ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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――――待たせたな、俺だ!


…………いやホントマジで申し訳ありません。更新サボってたら遅れに遅れてここまで来ました。少し感覚が鈍っていて雰囲気が異なってるかも知れませんが、どうか御容赦ください。



発展の島アーカラ
プライベートボートという響きはリッチだけど、現実はそんなに綺麗じゃない


 

 

「…………………………………………なんというか、歴史を感じさせる、Nice boat.だな」

 

「含みのある感想ありがとう。さんざん溜めて出したのがそれであることに結構なショックなんだが。ちなみにコレはクラシックスタイルって言うんだ。情緒があって良いもんだろ?」

 

「以前の僕の立場を知っているだろう?長距離の移動手段として、ポケモン協会からは個人用の船や飛行機を借りている。装飾一つ取っても正直引くくらいには豪華だぞ」

 

「うわ羨ましいぞそれ。こっちはこんなボロい(クラシック)ボート使うしかないってのに」

 

「遂にこの船への庇い建てすらなくなったぞコイツ。……まあ、なりたいならなってみろ。僕の世界に来て(ホウエンチャンピオン)に勝てばいいだけだぞ?」

 

「あっ(察し)」

 

 

大試練を終えて以降、細々とした用事を済ませた僕達は次の島――――アーカラ島へと移動するため、ハウオリシティの港にいた。

 

眼下に見えるのは多くの修繕の後が見える、ぶっちゃけボロいククイ博士のプライベートボートだ。響きはオサレなのに溢れ出すこの残念臭。意味的には間違っていないんだが…………期待を返してほしい。

 

傍らの3人――ミヅキ、ハウ、リーリエを見ると、微妙に顔が引き攣っていた。ただしミヅキは真顔である。なのにひしひしと伝わってくる「これ大丈夫なのかな」感。なんとも言えない気持ちを抱き、手持ちポケモンーーミロカロスに『なみのり』を頼もうかとボールを手に取った。僕の所持ポケモンは『すごくかしこ』く『どこでもいける』が、やはり安定性という点に於いては波乗りの方が遥かに上回る。

とはいえアローラではライドギアを使用しないなみのりは禁止されているため、ここで呼び出しても何ら意味はない。仕方なしにそっとため息を吐いてボールを腰元のホルダーへと戻した。

 

というのも、ポケモンに乗って移動するという行為にはそれなりの危険が伴うのだ。わかりやすい例を示すなら二人三脚が妥当だろうか。いかに優れた

短距離走のランナー(ポケモン)であっても、二人三脚という競技を行う際には相方(トレーナー)と息を合わせて進む必要がある。じゃなきゃ地面と熱いキスを交わすハメになるし。波に乗れずに底に沈んだり、空を飛べずに星にならないようにするためには相当の練習が必須なのだ。秘伝技マシンがあればその辺かなり簡略化されるものの、それにしたって完璧とは言えない。大半の地方では対応するジムバッジがなければ秘伝技の使用が禁止されているのはそれが理由だ。

 

だからアローラでは予め訓練を重ねたポケモンをライドギアで呼び出した時を除き、秘伝技を用いた移動を禁止しているのだ。『島巡り』に伴い安全性を重視したアローラらしい風習といえる。

 

何よりも手持ちに秘伝枠を作る必要がないのが素晴らしい。さらばトロピウス。君の悲しみ(技スペ全部秘伝技)は忘れない。

 

レッドはこの辺理不尽(スーパーマサラ人)スペックでどうにかしていたが。シロガネ山を肉体一つで踏破したあたり、流石としか言いようがない。最早ポケモンいらないだろアイツ。

 

とは言え問題は今この瞬間だ。いやホント大丈夫なのか。万が一が起きたとしても、沈没した時ならばなみのりは許されるよな?すてられぶねの末路を知っている身としてはどうしても慎重にならざるを得ない訳だが。

 

 

***

 

 

結論。

無事でした。

 

…………まあ、万が一を考えるのもチャンピオンの義務ではあるものの、信頼が足りなかったことは反省しよう、普通に運転上手かったし。おんぼろボートが崩壊するギリギリを見極めた運転は見事なものだと言えるだろう。振り返るとククイ博士は博士として第一線で活躍しており、トレーナーとしてもそこそこ(・・・・)優秀、挙句リア充という高スペック。ポケモンバトルに過剰特化した僕からすれば割と尊敬に値する相手だ――――第一印象が上裸白衣(HENTAI)でなければ。色々残念なんだよな、ククイ博士……。

 

 

「なんだろう、ぼくのオサレスタイルが馬鹿にされた気配を感じたんだが」

 

それ(上裸白衣)をオサレと言ってるあたり、程度が知れるぞククイ(残念)博士。ポケモンの技を受け続けてついに頭がイかれたか。混乱の状態異常にでもなったか?永続するなら教えてくれよ習得させるから」

 

「ははは何を言ってるんだユウキ(ポケモン馬鹿)。上下ジャージで白ニットとか、ファッションセンスが大気圏突破して爆散死亡してるぜ?アローラの漢ってならもっと豪快じゃなきゃあ」

 

 

やれやれ、とでも言わんばかりに両手を広げ頭を振るククイ博士だが、彼はあまりに無知すぎた。僕はその態度を鼻で笑い、嘲笑を浮かべる。

良いだろう、教えてやる。僕がジャージを着て成し遂げた偉業の数々を!

 

 

「大気圏突破とか既に経験済みだ。ジャージ舐めるなよ?

海底の洞窟に突入できたり、グラードンの『ひでり』でも快適に活動できて、カイオーガの『あめふらし』にも耐えうる素敵ファッションだ。

動きを阻害しないから空の柱(レックウザの住処)のボロボロの通路を駆け抜ける時にも、音速で逃げるポケモン(ラティオス・ラティアス)を追う時にも、隕石の行方を追う時でも重宝する対伝説用(アンチレジェンド・)最終兵装(ファイナルウェポン)だぞ」

 

「――――その認識はおかしい。というか具体例のキチり具合に狂気感じるんだけど」

 

 

伝説に挑むためには装備を整えるの(持ち物:ジャージ)が大事だったのかと頭を抱えるククイを見て、勝った…………という謎の優越感を噛みしめる。上裸白衣(変態ファッション)とは違うのだよ上裸白衣(変態ファッション)とは…………!

 

 

「――――たとえぼくが負けても第二第三の上裸白衣(ぼく)が…………!」

 

「…………お二人とも、何をやってるんですか?」

 

いい感じにノってきた所に水を差してきたのはリーリエだった。声につられてそちらを振り向くと、彼女を含む先に上陸していた三人組が呆れた目でこちらを見ているのに気付く。反論しようとはしたが、あちらとこちらの戦力(ファッションセンス)の差は控えめに言って絶望的である。仕方ないか、とため息を吐いた。

 

一応言っておくが、僕だって普段の服装はどうであれチャンピオンとしてその辺の理解はしている。伊達にハルカやリラに着せ替えさせられていた訳ではない。ただ「ぶっ飛んだトレーナーは服装もぶっ飛んでる」という(非)常識に従っているだけで。ドラゴン使い(中二病)にとっての中二ファッション(マントやスカーフとか)のように、ジャージこそが僕にとっての象徴というだけである。

 

とはいえ聞かれたからには答えなければならない。ユニークさと一般ウケを両立させた高レベルなファッションをしているリーリエに言うのは些か心苦しいものがあるが、素直に告げた。

 

 

「上裸白衣と上下ジャージはどちらが服装として優れているかを競っていたんだ」

 

「…………えっと、私はお母様に服を選んで貰ってるので言い難いのですが…………どっちも論外だと思うんです」

 

「ぶっちゃけそれはないよねー」

 

「実は第一印象ドン引きでした」

 

「「――――グッハァッ!!」」

 

 

三連続で降り掛かる言葉の暴力によってトドメを刺されたククイはアーカラの港にぶっ倒れ、僕も思わず膝を屈してしまう。完膚無きまでの敗北感を味わったのはいつ以来だろうか。少なくともリーリエは毒にも薬にもならない女だと思っていたが、コレは多少評価を改める必要があるか…………。

 

 

「………………ククイ、アンタなにやってんの?」

 

 

そんなシュールな集団の代表であるククイ博士へ掛けられた声。刹那に先程までの空気を払拭して立ち上がりそちらを伺うと、そこには褐色で露出度がやや高い服を纏った黒髪の女性と、緑髪に花の髪飾りをつけた少女の姿があった。多少とはいえ距離があるとはいえ、実力の程は雰囲気から察せる。緑髪の少女の実力はイリマと同格で、黒髪の女性の実力はハラと互角か少し下ほど。察するにしまクイーン(・・・・・・)キャプテン(・・・・・)の2人組か。随分と豪華な歓迎だ。

 

 

「少し、精神的にボコボコにされちまってさ…………。もう問題ないぜ。久しぶりだな、ライチ」

 

「そ、そう……。ま、無事ならいいわ。久しぶりね。あんたたちははじめまして。あたしはライチ。アーカラのしまクイーンよ」

 

「あたしはマオ!キャプテンしてまっす!!」

 

 

予想違わず、彼女等はこのアーカラ島のしまクイーンとキャプテンだった。軽く挨拶を交わした後、変な意味に取られない程度に軽く見つめ、探りを入れる。

 

優れたトレーナーは五感も相応に高く、そのスペックをフルに使うことで事前に相手の手持ちを察することができる。トレーナーとポケモンは共に過ごすため、互いの影響を受けやすい。服装や口調など、些細なことが実は……という展開もありがちなのだ。これは少し前に言った『ぶっ飛んだトレーナーは服装もぶっ飛んでる』法則に繋がる所もあるのだが――それは置いておこう。

 

ポリシーを持ち単一タイプ縛りをしているトレーナーならば、そのタイプをある程度絞り込むことも可能だ。経験を積んだトレーナーならば直感的に縛りを把握し、その情報からバトルの組み立てを行うことも存外多かったりする。勿論あえて利用して不意を付く輩もいるため、勝負は事前の情報のやり取りから始まっていると言えるだろう。

 

マオは花の髪飾りを見た瞬間に草タイプ使いだとわかる。実力はキャプテンとして相応しいが、ホウエンのジムリーダーには及ばないな。他の地方ならそこそこやっていけるレベルではあるだろう。

 

ライチさんの方はわりとわかりにくい。服に若干付着した泥に、香水の匂いに紛れた土――というよりは鉱物の匂い。ホウエンでのフィールドワークの成果だ。特に鉱物に関しては嗅ぎ分けるのに相当の経験が必要になるが、ダイゴに(半ば強制的に)連れられてあちこちの洞窟で石を探していた僕に死角はない。タイプに関しては凡そ絞り込めた。岩か地面――――身にまとった宝石類から見るに、岩タイプが濃厚だろう――――――っと。

 

 

「――――へぇ、なるほど」

 

 

気配を最小限に留めたつもりではあったが、どうやらライチさんには気付かれたようだ。技術が錆びたか――――いや、ここは流石はしまクイーンだと賞賛するべきだ。どうやら一筋縄ではいかないらしい。

 

いずれ勝負しよう、という言葉を残し去っていく彼女達の姿を見て、僕はその時が一刻も早く訪れることを切に願った。

 

 

 

***

 

 

4つの島で構成されたアローラ地方の中でも、アーカラ島は最大の規模を誇る。そしてここカンタイシティはアーカラの玄関口ということもあり、中々繁盛してる様子である。

 

観光案内所で入手したパンフレットを流し読みしながら街を軽く散策。待ち合わせ(・・・・・)までにはまだ暫くの時間があるため、適当に周辺をぶらつきながら、これからの予定をさらっと練り上げる。

 

メレメレ島での旅が終わり、僕はもうミヅキのしまめぐりには同行出来ないことになる。とはいえ基礎的なことは詰め込んだし、あとはこの旅を通して実践を積み、自分の血肉へと昇華する段階である。そうなったらもう自分との戦いであり、いかに優秀な経験値を積めるかにかかっている。僕に出来ることは残っていない。

 

だから問題なのは僕の方だ。

 

 

――――アドバイザーって結局何すんの?

 

 

あまりに根本的過ぎる疑問だが、過度に接触せずアドバイスはするってどーやるのさと思い続けて早数時間。有酸素運動(街の散策)でもすれば何かしら浮かぶかと思ったが、今の所期待はずれもいい所だ。

僕が旅をしていた時はアドバイザーなんて………………………ん?

 

 

「――――いただろうが、過度に接触せず、時に戦い助言を与え、挙句(道具)まで渡してくれたヤツが」

 

 

刹那僕に閃きが走る――――。

なるほど、今振り返ると確かに『彼女』の行動はライバルというよりはアドバイザーに当てはまる。そして彼等の旅に関わりながら自分もZクリスタルを集めることができるというメリット付きだ。

 

そう、ハルカの行動を参考にすればいい。基本的に同じルートを辿り、最初の方は先回りしていたのにも関わらず、後半はむしろ追いつく立場となっていた彼女の行動を。あんな感じで接触すれば良いのではないだろうか。

そうと決めたら話が早い。アーカラ島の地図は既に入手しているため、そこから理想的な場所をピックアップ。仕事であるために万全を期した思考を働かせる。

 

何も決まっていない時に較べたらすっかり肩の荷が降りた気分だ。ああ、もう何も怖くない。そんな思考(フラグ)(立て)ながら、ククイ博士との待ち合わせ場所――ホテルしおさいへと足を運んだ。

 

この時の僕は知る由もなかった。

少なからず消費したこの思考時間が、実はまったくの徒労に終わることなど。

最後の島、そして大々試練に至るまで練られた計画の一切合切が無意味と化し、更には余計な気苦労まで背負うハメになると。

 

 

 

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