ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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シリアルって美味しいよね!

 

「これより、大試練を行う。所持ポケモンは5体。道具の使用は所持しているもののみ許可。ポケモン交代はお互いに(・・・・)認められます(・・・・・・)

 

 

今回審判を務めるククイ博士が語るルールに軽く耳を傾ける。交代が認められるのはこちらからの要望だ。大試練はあくまで試練であっても勝負ではない。だからポケモン交代は挑戦者のみに認められているのだが――――先のゼンリョク祭で示したこちらの実力から、加減はいらないと理解してくれたのだろう。言葉通りのゼンリョクで闘ってくれると宣言してくれた。

 

故に、今から発揮されるのはしまキングの全力。島という小規模なものだとはいえ紛れもない一つの頂点である。立場は挑戦者(チャレンジャー)。ああほんと、楽しみが過ぎて気持ちが抑えられない。

 

ボール越しにパーティーと頷き合い、軽く深呼吸。思考速度が急速に加速してすべての動きが次第にゆっくりと見える中、ククイ博士の声が遠く響く。

 

 

「それでは、大試練――開始ッ!!」

 

 

開幕のベルは鳴った。

いざ尋常に――――

 

 

「勝負しようかぁ!」

 

「ハラハラさせますぞ!」

 

 

***

 

 

バシャーモvsハリテヤマ。

ホウエンから遠く離れたこの地でまさか初手ホウエン原産ポケモン同士の戦いになるとは……と、僅かな苦笑が浮かぶ。タイプ相性自体は互角であるものの、相手の特性は恐らくあついしぼうだ。炎技が半減される以上、メインウェポンが1つ削られることになる。

…………悲しいかな、今までの描写で炎技が使われたことはないんだが。

 

まあ、ハリテヤマの扱いは向こう(ホウエン)で慣れた。種族としての能力が大差ない以上、育成手段が違ったとしても個体差として処理出来る。

 

 

「ねこだましですぞ!」

 

 

…………まあ、わかっていても対処出来ない技はあるんだが。

 

たとえ視界に入っていても反応出来ないという歩法の極地。それによって巧みに至近距離へと入り込んだハリテヤマは、バシャーモへと猫騙しをする。

わかっていてもどうしようもない速度(優先度+3)。戦わんとする意志に反して体が硬直し、結果生じる一瞬の隙。

 

 

「インファイト!」

 

 

その隙に押し込めとばかりの高火力の連打。技自体の威力に頼るだけでなく修練を積むことで実現した打撃は、体が満足には動かないバシャーモでは致命傷を避けるだけで精一杯だ。それでも硬直は次第に解け始め、回避にも少しずつ余裕が生まれ始める。

 

 

「そのまま押し切るのですぞ!」

 

 

それに気付いたハラは更なるブーストでバシャーモを押し込もうとする。特攻(インファイト)で押し込もうなど無謀にも見えるが、それはポケモンとの信頼関係が成り立つ技か。それまで威力を重視していた打撃がコンパクトになり、確実に動きを止められるように変わっていく。

 

 

「――――――だからどうした?」

 

 

だからこそ読みやすい。

動きを妨害される所が狙われているとわかっているのだから、それまでの攻撃パターンから分析して受け止めれば(・・・・・・)良いだけ(・・・・)だろう。

 

ハリテヤマの猛攻が突如停止する。両の手首をバシャーモに抑えられて動きを静止させられているのだ。ハリテヤマの攻撃の始点は腕である以上、完全に攻撃手段を奪われた形になる。硬直するフィールドの中で驚愕するハラに見向きもしないまま、僕の指示が響く。

 

 

「――――とびひざげりだ」

 

 

命中率が低い?外れた時のデメリット?

そんなもの、外しようもない超至近距離(ゼロレンジ)で叩き込めば良いだけだろう。

距離は極々僅かで満足な助走も出来やしない。だが、各関節や筋肉といった諸要素を上手く使うことによって加速を得るの可能だ。

 

島巡りをする中で僕はミヅキに指導するのと並列して、この世界に存在する様々な技をパーティーに覚えさせていた。ミヅキの大試練前に行っていた調整とは最終確認だ。

実践に耐えうる技であるか否か――。

結論としては上手く出来たのではないかと思う。現にああやって使えているのだから。

 

避けようもない超至近距離。吹き飛んでダメージを殺すことすら許しはせず、衝撃を内部で余す所なく拡散し蹂躙する。

多少威力が下がったとはいえ元から充分な高火力だ。況して相手はインファイトで防御ランクが下がったハリテヤマ。体力を削りきって余りある。

 

瀕死になったハリテヤマをそっと投げ飛ばしたバシャーモはバックステップでこちらへと寄って来て剣舞を積む。

攻撃ランクが2段階上昇。でも悲しいかな、お前の出番は一旦終了だ。上がったランクは有効活用してやるからバトンの準備しておけ。

 

 

「ニョロボン、たきのぼりですぞ!」

 

 

続いてハラが出してきたのはニョロボンだ。つるぎのまいは攻撃特化の変化技として有名なので、速攻で潰さんとばかりに滝上りを繰り出す。

 

 

「バトンタッチ。代われボーマンダ」

 

 

そのポケモンがいつまでも居座っている訳ないだろうに。バトンを繋ぎ、ランク上昇をそのままに新たなポケモンが繰り出す。ドラゴン・飛行タイプであるボーマンダは、一致技とはいえ効果いまひとつである滝上りを顔色一つ変えずに受けきって――――

 

 

「潰せ」

 

 

――――絶対王者(ドラゴン)による蹂躙がニョロボンへと繰り出される。余計な指示はいらない。余計な思考もいらない。逆鱗(・・)に触れたものに与えられる暴虐だ。攻撃ランク上昇も相まって、生半可な防御では決して耐えられない。

 

牙が腕が爪が翼が――壮絶な打撃がニョロボンへと叩き込まれる。ニョロボンも格闘戦という自らの本領を発揮出来るフィールドで充分に戦っているものの、押されているのは傍目から見ても明らかだ。種族値(スペック)の差は如何ともし難い――――冷パン覚えていたらヤバかったが。4倍弱点は軽く死ねる。

 

やがてニョロボンは力尽き、これで5vs3。ボーマンダの興奮状態は未だ継続しており、体力には余裕がある。相手によるが、もう2体くらいは抜けるだろう。

 

 

「ケケンカニ、出番ですぞ!」

 

 

だが、ハラが出したのはミヅキの試合でZワザを使ったマケンカニの進化系であるケケンカニだ。タイプは格闘・氷。そう、見事にボーマンダの4倍弱点を突ける氷を自身のタイプに持つポケモンである。上から叩いて潰せるだろうが、技量と根性によって無理矢理氷技を当ててくる可能性もある。例えラッキーパンチであろうが当たれば間違いなく死ぬ。攻撃ランクが積まれていることを考慮しても、ここは交換がベストだろう。

 

――――だから(・・・)継続させる。誰にとっても最善(ベスト)とは即ち、誰にとっても読みやすいという事だ。加えて僕はククイ博士との闘いで頻繁に交代する戦術をとり、ボーマンダを除く全ての手持ちが公開された。例外は6体目(レックウザ)だが……まあ、あの時の戦いはそもそも5vs6だった。その時点で6体目はいないものとして考えるだろう。

 

ともかく、ここで僕が出すべき指示は――――

 

 

「げきりん!」

 

「ぜんりょくむそうげきれつけん!」

 

 

氷技ではなく、格闘のZワザ。その時点で僕は自分の読みが正解していたと確信する。相手が想定していたのは氷に耐性を持つミロカロスかメタグロス。そいつらに等倍で叩き込めるから格闘のZワザを使ったのだろうが――残念だったな、ボーマンダだよ。

 

全力無双激烈拳と逆鱗が真正面からぶつかり合う。単純な威力においては間違いなく前者の方が上だろう。だがボーマンダは格闘に耐性を持つため互角に打ち合える。互いの攻撃を攻撃によって迎撃し、時にはダメージ覚悟での特攻。激しい衝撃を撒き散らしながら闘いを繰り広げ、最後は互いの攻撃が顔へと直撃。完全に動きが静止する。

 

 

――――痛いほどの静寂の中、ゆっくりとケケンカニが崩れ落ちた。

 

 

ふう、と止まっていた息を吐く。

ボーマンダは傷ついた翼を広げてこちらへと近付き、取り出したカムラのみを口にした。耐性を持つ技でで1/4以下にまで削られたのかと驚愕の念を抱くものの、Zワザは1度しか使えない以上、2度目はない。手早く意識を切り替えてボーマンダの様子を確認する。

 

…………体力は本来の1/5。逆鱗継続中である以上、もうすぐスタミナ切れて混乱するだろう。だが、上昇したステータスランクを考えれば瀕死になるまでにあと一体は持っていけるはずだ。ルカリオ・コバルオン以外には等倍で叩き込めるのだし。

 

 

「オコリザル、頑張りますぞ!」

 

 

次のポケモンはオコリザルだ。格闘単タイプではあるものの、教え技や遺伝技の範囲が広く使い勝手の良いポケモンである――――が、そんなのどうでもいい。ボーマンダの限界が近い以上、悪いが早急に決めさせて貰うぞ。

 

 

「「げきりん!」」

 

 

そして、こちらの指示とまったく同時に重なって響く同じ言葉。まさかと思い弾かれたようにハラの方を見ると、奴は悪戯が成功した時の子供のような笑みを浮かべてこちらを見ていた。思わずこちらにも苦笑が浮かぶ。絶対狙っていただろコイツ。

 

ともあれ、ボーマンダとオコリザルの逆鱗がステージど真ん中で激突する。タイプ一致技ということもあって単純な威力ではこちらに分があるとはいえ、そろそろ体力が限界に近い。対する相手はダメージ皆無だ。やはりというべきか、ボーマンダは最初の均衡状態から次第に押され始める。そしてその勢いを抑えられぬままに疲労が上限になって混乱。島キングが育てたポケモンが敵味方自分さえも判断できないような状態のポケモンに苦労するはずもなく、ボーマンダに良いのを一撃ぶち当てて戦闘不能へと至らしめた。

 

 

「よくやったボーマンダ。メタグロス、ヤツに続け」

 

 

そして僕が出したポケモンはエスパーと鋼の複合タイプである、メタグロスだ。一応分類上はホウエン地方に生息しているものの、あまりに希少すぎる故に所持しているトレーナーが圧倒的少数のポケモンだ。僕もダイゴに会うまで存在を知らなかったといえば、一般での認知のされ具合も察しがつくのではないだろうか。なのに廃人ホイホイ(バトルフロンティア)にはわんさかいる不思議。最初だけあふれていたラスボスオーラは一体なんだったんだ。

 

ともかく、現状は4vs2とこちらが有利であるものの決して油断は出来ない。嘗てのレッドを忘れるな。特にスペックが高くないポケモンでもガチな手持ちを6タテできるのだから。

 

 

「交代ですぞ、キテルグマ!」

 

 

逆鱗の継続を嫌ってか、ハラはオコリザルとキテルグマとを交代する。これで奴の手持ちはすべて公開された。全体共通して飛行・エスパー・フェアリーに弱いのは統一パ故のものか。カバー出来る複合タイプはいなかったのだろうか。勿論闇雲に弱点を並べるだけの相手を倒すための策は用意してあるのだろうが、それでも弱点は弱点である。克服出来ないから弱点なのだ。やはりポリシーという考え方は好かない。勝負が始まってからではなく、試合前からの公開情報として自ら弱点を晒して何が楽しいんだか。

 

 

「しねんのずつき!」

 

 

4本の腕を折りたたんで浮遊したメタグロスは高速で飛翔してキテルグマへと突撃する。受け止めようとするキテルグマだが――――筋力よりも可愛いさに振ってるようなポケモンに、このスーパーコンピュータを超える頭脳(物理)を受け止められるとでも思ったのか?

 

結果受け止めきれなかったキテルグマは跳ね飛ばされて倒れ付す。戦闘続行は――可能か。ふらつきながらもなんとか立ち上がり、ハラの指示を待つ。前言は取り消そう。可愛いさに振っていても充分根性あるな、お前。だが――――

 

 

「それは認めない――――メタグロス、バレットパンチ」

 

 

どう足掻いても逆らえない絶対的な速度差(優先度+1)によって、反撃の機会を得ることもなくキテルグマは瀕死へと陥った。

 

 

「っ――――オコリザル!」

 

 

最後のポケモンはオコリザル。先程も逆鱗を続けるボーマンダに見事止めを刺したポケモンである。パーティーが自分を残して壊滅したという現実を前に、猛烈な怒りを宿した瞳でこちらを睥睨し、

 

 

「クロスチョップ!」

 

 

――――きゅうしょにあてた(・・・)

 

クロスチョップをメタグロスの急所へとぶち当てた。

クロスチョップは急所へと当たりやすい技ではあるものの、一定以上の実力を有するポケモンとトレーナーにとってそれは当たればラッキーで期待はしないという程度の低確率だ。なのにここ一番で当ててくるとは…………。

 

オコリザルは怒るとこで筋力が強くなる代わりに頭の回転は遅くなる。だが、それでも血の滲むような努力を経て体に染み付くまでに至った技量は決して劣化しない。そして鈍くなった頭の回転を補うための頭脳(トレーナー)の存在が可能とした絶技だろう。

 

だか、それでも――――

 

 

「――――受け止めろ、メタグロス」

 

 

――――それがどうかしたか?

 

異世界のホウエンの環境は超高速化している。だが、僕の先々代のチャンピオン――ダイゴはその環境に真っ向から逆らって戦っていた。

 

 

動くな(・・・)

耐えろ(・・・)

そして、叩き潰せ(・・・・)

 

 

圧倒的な耐久性と育成力が実現させた、生半可な速度を小賢しいとばかりに蹴散らして蹂躙する王者の戦法。それは1トレーナーとなってもなお無視出来ない存在感を放っている。

 

それは当然ダイゴから貰ったコイツにも受け継がれている。圧倒的な耐久性と攻撃力が可能とする耐えて殴る戦術とも呼べない戦術。それが今発揮される。

 

ハラが回避を指示するも最早間に合わない。そして極限まで憤怒するオコリザルはオツムが弱く、自主的な回避など出来やしない。

彼我の距離は皆無同然だ。外さないし外れない。外れるはずがない。何故からコイツはスパコンを凌駕すると歌われるほどの頭脳から相手が離脱する機動を未来予知にも等しい速度で予測し、圧倒的な速度を有するポケモンに対しても全弾直撃させてきたのだから。

 

 

「――――しねんのずつきっ!!」

 

 

命中率が不安だろうとも当然必中させる。遂に放たれた思念の頭突きは、この戦いの終わりを告げる号砲となった。

 





ハラの口調が時々ロジカル語法になってしまう………流石に草は生やさないけれど、それっぽい言葉を見かける度に修正を繰り返し、結局会話はポケモンの名前と指示しか――――…………なんだ、いつも通りでした。

相変わらずダメージ計算は適当です。計算めんど…………もとい、リアルでのバトルは厳密な数学に依存しないだろうと思ったので。
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