サブタイ、『英雄になれなかった女の子』のどちらにするか悩みました。
「街の近くにプラズマ団残党を名乗る連中が「ジョインアベニューの今月の利益は先月に比べ4%増加「次に出演予定の映画なのですが調整が難航しており「ワールドトーナメントで優勝したお前を倒せば俺が世界一になれる「チャンピオンとしての責任を持って行動してください」
いつからだろう。目の前の出来事に興味を抱かなくなったのは。
いつからだろう。何もかもを事務的に熟すようになったのは。
いつからだろう。胸の中に虚無が生まれ始めたのは。
プラズマ団に出会った時?
ポケウッドで主演を演じた時?
観覧車イベントを無難にこなした時?
ジョインアベニューの町長になった時?
テツくんと会った時?
PWTで優勝した時?
違う。
最初からだ。
そもそもわたしにはやりたい事なんて特になかった。熱中してるものもない。幼馴染のシュウがタマゴからポケモンを育てる姿を見ていたにも関わらず、わたしは無関心なままだった。
ポケモンを渡されたから旅を初めて、巻き込まれたからポケウッドに出演して、ティンと来たからってジョインアベニューの町長を任されて、周りからの突き上げが大きかったからPWTに参加しただけ。
何一つ、自分の意思で動いたことがない。虚無で空虚で無価値。モノクロの世界で、流されるままに過ごしている、空っぽな人形がわたしだった。
ああ、でも、そういえば。一つだけ、自分の意思で取り組もうとした事がある。
プラズマ団の首領ゲーチス。彼は伝説のポケモンを電池にして、自分だけがポケモンを使える世界を作ろうとした。でも、そんなの間違ってる。止めなきゃいけない。
そう思って乗り込んだジャイアントホール。なのに、わたしは何も出来なかった。
今でも鮮明に思い出せる。
ジャイアントホールの奥底に辿り着いたわたしが見たのは、Nとゲーチスが語り合っている場面。いや、Nがゲーチスに必死に語りかけている場面と言った方が適切かな。
だけどゲーチスはNの説得に耳を貸さず、伝説のポケモン『キュレム』を繰り出した。Nは理想を司る伝説のポケモン『ゼクロム』を繰り出したものの、キュレムに吸収されてしまった。
わたしはキュレムに立ち向かったけど、まったく敵わなかった。元々自身が保有している伝説としての力に加え、吸収したゼクロムの力を暴力的に叩き込んでくるキュレムに、わたしのポケモン達は次々に倒れていき、遂には全滅してしまう。
絶対絶命の場面。そこで表れたのは、真実を司る伝説のポケモン『レシラム』を所持している少女。当時イッシュチャンピオンの
そこからはもう一方的だった。強化されたキュレムだけど、元々他者との関わりを断っていたうえゲーチスに電池として利用されたポケモンだ。全国の強いトレーナーと戦ってレベルアップしたレシラムと、イッシュ最強のトレーナーであるトウコさんのコンビには叶わない。
キュレムもゲーチスもあまりにあっけなく倒されて、彼の野望は終わりを告げた。
わたしは、そこにいただけだった。
時間は稼げたけど、所詮その程度。キュレムに満足な抵抗が出来たわけでもない。周りの言う『イッシュ地方の救世主』なんて分不相応な。トウコさんがいなければイッシュ地方は今頃ゲーチスの手に落ちている。
空虚。わたしの行動に価値なんてなかった。
この時わたしは、自分が選ばれた人間でもなんでもないことを理解した。ゲーチスが最後に言っていたとおりだ。わたしは英雄の器じゃない。理想も真実も存在しない、ただただ虚無な人間だ。
でも感情はそれに反発する。虚無なんかじゃないと否定しようとして、今まで中途半端だったいろんなことに手を出した。女優も、町長も、もちろんポケモンバトルだって全力でやった。そして。
『イッシュチャンピオンのメイ』。
嗤ってしまう。
世界的に名を轟かす成功者の一人になっても、感慨なんて浮かばないし、感動も存在しない。ほんと、からっぽ。わたしにはなにもない。
だから、噂に聞く自分探しの旅というものをしてみようと思ったんだ。期間は凡そ1ヶ月。イッシュ全土を巡るには少なすぎる期間だけど、それ以上空けてしまうと色んなスケジュールが悲鳴を挙げてしまう。不都合が起きないように年単位で綿密に調整し、ようやく捻出できたのがこれっぽっち。
自分を見つめ直すために余計なものは持たず、ダイケンキと二人っきり。ヒオウギから旅立って、道路や街を隅々まで探索しつつ先へ進む。イッシュ図鑑のコンプリートを目標に野生ポケモンを捕まえ、トレーナーを見つけたらバトルする。ジムリーダーはみんな全力の手持ちを使ってきたので、じっくり丁寧に撃破する*1。今度こそ何かを獲得出来るよう丁寧に、かつ必至に。
でも、ダメだった。なにもかわらない。空っぽの心はちっとも埋まってくれやしない。
迎えた最終日。最後の場所として定めたのは、あったかもしれない可能性が潰えた場所——ジャイアントホール。ここに来たのは賭けだった。芽生きかけた何かがへし折れたあの時の様に、今度はこの探究心さえ失ってしまうのではないかと思ったから。でも、このまま虚無を抱え続けるくらいだったらいっそ全部呑まれてしまえばいい。ヤケになった気持ちで一歩を踏み出し、あの時の戦闘の余波でボロボロになった洞窟を踏破する。
そして、奥地で一人佇むキュレムを見た瞬間、わたし
恐怖の対象の筈だった。けど、こうして向かい合って初めて気付いた。一緒だったんだ。わたしもキュレムも、痛い程の虚無を抱えていて、空白を埋めたくて仕方なくて、でも自分ではどうにもできなくて、だんだん痛いという思いさえ薄れていって……。
鏡を見てるみたいだった。それはキュレムにとっても同じこと。わたしを見る目には薄らとした驚愕が浮かんでいた。
「いっしょにいこう」
手を差し出すと、キュレムはモンスターボールに収まった。こうしてわたしは、理想も真実も抜け落ちた空虚な竜に選ばれた。
それは傷の舐め合いと言われるかもしれない。でも、わたし達はひとりぼっちで虚無を抱える孤独を知っている。今まで自分しかいないと思っていた世界に、初めて理解者が生まれた。もう独りじゃないってことが、どうしようもなく嬉しいんだ。
空虚を埋めるための旅はこれでおしまい。これからは、今までわたしに着いてきてくれるポケモン達と共に一歩ずつ進んでいく。わたしはひとりじゃない。理解者が、みんながいるから。
そうやって前を向いて日々を過ごしていると、次第に空虚だった心が何かで埋まっていく。心に余裕が生まれたからなのかな。今までみえなかったものがみえてきた。
一回目も二回目も、わたしの旅の中にはトレーナーとポケモンしかいなかった。闘った。戦った。たったそれだけ。でも今は違う。
色彩に溢れた自然の景色や、そこに住む人とポケモン。時間と共に変わっていく風景。1ヶ月でイッシュ全土を巡る?過去のわたしにどれだけ余裕がなかったのかがわかる。全っ然足りない。アデクさんは昔あちこちを巡っていたと聞くけど、その気持ちが痛いほどわかる。もっと色んな所で、いろんなものを見てみたい。それはキュレムも同じだ。モンスターボールから気持ちが伝わってくる。
虚無の心。ずっと憎んでいた。否定したいと思っていた。
でも、視点を変えればそれはどんなものでも詰め込める無限大の心だ。
いろんなものを見て、いろんなことを学んで。
空っぽだったわたしに、少しずつ自分が生まれていく。
やっと、胸を張って言えるようになったんだ。
はじめまして、世界。
わたしは、ポケモントレーナーのメイです。
「ええっと、ミヅキちゃんであってるかな?さっきは助けてくれてありがとね」
「いえ!ぜんっっっぜんです!ほんとに!むしろわたしの方こそありがとうございます!」
「そ、そんな固くならないで。わたしのことは気軽にメイって呼んで良いからね」
「————!!じゃ、じゃあ、め、メイさんと、呼ばせていただきますっっ!」
「落ち着いて?ほら、深呼吸深呼吸」
メイさんに促されるままに、ゆっくりと息を吸って、吐いて、新鮮な空気を取り込む。よし、これで少しは落ち着く
————はずないでしょ!!
心拍数がやばい。ドクドクと脈打つ心臓の鼓動が体中を駆け巡り今にも爆ぜてしまいそうだ。やばい。やばいったらやばい。私のボキャブラリが飽和してぶっ壊れてわけがわからなくなってただただやばいという言葉しか出てこない。やばい。
でも私は頑張ってる方だと思う。ほんとに。頑張れない私なら今すぐにでも音を超えて逃亡していたはずだ。だってやばいもん。さすがにもうちょっと頑張って私のボキャブラリ。
だって、あこがれの人がいるんだよ!?
カントーにいた時に雑誌をみて、そこからずっと追いかけ続けてきた燦々と輝く
ふと我に返る。すぐ目の前にメイさんの顔がある。
だめだ暴走した。
—————ッッッッ!?近い!!近いですから!!ないよ!5cmもないよ!ガチ恋距離!マサラ人の超視力がメイさんの顔をミリ単位で網膜に焼き付ける!やばい!すごい!かわいい!!ゴールイン!!ブザービート!!サヨナラ満塁ホームラン!!さよならばいばい!!私はあなたと旅に出る!!勝った!!!『ホウエンチャンプは世界を超える』完結!!次回作『ミヅキちゃんのらぶらぶ生活』に斯うご期待!!ご視聴ありがt————
「ていっ」
ぺちっ。
「へうっ!?」
まったく痛くない!けど不意にきた衝撃で暴走していた思考回路が元の落ち着きを取り戻して。
自分が憧れの人の前ですさまじい醜態を晒していたことを理解する。
「……落ち着いた?」
「………………はい。もうしわけないです」
メイさんは相変わらず、こちらの心も弾んでくるような優しい微笑みを向けてくれる。先ほどまでの汚いミヅキちゃんは浄化されたのだ。もういない。やっちゃったなぁ、と生まれ変わったnewミヅキちゃんは自分に呆れてため息をつく。
ひとつの物事に執着しすぎてテンション爆アゲで周りのことが見えなくなるのは私の悪癖だ。ユウキさんからも指導の際は散々指摘されたし、何度も叩きのめされたことで痛いほど実感している。
あのメイさんが目の前にいる——だからといって、暴走していい理由にはならないんだ。実現する可能性は置いておくとして、将来メイさんに匹敵する偉業を成し遂げた人と戦う場合に毎回毎回そんな状態になっては、私の指示に従ってくれるポケモンたちが可哀そうだから。後顧の憂いは断ち切る。
いま目の前にいる
でも待って。
練習相手がラスボスなんですけど。
危ないところを救ってくれた、真顔なのにとても感情豊かな女の子。ミヅキちゃんはこのアローラで島巡りをしているトレーナーらしい。いまはアーカラの大試練を終えた後っていうから、イッシュで例えるなら
エースであるフタチマルに不利なジムが続いたから、バトルトレインで技術を鍛えていたんだっけ。ぼこぼこにされたなぁ。3タテされるのが当たり前だった。
「メイさんがぼこぼこにされるくらい強い人がいたんですか!?」
「うん。当時のイッシュチャンピオンも頻繁に来てたから、胸を貸してもらったりしてたんだよ。それでもまったく勝てなくて、さすがに堪えたなぁ」
トウコさんと初めて会ったのもその時だ。一瞬で
すべてを見透かすような冷たい眼差しを今でも覚えている*2これでもいろんな世界を見てきたけれど、トウコさん以上の眼力の持ち主は見たことがない。
「当時のチャンピオンって……たしか、トウコさんって方でしたよね。そんなに強い方なんですね。いつか
「ふふふっ。会ったらわたしは元気に成長してるよって伝えてね。わたしの事を色々気にかけてくれてた恩人で、憧れてるひとなんだ。ちょっと問題を持ち込んでくることが多いのが玉に瑕だけどね」
「成ちょ、あっ、げふんげふん、ちゃんと伝えますね!ええ!」
?どうして一瞬返事を躊躇ったんだろ。
当時はわたしの抱えていた空虚さのせいでずいぶんと心配をかけてしまったけれど、キュレムとわかりあったおかげでだいぶマトモになってきている。何を隠そう、わたしがポケウッドの女優なのは、テレビさえあればトウコさんに今のわたしを知ってもらえるから、という理由もあるのだ。
一番大きな理由は
空虚だった心が埋まった。ポケモンと一緒の夢を目指すことができた。今のわたしがあるのはトウコさんのお陰だ。だからお礼が言いたい。でもあのひと、チャンピオンの座をわたしに押し付けてNと世界旅行してる*3から、この気持ちを伝えるのは随分先になりそう。
そして。
こうやってトウコさんとの関係を振り返ると、今ここでミヅキちゃんに会ったのは運命なのかもしれないなって。かつてわたしを導いてくれたトウコさんみたいに、今度はわたしが胸を貸す番なんだなって。不思議な確信があって。
「——そうだ。助けてくれたお礼、っていうのは変かもしれないけど、ちょっとポケモンバトルしない?いまは手持ちがダイケンキしかいないけど、これでもわたしチャンピオンだから。胸を貸すくらいはできるよ」
当時のトウコさんに勝てるって言えないくらい弱っちいけど。
自分の心さえ把握できてないぽんこつだけど。
それでもわたしはイッシュ地方最強の座を守り続けてる
「いくよ、ダイケンキ」
チャンピオン の メイ が しょうぶを しかけてきた !
「成長(意味深)のこと考えてたら勝負挑まれた」
by.憧れの人をエロい目で見てたら6タテされた真顔少女
BW2にBW主人公が出てこないのが嫌で物語をこねくり回してみたら、BW2主人公を押しのけて主人公してた。物語中盤の主人公が全クリした主人公相手に勝てる訳ないのは残当だった…。
メイの過去は純度100%の捏造です。外見相応に可愛らしい彼女をみたいならポケマスを始めよう!作者はやってないからまったく知らないけど!