ストックはもうないけれども!
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SM主人公の名前を修正しました。
(誤)ミツキ→(正)ミヅキ
バトルロイヤルが始まった。
緑コーナーは
でも……ここでのルールには不慣れとはいえ、勝つだけならたぶん余裕なんだ。
バトルロイヤルにはLv.50という制限があるけど、ここにいる全員は全員Lv.50アンダーという、制限に届いてさえいない低レベルである。だから制限をかけずに勝負が出来るんだけど…………それは、元々のレベル差が露骨に表れるという事態へと陥ってしまった。端的に言ってヤバい。ハウもグラジオも以前戦った時と大差ないから、1人成長した私とは著しい差が開いてしまった。
ククイ博士のイワンコも、レベルは彼等と同程度。よっぽど気を抜かない限りは負けるワケがない。慢心ではなくただの事実――そう思っていた。
「一撃で蹴散らすよ、はっぱカッt――」
「ハウ、合わせろ――――イワンコ、ジュナイパーにふいうちだ!」
「うん!オシャマリー、アクアジェットでイワンコを援護してー!」
――っ、集団リンチ!?
いかに素早さに差があったとしても、優先度は覆せない。イワンコ、オシャマリの攻撃がジュナイパーへと直撃する。決してダメージは大きくないが、はっぱカッターを放つための姿勢が崩れ、行動が遅れてしまった。
その隙を、グラジオが付く。
「
「っ――ジュナイパー!」
こうかはばつぐんだ!
前言撤回――余裕なんて一切ない!
レベル差が酷いから油断してしまっていた。バトルロイヤルは1vs1vs1vs1の勝負だけど、野生のポケモンとは違って相手は思考するトレーナーなんだ。私が突出して強いのなら、一時的に手を組んででも追い込んでくる――――!
「はっぱカッターで牽制――急いで体制を整えて!」
「いばってくれ、イワンコ」
はっぱカッターを全体へとばらまいたものの、ロイヤル――もうククイ博士でいいや。ククイ博士はそれが直撃コースにないことを一瞬で見切り、威張るを繰り出した。
これで攻撃ランクは上がったものの、混乱状態に…………また混乱!?私は悲しいことに慣れているため、対策はしてあった。ジュナイパーは持っていたラムのみを口へ運び――
「オシャマリ、あまえる!」
「
「ッ――こっちが本命!?」
電磁波の命中率は90%で必中じゃない――けど、どんな生物であれ、食事のときは気が弛むんだ。回避なんて望めない。
ハウのオシャマリによって上げられた攻撃ランクが元に戻り、加えて麻痺ったことで素早さが半減する。
……また失敗した!本命は混乱じゃない、麻痺による行動妨害だったんだ。そのためにククイ博士は攻撃ランクが2つも上がってしまうデメリットを持つ威張るを使ったんだ――あたかも混乱が本命であると錯覚させるかのように。
これで足は半ば封じられた。
元々のステータスがステータスだから差は決して大きなものじゃないけど、それでもこの数を前に上を取られたのは大きな不利になる。
――ああもう、手数が足りない!!
私は間違っていた。変化技にレベル差は関係ないから、人数の不利はそのまま形成の不利に直結する。
ユウキさんはLv.1でもLv.100は倒せるのだと言っていた。それと比べたら約2倍の差なんて誤差に過ぎないし、数にしたって向こうの方が多いのに!
「だったら、まずは厄介な博士から仕留める!――ジュナイパー、かげぬい!」
「ロイヤルマスクだっ!!イワンコ、まもってくれ!」
つまり、この場を仕切っているのは間違いなくククイ博士だ。だから多かれ少なかれダメージを与えようとするも、それは相手にもわかっている事なんだろう。容易く防がれてしまう。
そして――うん、わかってるんだけど………
「オシャマリ、あまえてー!」
「
攻撃ランクが下げられた上、弱点技を食らってしまう。ここで厄介なのは効果抜群を放ってくるグラジオ――ではなく、ハウだ。彼をこのまま放置していると攻撃ランクがあっという間に最低まで下げられてしまう。ジュナイパーは特殊技なんて覚えてないから、そうなったらマトモにダメージを与えられなくなる。
「はっぱカッター!」「ふいうちだ!」
だけど、特にオシャマリを狙って放った攻撃はイワンコの不意打ちによって逸らされ、擦るだけの結果に終わった。元々フィールド全体に拡散していて威力が低くなった上、攻撃ランクが二段階も下がっている以上、ダメージはないと言ってもいい。
そして――――
「もう一度、俺達の憎悪を知れ――
――――ヤバいヤバいヤバいヤバい!!
何度も攻撃が放たれたことで、遂にジュナイパーのダメージが
「――ジュナイパー、はねやすめ!」
――そしてこの瞬間、
「オシャマリ、
「――――ウソっ!?」
気付いたときにはもう遅い。最大HPの半分と引き換えに、ジュナイパーは3ターンの間は攻撃行動を封殺された。
勝負における3ターンは極めて長い。その間
…………私の敗北は確定したんだ。
でもまあ、これで自分が驕っていたことを理解出来た。得たものが大きいから、ここは素直に受け入れよう。
……まさか、ハウに負けるなんてね。私と勝負してからこっち、何があったのかはわからないけど、随分強くなったんだ。
これが始めての敗北――悔しいだろうと思っていたけど、案外清々しいものだ。
改まった気持ちで、私は得意気なハウのことを――――否、ヌルの放ったおんがえしによってオシャマリが一撃必殺されて慌てる彼の姿を見ていた。
『試合終了――――!!』
***
「…………負けたのか、ミヅキ」
その勝負の結末を、僕は意外な――だが、有難いものだと思った。
彼女は島巡りを始めてからこれまで、勝利しか知らなかった。油断していても、見下していても、結局最後は勝ててしまっていた。
それは優秀であることの表れであるが――勝利だけで人は成長しない。僕がリラに負けたことで廃人への1歩を踏み出した――こう書くとちっともいい事のように聞こえないだろうが――様に、彼女には負ける経験が必要だったのだ。
「それが1vs1のシングル戦でないのには些か不満があるが……まあ良いさ。今はミヅキが成長の切っ掛けを手に入れられたことを喜ぼう。
――――ところで、お前は誰だ?」
独りごちて振り返った方向――そこには1着のローブが浮かんでいた。中には誰も入っていない。軽いホラーな映像ではあるが、僕はこれ以上のホラーを知っているし、そもそもサイコキネシスを使って再現できる程度の現象に過ぎない。
特になんの反応も見せず、だが警戒心だけは持ったままに疑問を発する。
するとローブは一切の音を出さないまま、懐から1枚の
スペースメール――主にシンオウ地方で使われている、
警戒心を解かぬままに手紙を受け取ると、ローブは
とりあえず、ボール越しにメタグロスに周囲の検知を頼んだが、案の定なんの反応も見られない。
些か呆気に取られた心持ちでメールを閲覧する。さてさて、そこに書かれた内容は――――
「………………へぇ」
少し、興味が湧いたかな。
***
そこは遺跡だった。
長い年月を経たことで半ばから折れ、砕け散った柱に、磨り減ってボロボロとなった床。辺りを見渡しても何もなく、ただ身も凍る程の寒さが襲う。
シンオウ地方を左右に別つ長大な山――テンガンざん。その山頂にある遺跡に少女の姿はあった。
「…………うん、メールは届いたんだね。ありがと、■■■■」
真紅のコートを纏い、短い白のマフラーと、同色の帽子を被った少女。
彼女はそう話しかけるものの、周囲に人の気配はない。だが、それでも彼女はそこに何かが存在することを確信しているかのように言葉を紡ぐ。
「それで、どうだった?
――――うぇぇ、なんか………凄そうな人だね。あなたが気付かれたかもしれないって間違いなく普通のトレーナーじゃないでしょ。以前からこの世界に来てた
ため息を一つ吐いて即座に切り替えると、今度は別の――だが、やはりこの場には影も形も見えない存在へと問いかける。
「なら、■■■■■。もう一人の方はどう?確か異世界のあなたが借りを作ったって言ってたけど――
…………うわぁ、あっちのあなたも■■■■■もサービス悪いなぁ。幾ら他の世界に行っちゃったからって放置する普通?これだから
…………知ってた。分かってたけど。
うん、大丈夫大丈夫。問題ないよー」
大丈夫というには明らかに無理がある表情で彼女は嘆息する。まったく、とんだ気苦労を背負ってしまったと。
それでもなんだかんだでやり遂げるあたり、彼女の生真面目さが伺える。
すると突然、少女の近くに空間の亀裂が走った。まるでその場だけ正負が反転しているかのような裂け目から、巨大な瞳がこちらを見る。
「■■■■■…………異世界のあなたの苦労がわかってきた気がする。
確かに、本来こっちには関係ない傍迷惑な神様の闘争に巻き込まれるともなればキレて当然だよね……」
「ギゴガゴーゴーッ!!」
わかってくれたか、とばかりに目だけで返す反転した向こう側の存在。だが、他の2つの存在にとっては意に沿わないことだったようで、珍しく世界に介入してまで否定してきた。
「グギュグバァッッ!!」
「ガギャギャァッ!!」
片や時を操ることで現在過去未来においてその場で話された言葉を拾い集めて文句とし、片や空間を直接操作して振動させることで音を生み出す。
それは決して流暢なものとは言えないが、そこそこ長い交流を持つ彼女にとっては十分な意味を持つ言葉だった。
「大丈夫大丈夫、あたしはちゃんとわかってるから!
それよりも、■■■■■。観測した時間からすると、あの2人が会うまではあと2週間で良いんだよね?
…………うん。じゃあ少し早いけど、行ってみよっかな。よろしくね、■■■■」
――――アローラへ。
そう告げた直後、彼女の姿はこの地から消え、聞き届ける主を無くした山彦が孤独に木霊した。
***
ホウエン地方ミシロタウン。
『美しい白』というどことなくマサラタウンを思わせる街のとある民家に、彼等の姿はあった。
「うーん、トレビアン。流石ボク、ポロック作りの腕も最高に冴えてるね。
ラグラージ、サーナイト、グラエナの方は……perfect!。これは期待できるぞ……!」
彼の名は
そんな彼は今、実家へと戻ってポケモン達とポロック作りなど、心安らげる時間を過ごしていた。
ポロック製造機が稼働を停止し、4個のポロックが完成する。それを手に取ったユウキは、協力してくれたポケモンに対応するポロックを配り、余った一つを自分の口元へと運んだ。
「delicious!上出来だ、みんなも食べてごらんよ!」
ユウキの言葉に、3匹は渡されたポロックを食べる。ユウキの技量は端的に言って一流だ。ポケモン1匹1匹に合わせて微妙に味付けを変化させており、そのポケモンが最も好みとする味に調整する。今回のポロックは機械によるもので、ハンドメイドと比較すると自由度は低いのだが、それでも一流は十分な能力を発揮した。
ポロックを口へ運び幸せそうな表情を見せる彼らに嫉妬するかのように、腰元のボールがカタカタと揺れる。
ユウキはそんな様子に苦笑し、次は彼らとポロックを作ろうと考えて――――ポケナビの通知音が響く。
それを聞いたユウキは懐からポケナビを取り出し――部屋の隅へと放り投げた。
今はポケモンとの触れ合いの方が遥かに重要である。放り投げたっきり音がならなくなったポケナビを満足そうに見つめたユウキはポロック作りを再開し――
「なんばしよっとね!」
「痛いっ!?」
お隣オダマキ家からユウキの部屋の窓へと侵入してきた野生児に頭を叩かれた。その姿を見ていた彼のポケモンは心なしか呆れた様子だった。
「っ〜!!どうしたんだハルカ!?」
「これ!見て!」
「what?何が起きた?」
そう言って彼女――ハルカが出したの は1枚の新聞だ。こんなに難しい文字も読めるようになるとは、最初期と比べると別物だなぁと感動しつつも、そこに記された内容に目を通す。
「こ、これは…………」
その新聞はユウキも見たことがある。ポケモン協会主導の元、様々な地方の有力なトレーナーや、バトルにおける有力な戦術、そして大会・コンテストの結果を主に取り扱うトレーナー御用達の新聞だ。
中でもハルカが持ってきたのは今話題のトレーナーについて記載されたページだ。そこには本来あるはずのない名前が載せられており、いるはずのない人物が写っていた。
『絶対王者誕生!?ホウエン地方ミシロタウンのユウキ、バトルロイヤルで20連勝達成!』
「…………美しくない」
「…………はぁ?」
この記事を読んだ最初の感想がそれなのかと、どこまでもマイペースなユウキにああコイツはそういう奴だったと呆れの声を漏らすハルカ。
そんな彼女の様子を知ってか知らずか、ユウキは熱弁を振るう。
「何よりも!この上下ジャージというファッションセンスが認められない!
外見がボクだから何を着ても似合うのは当然だけど、それにしたってこれはあんまりじゃないか!
彼はボクに喧嘩を売ってるんだ!間違いないね!」
確かにハルカも、服装に関しては疑問を持っていた。これでも幼少期と、そして
とはいえ、ここまでの反応を示すのは予想外ではあったが。
「その一貫性、一周回って尊敬できそうかも。外見が自分ってことにまず反応して欲しいったい……。
さっき向こうにいるジーナに話を聞いてみたけん、ユウキに会ったって言うんよ。口調は不自然やったけど、雰囲気は同じやって」
「え、ジーナが?
……そっか。なら1度、出向いてみるのも良いかも知れないね」
――偽物の所へ。
そう呟いたユウキの様子があまりにも過去に――自分が巻き込まれないように全てを解決しようとした嘗ての姿に似ていたから、ハルカは彼の袖口をそっと摘む。
「置いてかないで欲しいったい。前みたいな――あたしだけ蚊帳の外にされるのはもう嫌や……あたしも力になれるけん、連れて行って欲しいんよ」
「…………そうだね。
そういえばキミ、結構有給溜まってなかったっけ?」
突然のユウキの質問に驚きながら、ハルカはこくりと頷きを返す。何しろ彼女は一地方の
第一関門はクリア――ユウキはひとまず安堵し、あくまで何気ない風を装って、内心では勇気を振り絞って告げた。
「偽物を突き止めに行くってだけじゃ味気ないから、いっそこの機会に旅行なんてどうだい?もちろん2人っきりでさ」
「えっ――――!?」
数拍置いて、ユウキの言葉の意味を理解したハルカの頬が真紅に染まる。
――このヘタレが、あたしを旅行に誘ったと!?旅行ってことはつまり、あんなことやそんなこともする訳で……!
ハルカの返事は…………言う必要もないだろう。
一つ言えることは、ユウキはその日のうちに2人分のアローラ行きの便の予約をコネをフル活用して取り押さえ、ハルカはポケモンリーグに有給申請を叩きつけたということだけだ。
というわけで、ミヅキちゃんフルボッコ&新キャラ(意味深)登場回でした。
ミヅキを負けさせたのは作中でユウキが言ってた様に、負けない限り劇的な成長は望めないからです。その結果がこれ。戦いは数なんだよアニキ……!
ユウキ、ハルカ(メガシンカ世界)の口調ですが、ポケスペをベースにしています。ただしハルカに関しては、チャンピオンとなってから公の場では標準語(アニメハルカ)を使い、親しい人と会話する時には地(ポケスペハルカ)になるという設定。
ギャップ萌えだよ!さすがハルカちゃんあざといなー(棒)
ちなみに、ユウキ(主人公)世界のハルカは普通にアニメの口調です。
そして表れた謎の人物。シンオウが活動拠点で、神様と関わりを持ち、大丈夫大丈夫!を口癖とする少女とは一体誰なんだ……(棒)