……前々話の前書きでこのセリフ言ったような(殴
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めざパの計算ミスってたので修正しました。
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カプ・テテフの分類を間違えていたので修正しました。
……これで島巡りも折り返し、か。
大試練を達成したことに大した感慨も抱かないまま、ただ漠然とそう思う。
手に入れたイワZを掌で弄ぶように転がす。バトル自体はまあ、悪くはなかった――求めるレベルとは程遠いだけで。溜まりに溜まったフラストレーションが僕を苛んだ。
――何故全力を出せない?
――何故お前たちはそんなにも弱い?
ため息を一つ。
なに考えているんだ僕は。それは最初から理解していることだろうに。
アローラは閉塞している。外部の者を拒む環境に、それを是とする大多数の住人。加えてZワザという強力な力がある以上、それ以外に頼るという発想が欠けている。だから厳密には弱いのではなく、止まっているのだろう。
……その環境を改善しようともしていない
それはククイを始め、問題に真摯に取り組んだ者だけが言える言葉だ。
――ん?
考えに耽っていた僕の視界に、金髪の少女が紛れ込んだ。
リーリエだ。彼女はここで見るべきものは見終わったかのように
「……遺跡の探索はどうした?」
聞いてみると、どうやら大試練の連続によってそのことを忘れていたらしい。
ため息を吐きたくなる気持ちをぐっと堪え、僕はライチに遺跡の見学許可を取り付ける。すると、案外あっさり許可が下りた。そもそも、命の遺跡は一般に公開されており、わざわざ許可をとる必要などないとのこと。その時に彼女が見せた意味深な笑みが気になったが……それは置いておこう。
「話によると、カプ・テテフさんは
「ああ。
「ふふ、ユウキさんでも
「ここで失敗したら致命的なんだ。限りなく理想に近いのに、
本当に、
いまでこそ"すごいとっくん"がメジャーなものとなっているが、当時は可能な人が極々僅かだからなぁ……。僕は探すのが面倒で自力習得したクチだ。
そして、基準に満たなかったポケモンをどうするかも考えなけえればならない。そのまま逃がすと場合によっては環境が変化し、生存競争に敗れたポケモンの生息地が変わってしまう。そのポケモンや、努力値の効率的な取得場所を求める廃人連中からのフルボッコは避けられない。僕の場合は初心者用ポケモンとしてあちこちに配布したり、ポケモン大好きクラブに渡したりしていたが、それも限界はある。
本当に、本当に、心が折れる作業だったんだ…………!!
「……どうしてでしょうか。話がかみ合っていない気がします」
それは僕も思った。
が、その辺を一々気にしてはいたら日が暮れてしまう。というか、既に傾いている。1日で3回も大試練を行った以上当然といえばそうなのだが。夜道はなるべく避けたい。僕は夜目が効くし、ポケモンの出現率が変更するため、一人であれば一切頓着せずに移動するのだが……今はリーリエがいる。危険な行為は控えるべきだ。
リーリエの発言に曖昧な表情を浮かべつつ、僕たちは命の遺跡の中へ入っていった。
「すごく……大きいです」
「その発言は色々マズイ。だが確かに……デカいな」
具体的には――岩が。
命の遺跡に入った僕たちを待ち受けていたのは、一切のポケモンが存在せず、人工的に作られたであろう巨岩が行く手を阻む石造りの橋だった。数tはあるだろう岩が点在するのに石橋にはまったく影響がないあたり、これを作った古のアローラの住人は余程優れた技術力を有していたのだろう。
「見事な岩だ。色々と感じ入るものがある」
「はい!以前読んだ雑誌には、こんな大きい岩でも"かいりき"で移動させられるとあったので、ポケモンって本当に凄いですよね!」
「は?」
え、マジで?
軽く調べてみると、なるほど確かに、固定されているわけではなさそうだ。
いや、でも、え、マジか。
世界の違いって、こんなところにまで出てくるんだな……*3。
「困りました。"かいりき"のライドギアを持ってない以上、私たちはここを通れないですし、諦めるしかないですね……あれ、ユウキさん?」
「どうした?」
「その…手に持っているものは何ですか?」
「あなぬけのヒモにねばりの鉤爪を括りつけたもの*4だな」
「なるほど。ちなみに、使用用途は?」
「ロッククライミング」
「
「
その答えを返すと、リーリエは完全にフリーズした。手を振ってみても何ら反応を示さない。主人の異常事態を察したのか、カバンのなかで
その笑みを見て僕は―――覚悟が決まったんだと思い、もう一つのロープを渡す。
「ちがいます!わたしはユウキさんみたく特殊な訓練を受けた逸般人じゃないので、こういった肉体労働は専門外なんです!」
「
「ユウキさんに目を付けられる時点で一般人って嘘ですよね!?」
「まさか。(マサラタウン基準なら)一般人だ。(
「一般人とはいったい何なんでしょうか……」
隠している部分が多すぎて詐欺に近いが、まあ、あの町出身なら多少優秀レベルに収まるだろう。レッド・グリーンは当然として、オーキド博士も頭がおかしい。現役時代――つまりは黎明期、モンスターボールがないからという理由で瀕死になったポケモンを
身体能力をポケモンの強さで例えるなら、僕はケッキング――それも、特性が封印された
で、レッド・グリーン・オーキド博士はゲンシグラードンやゲンシカイオーガ、メガレックウザだ。住む世界が違う*7。まあ、この世界もそうだとは限らないが……あいつらが弱いなんて想像がつかない。
見たところリーリエはコイキング*8である。雑魚だ。強くなるためには
「気張れよ。落ちても問題ないように下で待っててやる」
そう告げると、彼女は途端にスカートを抑えて後ろへ下がる。表情には明確な怯えが含まれていた。
「あの、わたしスカートなんですけど……」
「で?」
「年下の女の子の下着見たいならそう言っていただけますか?」
「僕はロリコンじゃない」
結局、
最深部はやや大きな部屋になっていた。不思議な置物や模様付きの石があちこちに置かれており、神秘的なイメージを醸し出している。
そして、一段高い場所にある高台には――
「カプ・テテフさんはいらっしゃらないみたいですね」
「ぴゅいっ!」
――不思議な石像があるだけだった。
こちらと微妙に距離を置きつつ、リーリエは言う。嫌われたものだ。冒険へ出るにあたりスカートを履いているほうが悪いだろうに。
そんな彼女の発言を聞いて何か思ったのか、
「あっ、ほしぐもちゃん!」
リーリエが声をかけても止まらない。コスモッグは瞬く間に石像に到達すると、ぴゅいぴゅいと鳴き声をあげた。まるで、何かに呼びかけるように。
そこではじめて気付いた。あれはただの石像じゃない。思えば、イッシュにも似たようなものがあった。古代の城周辺にあった石像――
「試してみるか。ネンドール、だいばくはつ」
「――え?」
先制攻撃だ。ネンドールが出現すると同時に大爆発を指示。ネンドールは色々諦めた雰囲気を醸し出しながらも、爆発へのカウントダウンを
さあ、早くしないとお前の住処が滅茶苦茶になるぞ?
極光が走る。
ムーンフォースだ、と認識するのに一瞬の時間を必要とした。恐るべきはその火力。流石は
石像があった場所を見ると、そこにはピンクのポケモンが浮かんでいた。
とちがみポケモン、カプ・テテフ。エスパー・フェアリーで特性はサイコメーカー。素の特攻が高い上、サイコフィールド下での一致エスパー技は単純計算で威力2.25倍と高い火力を誇る。
ゴクリ、と唾液を呑み込んだ音が聞こえる。人目でわかった。これをただのポケモンと侮ったら即死する。それどころか、並の準伝説と比較することすら致命傷だ。なぜなら相手は数百年前からアローラを護り続けたポケモン。築いた時間の長さは経験値に直結する。数百年もの時間があれば、
それでも、所詮は野生のポケモンでしかない。
強いだけのポケモンに、僕が負けるなどありえない。
「交代、メタグロス」
ポケモントレーナーとしての利点を行使する。
カプ・テテフが天敵とするポケモンは鋼タイプだ。僕のパーティではメタグロスがその役割を担っている。一致技が唯一等倍以上で通じない上、向こうからは弱点を突かれるという相性の悪さ。こういった場面で交代が出来ないのが野生のポケモンの弱いところだ。メタを張られると打開できない。こうなると強引に力技で突破するしか手がないが――それを許す僕ではない。
「コメットパンチ」
必敗の運命への微かな抵抗としてムーンフォースを打ってくるが、無意味。
カプ・テテフも反撃しようとはしているが、起点のことごとくを予測・対処されている。ゲームによくあることだが、至近距離では魔法を唱えるよりも物理で殴ったほうが速い。それと同じことだ。特殊技は遠距離から攻撃できるが、放つまでにほんのわずかなラグがある。普通なら特に気にするまでもないが、ミリ秒単位でシミュレーションを繰り返すメタグロスを相手にするには分が悪い。
攻撃の起点を潰され、一方的に攻撃を受け続け、サイコフィールドも切れた頃、漸くカプ・テテフは倒れた。
勝負は決まった。僕はボロボロになったカプ・テテフの頭をむんずと掴みあげる。想定よりも重症だ。瀕死を通り越して死亡寸前。コヒューコヒューとかすかに響く呼吸音だけが生きていることの証明する。うん、生きているのなら問題ない。
かすかに空いた口元に、元気の塊を詰め込む。
即座に蘇ったカプ・テテフは、敵意を込めたまなざしでこちらを見た。
「ストップ。僕にこれ以上攻撃するつもりはない。この島の未来について話しに来たんだ。
……とはいえ僕がトレーナーである以上、勝負するつもりなら受けて立つ。ちなみに元気の塊の在庫はまだ残っているぞ」