やっぱSM主人公の真顔はネタになるよな!
リーリエと一緒にリリィタウンに戻っていた私を待ち受けていたのはククイ博士と、一瞬白髪なのかと勘違いしてしまいそうな白いニット帽を被り、上下をジャージで揃えた少年だった。
「ミヅキ、紹介するよ。こちら、ホウエン地方出身のユウキっていうんだ。
君とはあまり年齢が違わないけど、バトルの腕は超一流だぜ」
「アローラ。ポケモントレーナーのユウキだ。君らの旅の………まあ、アドバイザー的なものか。それを担当することになっている。よろしくな」
「ミヅキです。よろしくお願いしますね」
大きく円を描くようなアローラ流の挨拶の加え、軽い握手をする。カントーでも握手はわりと良くある風習だ。ホウエンはアローラよりも比較的近くて交流もあるので、私の出身であるカントーとアローラとの違いをわかりやすく教えてくれると良いなぁ。
それにしても、私とあまり年齢が変わらないのに超一流ってお墨付きされるなんて凄い!手もすっごいボールダコついてて、なんかエリート!って感じするし。
そんな私を見てユウキさんは困ったように笑い、私に話しかける。
「しまキングからポケモンを渡される前に、僕から1つ言いたいことがある。
ポケモンは純粋だ。だからこそ、トレーナー次第で善にも悪にも染まってしまう。ポケモンをゲットすることとはつまり、そのポケモンの一生を背負うということだ。だからこそ問おう。
――――君にとって『ポケモン』とはなんだ?」
最後の言葉と共に、私の体にかかる膨大なプレッシャー。表情は笑っていながらも、その瞳はゾッとするくらいに冷淡だ。嘘は許さないというユウキさんの思いが言葉よりも雄弁に伝わってくる。
だから私は正直に答える。
「まだわかりません」
「………………へぇ」
ユウキさんの声が低くなり、私にかかるプレッシャーも増す。全力で逃げ出したい気持ちにかられるも、それをしてしまったら私は一生ポケモンと対等に関われない。そんな気がする。
だから今にも逃げ出してしまいそうな体を一生懸命押さえつけ、私はユウキさんに向き合い、思いを言う。
「だから、この島巡りを通して探したいと思います。私はポケモンとどう向き合うべきなのかを」
「………………なるほど」
1歩ずつゆっくりとユウキさんが向かってくる。それに連れて重圧も徐々に増加し全身が震えそうになるも、必死に耐えて前を見る。
そして遂に真正面に立ったユウキさんは私へと手を伸ばし――――
「…………えっ?」
優しい手つきで私の頭を撫でた。
普段から慣れているのかな、髪型をグチャグチャにせず、的確にツボをつく動きについくすぐったさを覚える。
同時に私を圧迫していた重圧も消え去り、ただの少年としての自分に戻したユウキさんは、色々なものが混ざった、でも多分に優しさを含んだ眼差しで言う。
「忘れるな。どんなポケモンも、トレーナーによって変わる。
ポケモンに真摯に向き合おうとする君の初心を忘れない限り、君達はどこにだって行けるし、何にだってなれる」
「――――――はいっ!!」
***
アローラ地方における最初のポケモンは、ただトレーナーが選ぶのではなく、そのポケモンと真に向き合い、互いに認め合う事で初めてパートナーになる。
トレーナーとポケモンの関係は対等で無ければならない。だからこそ明言はされていないものの、これはその関係性をトレーナーに理解させるものであり、心構えの基礎を身につけさせる、0番目の試練と言えるだろう。
これを見てもわかるように、アローラはホウエンよりも精神面を重視している。――――当然だ。
あんな修羅道と比べたらどっちも困る。そう思いながらミヅキが初めてのポケモンを選ぶのを見ている僕へ、ククイ博士が話しかけてきた。
「どうだった?新たな世代のタマゴは」
「正直言って感嘆の一言だ。僕があの年齢の頃は、ジムリーダーである父さんや、その子だと言うことでやたらと期待する周囲に反撥していただけだったからな。トレーナーとしての気概なんてあってないようなものだった。だがミヅキは心構えがある程度出来ているうえ、僕の威圧に負けなかった。
今はまだ未熟だが、経験を積めば化けるぞ。間違いない。
…………お前もそう思ったんだろ?」
「ああ。なんてったって博士だぜ?人を見抜く目だってあるつもりさ。
初めて聞くんだけど、父親がジムリーダーだったのかい?」
「ああ。そうなったのはホウエンに引っ越してからだがな。だがジョウトにいた時からも父は優秀なトレーナーで、ノーマルタイプ縛りでリーグに挑み、四天王にまで手が届いていた」
「それは縛りじゃなくてポリシーなんじゃないか?
それにしてもジョウトか………。カントーのジムやリーグには挑んだことはあるんだけど、ボコボコにされてね。特にあのドラゴン使いのトレーナーは凄かった」
「ポリシーなんて育成力不足の言い訳だ。複数のタイプのポケモンを超一流まで育てきるだけの力量がないんだよ。
だから1つのタイプに最善の環境をジムに作り、特化して育成することで高水準を実現している。
だが、ホンモノは複数のタイプを超高水準に育て上げるものだ。加えて、四天王以上は基本的に超一流な上、特化した環境で育ててるから、そこらのジムリーダーとは隔絶した差がある。
それとこの世界では違うかもしれないが、ワタルの強みは策略でも技術でもない、純粋な力だからな。ドラゴンという強力な反面制御が難しい種族を存分に振り回している。僕もチャンピオン時代に何回か交流戦をしたことはあるが、生半可な攻撃では傷さえ付けられない難敵だった」
「ちなみに、勝ったのはどっちだい?」
「最低限レッドくらいのレベルじゃないと、純粋な力のぶつかりあいで僕には勝てないさ」
「あっ(察し)。
まあ、君ほどのトレーナーが彼らの旅のサポートをしてくれるってのは心強い」
「ああ、そうだな」
…………果たして僕の手助けは必要なんだか。
新たにパートナーとなったモクローを抱き抱えて喜ぶミヅキを眺めながら僕はそんな考えを抱いた。
それにしても、どうしてあの娘の声や雰囲気は非常に豊かなのに、表情は真顔で固定されているんだろうか。
***
翌日の夕方、僕はミヅキの家の前にいた。側にはリーリエも一緒だ。この娘は方向音痴のきらいがあるため、放っておくとあっという間に迷子になる。
博士の目が届いているうちは良いが、それ以外の時は基本的に僕が見ている必要があった。
ピンポーン
チャイムの間の抜けた音が響き、しばらくするとミヅキが顔を出した。
「アローラ。昨日ぶりですね、ミヅキさん」
「ゆ、ユウキさんにリーリエ!?なんでウチに!!?」
「ああ、リリィタウンでやるゼンリョク祭の誘いに来たんだ。あの祭りは島の守り神であるカプ・コケコに捧げるものでな、毎回新人のトレーナーがバトルをしているらしい。
だから今回はカプ・コケコ直々にかがやきのいしを渡された君と、しまキングの孫であるハウのバトルになる。注目は一入だ」
「わ、私とハウがですか!?」
「僕はカプと交信出来ないからあくまで予想になるが、カプ・コケコは君に期待している。かがやきのいしを与えたのが良い証拠だ。それに、ハラさんがいしの加工を終えたから来て欲しいとも言っていた。
それに――――ポケモントレーナーがバトルを避けるのか?」
「私はポケモンが傷付くバトルはあまり好きではないのですが…………でも、見届けたいのです。ミヅキさんの勝負を」
「うう………リーリエまで…………。
わかりました!頑張ります!!」
気合を入れてグッと手に力を込めるミヅキ。そうだ、そうでないと
いずれ
「君の家を東側に出て北へと登れば草むらがある。この島はは島巡り最初の島だから野生のポケモンもそこまで強い訳ではないが、モクローと共に戦う事で得られるものがあるはずだ。
それと、君のバトルが終わったらだが…………いや、なんでもない」
「な、なんですか!?そんな所で切られるとすっごい不安なんですけど!?」
「それはですね…………」
「リーリエ、ストップ。
お楽しみは言わない方が良いだろ?」
「ふふっ、そうですね。
ミヅキさんも頑張ってくださいね」
「ううー、リーリエまで………」
声をあげてひとしきり笑う。
そして時計を見ると、想定以上に時間を使っていた事に気付く。
ククイ博士から頼まれた仕事であるポケモンのゲット方法の指導を軽く済ませ、リリィタウンで合うことを約束し、僕達はひとまず解散した。
さて、これからゼンリョク祭りだ。
僕は1ヶ月待ったぞ――――
戦意に答え、腰元のボールがカタリと動いた。
***
リリィタウンは限界集落ではない(断言)。
とはいえ普段はあまり町中で人の姿を見ないから勘違いしても仕方がないのだが。
ゼンリョク祭りはカプに捧げるバトルとして、田舎町のちょっとした名物である。他の島からわざわざ観光客が訪れる程ではないが、メレメレ島のトレーナーはわりと訪れる。
とはいっても、所詮は田舎町のちょっとした名物。特に大規模なこともなく、めいめいが騒ぐ程度の小規模なものだ。
ククイ博士の元で知った情報を頭に流しつつ、町中を適当に散策する。
当たりには出店が並んでいる。なんでも他の地方トレーナーがたまたま訪れた時に、祭りなんだから出店の1つや2つあるべきだろう、と力強く提唱したために生まれたものだとか。
中でも一番人気なのはハウオリシティから出張してきたマラサダショップだ。先頭にいる少年が手持ちであろうピチューとアシマリと共にマラサダを食べている姿を横目に見ながら更に奥へと進む。
その先に目的地はあった。
一面が木で出来た巨大なスタジアム。
すぐ近くへと近付き、調べ始める。
ふむふむ、木造だから燃えやすいだろうと思っていたが、これはただでさえ燃えにくい素材を更に防火加工することで、火に強い耐性を持たせているんだな。
加えて、資金に頓着せず沢山の素材を使っているために強度も十分。
木造という話を聞いて不安に思っていたが、普通に使用する分には問題ないな。
とりあえず安堵する。ホウエンではあえて不安定なスタジアムを作ることで強力なポケモンが十分に力を発揮できないようにすることもあったから心配だった。
「いかがされましたかな、こんな所で」
「ん?ああ、ハラさんか」
調べていた僕に話しかけてきたのは、
ハラさんは僕の元に近付くと、周りに聞こえないよう、小さな声で囁くように言う。
「ククイ博士から聞きましたぞ。なにやら面白そうなことをやるらしいですな」
「ああ。とはいってもゼンリョク祭りの主役はあくまでミヅキとハウであり、それ以外の誰でもない。
加えてこれがカプの意向に反すると言うならば取りやめるが」
「はっはっは、ご冗談を。
あなたは言って止まるような人間ではない。ここで止めても、間違いなくいつかは実行するでしょう。それはご自分が1番理解しているのではありませんかな」
「まあな。だが、僕にだって時と場所を選ぶつもりはある。ダメなら普通に野良でやっていたさ」
「…………そこで止めると断言しないあたり、流石はホウエンのトレーナーといったところですな」
「…………否定のしようがないことに気付いた」
「はっはっは。
それはともかく、このハラ、しまキングとしてあなたの企みを認めましょうぞ。カプの許し云々ではなく
――――儂も1トレーナーとして、手に汗握る激しいバトルが見たいですからな」
「冗談。アンタは
「ははははっ。
…………この島の大試練の時に待っていますぞ」
「くはっ。上等ォ」
互いに獰猛な笑みを交わす。そう、
間もなく勝負の始まりだ。
まだこの場に姿を見せていないミヅキは、果たしてどれだけの成長をしているだろうか。
心底楽しみでならない。
いずれ戦う相手や、これからの成長に期待できる者。
いや……それどころかバトルの法則すら違うこの世界で。
これからの勝負に期待を抱ける、その幸せを噛み締めながら。
僕は息を荒らげて1番道路から走ってくるミヅキの姿を眺めるのだった。
ミヅキ視点でウチの
余談ですが、時系列としては
赤青緑ピカ=RSEm→金銀→DPPt→BW→BW2=XY→SM
でやってます(異世界云々は無視)。
根拠はストーリーでの発言と、(すぐに削除されましたが)Twitterでの発言です。