ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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また1万字を超えた、だと…………!?

とはいえ、今回は説明会です。お嬢様とは誰なのか、ソラの真相とは――。
その辺に焦点を当てたらやっぱり長くなりました。
苦手だと思う人はページの最下部へ移動を推奨。後書きに要約が書いてます。

『ポケモン不思議のダンジョン 空の探検隊』についての知識を持っていることをオススメするけれど、なくても特に問題はないです。

1/30、USUMに関連する部分を修正しました



今明かされる衝撃の事実ゥ!

お嬢様――フルネームはヒカリ・ベルリッツ。

向こうの世界ではシンオウ地方に200年以上続く大財閥にして学者の家系『ベルリッツ家』の令嬢で、下々に名前を明かしはならないという変な決まり事があったお嬢様。名前の由来は世界を照らす光になって欲しいという願いから。

後にその決まりは有耶無耶となったが、僕を始めとする1部は未だにお嬢様と呼び続け――今に至る。

 

そんな彼女が、この世界では神に選ばれた者(コウキの立場)なのか……。

ベルリッツさん、アンタの娘の光が強過ぎてヤバいです。

 

 

「いや違うから!向こうの世界のあたしが良家の令嬢でも、こっちのあたしは一般家庭出身だから!」

 

 

……本当にそうなのか?

 

 

「そうなんです!

ちょっと普通とは言えないけど……まだ大丈夫だよね」

 

 

いや神に選ばれている時点で普通じゃないから。

そもそも普通という言葉に自分で疑問を持っている時点で普通とは言えない。厨二病は除くが。

 

 

「ですよねー。知ってた、知ってたけど…………!」

 

 

と、何やら葛藤した様子を見せるヒカリ。僕の知るお嬢様(ヒカリ)は一般的な令嬢らしくやや高慢な態度を取っていたが、好奇心が旺盛で地味にノリが良い少女だった。

 

この世界のヒカリは普通の少女らしく活発で愛想が良く、ひと目見ただけでは似ても似つかないが……根元の所では共通した部分がみえる。もしお嬢様が一般家庭に生まれたのならばこうなったかも知れないと思う程には。

 

まあそれは良い。とりあえずソラとジュプトルのことについて協力を要請しようと考えて――こちらを怪訝そうに見つめる2人(ソラとリーリエ)の姿が視界の端に移る。

このノリについていけてないのか、と思うものの、すぐに違うことに気付く。

そう、果たしてさっきから僕は言葉を話していたか――?

 

 

「…………ああ、やはり持っていたのか。UMAの3匹を」

 

「あっ………そっか、あの3匹と話してた時から加護を切ってなかった。

その……ごめんなさい。読まれたくないこともあるだろうに」

 

 

並行世界とはいえお嬢様(ヒカリ)が謝ったという事実に僅かに驚くと同時に、やはりシンオウは準伝でも規格外だと痛感する。端的に言って頭おかしい。

 

叡智を司るユクシー、感情を司るエムリット、意志を司るアグノム。

3匹まとめてUMAトリオと呼ばれる彼らを捕まえたトレーナーは、その加護によって人やポケモンへの読心能力を得る。完全ではないものの、創造神を除く3柱の神にさえ通用する読心能力だ。ちょっと優れているだけの人間に抵抗は出来ず――そもそも気付く事さえない。そう、先程僕が気付かなかったように。

 

その事を説明すると、2人は驚くと同時に納得した様子を見せる。記憶を読まれたことに関しては葛藤こそあるものの、極端な拒否反応はないようだ。

特にソラはUMAトリオの名前に聞き覚えがあったのか、何かを考えているようだ。湖、そして時の歯車の番人という単語が唇の端から零れ落ちる。

 

その様子を確かめて、僕は改めてヒカリに話しかける。

 

 

「で、僕達を引き合わせたということは何か目的があるという事だろう?聞いてやるから説明しろ。

――知る者(ヒカリ)、お前は神の視点を得て何を知った?」

 

「……うん、まずはそこから話した方が良いよね」

 

 

そうして、ヒカリは話し始めた。

 

 

 

***

 

 

 

「まずはあたしのことから話そっか。

あたしは数年前、すべての感情がなくなった新世界を創ろうとするアカギに立ち向かい、その過程で反物質の神(ギラティナ)に選ばれた。その野望をなんとかして打ち砕いた後は、時の神(ディアルガ)空間の神(パルキア)、そして神の心(ユクシー達)にも選ばれた。

 

神が3柱もいるということで、あたしの視点は広げられた。知る者(・・・)であるあたしにとって、神の権能は相性が良すぎたんだ。

否が応でも世界の未来を知っちゃって、それをなんとかするためにがむしゃらに足掻き続けて、その過程であなたのことを知ったの。

 

やがて確実に訪れる星の停止(暗黒の未来)を食い止め、未来を変えた1人の人間――ソラのことを」

 

「オレが……未来を変えた?」

 

 

ソラは呆然として呟いた。

心当たりのない、知らない事実――つまり、喪失した記憶に関係のある出来事。その如何にもシンオウなスケールが壮大過ぎる話に、流石の彼も理解が及ばない。

 

 

「きっかけは、やっぱりウルトラホールなの。本来の世界で冒険をしていたソラは、ある日急に発生したウルトラホールに巻き込まれて、時を司る次元の塔が崩壊したことで時間が止まり、星の停止を迎えてしまった暗黒の世界へと転移してしまった。

 

そこでソラは、ウルトラホールを超えた副作用によって相棒と共に記憶を失い(・・・・・)、その世界の時が停止した影響でじくうのさけびも変質した状態で――結局元の世界と変わらず冒険を続けてたんだけど」

 

「歪みねぇなオレ!!?」

 

「世界転移の副作用が記憶喪失だと!?」

 

 

ソラとユウキが同時に叫ぶ。

片や記憶を失っても世界が変わっても自分の行動が変わらないことに衝撃を受けて、片や思わぬ副作用の存在と、自分がその影響を受けていないことに驚愕して。

そんな男共の様子にヒカリは苦笑し、話を続ける。

 

 

「ユウキの世界転移は色々例外(・・)なの。

話を戻すね。それで世界のあちこちを冒険していたソラ達だけど、あるモノに触った時、偶然じくうのさけびが起きてしまった。それは『時の歯車』――時間という概念の結晶の様なもの。その性質上、時が停止した世界でも唯一じくうのさけびを発動させるトリガーとなるモノだったんだ。

 

じくうのさけびによってソラ達は星の停止の真実――何らかの原因で世界の時を司る次元の塔が崩壊し、あらゆる時間経過が失われてしまったということを知ったの。

だからセレビィに頼んで過去へと逆行し、星の停止を食い止めようとした。

 

――未来を変えてしまえば、そこにルーツがある自分達は消えてしまうと理解した上で」

 

 

未来を変えるとは、それ以降に起きる筈だった出来事の全てを変えるということである。当然そこには生物も含まれており、自分という存在が初めからなかったとされる事になる。

 

当時ソラもジュプトルも知らなかったとはいえ、異世界からの来訪者である彼等も例外ではない。その世界に訪れたという出来事がなかったことになり、世界と世界の間を永劫彷徨う存在へと成り果てるのだ。

 

そんなソラの決意に、話を聞いていた全員が再度の驚きを見せる。ソラに至っては誰だそいつと呟いた。そうなった自分を想定出来ないのだろう。

ユウキは話が途端に信用出来なくなった。無駄にデカいスケールはシンオウクウォリティーで納得出来るものの、綺麗なソラは信じられないのだ。

日頃の厚い友情が感じられる。

 

 

「だけど、時の回廊を通って逆行している間に、何らかのアクシデントが起きてソラはポケモン(・・・・)になって(・・・・)再び記憶を失い、ジュプトルと離れ離れになってしまった。

 

そこでソラは、後にジュプトルをも越える最高のパートナーと出会い、その世界の冒険家ギルドに所属して探検を始めたの」

 

 

「ジュプトル以上のパートナー、だって?それに……オレがポケモンって……んなワケねぇだろ。人は人、ポケモンはポケモンだ。人がポケモンになるわけ――」

 

 

ソラは納得出来ないように話す。ユウキはまだ知り合いの話だから受け入れているが、彼は見知らぬ他人から一方的な説明を受けているのだ。自分が関係していると前置きされているから聞いていたが、流石に限界を迎えていた。

 

ちなみに、リーリエはスケールの違い過ぎる話に理解が及んでいない。ある意味最も自然な反応である。

 

そんなソラの疑問に、ヒカリは穏やかに答えを返した。

 

「『人と結婚したポケモンがいた。

ポケモンと結婚した人がいた。

昔は人もポケモンも

おなじだったから普通の事だった』

…………シンオウに伝わる昔話。ある日突然ポケモン(ユンゲラー)になっていた超能力者の話は知ってる?知ってるなら話は早いね。

 

ねぇ、ただの超能力者でもポケモンになるんだったら、じくうのさけびっていう超弩級の能力者だってポケモンになる可能性はあるんじゃないかな?

実際、ユウキとハルカ――あ、勿論この世界のね――は会ったことがあるって言ってたよ。じくうのさけびを持つ、元人間のゴニョニョ(シガナ)に」

 

「っ――――!?」

 

 

予期しなかった前例の存在に、ソラは目を見開いた。言葉も出ない彼の様子を見て、ヒカリは話を続ける。

 

 

「そしてソラとパートナーは、ギルドの1員として冒険を始めたの。

そして、霧の湖という地へと訪れ――また、時の歯車を見た。

その出来事を切っ掛けに、未来の存続を掛けた闘いに巻き込まれて……ううん、また参加し直したの。

 

その後はジュプトルも加えて、次元の境目に存在する幻の大地を踏破したものの――ジュプトルは次元の塔が壊れて暴走した、闇のディアルガとでも呼ぶべき存在の配下を道連れに未来へ戻り……ソラとパートナーだけで次元の塔を修復しなきゃいけなくなった。

 

次元の塔の崩壊を止めるには、時の歯車を塔の最上階にある神殿へと収める必要がある。

だから彼らは並み居る強敵を倒し、侵入者への罠を潜り抜け、そして遂には闇のディアルガをも倒して……時の歯車を収めて、星の停止を食い止めたんだ。

 

――ソラが存在していたという事実と引き換えに」

 

 

「そんな………それじゃあ、報われなさ過ぎます!頑張ったのに、世界を救ったのに、結末がそれなんて……あんまりですっ!!」

 

 

その末路に否定の声を上げたのはリーリエだ。幼い頃の経験から、彼女は同年代と比べると比較的精神年齢が高いが……それでも少女のものでしかない。故に、この結末は受け入れられなかった。

 

今まで会話に混じることもなかった第3者が真っ先に否定をしたために、ソラは自らが発言するよりも先にきょとんとしてしまう。

 

そしてユウキは、暴走しているとはいえたった2匹でディアルガを倒すという偉業を成し遂げた隣の存在にちょっと引いた。そして、あれこれ僕が全力を出せばワンチャン神3柱倒せるんじゃね?と場違いな感想を抱く。

ソラは相棒がいればLet's冒険だが、ユウキの場合は強敵の気配があれば思考が戦闘に傾いた。2人揃って歪みない。

 

ヒカリはリーリエのその言葉にコクリと頷き、アグノムに指示を出してユウキの戦闘意志を萎えさせて話を進める。

 

 

「うん、何よりも正気に戻ったディアルガがそれを許さなかった。彼は自分の力を総動員して、そしてアルセウスからの思わぬ援護を貰って、未来に生きるすべてのポケモンの存在の確立に成功した。

 

……だけど、異世界の来訪者であるソラとジュプトルは、その恩恵を完全には受け取れなかった。

配下のポケモンを道連れに未来へと帰ったジュプトルは未来で存在を確立し、ソラに至っては1度消滅したことでポケモンの部分と人間の部分に分かれ、ポケモンとしての存在は過去に、人間としての存在はこの世界に確立したの。

 

今のソラに数年分の記憶がないのはポケモンとしての自分に記憶を持っていかれたからで、ジュプトルがいないのは別の世界に存在が確立してしまったせい。

 

――これが、あたしが知る限りのすべて」

 

 

ヒカリの話が終わり、ソラは呆然と空を仰いだ。下手な小説よりも長くなるだろうこの物語が、よりによって自分のものだとはあまり現実感がなく――だが、それで辻褄が合ってしまう。

 

だが、大きな疑問が1つある。

それはユウキの口から話された。

 

 

「――何故ソラの存在が僕達が元々いた世界ではなく、何の関係もないこの世界に確立されたんだ?」

 

 

それは当然の疑問だった。

人間としてのソラはどうしてこの世界に確立したのか。アルセウスは他者の不完全さを尊ぶが、こと自分のこととなれば完璧主義となる。そんなアルセウスが後押しをしたのだから、ソラは本来の元いた世界に戻らなければならず――だが、現実として共通点が極めて多いだけのこの世界に表れた。

 

そこには何らかの意図があるのではないかとユウキは考察し、ヒカリはそれを肯定した。彼女は話しにくいオーラを出してはいたものの、諦めたのかポツリと呟いた。

 

 

「だって――向こうの世界は隕石による(・・・・・)壊滅的な被害(・・・・・・)を受けたから。

復興は始まってるけど、元通りとは程遠い」

 

「……………………は?」

 

 

その一言に、ユウキの思考はフリーズした。隕石か……そういえば、僕がこの世界へと訪れたきっかけも隕石だったな、案外隕石ってよく降ってくるよなと考えて――否定される。

 

 

「いや、隕石はそんな頻繁には落ちてこないから。

正真正銘、ユウキがこの世界に訪れる切っ掛けになった隕石なの。

 

――――あなたは……星を砕ききれなかった」

 

「っ…………だが僕には確かに破壊したという手応えがあったんだが――」

 

「隕石の本体だけなら、確かに破壊できたよ。けど、その破片(・・)は?

大気圏に突入して尚燃え尽きない大型の破片。無数にあるそれらが全国各地を襲い、凄まじい被害を巻き起こしたの。コウキを始め様々なトレーナーが対応したけど、被害をゼロにすることはできなかった。

向こうの世界は数年経ってなんとか持ち直しつつあるけど、でもまだ元通りにはなってない。

 

…………津波によって沈むという被害を被ったものの、僅か1週間で立て直すという偉業を成し遂げたホウエンのバトルフロンティアを除いて」

 

 

ユウキでは力不足だった、という事実を噛み締める。

――とはいえ、当時の僕の全力を尽くしたために今になってあの時何かできたかもと思うこともないし、自分の身は自分で守るべきだと思っているから特に申し訳なさを感じることもない。

 

 

「…………そうか。僕もまだまだ力が足りないな」

 

 

ただただ、まだ育成()が足りないなと反省するばかりだ。

 

…………バトルフロンティア?

ああ、割と頻繁にそんなことあるし、別にいいんじゃねぇの?

だいぶ前にバトルフロンティア近辺の無人島を舞台に廃人数十人が理論上最高火力を実際に使ってみて誰が最強なのか決めようぜ!とぶつけ合いした結果、小島どころか半径10km内のすべてが消滅したという大惨事に比べたら、島が再利用出来て修復可能なだけまだマシだ。

 

そっかあいつら呼べば良かったのかと思ったものの、余波によって諸共消滅してるのだからそんなこと出来やしない。己の力不足を認識している場面なのにこんなギャグみたいなことになるあたり、本当にバトルフロンティアは安定している。

 

 

「――――えっ、そんな感想でいいの?

何かこの世界来る直前に『絶対に帰ってくる』ってラブコメ繰り広げてたのに?」

 

「……チャンピオンの義務として向こうの世界の事は気にかかりはするものの、フロンティアの連中が全力で復興に乗り出せばなんとかなるだろう。

必ずしも僕がやらなければならないことはどこにもないし、何よりも今は依頼がある。お前が元の世界に戻す手段を持ち出したとしても、少なくとも今回は蹴るつもりだ。

 

それに、確かにリラとの決着は早く付けたいと思っているが、僕はメガシンカをモノにしてから帰ると決めたんだ。それが果たされていない以上、帰る訳がないだろう。

 

――で、結局お前の目的は何なんだ?」

 

 

元の世界の隣人を信用して・依頼を果たすために――と言えば聞こえはいいものの、復興の協力をするよりもこの世界で戦いたいという本音が見え隠れしているユウキ。最優先は勝負事であり、そのためにチャンピオンの椅子が邪魔ならば躊躇いなく捨てる割とロクデナシである。

 

そんな彼はいい加減面倒臭くなってきた。説明が長い。いくら自分に関わることであろうと長い説明は退屈を招くもので、彼の年齢(高校生相当)なら尚更だ。悪い意味で学生の鏡である。

 

そんなユウキにヒカリは少し呆れたようだが、実際やたらと長いのも確かなので、そこには触れない。大人である。実年齢はユウキの方が上なのに。

やはりお嬢様と根元は共通しているな、と彼は思った。

 

 

「目的は……話しても良いんだけど、その前に向こうの世界のディアルガからの頼みを済ませてからね。

ソラ、あなたとジュプトルのことだよ」

 

「オレと…………。悪いなユウキと……えっと、パツキン嬢ちゃん。ちょっとこっちを優先させてくれ」

 

 

ソラが両手を合わせて2人に頼む。ポケモンとなった自分がどうであれ、人としての彼にとってジュプトルは誰よりも大事な相棒なのだ。それに比べたら彼女の目的なんて極論どうでも良い。

そんなソラの頼みにユウキとリーリエは頷きを返す。

 

その反応を見て、ヒカリはパチリと指を鳴らし――彼女の後方で2つの空間の歪みが発生した。

 

片やその場の時間軸を操って自分の存在を介入させ、

片や空間そのものを自身の領域と接続して顕現する。

 

時の神(ディアルガ)空間の神(パルキア)――ヒカリと共に表れた反物質の神(ギラティナ)を合わせると、これでシンオウが誇る3柱の神が揃った。

 

そして、ディアルガとパルキアが連携し、ギラティナがそれを安定させることで、時空を越える『窓』が作られた。

 

 

「『人としての記憶を取り戻し、ポケモンとしての記憶を失ったお前にとって、ジュプトルがいないという事実はただ聞いただけでは受け入れられないだろうから……最後に、ジュプトルに話す機会を与えたい。時を超えた存在の確立が私の礼ならば――これは闇に呑まれて暴走してしまった、私の贖罪だ』

 

……………これが、向こうのディアルガがあなたに宛てた言伝。今作った窓がそのための装置なの。これの前に立てば、後は自動でジュプトルのいる世界へと接続され――――行動が早いなぁもう……!」

 

 

話を最後まで待つことなく、ソラは窓に向かって全力で走り出した。そんな彼の姿を見て、ヒカリは言葉だけは呆れながら、だが表情には笑みを浮かべて呟いた。

そして彼が窓の前に立つと、さほどの間も置かず、窓の向こう側には1匹のポケモンの姿が表れた。

 

――――ジュプトルだ。

 

いつも一緒にいるのが当たり前で、でも唐突に消えてしまった相棒(パートナー)の姿を久しぶりに見て、ソラはしばらく呆然としてしまう。ジュプトルはそんな彼の姿を見て苦笑し、懐から道具を取り出した。

 

 

「それは…………じくうのオーブ?」

 

 

それは運命の塔と呼ばれるソラの経験した中で最高難易度のダンジョンに安置されていた、時空を越える力を持つとされる究極のオーブだ。

 

時空のオーブはジュプトルの手から世界の壁を超えてソラへと渡され――そして発生する眩暈(・・)。暫くご無沙汰だったが、ソラはこの感覚に覚えがあった。

 

そう――信頼できる相棒(ジュプトル)が存在し、モノ(時空のオーブ)に触れたことで。

ソラの能力、『じくうのさけび』が発生する――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そう、か」

 

 

長い沈黙を経て、ソラはたった一言、それだけを口にした。

じくうのさけびを通して彼は知った。あの世界で自分達が何を成したのか。未来に帰ってからのジュプトルがどんな経験をしたのかを。

 

 

『オレはオマエに会えて幸せだった。

別れは辛いが………後は頼んだぞ! 』

 

『風よ!光よ!もし届くなら……ソラたちに伝えてほしい!

オマエたちのおかげで、未来は暗黒から解放された!

そしてオレたち未来のポケモンも無事だ!オレたちは消えずに済んだんだ。

これからは力を合わせ、世界を建て直していく。

これまで支えてくれたセレビィのためにも、これからは……

オレたちはなにより……生きているのだから!

 

ソラ!聞こえるか!

オレたちは――生きているッ!! 』

 

 

「…………聞こえているよ、相棒(ジュプトル)

ああ、オレも……お前に会えて幸せだった」

 

 

ソラの言葉にジュプトルは笑顔を見せて――そして、『窓』は消え去った。後に残ったのは時空のオーブと、記憶だけ。それでもソラは満足そうに笑い、呟いた。

 

 

「そうだよな、時空を超えてもオレ達は繋がってるんだ。オレ達は生きている――だから、これからの事について考えなきゃいけない。

機会を作ってくれてありがとな。アイツが頑張ってるんだ、ならオレも前へ進まないと。

 

だから――教えてくれ、ヒカリ。オレ達は何を目的に集められたんだ?」

 

 

 

そして、ヒカリは瞼を閉じてそれまでの気持ちを切り替えた。再び瞳を開いた時、そこいるのただの少女としての彼女ではなく、神と接し様々な物事を経験した『知る者』(ヒカリ)だった。

 

 

「目的…………そう、あたしは知ったんだ。今年、アローラの地に訪れる災厄を。

あたしはね。伝説のポケモンが表れた時の対応とか、なんか色々電波的な組織の野望を打ち砕くとか、そういったのはその地方の人間がやるべきだと思ってるんだ。あたし達物語を終えた(・・・・・・)トレーナー(・・・・・)は、本来はバックアップに回るべきだって。

 

だけど、そうも言っていられない事が起きた。ううん、これから起こるの。

数ヶ月後……この地方の色んな所でウルトラホールが開かれて、異世界の住民――UB(ウルトラビースト)がこの世界に表れる」

 

UB(ウルトラビースト)――聞いたことがあります。昔アローラに表れて、カプと対立した凶暴な生命体だと。

それが――この世界に表れるのですか?」

 

 

リーリエが驚いた様子を見せる。アローラに住む人間にとってUBは御伽噺として伝えられてきたもので、知名度は高い。

そんな彼等が表れるとなっては驚愕も一入なのだろう。

 

 

「うん。だけど、凶暴ってことには語弊があるかな。

彼らはこの世界に来ることを望んでないんだ。だから元の住処――US(ウルトラスペース)に帰ろうとして、帰れなくて。ヤケになって当たり散らして、街に被害を巻き起こす。

 

だからあたしは、空間の神(パルキア)に選ばれたトレーナーとして、彼等を本来の住処(ウルトラスペース)へと戻さなきゃいけないの」

 

「なるほど。ってことは、お前の目的は、オレ達にそいつらを元の世界に戻すまでの時間稼ぎをしてくれと頼むってことで合ってる?」

 

 

ソラの言葉にヒカリは頷いた。

 

 

「数が多すぎてあたしだけじゃ手が足りないの。だからあたしが元の世界に戻している間、他のUBの足止めをしてくれるトレーナーが必要なの。それも、USの向こう側の世界に生息している1000を越える準伝説級のポケモンに立ち向かえるような、強力なトレーナーが」

 

「僕達はお前のお眼鏡に叶った訳だ。だが ……解せないな、そんな事態になる前にその原因となる要素X(ファクター)を潰せばいいだろうに。

どうして態々USと繋がるのを待つんだ?」

 

 

ユウキはそんな疑問を発する。

被害があるなら未然に防ぐ。彼は戦闘狂ではあるが、根元は善良だ。未来がわかって、被害が出るのが確定していて――なのにそれを未然にではなく、起きてから防ぐ理由がわからなかった。

 

 

「それは並行世界の可能性――アローラどころか世界中から光が失われるという事態を防ぐためだよ。元々この世界とあの世界は単に似ているってだけで明確な違いがあるはずなのに、なぜか少しずつ近寄りつつあるの。まるで自分の意思で世界を越えられるような人が、裏で何もかもを主導しているかのように。……まあ、そんなハイスペックな人なんているわけないんだけどね。あたしだって、世界の壁を越えるには準備が必要なんだし。

 

そんな未来を防ぐためには、ある一定の流れに沿わなきゃいけない。UBを呼び出すのはその一環。

でも必要な過程とはいえ、UBの足止めをするにはまだトレーナーの数が足りないんだ。相手は世界だから当然量も膨大で、準伝説クラスだからぶっちゃけ手強い。それを足止めしなきゃいけないんだから、トレーナーにもかなりの強さが求められる。

 

だからあたしは頼んだの――アルセウスに、あたし達物語を終えたトレーナーがアローラに集結するという未来を創造して欲しいって。

 

…………ソラはともかく、ユウキがこの世界に来たのは誤算だったけど。お眼鏡に叶うまでもなく、勝手に入り込んで思いっきり自己主張するから無視出来なかったというか」

 

 

世界には流れがある――なんてことを話すヒカリ。彼女は様々な可能性を知ったが、代償として、思い切った行動が出来なくなっていた。自分の軽率な行動がもっと悪い未来を呼び寄せてしまうのではないかと苦悩し――そんな彼女を見て、ユウキとソラは呆れたように言う。

 

 

「ま、強いポケモンと戦えるなら僕は諸手を挙げて歓迎するぞ。結論からさっさと話してくれればいいものを……話が長い。『ちょっと強いポケモンが大量発生するから手を貸して』で良いだろうに」

 

「お前にゃ借りが出来たからな。異常に湧き出るポケモンをボコしてれば良いだけなんだろ?ただのMH(モンスターハウス)じゃねぇか。悲しいことに慣れてるんでね、オレで良いなら力を貸すぜ」

 

「わたしも――トレーナーじゃないので直接的な力にはなれないのですが、手伝わせてください!」

 

「……それより、その件が解決した後は当然、物語を終えた連中とやらに勝負を挑んでも良いんだろう?そんな御褒美が待ってるんだ、千だろうと万だろうと――負ける気がしないね」

 

「ならオレは、面白そうなダンジョンについて知らないか聞いてみっか。楽しみだなぁ、ダンジョンアタック。

ジュプトルはもういない上、アイツ(・・・)とも別れたが――ポケモンとしての僕と共に歩んでいる。

僕は1人じゃないんだ」

 

「えっ、ちょっ、2人とも!?」

 

 

そんな彼らを見てヒカリは目を瞬かせ――プッと噴き出した。今まで複雑に考えていた自分がバカみたいだ。大量発生ってそんな、G(ゴキブロス)の様に扱うとか、ない。

 

 

「ふふっ、なら大丈夫(・・・)だね。

じゃあお願い――手を貸して」

 

「ああ」「オッケー」「頑張ります!」

 

 

そんな3者3様の返事を聞いたヒカリはクスリと笑い、破れた世界へ戻ろうとして――ユウキに、ある物を投げつけた。

 

 

「………これは?」

 

 

それは石だった。

炎を宿したかの様な真紅で、心なしか暖かみを感じる。状況からしてただの石ではないことが明白で――そんなユウキの疑問に、ヒカリは世界の境界を超えながら答えた。

 

 

「バシャーモナイト!

それとキーストーンが揃えば、バシャーモはメガシンカが出来るようになる。

――あたしからの報酬。先払いの方が意欲高まるでしょ?」

 

 

その言葉を残し、ヒカリと3柱の神は去っていった。後に残された彼等のうち、ユウキは取り敢えずメガシンカを試そうとして――すっかり忘れていた本来の要件を思い出した。

 

 

「なあ、ソラ。じくうのさけびは使えるか?ちょっと見て欲しいポケモンがいるんだが」

 

「問題ねぇぞ。

ジュプトルともアイツ(・・・)とも道は別れたが――時空のオーブ(コレ)に触れたことでオレは知った。

例え2度と会えないとしても、オレ達は世界を超えて繋がってる――生きている。だったら使えない方がおかしい」

 

「なら、観て欲しいポケモンがいる」

 

 

そう言って、ユウキはリーリエのバックからコスモッグ(ほしぐも)を引っこ抜いた。長話が続いたせいだろう、すやすやと眠っている。

ソラはそんなコスモッグ(ほしぐも)の頭を優しく撫でて――

 

 

――じくうのさけびが発動する。

 

 

そして数拍の間を置いて、ソラはやたらと難しそうな表情をして、リーリエへと告げた。

 

 

「――――いずれは太陽と月へと至る星の子か。リーリエっつったっけ?気を付けろ、このポケモンは『鍵』だ。………オレからはこれ以上は言っちゃダメだな。1つ助言があるとすれば

 

――日輪の祭壇に行け。ここに辿り着けばすべてが分かる」

 

 

 




という訳で、お嬢様はこの世界のヒカリ(Ptの主人公としての経験を積んだ。性格はアニメ風)で、ソラは空ダンで活躍してくれた主人公でした。バレバレだったけどな!

要約としては、
・ソラはポケダン空の主人公の人間としての部分だった。エピソードFinalで復活した際に、ポケモンと人の部分に別れて復活したため、その世界での記憶は吹っ飛んでいたが。

・ユウキは確かに隕石を破壊したが、破片は結構残っていた。それが地球に降り注いで被害は大きい(バトルフロンティアは除く)。

・ソラは神の力でジュプトルと再開し、じくうのさけびによって向こうの世界での記憶を取り戻した。その後時空を越える力を持つオーブが手元に残ったため、自分と相棒は繋がっていると確信。以降はじくうのさけびが発動出来るようになる。

・ヒカリがUBが表れる事について触れ、USに戻すために2人に協力を要請。他のトレーナーをアローラに集めることについても触れる。

・ソラがコスモッグにじくうのさけびを使い、意味深な発言をする。

って感じ。詰め込み過ぎたか。
正直に言って、ソラとジュプトルとの別れと、今後の展開への伏線(微塵も伏せてない)を入れたいだけの話だった。
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