱりで迎撃されることも予想しているが、フクスローは草・飛行の複合タイプ。格闘に耐性をもっているから効果は薄い。他のタイプの技が来る心配はない。あれだけの技量をつけるためには非常に多くの鍛錬が必要になってくるが、それを通して経験値を獲得してしまう。極めて技量が高い代わりにレベルが低いということはつまり、レベルを低く保つために単一の技以外を鍛えることが出来ないということに繋がるんだ。
案の定マクノシタは接近するフクスローにつっぱりを繰り出すものの、耐性があるために瀕死には至らない。次第に距離は近づいていき、漸くつつくがマクノシタに命中し………ない。あれは自分から後方に飛ぶことでダメージを抑えたか。でも、
「着地点を狙ってはっぱカッター!!」
――――さすがに空中では抵抗できないよね!?
着地寸前にはっぱカッターを当てられたためにマクノシタの姿勢が崩れ、大きな隙を晒す。その隙を見逃す私じゃない。
「トドメっ!」
放たれたつつくが直撃し、マクノシタは倒れた。
これでハラさんは残り一体。果たしてどんなポケモンをつかうのか――――
「頼みましたぞ、マケンカニ!」
ハラさんの最後のポケモンはマケンカニだった。稀に地面に落ちているきのみを食べている姿を見かけるポケモンだ。小刻みに拳を振るいシャドーをする姿は、どことなくボクサーを彷彿させる。
警戒心もあらわにマケンカニを観察している私に、ハラさんが声をかける。
「ミヅキ殿、これこそが格闘の真髄――――Zワザですぞ」
そういうと、ハラさんはまるでZワザの使用に必要な振り付けをする。挙動の1つ1つから伺える力強さとポケモンへの信頼。ああ、これは確かにゼンリョクと呼ぶに相応しい。
「ぜんりょくむそうげきれつけん!!」
ついに発揮された格闘タイプの Zワザ。あまりに強力な拳の連打につっぱりを受けて傷ついたフクスローでは耐えきれず、地に伏した。
「っつ――――頑張って、アブリー!」
私の最後の手持ちはアブリーだ。素早さが高い代わりに他は並かそれ以下。格闘技なら耐性のおかげで耐えられるだろうけど、1/4にされる格闘技を使うよりだったら、練度が低い覚えさせているだけの他タイプの技を使ってくるだろう。
勝負は一瞬で決まる。
一瞬生まれた緊迫感。相手と、そして自分のポケモンとの呼吸を測り――――――見えた
「ドレインキッス!」
「おいうち!」
勢いよく近付いていく2匹の距離。先に仕掛けたのはマケンカニだ。右の拳を振り上げて攻撃を叩き込もうとするも、虫故の機敏さを生かしたアブリーには紙一重で当たらない。
「いっけぇぇぇぇぇっ!!」
彼我の距離は最早皆無だ。拳であろうとも満足には震えない超至近距離で、アブリーはマケンカニに口付けをする。
――――効果は抜群だ。
――――――マケンカニは倒れた。
こうして、私の大試練は達成された。
***
「…………お疲れ、ミヅキ」
先ほど大試練を達成した、ここ数日ひたすら指導してきた少女に向けて呟く。満点には程遠いが、充分合格点だ。これなら後は経験を積むことで自分の闘い方を確立し、勝負が出来るだろう。
――――さて、次は僕の番だ。
島の頂点とはどのような頂きなのか。想像するだけで唇が釣り上がって戻らない。前々から抑えていた戦意も、そろそろ限界が来そうだ。深く、深く、すべてを呑み込む程に深く深呼吸をする。
育成度ではこちらに圧倒的な分があるために力の調節はするが、戦術面での加減は一切しない。ハラさんがどんな力を見せるか楽しみで仕方がない。
「――――行くか」
ホルダーに取り付けたボールがカタリと動いた。
個人的にはリーリエは気に入ってるキャラではあるんですけど……主人公の性格を考えてこんな扱いにしました。敵意も嫌悪もないんです。ただただ無関心なだけで。主人公sideでリーリエの話題が滅多に出ないのはそのへんが理由です。