ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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新年のお慶びを申し上げます(今更)。
更新が遅れに遅れて申し訳ありません……。

前話までのポケモンUSUMに関連する部分を修正しました。概ね以下の形になります。
・ネクロズマによる光の吸収
前)二年後に起きる
後)限りなく近い並行世界で起きるが、この世界でも「もしかすると……」程度の可能性はある。

不自然な所が発見されればその都度修正し、次回の投稿の前書きに変更点を記入します。
……やっぱり、発売前の予測を安易に使うもんじゃないなーと実感しました(小並感)。



正でも負でも絶対値は同じ

 

「実はキミは違う世界でのボクなんだ――って、そんな話をいきなり出されて信用できると思う?」

 

 

そこまで言って、ユウキはかぶりを振る。

 

 

「impossible、ありえないね。本当にボクだとすれば尚更だ、信じる筈がない。そんなこと、何より自分がわかってる筈だと思うけど」

 

 

ポケモン勝負に勝ったことで獲得した『黙って話を聞け』という命令によってこれまでの経緯を話した後の、この世界のボク(ユウキ)の返しがそれだった。

 

極めて誠実にありのままを告白したのだが、やはり同一存在なのだろう。案の定警戒を解かないボクに、なんとも言えない複雑な気持ちになる。

 

今すぐ話を終わらせてミヅキの試練を見に行きたい――だが、それにはこの世界のボク達がありえない話を思考停止で受け入れる程の暗愚である必要がある。それはそれで苛立つため実に複雑だ。

 

……とはいえ、既に『勝負する』という僕にとっての最大の目的は果たしたのだ。それが不慣れなマルチバトルであっても関係ない。後はもう野となれ山となれである。

 

話し合いの結果がどう転ぼうが、後で苦労するのはヒカリなんだし。

 

 

「当然、その上で言った。こんなありえない話、お前()信じられないに決まっている」

 

 

返す言葉は肯定。勝手な決めつけに過ぎないが、それでも一目見た段階で予想が付いていたのは確かだ。

 

 

あ、コイツ僕の話信じねぇわ、と。

 

 

実際証拠を提示しろと言われても、向こうの世界にしかないものなんて、少なくともバッグの中にはなかった。

…………あいいろのたまとべにいろのたまなら、と思ったものの、メレメレ島のショッピングモールで店売りされてたし。おくりびやまに祀られていた意味……。

 

そして、ならばバトルによって力を示し(勿論こっちが本命)、言葉に無理矢理説得力を持たせることで信用させよう(副産物)とした。

だが、この世界のボクは決して脳筋ではない。薄っぺらな説得力なんて無価値なものであり、僕に『自分達二人を単独で倒せる警戒すべき相手』というレッテルが貼られる結果に終わった。

 

このレッテルは非常に厄介だ。

自分達を実力で上回るなら力尽くで行動させればいい。なのに対話を挟む以上、それは真実――なわけがない。

 

力尽くでいちいち命令するよりも、1度話を通すことで自発的に動かせるようにした方が後々には楽になる。しかも、相手がその話を信じるのが確定しているのならば、これみよがしに『悲劇的な自分』を演じれば良い。

ほんの一手間をかけるだけで勝手に信頼してくれる良い駒を作れるのだ。これを知っている側からすれば、警戒こそすれ、無防備でなんていられない。

 

だから、()()が信じるなんてありえない。だからここで気にかけるべきはボクではなく、

 

 

「…………アタシ、あんたの話、信じてもいいったい」

 

「――ハルカ!?」

 

 

――この話を聞いていたもう1人。

この世界では腹の探り合い等とは無縁の野生児らしいハルカなら、こんな意味のない話し合いを終わらせることが出来る。何故なら彼女のような人種は、時として直感だけで一息に真実へと辿り着くからだ。

 

 

「あんたの話ば確かに信じられるもんじゃなかと。けど、世界が違ってもユウキったい、アタシには伝わるけん。なんとなくだけど、あんたがホントのことば言うとるって」

 

「……だけど」

 

「あーもうっ!!

いつまでもウジウジしてて男らしくないったい!やらないで後悔するよりもやって後悔する方が良いに決まっとる!まず信じなきゃ始まんないったい!」

 

 

信じなきゃ始まらない、か……。

 

この世界のボク(ユウキ)に向けた彼女の言葉は、思いの外僕にも響いた。

なぜなら僕は、ハルカとは違って人を信じられない類の人間だから。

常に信じるのは自分の判断。一見信じているように見えても、その実相手を分析して行動を予測しているに過ぎない。

 

これに問題がある訳ではないのだが……少し羨ましい。

僕にはそんな真っ直ぐな生き方はできないから。

 

そんなハルカに対して、この世界のボクは引いた様子を見せない。

 

 

「だけど………!」

 

「どうしてそこまで警戒するん?

今のあんたはあんたらしくなかと。いつもは信じられないことでも参考ぐらいに話ば聞いとるのに。

 

……そんなにこの人が信用できないなら、この人を信じると決めたあたしを信じてほしいったい」

 

 

効果は抜群。これは決まった……か?

この二人が()()()()関係なのは大体察しがついている。

その上でこのセリフを言われてしまっては、どうしても折れざるを得ない。場合によっては二人の関係に亀裂が走る諸刃の言葉。だが、そこには確かな自信があった。

 

正直ちょっと可哀想に思いながらこの世界のボクを見ると、彼はそれでも粘っている様子だった。

何が彼をそこまで駆り立てるのだろう。原因が僕なのは理解しているが、ちょっとやり過ぎな気がしないでもない。確証はないが、敵対する組織――我らがエコテロリストにもこれほどの警戒は抱かないだろうと思う。

 

 

「…………確かに、ボクと彼は似ている。それこそ瓜二つと言っても過言ではないほどに。

ポケモンを見るとわかる。毛並みの色や艶、なつき度………きっとキミは普段からポケモンの身嗜みに気を使い、深い愛情を持って接しているんだろう。そこは素直に認めよう」

 

「…………まあ、(ポロック)を与えていたり、それなりにポケリフレもしていたら必然的にこの程度にはなるだろうさ」

 

「――――だけど」

 

 

そこでこの世界のボクは区切りを入れて、充分な溜めを作ってから告げた。

どうして僕を信じられないのか。その答えは――――!

 

 

 

 

ボクがこんなダサい服を着るワケがない――――!!!!

 

 

 

 

「……………あっ(察し)」

 

 

呆れと納得が同居した声を漏らすハルカだが、その声は僕の耳には入ってこない。

この世界のボクが口にした言葉を何度も何度も咀嚼して、一単語に至るまで深く考え、解釈に間違いがないのか確認し――そこで漸く、口から音が溢れた。

 

 

「……………………は?」

 

 

「コーディネーターが魅せるために必要なのはポケモンの美しさだけじゃない!!トップコーディネーターにもなれば専門分野のカンストは()()()()なんだ!その上で差をつけるべきは技の使い方や組み合わせ、そして――――トレーナー自身の魅力に他ならない!!コンテストの時だけなんて上っ面じゃすぐにボロが出る!上下ジャージ?論外も良いところだ!!常日頃から美しい立ち居振る舞いを――それがコーディネーターの義務だ!!

だから――たとえ異世界だろうと、コーディネーターであることを怠っているヤツがボクなわけない!!」

 

 

感情論だった。

説得力なんてカケラもない言葉だが、コーディネーターである自分に高い誇りを抱いているのがひしひしと伝わってくる。

 

イマイチ僕はコーディネーターという在り方について理解できていないが、これをトレーナーに置き換えると…………ふしぎなアメでレベルだけ上げた、戦闘を経験せず基礎ポイントを振らずすごい特訓をせず技さえ杜撰に選んだポケモン片手にポケモンリーグに挑戦されるようなものだろうか。

それは確かに――――殺意が抑えきれないな。潰したくなってくる。

 

…………困った、説得出来る気がしない。

分野の違いこそあれ、共に意識高い系である。戦闘分野における自身の融通の利かなさを省みると、彼に信用を抱かせるのは不可能と言っても良いだろう。

 

だから、僕は()()()

元より僕と関係ない世界である。僕じゃ解決できない、その上解決しなくても極論問題ないものは放置一択。きっとヒカリが解決してくれるさ。だから――

 

――言いたいことを素直にぶつけようと思う。

 

 

「ポロックを作るのはあくまで趣味だとか、戦闘者(トレーナー)であってコーディネーターじゃないとか、言いたいことは沢山あるが――1つ言わせてもらうことがあるとすれば。

 

――――ジャージは神器だ

 

「――――はぁ!?なんだってあんなものを!」

 

「運動に特化した機能性を感じられる美しい服だろう。全国を旅する上で不可欠な性能だ!」

 

「機能性()()感じられないから言っているんだ!しかも最近はデザイン性を意識しながら運動もできる服の開発が進んでる以上、もうジャージはいらないんだよ!」

 

「はっ!他を犠牲にして機能性に極振ったジャージに、デザインも意識した服が敵うわけないだろうが!緩いんだよ妥協している。そんな装備じゃ伝説級には無意味なんだよ!」

 

 

「「……………は?」」

 

 

「いいだろう、ポケモン勝負でケリをつけよう。公式戦に則ったオープンレベルの3vs3だ。異論は?」

 

「勝負はあまり好きじゃないんだけど……ボクに似ている外見でそんなことを言われるとイメージに関わる。

OK、決着をつけよう」

 

「いざ、尋常に――――」

 

 

いいかげんに――するったぁぁぁぁぁいっ!!!

 

 

――――バシィッッッッ!!!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

……頭が痛い。あの野生児め、僕の身体能力が高いことを見越して全力でやりやがって……。

 

長きに渡る口論は、互いにハルカによって頭を叩かれるという結末に終わった。そして、それまでの会話によって最早彼が本当にこの世界におけるボクなのか自信がなくなってきた僕は、彼女の介入を良いことにとっと立ち去る事にした。

これまでの口論で何故かハルカは僕達が同一人物であると確信した様子だったが――女の勘だろうか。

 

 

「……信じられない。ジャージを崇め奉らないとか、アイツは本当にボクか――?」

 

 

先程の邂逅を通しての思いが唇の端から溢れた。たぶん、この世界のボクも同じように愚痴っているのではないのだろうか。だがこちらとは異なり、アイツには愚痴を零せるヤツがいる。あまり友人は欲しいとは思わない僕ではあるが、こういう時は羨ましく思う。

 

 

「おー、ユウキだー!こんな所で奇遇だね。なにやってんのー?」

 

「ああ、ハウか。いや、よく知っている筈だったヤツに出くわしてな。自分の友人の少なさを実感していた所だ」

 

 

自分を呼ぶ声に振り向くと、そこにはハウの姿があった。コニコシティから出てきたばかりの所だろう。ボールの外に出しているアシマリも、心体ともに万全である様子が伺えた。

 

そんなハウは、わりと本心から来た僕の言葉に対して笑って返す。

 

 

「なに今更なこと言ってるのー?」

 

 

――――反論が出来ない真理だった。

 

わずかに心に痛みが走る……だが、言われ慣れた言葉である。ここは年長者の威厳を見せて見逃してあげようと思う。

 

 

「ああ。だから正直すまないと思っているが…………八つ当たりさせてくれ」

 

 

嘘ではないのだ。

本当にさっきの発言に関して僕は何も思ったところはないのだ。

見逃しておくという言葉は本心からのものなのだ。

 

ただ単純に――不機嫌だから、誰とでもいいから戦わせて欲しいだけで。目と目があった誰かに苛立ちをぶつけたかっただけで。その上でたまたま声をかけてきたのがハウだっただけで。

彼には本当、一切の非はないのだ。

 

だからーーせめて終わった後で共にミヅキの大試練を見学できるよう、大量の回復薬と彼を引きずる縄を準備しようと決めた。

 

 

 





期間を開けてしまったせいで、書き方を思い出せず色々とアレな部分が……。

ここから前話の、ユウキがハウを引き摺ってくるというラストに繋がります。八つ当たりの対象にされた上に引き摺られた挙句結局間に合ってないハウは泣いていい。正直、彼には申し訳ないことをしたなぁと思う。

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