サブタイ通り、ポケスペで唯一の公式公認カップルが登場します。
1/30、USUMに関連する部分を微修正
当初の目的を果たし、シェードジャングルを後にした僕達は、UBについて調べ直すために再び空間研究所へと戻っていた。
ちなみに、ソラとはシェードジャングルで別れている。じくうのさけびを通して自分について知り、吹っ切れた様子を見せたが……やはり1人で考えるべきこともあるのだろう。何も言わずにその場を去っていった。
多少の懸念はあるものの、依頼を出されたのだから、その期間までには解決する。そういう奴だから心配はない。
「…………やはり少ないな、UBに関する記述が。まだ研究段階なのだから当たり前だが――うわ、パルキアとギラティナについて記述された資料があるぞ。
こと空間関係のごった煮だな。何が必要なのかさえわからないから適当にぶっ込んどけ感がある」
「それは辛辣に過ぎないかしら?わかってないってことは事実ではあるけど、だからといって適当にしている訳ではないわ」
「…………手掛かりがない状態ならばそうなって仕方がない、か。
悪いな、確かに言い過ぎだった」
「構わないわ、事実だもの。
…………それより、本当なの?さっきの話は」
資料を読み漁っている僕に問いかけたのはバーネット博士だ。
空間研究所の所長として
そのために信憑性が薄いものになってしまったが、元々突拍子もなさ過ぎて信じ難いものである。デメリットは僅かだと言えよう。
「証拠はないが……おそらく事実だろう。彼女に僕達を騙す必要性を感じないうえ、壮大過ぎて普通は信じられない。また、妄想を現実だと思う狂人の類にしては理性的だった。
なのに話したということは、やはりそうなる可能性が高いという事だろう」
「そして、もしかすると
…………情報を得て1歩進んだのはいいけれど、壮大な話にまた八方塞がりだわ。ないよりはマシと考えて調べるしかないわね」
やれやれと呟くバーネット博士だが、その表情にはやる気が満ち溢れていた。調べる事が多すぎる――研究者にとって嬉しい悲鳴だ。少なくとも、肝心の1歩が踏み出せない状態とは程遠いのだから。
僕は研究職のことを理解出来てはいないが、察しはつく。
トレーナーで例えるなら、新しい技や道具の存在を知り、どれを使えば良いのかわからない状態。あれと同じだろう。
「光を奪われる、という現象についても調べる必要があるが――曰く、これは可能性世界の話だから一旦放置で良いだろうし。
僕の世界のことは完全に後回しで……いや、いっそ研究しなくとも構わない。それよりもアローラの民として、近いうちに起こるであろう脅威に備える方が良いだろう。
……ところで、ミヅキとハウは今何をしているんだ?」
「…………いえ、1度依頼されたことを途中で辞めるのはプライドに反するわ。調査は続行する……まあ、優先度は下げるけれど。
それと、彼等ならマオの試練を終えたらしいから、もうすぐここに来るわね。
特にミヅキは圧巻だったって聞いたわよ。ここで少し理論を読んだだけですぐモノにして……天才ってあんな子のことを言うのね」
「わかった。なら、彼等がここを出る時に合わせて僕も立つとしよう。
…………それにしても、天才、ね……」
僕が最後に漏らした呟きは、バーネット博士の耳には届いていない様だった。
彼女はそう、とだけ頷いて、資料の片付けをしっかりとする様に言ってからその場を去っていく。
天才――その言葉を出されると、知っている誰よりも
彼女は今頃、向こうの世界で何をしているのだろうか?バトルフロンティア
まあ、どうせ無事にタワータイクーンとしての仕事をしているのだろう。深く考えないことにする。色々終えて元の世界に戻り、いざ約束を果たす時、僕だけメガシンカやZワザを使うことへの罪悪感を感じるが、それはそれだ。
周囲を見ると、没頭していて気付かなかったが、辺りには読み散らかした資料が散乱していた。その様子に僕は溜め息を吐いて、元々の振り分け通りに資料を分類し、整理するのだった。
***
ロイヤルドームにて。
「そこっ!ボスゴドラ、ガオガエンに向けてもろはのずつき!!」
少女の指示に従って、メガボスゴドラがもろはのずつきを放つ。
――こうかはばつぐんだ!
圧倒的な威力を持った頭突きが相手のポケモン――ガオガエンへと直撃し、ただの一撃を以て粉砕した。直後、対戦者の手持ちポケモンが尽きたことで試合の終了を告げるゴングが鳴り響く。
『決まったぁぁぁっ!!
今回のバトルロイヤル、勝者はミシロタウンのハルカ!堂にいった素晴らしい戦いを見せて頂きました!!』
バトルロイヤルの勝者が決まると共に、観客席が圧倒的な盛り上がりをみせる。
ハルカはバトル中にかいた汗を手の甲で拭いながら、どうしてこうなったんだろうと思いを馳せていた。
……決まってる。
――どれもこれも、あのユウキば名乗る偽物のせいったい!
***
試合が終わった後、笑顔の仮面を被り、苦労して習得した標準語でインタビューに答えるハルカではあるが、内心では怒りが渦巻いていた。
偽物の野郎こっちが必死こいてアピールしてんのに舞台に上がってきやしない。恐れをなして逃げたか、と思うものの、ハルカの優れた第六感がそれを否定した。
このドームに来て実際の試合の映像を観させて貰ったが――認めたくないことに、あの偽物は少なくともバトルロイヤルにおいて自分よりも
考えられる原因としては2つ――もう遠く離れたどこかへ行ってしまって自分の活躍を知らないか、眼中にないかのどちらかだ。
実際がどうであれ、仮にも『ユウキ』を名乗ってるのであれば、『ハルカ』という名前には反応して欲しいと思う。
正面から出てきたら叩き潰すが、かといって何のリアクションも示されないのはそれはそれで複雑だ。少なくとも偽物はユウキとハルカには特別な関係性を見出していないと公言しているようなものなのだから。乙女心とは極めて難解なものなのである。
加えてハルカの怒りを助長するものとして、ここにはユウキ(本物)がいないことが挙げられる。
彼らは当初、偽物がこの地で無双していたという事実を些か軽視していた。実際に現地に来てユウキに注がれる無遠慮な、あるいは敵意を持った眼差しに、彼は自分だけならともかく、ハルカも巻き込んでしまうことを嫌ってロイヤルドームに出なくなってしまった。
彼との旅行を内心楽しみにしていたハルカにとってその苛立ちは堪えきれるものではなく――
――――溜まりきった怒りをぶつけるかの様にバトルを行い、蹂躙の果てに20連勝をもぎ取った。
それは確かに偉業で、栄光で――だが、ハルカが価値を見出していない以上、意味がなく虚しいものでしかない。
ホウエン地方のミシロタウンは化物の巣窟かという阿鼻叫喚を聞き流し、苛立ち混じりの溜め息を吐きたくなる気持ちを抑え、ハルカはロイヤルドームを出る。
この地は元々アーカラの花園と呼ばれる場所を潰して作られた人口の庭園だ。見渡す限りが整備されているが、所々に自然色を強く残す場所も多く残っていた。
その中の1つ、エリア外れにある木が密集する小規模な林を前にして、ハルカはゆっくりと深呼吸して、
「…………うん、そこにいるかも!
ユウキー!出てきても大丈夫だよ!!」
「………ハルカ、そんな大声を出さなくても」
都会っ子であるユウキのちゃちな隠蔽をあっさり見破った。
その上で人の目があるかもしれないと思い、ハルカは標準語で語りかける。語尾に「〜かも」と付くのは癖らしい。
ユウキは苦笑を浮かべ、その場に表れた。これで何回目になるだろう。回数を重ねる毎に負けず嫌いが働いて隠蔽のグレードが高くなり、今回に至っては服が汚れると好んでいなかった多様な工作まで徹底的に行った会心だったのに、彼女はあっさり見破ってしまった。これはやはり、年季の違いなのだろうか。
ユウキはハルカに問うてみると、彼女は頷き、同時に否定した。
「んー、確かにそれもあるかも。自然さを演出しようとして逆に不自然だし、化学製品の臭いも鼻につく」
「――――ぐはぁっ!」
その言葉に全ユウキが涙した。やはり自分もあの野生児スタイルに染まらなくてはならないのか。だがそんな格好はプライドが許さない。――あれコレ勝てなくね?
右手で心臓の辺りを抑えて膝をつく彼を視界にいれ、ハルカは「だけど、」と話を続ける。
「それだけじゃないかも。
わたしがあなたを見つけられるのはただの勘――あんたのことが大好きな、女の子としての勘ったい!」
そのように、笑いながら本来の口調で話す彼女に意表を付かれたユウキ。彼は赤面しつつ苦笑するという器用な芸当を見せ、言葉を返す。
「whew――まいったな、それじゃ防ぎようがないじゃないか!
……それにしても、やっぱりキミはその口調の方がキュートだよ」
「へっ?」
「言葉遣い。標準語も良いけど、やっぱり訛ってるの方がキミらしさがあって、ボクは好きだな。
……でも、2人っきりの時の特典と考えると、それはそれでありがたいけど」
「なっ………!?そ、そんなことば急に言われとっても……!!」
ユウキの返しに照れを隠せないハルカ。
彼女はチャンピオンとしてテレビの前に出るという都合上、これまで全開だった訛りを少しずつ矯正していたが、慌てた時や特に親しい者と会話している時だけそれが外れる。特にユウキが相手の時はそれが顕著で、彼の唐突な言葉に思わず素が出てしまうことも多かった。
先ほど言ったように、ユウキはどちらかと聞かれれば素のハルカの方が好きだ。だが、だからといって苦労して標準語を習得した彼女の努力を否定するつもりもない。
――どっちもハルカだし、何よりボク専用の言葉遣いって言われると実にgoodだね!焦ってつい話してしまう時なんて実にcuteだ!と思っていたりする。
そして暫くのいちゃこらを挟んだ後、ユウキは本題に踏み入った。
「…………ところで、何か進展はあった?何だっていい」
「んっと、今日対戦したトレーナーの1人……
話ば聞いてみっと、それは島巡りをしているトレーナーだって言うったい」
「島巡り……確か、アローラ独自の風習だったね。子供たちがアローラの4島を巡って1人前のトレーナーへと成長するための行事だっけ。
だけど……おかしいな。あの偽物は成長過程にしては強過ぎる。実力だけならとっくに1人前じゃないか」
「5歳の時にポチエナとエネコとラルトスだけでボーマンダば退けたトレーナーが何言っとるったい……。
他の地方から引っ越したから島巡りばしたいって言ってたらしいとよ。バッジ8個の実力ばあるって言うとったけん、前いた場所ではどげん扱いをされてたんやろ」
「知りたくもないね。あんな美しさの欠片もないダサいセンスしてるヤツのことなんか」
ハルカが抱いた疑問にユウキは短く吐き捨てる。大事なのは心の美しさ――そう考える彼だが、それとこれとは話が別なのだろう。他人に外見を似せている時点で美しさもあったもんじゃないと思っているのかもしれない。
肝心なのはユウキが偽物の存在を疎んでいるという事実であり、
その理由として、偽物の存在によってハルカが何らかの悪影響を受けてしまうのではないかという懸念があるからだ。
彼女を守りたいという気持ちは掛け値なしの本物だ。だからユウキは思考を巡らし――結局は、至極単純な結論に落ち着いた。
「うん、なら……会いに行ってみようか」
「…………えっ?そげんことができると?」
ユウキの言葉にハルカは疑問を抱いた。自分達はまだ偽物についてロクな知識がない。闇雲に行動することの愚かさについてはホウエンでの旅の最中に散々学んだため、ユウキが行う行動には何らかの理由がある。そんな彼が態々会いに行くと言い出せるだけの根拠が分からなかったのだ。
そんなハルカに、ユウキは答える。
「ああ、問題ないさ。
そのロイヤルマスクって人は、島巡りの途中だって言ってたんだろ?
なら、ロイヤルドームに来たのはアーカラの試練を受けている過程でたまたま訪れたからなんじゃないかと思う。
……まあ、色々と疑問に思うこともあるけどね。島巡りをしているだけなら、どうしてボクと同じ外見をしてるのか、とか……それ以外には手掛かりさえ見つからないのが現実だけど。
まあ、それは今は置いといて。偽物の行動なんだけど……時間経過を考えると、そろそろ大試練に挑む頃なんじゃないか?だからここ――コニコシティに行けば、遭遇できるかもしれない」
ユウキがロイヤルドームで配られていた簡素な島のマップの1点を指し示した。その場所の名前はコニコシティ――商売の街にして、アーカラ島が誇るしまクイーン、ライチが住む街だった。