ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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賢者モードになると色々虚しいよね

 

「はぁ…………………………」

 

ステージを後にして人気のない所へと立ち寄り、ポケモンを回復させた僕の口から漏れた、大きな溜息。

 

 

 

………………薄い(・・)

 

 

 

この勝負の感想を一言で纏めるとそれになる。

 

先発のルガルガンを見た時から思っていた、圧倒的な育成不足。本来バシャーモではルガルガンを相手に先手を取れないはずなのに、圧倒的大差で打ち勝ってしまった。他の分野を集中して努力したのか、とも思ったが、一撃で倒れた以上は違うに決まっている。

 

以降の勝負はある程度(Lv.60)まで抑えていたが、それでも1体も倒されることなく完勝だ。

結局、自称地方五指もこの程度か、という思いが強い。対戦相手に失礼だということは理解しているが、自分の全力も出せない(・・・・・・・・・・)ヤツに向ける敬意などない。

 

そう、あくまで予想でしかないが、ククイは全盛期に比べて動きが数段鈍い。戦っている時に感じた苛立ちは、舐めプをする僕に対してではなく、思い通りに戦えていない自分へと向かっていた。

 

おそらく彼は島巡りを終えた当時は極めて優れた実力を持っていたが、研究のために時間を使う内に鈍り錆び付いていったのだろう。多少はやっていたようだが、それもバトルロイヤルなどの変則的な条件下でのバトルだ。……………そういえば、ロイヤルマスクとククイ博士の体格って結構似通ってるよな。相棒もガオガエンだし。いや、まさか。

 

ともかく、そのせいで全体的に動きが鈍い上に変な癖がついているため、1:1ではハッキリ言って強くはない。ワタルにボコボコにされたのにも納得だ。全力のジムリーダーと互角か、少し上回るくらいの実力がせいぜいでしかない。ただしグリーンは除く。流石に元チャンピオンなだけあって格が違うのだ。毎年の対抗戦では常に1位に君臨しており、リーグからは毎年のように自重しろと言われているらしい。

 

 

「………………はぁ」

 

 

漏れ出てくるため息を隠せない。

ここまで酷評してはいるものの、先のバトルはそう極端に悪いものではなかった。普段ならまあ満足は出来るな、と思うレベルではあるはずだ。

その原因は理解している。1ヶ月も待ち続けていたために自分の中での期待が高まり過ぎたこと。そして、この世界に来る直前の勝負がよりによって好敵手(リラ)とのそれだったからだ。

 

 

………………果たして、この世界では僕の望むような全力の勝負は出来るのだろうか。ハラを始めとするしまキングの実力は、全力の僕に伍するほどか?いずれ殿堂へとたどり着く者はいないのか?

 

――――いや、違うな。芽生えた不安を否定する。

鍛え上げよう、新たな未来の種を。幸い、僕のすぐ近くにはこれからの将来が有望なトレーナー(ミヅキ)がいる。

 

彼女に僕が得た全てを教え、導こう。全ては僕に匹敵ないし凌駕するトレーナーを作り出すために、アドバイザーとして全力を尽くすことを決意する。

なに、僕はポケモンの育成なら100点満点中150点だ。人間の指導だってきっと上手くいくだろうし、前の世界でも実際に上手くいった。8割方戦闘脳になるというホウエンでは目立たない欠点もあるが。

 

そうこうしているうちに回復が終わり、ポケモン達のケア(ポケリフレ、というらしい)をしている僕の元に現れたのはミヅキだった。

 

 

「ユウキさん、お疲れ様です」

 

「ミヅキもお疲れ様。将来性を感じさせるいいバトルだったぞ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

相も変わらずの真顔なのに、歓喜している雰囲気がわかりやすく伝わってくる。最初はクレイジーサイコのように見えて正直不気味だったが、慣れてくると妙な愛嬌を感じる。知り合いに無口無表情の前例(レッド)がいるからだろうか。あれはあれでわかりやすいものだし、そう考えると結構似てるものがあるのかもしれない…………原点にして頂点と似てるって普通にヤバいよな。

 

 

「しいて問題点を挙げるとすれば…………そうだな、もっと技の使い方に気を付けたほうが良いかもしれない」

 

「技の使い方…………ですか?」

 

 

きょとん、と首を傾げるミヅキ。ここで放置していたら危なかっただろう。どうせ勝てるなら力押しの方が楽だなーと思うようになれば、同格との勝負でかなりの脆さを発揮する。

実際に僕がそうだった。リラとの最初の戦いはそこを付かれたせいでボロボロに崩れ、敗北を喫したのだから。

 

 

「そうだ。例えばこのはという技だが、もっと動きの精度をあげて複数方向に分け、逃げ場を封じて本命の攻撃を与えたり、あとは常に周囲に纏わせてダメージを軽減したりするなどの様々な使い道がある。他の技でメジャーな所だと…………そうだな、開幕早々のねこだましで懐に飛び込み、相手が怯んでいるところを拘束・妨害系の技で封殺し、動けないうちに剣舞積みまくって6タテとかだな」

 

「え、えげつない………………。

ともかく、闇雲に強い技を使うだけではダメなんですね」

 

「ああ。とはいえ強力な技は不利な状況で突破口を開くことにも繋がる。そこら辺はトレーナーとポケモンの腕の見せ所だな。

あと、いくら便利だからってあまり多くのパターンを作るのはオススメしない」

 

「どうしてですか?いっぱいあった方が便利だと思うんですけど」

 

「咄嗟の指示で行動出来ないからだ。トレーナーが指示を出し、ポケモンが行動するまでには僅かなラグがある。普段使っていない技なら尚更ラグは大きくなり、そこを付かれて負けることがある。マッハ3で飛ぶポケモンが素早さを最大まで積むとどうなるかは想像がつくだろう?

 

それに、技を複数のパターンに分けるということは、技が増えるのと同じ意味だ。闇雲に増やし続けた技を極めるのにどれだけの時間がかかると思う?」

 

そもそも本来、ポケモンが覚える技に上限なんてない(・・・・・・・)。にも関わらず4つしか覚えないのは単純に、それを極めるための時間が足りないからだ。

単にたいあたり一つをとるにしても、自分の脚力と一切の無駄のない走り方、そして体格を踏まえた上で、相手の重心を見抜いて的確に攻撃を当てなければならない。多くのポケモンが覚える基本の技でさえこの量だ。より強力な技となればその難易度は推して測るべきである。

 

覚えたてホヤホヤだったり、使い慣れたりしていない技は、ポケモンがどのように使うのかを理解出来ていないからこそ使い物にならないことが極めて多い。そんな技をいくら覚えていても邪魔になるだけでしかない。

 

加えて、タマゴ技と自分で覚えた技と教え技、そしてわざマシンで覚えた技にも明確な差がある。生まれる前から覚えている技や自然に覚える技、誰かに指導されて身につけた技、そして機械によって無理矢理覚えさせられた技と考えれば違いがわかりやすいのではないか?最終的な威力は同じでも、そこに到達するには著しい差がある。

 

故に4つ。

それがポケモンが技を使う上で最善と判断された数なのだ。

 

 

「なるほど…………ちなみに、オススメの技とかってありますか?」

 

「ない。そもそもポケモンは種族や才能、そして性格ごとに個性があるからな。攻撃向きや耐久向き、そして支援に妨害etc.。そのなかでもかなり細かい違いがある。最善だと思う育成をしてもメタを張られるとあっさり沈むし、そこら辺は自分で模索するしかない。

加えて、ポケモンには基礎ポイント(努力値)という、ポケモンを倒す事に溜まっていくポイントがあり、その振り方でもポケモンは多くの違いをみせる。まあ、この辺は詳しいことがわかっていないとはいえ、一応知っておく必要があるな。

具体的には、やまおとこの所持するポケモンは同じ種類のポケモンと比較して攻撃と防御が高く、それ以外が低い傾向にあるし、サイキッカーは特攻・特防が比較的高い。当然誤差はあるがな」

 

「うへぇ………。覚えることがいっぱいです」

 

「慣れれば経験で分かってくる。相手のポケモンの育成度や、どこに重心を置いているのか。

一流のトレーナーとなればある程度型を作った上でバランス良く組んでいるから逆に読みやすくなってくる」

 

「型、ですか?」

 

「わかりやすいのは天候パーティーだな。雨パとか砂パとか色々なタイプがあるが、どれも共通しているのが天候を変化させる技・特性を持ったポケモンを起点に、自分に有利なフィールドを作り出す点だ。ノーてんきや他の天候に変えられる事で妨害されることもあるが、1度型に嵌ったら相性の不利も吹き飛ばすくらいには手強いぞ。あと、こいつら同士の戦いは天候の支配権の奪い合いになるから見ていて非常に面白い」

 

「天候、か…………。ちなみに、ユウキさんはどんな型を?」

 

「僕か?僕には型なんてないぞ。単純にあらゆる状況下で最大のパフォーマンスができるように育てあげたポケモンの混合パーティーだ。これといった特徴はないが、純粋に強くて崩れにくい。育成力の高いトレーナーはこうなることが多いな」

 

「育成力が高い、ですか?」

 

「ああ。ポケモン同様に、トレーナーにも個性があり、だいたい3つの型に分けられる。戦闘型と育成型、そして研究型だな。これはあくまで僕が便宜上名付けている呼び名であって正式なものではないんだが…………まあ、説明しやすいので今はこれを採用する」

 

戦闘型はずばり、戦闘そのものに特化したタイプである。フィールド全体を見て相手の手札を判断し、最適な手札を切れる、こと戦闘に限れば最も厄介なタイプである。たとえ弱いポケモンであっても彼らの手にかかれば一流に早変わりだ。本来スペック的にそう強くはないはずのピカチュウで、ケンタロス・パルシェン・スターミー・フーディン・カビゴン・サンダースのパーティーを6タテしたレッドの(正直ちょっと引くくらいの)勇姿は、数年を経ても未だに強く記憶に残っている。

 

そして育成型。これはポケモンの育成に特化したトレーナーだ。ポケモンの個性を把握した上で最良の育成を行い、高いスペックで戦闘するのがこのタイプの特徴であり、個々の戦力が高い反面、スペックで押し切れる場面が多いためにトレーナーとしての技量はそれほど高くはない。

 

研究型は直接戦闘よりも、その環境の構築に重点を置き、天候操作を始めとする型を十全に活用して戦うタイプだ。自分の思い通りに進んでいる内は強いが、それが破綻して以降のアドリブには弱い典型的な理論型である。

 

「……………とまあ、こんな感じだな。この分類では僕は育成型になるな。こと育成という分野では、僕がホウエンのトップだと自負している」

 

「………………え、マジですか?」

 

「さて、な。今のホウエンを僕は知らない」

 

 

視線を向けると、丁度ポケリフレが終わったバシャーモがゆっくりと頷きを返す。

そう、この世界のホウエンは僕にはわからない。ジムリーダーも四天王も、そしてチャンピオン(・・・・・・)さえも。何も知らないまっさらな状態だ。

だからしまめぐりが終わり、それでも僕が元々いた世界の手掛かりがなかったら。そして、この地方での勝負に満足できなかったら……………。

真っ先に向かう場所はホウエンになるだろう。向こうで1度制覇した場所だ、この世界自体のレベルを知る良い基準になる。

 

 

「うう…………難しいです…………」

 

「まあ、ここら辺の意味が真にわかるのはある程度の経験を積んでからだからな。今はそんなことがある、という程度の理解でいい。

それよりも、ハラさん達が待っているぞ。早く行かなければ怒られる。あの人怒ると本当に怖いらしいから、その未来はなんとかして避けないと」

 

「そ、そうですね!!はやく行きましょー!」

 

 

まあ、それはとりあえずこの娘を超一流のトレーナーにしてからだな。

真顔ながらも一生懸命に走るミヅキを見て、僕はそんな思いを抱いた。

 

 

 

 

 




今回の話を一言でまとめると、この世界はゲームをベースにアニメの発展性もある世界なんだよーっていう、だけです。
主人公が(人間の)育成ガチ勢になりました
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