大丈夫、何事もなかったかのようにあっさり終わるさ。何せロイヤルドームの時点でジュナイパーが手持ちにいるんだぜ?そっから成長してることも考えると、元々の脆さも相まって、手加減したライチさんなんて楽勝楽勝♪
――いわタイプなんて全然怖くない(露骨なフラグ)!!
11/26、キテルグマのタイプをノーマル・岩からノーマル・格闘に修正しました。
「ユウキさんなんですけど……元々はこの世界の出身じゃないらしいのです。
わたしも詳しくはわからないのですが、なんでも世界を救った結果こうなったのだとか。そして今またアローラを救う依頼を受けているらしくて……」
「そっかそっかー。空間研究所の論文片っ端から見てたのに、ユウキさんの言ってた理論が見つからなかったのはそれが理由かぁ。そりゃ異世界ならわかんないよねー。
……正直に言っていい?あのユウキさんが世界を救うとか、どんだけヤバいのその世界。そしてユウキさんがアローラを救う依頼を受けてるとか、どんだけヤバくなるのアローラは」
「あはは……やっぱりそう思いますよね。でも事実のようで、たぶん先程の方々もそれ関連だと思いますよ」
「アローラを救う同盟、か……。
ユウキさんでさえ一般構成員みたいなんだから、どんな化物の巣窟なのかなぁ」
「…………ホンモノの神様がいます」
「なにそれこわい」
そんな話をしながら、私達はお墓なのにバトルを仕掛けてくるたくさんのトレーナーを片っ端から蹴散らし、
なんか出てきたスカル団も片付けて(リーリエは隠れてた)、
なんかエーテル財団の関係者っぽい偉そうな人から極めて不信なお誘いを受けて(リーリエはまだ隠れてた)、
スカル団の幹部の女性も普通に倒し(リーリエは迷っていた)、
ついに私達は命の遺跡へとたどり着いた。
「あれが……アーカラの守り神、カプ・テテフさんの遺跡ですよ」
ピュイ!と相槌を打つかのように鳴くほしぐもちゃんに、リーリエは困った様な視線を向けた。
「もう……メレメレ島でも戦の遺跡に行こうとしたり……。
あなたにとって遺跡とは……島の守り神さんとはなんですか?
あの時心底困っていたのです。もしミヅキさんがいなかったら……」
「ピュイっ!」
そこまでリーリエが言うと、突然ほしぐもちゃんが鳴いた。
人の気配を感じて遺跡の方を向くと、丁度そこからライチさんが表れるのが見える。
「あら、たしかククイの……」
そこまで言ったはいいものの、名前が浮かばない様だったので互いに名乗ることにした。目線で先を譲り合い、話しかけられたのはリーリエなために彼女が先に話すことになる。
「わたし、リーリエです。ククイ博士の助手をしています」
「私はミヅキです。カントーから来て、今はアローラで島巡りをしています」
「ごめんごめん!わざわざ会いに行ったのに名前聞かなくて。
カプ・テテフに呼ばれて遺跡を綺麗にしていたのさ。
ミヅキ……アローラの人を、ポケモンを知ってくれてありがとう」
「いえ、私もみんなには支えて貰ってばっかりです」
私がそう言うと、ライチさんは苦笑した様子で――ユウキさんには劣るものの、それでも明確な気当たりを私へとぶつけてきた。
直接の対象じゃなくても感じ取れるその威圧を感じ取ったリーリエは、その場から数歩離れる。
構成される戦いの
「…………さてと。
アーカラ島3人のキャプテンの試練をこなし、挑むは島クイーン・ライチの試練!
アーカラで1番ハードなポケモン勝負だ――ガツンと行くよ?」
「よろこんで――私のゼンリョクで挑ませて貰います!」
***
アーラカ島での最後を飾る、ライチさんとの大試練。ライチさんが専門とする岩タイプは多くが物理に傾倒しており、圧倒的なパワーとタフネスを誇る。弱点多いせいで普通に脆いとか言わない。
反面特殊攻撃には脆さを見せることがままあるけれど……(きっと)20代という若さで島クイーンにまで上り詰めたライチさんが、その対策をしていないなんてありえない。
思考停止して弱点タイプで特殊型のポケモンで挑んだトレーナーは、きっと痛い目に合っている。そうじゃないと
「行くよ――ノズパスっ!」
「お願い、キテルグマっ!」
ライチさんが先頭で出したポケモンはノズパス――防御力が極めて高く、特防もそこそこある岩単タイプのポケモンだ。レベルは多分25前後で、特性は……ノズパスなら頑丈一択だよね……。
対する私のポケモンはキテルグマLv.38だ。可愛い。
「キテルグマ、ちょうはつ!」
ノズパスは
なので、とりあえず挑発して様子を見る。これで機能停止してくれていたなら楽なんだけど……。
そう思いながら経過を見ると、ノズパスが出そうとしていたのは変化技だったんだろう。挑発に乗ってしまって、技を出せずにターンを消化していた。
予測が当たったことは嬉しいけど、それ以上に結構怖さを感じたりする。
――初っ端からエゲつないですねライチさん!一体何するつもりだったんですか!?
「ええぃ、もう動かないんだから気にしないっ!
キテルグマ、行くよ――アームハンマー!!」
キテルグマは物理に特化したノーマル・格闘タイプのポケモンだ。膨大なHPと高めの防御力、そして
ちなみに、キテルグマのHPは数値にしてノズパスの2倍近い。同じレベルでさえそんなに差があるのだから、一回りレベルが離れてる状態での痛み分けはホントに洒落になんないのだ。
ライチさんのノズパスがそれを覚えているかはわからないけど、とりあえず挑発覚えさせてて良かったぁ……。
そして、キテルグマのアームハンマーがノズパスに直撃する。素早さランクを下げる代わりに高い威力を誇る格闘技だ。
効果は抜群だ。
どれだけ防御力が高かろうと、ノズパスはHPには恵まれていないのだから問題はない。ただの一撃によってHPを消し飛ばし――
――ノズパスは攻撃を堪えた。
「やっぱ頑丈持ちかぁ……」
――だから耐えられるならそれは特性の問題。案の定『頑丈』持ちだったため、ノズパスは攻撃をギリギリの所で堪えた。
「ノズパス、スパークっ!!」
そして反撃とばかりにノズパスがスパークを放つ。電気タイプの物理技だ。
電気を帯びた突進がキテルグマへと直撃する……けれど、
そして、
――ノズパスは倒れた。
「…………なるほど、ゴツゴツメットを持たせていたんだね」
「はい、私のキテルグマは
そう、キテルグマの持ち物はゴツゴツメット。マオの試練の時に材料として使われたゴツメの余りである。
ノズパスは接触技を撃ってしまったため、残り1しかなかった体力を削り取られて瀕死へと陥ったのだ。
「だけど、タネがわかった手品なんて面白くない!ライチさんがぱぱっと片付けてあげるからね!
行くよ――ルガルガンっ!!」
ライチさんがルガルガン(夜の姿)を繰り出し――次の瞬間には黄金の光に包まれる。
Zワザだ。思わず身構える私に、ライチさんはゾッとするほど綺麗な笑みを浮かべて、絆を結ぶ踊りを踊った。
「これが岩のゼンリョク――受けてみな!」
――ワールズエンドフォール。
見上げると、太陽さえ覆い隠し、世界を終わらせるのかとさえ思わせる程に巨大。『デカくて重い』という単純で、故に強力無比な一撃こそが岩のゼンリョクだ。
刻一刻と穹から堕ちてくるそれに、私はしっかりと焦点を合わせて、
「全力全開――アームハンマーぁぁ!!!」
真正面からぶち壊すことを宣言する。
相手は視界を覆い隠すほど巨大なのに対し、こちらはたった一匹。
明らかにキテルグマの方が貧弱ではあるけれど、それでも私には勝算があった。
ルガルガンが覚える最強の岩技がストーンエッジである以上、
「ガチガチな
「 ヤ メ ロ ! !」
…………ほんのちょこっとだけ、巨石の落下速度が落ちた気がした。
そして激突する岩と拳。
傍から見ている私にも伝わってくる衝撃に吹き飛ばされそうになる身体を懸命に抑え、行き着く先を見る。
両者は暫くの間拮抗していたけれども、やっぱり質量差はどうしようもなかったのか、やがてキテルグマが膝を付く。
お疲れ様。私はそう言って腰元のボールへと手を伸ばそうとして――
――ピシッ
――音が聞こえた。
ハッとして試合を見ると、1度膝を付きながらも再び立ち上がったキテルグマと、大小様々な亀裂が走った巨石の姿が。
「――――がんばれ、キテルグマ!!」
やがて亀裂は全体へと到達し――巨石は音を立てて崩壊した。
キテルグマは大きなダメージを受けている様だけど、まだ
そして周囲に撒き散らされる多くの破片。小さくとも拳大はある無数のそれを邪魔臭いと片っ端から
「今のうちに決めるよ――アームハンマー!!」
キテルグマがぎょっとした視線を向けてくるも、そんな事に構っている時間はない。
ライチさんは飛来する破片から身を守ろうと必死に逃げていて、指示を出す余裕がないのだ。だったら素早さランクが下がりまくってるキテルグマでも先手を取ることは十分可能!
残念でしたねライチさん!
これが女子力(物理)の差なんです!!
…………どっちもどっち、なんて言わないで。
キテルグマのアームハンマーがルガルガンの土手っ腹へと直撃し、勢いよく削られていくHP。それが真紅へと染まり――
視界に、額に青筋を浮かべながら笑うライチさんが映った。
「
――――
――HPが尽きる寸前。あと数秒もあれば瀕死へと陥るだろう瞬間に、ルガルガンは起死回生の一撃を放つ。
起死回生となる一撃を真っ向から食らったキテルグマは耐えきれずに瀕死へと陥り、それで力を使い果たしたのかルガルガンも倒れ伏す。
キテルグマを回収したモンスターボールに、今度こそお疲れ様、と声を掛けて、次のポケモンをフィールドへと放った。
「――レアコイルっ!!」
「行きな――
私のレアコイルLv.37に対し、ライチさんが繰り出したのはガチゴラスLv.
もう1度言おう。
ガチゴラスLv.52である。
「ふふふっ……人の婚期を笑う者に遠慮なんてしてやらないから。
ウチのツテで入手したアゴの化石から復元したこのガチゴラスは、全国の出逢いを求める女性の妄執の具現だと心得な」
「…………ヤバい、やらかした」
深く、深く反省する。
もしかしたら普通にガントルを出してくる未来があったかもしれないのに、それを明後日の方向に全力で投げ捨てたのは私である。
というか、なんで読心出来るし。だいぶ前にユウキさんが「優秀なトレーナーなら読心術とか余裕」的な事をほざいていたけど…………まさか本当だったとは。異世界云々のことも真面目に考えた方がいいのかもね。
思考を切り替える。今は目前の試練が最優先だ。
言い訳っぽいと自覚しながらあえて言っておくけど、逆境自体はむしろ望む所だ。どんな方法で乗り越えようかと心が踊る。
それでも、
「ガチゴラス、りゅうのまい!」
「レアコイル、でんじはっ!」
――ガチゴラスが竜舞を積んでくるとかちょっとマジで洒落になんないから!
少しでも妨害をと試みて電磁波を撃ったものの、ガチゴラスは持っていたラムのみの効果ですぐに状態異常が回復した。
相手の道具が割れたは良いが、実質的に私はこのターンで有効的な手を何一つ打てていない現状に歯噛みし――そんな余裕はまったくない。
「でんじふゆう!」
「じしん!――へぇ、いい判断だ」
ガチゴラスが地震のための予備動作を行った瞬間、私は絶叫するかの様に指示を出した。電磁浮遊――これで4倍弱点となる地面技は効かない。
そしてガチゴラスはこれで2つの技を晒した。だから残りは2つ。順当に考えればタイプが一致している岩技と竜技だろう。とりあえず諸刃の頭突きは確定である。竜技は……逆鱗か竜爪か。
……どうせ諸刃使ってくるし、考えるのやめよ。
「なら、この一撃に耐えられる?
――ガチゴラス、もろはのずつき!!」
案の定、安定の諸刃である。
命中率はまったくもって安定してないけど、安定である。
自損を覚悟したからこその圧倒的な威力を持った突進がレアコイルへと直撃し、金属に硬いものが当たる派手な音が響く。効果はいまひとつだけど、素の威力が高い上に攻撃が1ランク積まれているのだから洒落にならない。
レアコイルの高い防御でもダメージは抑えきれず、HPは一気に
そして様子を見る限り、ガチゴラスは反動を受けていない。となると特性は石頭か。なるほどつまり――諸刃を毎ターン連打出来るっぽい感じ?
冷や汗が背筋を流れる。いやほんと、洒落になんないから。
「だけど、
攻撃がターンで最後であるため、
その際に生じた衝撃に乗っかって一気に距離を取ったレアコイルは、遠距離からひたすらラスターカノンを連打する。威力を絞って数に特化した牽制用だ。
迫り来る無数の弱点技に、ガチゴラスは――
「ハッ、上等――叩き潰してやりなさい!」
竜舞によって1ランク上昇した素早さに、諸刃の頭突きを上乗せして突進する。
多くが外れているとはいえ、それでも何発かは直撃している。なのにまったく怯んだ様子を見せないガチゴラスに、レアコイルの攻め手が僅かに緩み、
「そこっ!もろはのずつきぃぃぃッ!!」
諸刃の頭突きが直撃する。
2発目は流石に耐えきれなかったのか、レアコイルは瀕死へと陥った。
「お願い――ジュナイパー!!」
私の最後のポケモンはジュナイパーLv.40だ。一回りレベルが離れた相手との真っ向勝負に、ジュナイパーはこくりと頷き羽根を広げる。
そして――その身体が黄金の光を放つ。ジュナイパーに持たせた物はクサZ。だから今放たれる技は、
「――――ブルームシャインエクストラァァァっ!!」
辺り一帯に多種多様な花が咲き誇る。攻撃技というにはあまりに美麗なそれは、喩えるならば花の楽園。
ガチゴラスはその景色に一瞬目を奪われて――
この花の1輪1輪は高いエネルギーを有しており、任意で爆発させることができる。1輪が散れば巻き込まれた他の花が散っていき、それに巻き込まれた他の花もまた散っていき――その連続。
綺麗な薔薇には刺がある。これを体現する爆発の
「
ガチゴラス、諸刃で蹴散らしなっ!!」
無数の爆発を受けて刻一刻とHPを減らしながらも、諸刃によるブーストも相まって、ガチゴラスは怯まずに脚を進める。
対するジュナイパーは花園の中に隠れ潜みながら、タイミングを調節した爆発によって巧みに進路を塞ぎ、着実にダメージを与えていく。
闘い方がもう完全にゲリラのそれだ。研究所にいる時に変な円盤でも観たのかな……妙に馴染んでいるあたり、ジュナイパーという種族が元々そうである可能性が高いけど。
そして暫くの時間が過ぎ、草のZワザは制限時間を迎えた。
その間ジュナイパーはひたすら逃げに回り、自分はダメージを受けないまま、ガチゴラスの体力を少しずつ削っていくという嫌らしい戦術を立てていた。
なのでガチゴラスの体力は
故に、諸刃のたった一撃を当てるだけでケリが付く。命中率は80%と不安が残るが、しまクイーンが育成したポケモンがそんな不確定要素を残すはずもない。確定で命中し、即死級のダメージを与えるだろう。
「これで終わりだよ――ガチゴラス、もろはのずつき」
ライチさんが止めの指示を出す。殆ど結果が決まっているために口調はそれまでと比べて静かだけど、だからこそ絶対倒すという殺意を感じさせる。
――そして私は、この機会を待っていた。
「――
相手が攻撃に移る一瞬の隙を穿つ不意の一撃。決して威力は高くないけど、瀕死寸前のガチゴラスならこれで十分。
一度でも見せたらきっと対応されるから、どうしても油断が生まれるこの一瞬を作らなければいけなかった。
僅かに残っていたHPを残らず削り取られ、ゆっくりと崩れ落ちるガチゴラスの巨体。
それを見たライチさんは、苦笑と共に呟いた。
「素敵、ね…………」
***
「ゼンリョクを出し切ってこそ、さらなる輝きを得るから――あんたら、最高だね。ちょっとアレな所はあったけど、まさかガチゴラスを倒すとは思わなかったよ。
はい!いわタイプのZクリスタル……イワZをさずけましょう」
イワZをバッグにしまい込む。これでアーカラの大試練も達成かと考えると、なにやら感慨深いものを感じる。
具体的には最後の最後に出てきたガチゴラス。まさか倒せてしまうとは……。
「いい感じに使ってよ。
いわタイプ……かたくてごつくて、攻撃するのが得意……。
あたしとはあんまり似てないけど、かえって惹かれるんだよ」
「ふふっ、わかります。
私もゲリラ戦とかハメ殺しとか害悪とかが好きなんです。不思議ですね、私とはあまり似てないのに。
やっぱり人って自分じゃ手が届かないものに惹かれるのかも知れませんね」
「えっ(どこに不思議な要素があるの?)」
「えっ(あまり似てない、ですか……?)」
「ちょっと待ったどこに疑問を持つ要素があったのか聞こうじゃないか」
そんなこんなで私のアーカラでの島巡りも幕を閉じた。これで島巡りも折り返し地点に到達。次の島への期待を(決してないわけではない)胸に膨らませ、私はこちらへと引き摺られてくるハウと、彼を引き摺っているユウキさんの姿を見ていた
…………表情は、いつも通りの真顔なんだけど。
ええ、何事もなくあっさりと終わらせる予定でしたよ。
でもなんか、キテルグマvsルガルガンの所でいつもの
ライチのジュエリーショップは化石も売っていたので、きっと化石ポケモンも揃えてると思ってガチゴラスを登場させてみました。反省はしているけど後悔はしていない。