ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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今回出てくるホウエンの設定とかは割とオリジナルです。
6/17、誤字修正しました


始まりの島メレメレ
異世界とかどうでもいいからバトルしようぜ!


「ッ………………ここ、は………?」

 

「……おや、気付いたのかい?」

 

 

…………知らない、天井だ。

意識が半覚醒な状態のまま起き上がろうとして――――全身に走った鋭い痛みに体を強ばらせる。

咳に血が混じった。どうやら僕の体は相当ヤバいらしい。

 

 

「あまり動かない方がいい。

君はここで発見されたときから、どうして生きてるのか不思議なほどの重症だったんだ。

…………どうしてそうなったか、思い出せるかい?」

 

「…………それは、」

 

 

上裸に白衣をひっかけ、サングラスをかけた、凡そ全ての研究者に科学舐めてんのかと言われそうな格好の男に問われ、これまでのことを思い出し――――痛みを忘れて立ち上がる。

頭にあるのはただ一つ、俺がここに来ることになった切っ掛けだ。

 

 

「隕石は!?ホウエンはどうなった!!?」

 

 

だが上裸白衣の男は僕の剣幕に戸惑ったような声を上げる。

 

 

「隕石………?ここ数年、隕石が確認されたことはないよ。ホウエンだってなにも起きちゃいない」

 

「――――はぁ!?」

 

 

どういう、ことだ…………!!?

僕は激しい混乱に見舞われる。地表から目撃できる程に巨大な隕石を、あろうことかこの人は知らないと言う。

…………いや、この人はここ数年(・・・・)と言った。ならばそれ以前はどうだ?

 

 

「それなら、ホウエンに落下してきたものが最新だね。ホウエンチャンピオン(・・・・・・・・・・)が伝説のポケモンと共に破壊したと聞いたよ。

 

名前は…………ハルカ(・・・)と言ったかな」

 

「――――え?」

 

 

今度こそ本当に完膚無きまでに、僕の思考は停止した。

いやだって、ハルカってあのハルカだろ?かもかも言ってるハルカだろ?

コンテストの実力は極めて高い上、研究者としても優れた実績を誇る反面、バトルとなるとジムリーダーの平均をやや上回るぐらいでしかない、あのハルカが!?

 

 

「彼女は凄いぜ。1度戦ったことがあるんだが、流石はホウエンという魔窟のチャンピオンなだけある。この地方でも五指に入ると自負してるぼくが、ロクな抵抗も出来ずに6タテされたよ。

………ところで君は、なんて名前なんだ?」

 

「………僕はユウキ。ホウエン地方のチャンピオンをしていたんだが………」

 

 

そしてトレーナーパスポートを懐から取り出す。そこに記された名前はチャンピオンのユウキ。明らかに彼の言葉と矛盾した僕の言葉に、だが上裸白衣の男は何か考え込むように腕を組み、何かを呟く。

 

 

「…………まさか、いや、もしかして……………」

 

「心当たりがあるのか!?」

 

「――――ああ。もしかすると君は、平行世界から来た人間なのかもしれない。

 

 

自己紹介がまだだったね。

ぼくの名前はククイ。ここアローラの地で、ポケモンの技の研究をしている」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

流石は研究者と言ったところか。ククイ博士とのお互いの世界常識の打ち合わせは想定以上に容易く進んだ。

普段博士達には敬語を使っているのにククイ博士にはタメで話すのは、やはり外見(上裸白衣)の影響だろう。

 

タイプごとではなく、技ごとに物理・特殊が決められていること。

げきりんを始め、いくつかの技の威力の違い。

がんじょうなどのとくせいの細部の変化。

天候変化による副次効果。

フェアリータイプの存在。

自爆・大爆発時に相手の防御が半減されないこと。

 

 

「――――そして、メガシンカ・Zワザの有無。これこそが、君たちの世界とぼくたちの世界をわける、最も大きな違いだと思う」

 

「…………そう、みたいだな。

ちなみに、メガ『シンカ』ってことはしんかのきせきは使えるのか?」

 

「使えない。

………てか君結構余裕あるね。いきなりバトルの質問とか」

 

「どうやら世界の法則そのものが違うらしいからな。早くバトルして確かめたいと思っていたら、思考がそっちに引っ張られた」

 

「………まあ、1トレーナーとして、君の言っていることも理解は出来る。

けど、今はこっちを優先させて欲しい。

………世界は違えど、やっぱホウエンは修羅ってるなぁ」

 

 

ククイ博士は呆れたように苦笑する。

ドン引かれたことはそれこそ星の数ほどあるが、純粋に呆れられると反応に困る。

ホウエン地方は魔境だ。普段は温厚なエニシダさんでさえ、「友達がトレーナーを辞めるかどうかの瀬戸際でも手加減せずに打ち負かす。やっぱトレーナーってのはそうじゃなきゃね」とか言い出す大事なネジが吹っ飛んだ地方だ。

だが――――僕達はポケモントレーナー(・・・・・・・・・)だ。戦いを求めて何が悪い。

腰元のボールに手を伸ばす。世界を超えても、相棒たちは変わらずそこにあった。

 

 

「そして、君がこの世界に来たのは恐らくウルトラホールを潜ったからだと思われる」

 

超越の穴(ウルトラホール)ぅ………?随分と厨二臭い名前だな」

 

「そう称するに相応しい力があるのさ。この穴は未知の空間に通っていることがわかってるんだ。もしかしたらそこは、様々な可能性世界に通じているのかもしれない。

実際この世界にも、ウルトラスペースの住人――――UB(ウルトラビースト)が表れたことがある」

 

「そして僕は、その未知の空間とやらからまたウルトラホールによってこの世界に表れた、と。

…………微妙に納得が行かないが、まあ、理屈はわかった。単独で環境を変動させるポケモンもいる以上、世界を渡るポケモンもいるのはむしろ当然、か」

 

「UBは果たして本当にポケモンなのかはわかってないけどね」

 

「伝説のポケモンだって、その辺ハッキリしていないヤツもいる。それに、シンオウの図書館には人とポケモンが元々同一だったという御伽噺も残っているらしいし、そこら辺の認識は適当でも充分。バトル出来るならポケモンだ、それで良いだろ」

 

「確かに、言い得て妙だ」

 

 

ひとしきり笑った後、コンコンコン、という控えめなノックの音が響く。

回数は3回。ってことは、それなりに博士に親しい間柄って訳か。

 

 

「はいっても大丈夫だよ」

 

「では、失礼します」

 

 

そして入ってきたのは白磁の肌とシャンパンゴールドの長髪を有し、白いサマードレスを着た少女。

 

 

「彼女は………………………娘さん、か?」

 

 

ククイ博士の浅黒い肌的にありえないとは思うが、母親からの遺伝かもしれないため、一応そう尋ねる。

いや、それにしても全く似ていない。最早誘拐を疑うレベルだ。まあ、彼女の雰囲気を見た感じだと問題はなさそうなんだが。

 

 

「いや。彼女は2ヶ月くらい前にこの周辺で倒れていたのを発見して、ぼくが保護しているんだ。才能があったのか、今や立派な助手として働いてもらっているよ」

 

「はい。ククイ博士の助手をしている、リーリエといいます。よろしくお願いしますね」

 

「ホウエン地方から来たユウキという。以後よろしく」

 

 

差し出された手を軽く握る。綺麗な手だ。ボールダコ一つ付いていないことから、少なくともトレーナーではないことがわかる。

そして、トレーナーじゃないなら正直興味はない。まあ、2ヶ月で博士の助手を努めれるほどに優れているなら面白そうだとは思うが。

 

 

「さて、ククイ博士。話を戻すが――――」

 

「ほ、ほしぐもちゃん!?いったい何を!!?」

 

 

先程の少女の慌てたような声に反応してそちらを見ると、スポーツバックが彼女の手を離れ、身近に置いてあった僕のバックの近くに着地する。

そしてスポーツバックの中から現れたのは、まるで星が輝く宇宙を宿したような、不思議なポケモンだった。

 

ああ、トレーナーじゃないからボールを持ってないのか。トレーナー免許を持っていない人間がポケモンを捕獲すると犯罪になる。だからポケモンをボールには入れられない、と。

…………そんなの適当な人からかっぱらって使っちまえばいいのに。

博士の前とはいえそれをしないあたり、彼女の生真面目な性格が伺える。

 

そのポケモン(ほしぐもちゃん、だったか?)は一目散に僕のバックへと飛翔し、触手を使ってどうにかバックを開けようとしている。

宇宙服の内側だとはいえ、大気圏突破にも耐えられるように色々補強したからな…………さほど器用ではない触手では開けるのに苦労する、か。

何を欲しがっているのかも大体検討が着いたし、大量に保存してあるものだから別に多少減ったところで問題はないだろう。

 

 

「ククイ博士、僕のバックを取ってくれないか?」

 

「あ、ああ――――って、すこし重くないか、これ?」

 

 

そりゃあ補強しまくったからな。普通のバックの3~4倍くらいは重い。

でも、容易く持ち上げている博士にだけは重いとは言われたくない。ポケモンの技を生身で受けるために鍛えてるってなんだその理不尽。

 

本来、バックにそれほどの重さはない。

常識的に考えて、各種回復薬にモンスターボール、ポケモンに持たせる道具に合計千個を超える木の実、わざマシン、他にも自転車や宿泊道具、女子ならば化粧品などをごく普通の一つのバックに纏めてぶち込むなど不可能に決まってる。

 

だからこれはポケモンボックスに用いられた技術のちょっとした応用だ。道具をデータ化し、必要な時だけ有効化(アクティベート)。結果として必要なのはデータを持ち運べる程度の大きさのバックで済む。この技術が発達したことで、それまで16歳だった旅に出られる年齢が、10歳まで大きく引き下げられた。もちろん問題点はあるが、それは別の話。

 

渡されたバックを解封し、たいせつなものを入れていた場所からポロックケースを取り出す。

どうやら予想はあっていたようで、ほしぐもちゃん(仮)が楽しげな声を上げる。

 

「ほら」

 

なんとなく直感的にしぶみの強いポロックを与える。たかが直感と侮るなよ。数百を超えるポケモンに自作ポロックを与えていたチャンピオンの慧眼だ。初見のポケモンの好みを見抜くなど造作もない。

 

 

「ぴゅい!」

 

 

どうやらそれは当たっていたようで、きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐほしぐも(仮)。

とりあえず話を邪魔されないように10個くらい与えておく。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「へぇー、ポロックとは珍しいね」

 

「ホウエンでは一般的なものなんだがな。きのみ栽培が趣味なんだ。大量にとれるから、バトルで使ったり、知り合いにわけたりしても結構余る。だからそれをポロックに加工したりしているんだ。自画自賛になるが、下手な職人よりも美味いぞ。

………ほら、食べるか?」

 

ポロックケースから甘めのポロックと激辛のポロックを一つずつ取り出す。

 

きのみ栽培が趣味なのは本当だ。初めはバトルのためとしか考えておらず、植えるきのみもラムのみやオボンのみなど、戦闘に直結したものしかなかった。だが、次第に楽しくなり始め、最終的にはわざわざチャンピオンの権力を使って他の地方から輸入し、それを自家栽培するほどには立派に趣味をしてる。

正直バトルに飽きてた時代にバトルフロンティアを紹介されてなければ、もしかするときのみ農家に転職していたんじゃないかと思うくらいには。

 

 

「おや、これは人間でも食べられるのかい?」

 

「ああ。ポケモンフーズとは違って、原材料はきのみだけだからな。オマケに、きのみの栄養価をこれ1個に凝縮してる上に量も手頃なことから、向こうではダイエット食品としても人気だった」

 

「そ、そうなんですか!!?」

 

 

おとなしいと思っていた彼女の予想外の剣幕に、思わず瞠目する。

それほどダイエットという言葉は女にとって魅力的なのか。…………そういえばハルカも研究が大詰めのときは僕に大量にポロックを強請るし、リラだってタワータイクーンの仕事が忙しいときはお願いしてくる。

それを考えると、確かにそれは言えてるのかもしれない。

 

 

「あ、ああ。ほら、これだ。味は…………とりあえず甘いのにしておくぞ。あ、博士は激辛で」

 

「わあー!ありがとうございます!とっても美味しいです!!」

 

「なんかさっきからぼくに当たりキツくないか?まあ、実際辛いものは好きだし、興味もあるからありがたくいただくんだけど。

………うん、程よい辛さだ。美味しいよ」

 

「程よい、辛さ…………?ま、まあ、口にあったようで良かった」

 

 

………結構辛辣な辛さにしたはずなんだがなぁ。具体的にはつまみ食いしたハルカの口から炎が出る幻覚を見るくらい。

やっぱ、ポケモンの技を生身で食らってるってのは伊達じゃない。てか人間じゃない。案外ただのマゾなんじゃないか?と思ったりもする。

若い頃は『やんちゃ』してそうだから辛いポロックを選んだんだが、当たっていたようでなによりだ。

 

 

「ところで博士。話を戻すが、僕は元の世界に帰れるのか?」

 

「なんとも言えないね。ぼくの妻が空間研究所で研究をしてるんだけど、肝心な所がまったく進んでいないんだ。

そもそもこちらからウルトラスペースに干渉する手段がないからね」

 

「やはり、か………」

 

 

ククイ博士の言葉を聞いて、リーリエがほしぐも(仮)を胸元に抱えてぎゅっと抱きしめる。

………その動作のせいで、ほしぐも(仮)がウルトラスペースと関わりがあることは予想がついた。おそらく彼女がククイ博士に保護されたのも、そこら辺に理由があるのだろう。

 

まあ、人のポケモンに手を出すのはあまり好きではない。それは愛すべきバカ共(アクア団とマグマ団)未満の行いだ。伝説のポケモンを止めた後は大人しくなり、ちょっと過激ではあるが普通の環境保全団体になりはしたものの、流石にアレ未満呼ばわりは心にくる。

どうしても必要にならない限り、自分で手がかりを見出そう。

 

 

「その件に関してなんだけど、来月カントーから引っ越してくる少女と、この島のしまキング………そっちで言う、ジムリーダーや、四天王みたいなものだね。その孫が島巡りに出るんだけど、君にはそれを助けて欲しいんだ」

 

 

その言葉に僕は昔を回帰する。

チャンピオンではない、1トレーナーとしての自分。周囲のトレーナーに片っ端から声をかけて全滅させ、その辺に生えていたきのみを乱獲し、家々に入って良さげな道具を強奪し、パーティーで脅して周辺のポケモンに火山灰集めを協力を約束させ、一つ一つのバトルを一生懸命に取り組み、大きく成長した自分とポケモン達。

 

だが、本来異物である僕がこの世界に深く関わるのは果たして良いのだろうか…………。

そして、帰りを待たせているヤツ(リラ)のこともある。ともすれば僕を上回るほどに頑固なアイツのことだ、今のウコン並のおばあちゃんになっても僕を待ち続ける可能性は極めて高い。

 

 

「勿論、報酬も用意する。そうだね……………このメガネックレスとキーストーンを渡そう。元々は研究用に準備していたんだけどね、こんな所で研究されるよりも、本来の目的に沿って使わせてあげたいんだ」

 

 

「マジか!?だったら答えは当然Yesに決まってるだろう!!(構わない。元より僕はこの世界にとって異物もいいところだ。手がかりを探し行く宛もなくさすらうつもりだったが、目的を用意してくれるならありがたい)

――――あ」

 

別に数年くらいなら待たせてもいいよね!メガシンカを得て強くなった僕ならもっと戦いがいがあるだろうし!!と思ったのもつかの間。

 

……………部屋に沈黙が走った。

重苦しい沈黙を、先に破ったのはククイ博士だった。

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………決まりだね。じゃあ、その時までゆっくり怪我を直してくれ」

 

「………………………………………………………………………………ああ。

――――そうだ、博士。怪我が治ったらでいい。1度バトルをしてくれないか?この地方で五指に入るという実力を見せて欲しい」

 

「こちらこそ。平行世界のチャンピオンの実力を見せてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

「……………………え?さっきのは放置なんですか!?」

 

 

そこ、触れられたくなくて放置したのに掘り返すのはやめなさい。

 

 

 

 

 




ちなみにハルカの脳内設定ですが、エメラルドの方はアニメ風で、ORASの方がポケスペ風です。

設定には割とオリジナル入ってるけど、エニシダさんのセリフは原作でもそんな感じのこと言ってた希ガス。

…………そして旅による主人公の成長よ。何が悲しいかって火山灰以外は大体ゲームそのままなんだよなぁ。
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