ホウエンチャンプは世界を超える   作:惟神

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たまにはのんびり出来る時間でも

ハウオリシティ。それは美しい海に面し多くの客が海水浴に訪れるリゾートエリアと、多くの人並みで賑わいを見せるショッピングエリアという2つのエリアを有している、メレメレ島でもっとも発展した街である。

以上、観光案内より抜粋。

 

というわけで、僕たちはトレーナーズスクールに別れを告げてここハウオリシティへと訪れていた。

この街のことはククイ博士が持っていた資料に書かれていた。それが上記の文章だ。最初にこれを読んだ時には、メレメレにある街ってここの他にはリリィタウンしかないため、最大規模と言っても程度が知れていると思っていたが…………率直に言おう。

僕はどうやらアローラ地方を舐めていたようだ。なんだこれ、思っていたのと違いすぎる。立派に観光地として成立しているどころかミナモやカイナよりも発展していないか?これ。

 

まあそんなことはどうでもいい。どうやらこの街にはバトルバイキングという、バトルと食事を一緒くたにした施設があるとのこと。僕はまだアローラ独特の味付けに慣れていないため、バイキングで下手に盛りすぎると食べきれずに残すことが多々ある。だがどうやらその食事処はカントー由来の味付けのものが多いらしく、ゆえに一切の憂いなく向かうことが出来た。

 

で、結果は…………

 

 

 

「っつ…………食べ過ぎたか。バトルは物足りないものが多かったとはいえ、食事が美味いことは評価が出来る。ここは良い場所だ。贔屓するとしよう」

 

 

 

10分という限られた時間の中でどれだけのバトルで勝利し、食事を勝ち取ることができるのか。最短で最速で勝利して多くの料理を得るか、一戦ずつ確実に勝利して結果的に多くの料理を得るか。

個々人の思惑が混ざった面白い場所だ。惜しむべきはやはりトレーナーの層が薄いことか、勝負自体は面白みに欠ける。もっとも、すべての試合を開始早々確一で5秒以内に沈めていた僕を見る店員の目元が引きつっていたため、もしかすると次はもっとレベルの高い相手と戦える場所に行けるかも知れない。

 

結論からすれば、なんか僕の想像していたバイキングと違っていたものの、次に期待できる良いものだったと言えるだろう。

 

 

そして腹ごなしにショッピングモールを散策していると、………………なんというべきか、同類(・・)の匂いを感じてそちらをみる。

すると、向こうもこちらのことを感知していたらしく、視線が会った。

 

典型的なオヤジスタイル(仮)である赤いポロシャツを着た、40代ほどの男性だ。肌色に煌めく頭が目に眩しい。店を出しているらしく、カウンターの奥にいるものの、多くの人で賑わうこのショッピングモールにおいても閑古鳥でも鳴いているかのように人がいない。

 

 

「調子はどうだ?見た感じはサッパリだが」

 

 

ミヅキ達とはポケモンセンター周辺で別れたため、特に急ぎの用事があるわけでもない。暇を持て余していたこともあって、僕はカウンターに備え付けられていた椅子に座り、店主へと話しかける。

 

 

「…………見てわかんだろ?誰一人来やしねぇよ。ったく、この地方の トレーナーは育成力が低くて困る」

 

「それに加えて、育成限界(Lv.100)まで達したポケモンがいるトレーナーも、まさか最初の街のショッピングモールの中に凄い特訓が出来る程の育成力を有するヤツがいるとは思わないだろうしな。経営には苦労しているようで」

 

 

そう、ここは凄い特訓を課すことが出来る店だ。先ほど感じた気配は同類、すなわちトップクラスの育成家の気配だったのだろう。

 

少なくともホウエンにおいては、このような店は決して珍しくはない。ジムがある街には必ず1店舗はあるうえ、バトルフロンティアに至っては各施設にひとつずつ、計7店舗は存在する。ホウエンには育成限界のポケモンが特に珍しくもなくゴロゴロしているうえ、時々野生でも他のトレーナーが逃がしたのだろうLv.100が出現することがある。

 

だが、限界へと到達したトレーナーの全てが必ずしも高水準の育成家であるわけもなく、このような店を利用して才能の底上げをする。割合としてはそんな育成力が足りないトレーナーの方が多いため、ホウエン全体で15店舗はあるはずの店が超過密状態にあるのだ。

凄い特訓のためだけにわざわざ他の地方に行くトレーナーもいると言えば、その過密さがわかるだろうか?

 

 

「ま、金には困っていないんだがな。ホウエンで荒稼ぎした(・・・・・・・・・・)甲斐あって、一生遊んで暮らせるだけの金はある。俺がこんな商売をやっているのは一重に王冠欲しさだ。あの輝きさえあれば、ほかにはなんもいらねえな」

 

 

ホウエン、という言葉に一瞬動揺する。まさかこんなところでこの世界のホウエン地方を知る機会があるとは思いもしなかった。

予想だにしなかったこの機会、より多くのホウエンの情報を手に入れるべく、僕は言葉を紡ぐ。

 

 

「………………へぇ。今のホウエンのレベルはどうだ?あいかわらずの魔境っぷりか?」

 

「お、んな質問するってことはアンタ、同郷だったのか。アローラにはホウエン出身の奴なんてロクに居ねえし、同郷のよしみで仲良くしようや。

んで、ホウエンの現状だったか?わりぃが俺がここに越して着たのは5年ほど前でね、アンタの思いに沿えるかはわかんねえぞ?」

 

「いや、十分だ。…………そうだな、情報料にこれをやろう」

 

 

おもむろにバックから取り出したのは金の王冠だ。滅多なことでは手に入らない、彼等が大歓喜する一品である。

僕も凄い特訓を引き受けることがある関係上、王冠はそこそこ数があるが、そうだとしても金の王冠の数はそう多いわけではない。そして王冠が欲しい気持ちもそれなりにはある。

それでも、そのうち1つを渡したのには理由がある。

 

奴は言った。アローラにはホウエン出身の奴がロクに居ない、と。ならば彼はこの地方で希少なホウエンについての情報を持つ者である。加えて凄い特訓が出来るほどに優れた育成能力を持っているとあらば、繋がりを作る以外の選択肢はない。

 

 

「マジかよ、ホントに良いのか!?返せって言われたって返さねえぞ、これはもう俺のモンだ!!」

 

 

とはいえこれを見るとなんかもうそれはそれは色々大切なものがどこか遠く彼方へと消え失せる気もするんだが。

ハゲオヤジが金の王冠を胸元に抱いて隠す姿を誰が見たいと思う?僕は嫌だぞ、そんなもん。正直言って殴り飛ばしたい。

前記した通りメリットも多いからそんなことはしないが。

 

以降はホウエンについての情報を受け取った後、互いのポケナビに連先絡を登録し、僕はショッピングモールを後にした。

 

 

 

 

…………………ポケナビはダイゴとの会話に使ったのが最後だったため、起動した瞬間にあの伝説の一言が目に入り、イラっとしたのは余談だろう。

 

 

***

 

 

トレーナーズスクールでユウキ達と別れて以降、ククイの表情には影があった。理由はもちろん、彼の話によるものだ。

 

『廃人』ーーーーその存在を、ククイは聞いたことがなかった。必然的に、それはユウキの本来の世界の人間であることがわかる。

それを考慮すると、彼や、そして彼のいたホウエン地方がどうしてあれだけの魔境っぷりを誇っていたのかが理解できる気がした。

 

ーーーーーーそう、ホウエン地方の歴史とは即ち、廃人との対立の歴史なのだ。

相手が強いからこそ自分が強くなる必要があり、対応して相手も強くなる。その際限なきイタチごっこによって、ホウエン地方は彼のような最強格のトレーナーを生み出す魔境と成り果てたのだ。

 

そんな環境でチャンピオンとして君臨するのがどれだけ厳しいものか、ククイには想像さえつかない。アローラ地方にはポケモンリーグが存在しないために多くの住人は知らないが、今まさにポケモンリーグを作ろうとしているククイだけは知っている。チャンピオンとは単に地方の頂点であるだけではなく、多くの責任を背負わなければならない立場であるということを。

現にユウキは言った。廃人によって壊滅の憂き目にあった環境を自分は見たことがある、と。それこそが動かぬ証拠である。ユウキはチャンピオンとしての仕事で廃人を追いかけ、その過程で壊れた環境を見てしまったのだろう。未だ少年といっても良いような年齢でそんな光景を見てしまった苦悩は、察するに余りある。

 

そして、彼のバトルへの欲求も、最初は素だとばかり思っていたが、おそらくそれも廃人への対抗心、強くならなければならないという、脅迫感にも似た強い感情が所以だ。ホウエン地方という魔境がそうさせてしまった。でなければ異世界に来たと理解して真っ先にポケモンバトルの違いを確認するような歪んだ人格を形成するはずがない。

 

だからこその、ゼンリョク祭での自分との勝負。ハッキリとはわからなかったものの、ルガルガンを倒して以降、ユウキからは誰か(・・)に対する強い敵愾心が伝わるとともに、意図的に手加減をされたのを理解した。あの時は全力を発揮できない自分への苛立ちで周囲を見れていなかったが、冷静になるにつれ、その誰かとは一体誰なのかを疑問に思っていたがーーいまなら想像できる。

 

この世界に来て1ヶ月の間ひたすら貪欲に情報を集めていた時、ユウキはこう口にした。

「僕が今まで負けた相手は5人に満たない」と。

 

その相手のうち、少なくとも1人は廃人だ。1ヶ月と少しの付き合いではあるが、彼が凄まじく負けず嫌いなのは容易く想像がつく。1度その廃人に敗れたユウキはその負けず嫌いさを遺憾なく発揮し、トレーナーズスクールの生徒にもわかりやすい説明が出来るほどに廃人について研究したのだろう。

そしてその相手に勝つためにひたすら努力を重ね、やがてチャンピオンにまで手が届くほどになったものの、強くなろうとする姿勢は止められず、今もまだ勝負へと囚われ続けている、と。

 

 

「………………………やっぱりホウエンは魔境だな」

 

 

だから好きになれない、と愚痴を零し、ククイは電話をかけた。

 

 

***

 

 

「…………………なんか壮大な勘違いをされた気がする」

 

 

ハウオリシティの港にて海の模様を眺めていた僕は、ふと感じた嫌な予感に上を見上げる。前にこんな予感を感じたのはこの世界に来る直前か…………また隕石が落ちてくるようなことはないよな?

 

上を見上げ、空模様に変化がないことに安堵する。宇宙服がズタボロになった以上、伝手がないこの世界では宇宙に飛ぶことは出来ないため、再び隕石が降って来たらこの世界の住人に任せざるを得ない。元々僕は異世界の出身であるために協力する義務はないのだが…………だからといって見ているばかりなのも歯痒い。世界が滅んで未だ見ぬ強いトレーナーも死んでしまっては困る

 

まあ、どうせそれはもしもの話だ。今起きていないならそれで良いし、楽しい勝負ができるならそれ以外いらない。

 

 

それにしても…………………なんだ?この声。

 

 

たま(カイ)には(オー)こん(ガと)なの(バト)もい(ルし)いだ(たい)ろう(なあ)と思いながら海を見つめていると、無駄に大きく、耳障りな声が辺りに響く。

 

 

「ヨヨヨー!挨拶なしが俺たち《スカル団》の挨拶!」

 

「キャプテンのポケモン俺たちにくれないッスカ?」

 

 

……………チーマー、だろうか。

正直あんなもの着てて恥ずかしくないのかと思うほどにダサいタンクトップ姿の二人組を見てそう思う。ジャージはファッションだ、異論は認めん。

この地方のチーマーは随分と物騒なようだが、最も見た感じロクな力量をもっていない雑魚だ。そんな雑魚にポケモンを奪われるのを許すようなトレーナーならば将来的にも一切の期待を持てないため、放置するのが安牌だろう。加えて、絡まれている2人のうち1人はミヅキだ。未だ発展途上とはいえ、今の彼女でもあんな雑魚に苦戦するなどあり得ないだろう。

 

むしろ僕が下手に首を突っ込んで勝負を挑まれてしまうと、攻撃を加減しきれずに圧倒的なレベル差で相手のポケモンを殺してしまう未来が見える。そういう時のために、そしてポケモン協会からテレビ映えするポケモンを持っておけと言われていたために、一応強くはないマスコットポケモンがいるにはいるが…………この1ヶ月間この世界と向こうの世界の育成を比較しようと育てていたところ、ついうっかり育成限界(Lv.100)へと到達させた上、凄い特訓までやってしまった。おかげで上限の違いなどにも気づけたが、まあそれはそれとして。

基礎ポイントは当時からしっかり振っていたため、種族値が低くとも十分戦闘に耐えうるポケモンである。マスコットって一体………………。

 

それにしても、絡まれているミヅキではない方のもう1人、浅黒い肌でピンクブロンドの少年を見る。

 

あのチーマーの言葉が確かなら、彼はキャプテンらしい。言われてみると確かに一般トレーナーよりかは強そうではあるが、誤差の範疇だ。ベテラントレーナー程度の強さしか感じられない。年齢を考慮すると優秀な部類に入るだろうが…………才能の塊(ミヅキ)の隣にいるのが不幸だったな。

 

なかば結末が見えている勝負でも、ここで海をみてあるはずもない可能性(カイオーガ来ないかな)にかけるよりもずっと充実した時間になりそうだ。

そう思った僕は姿勢を変えてバックから先ほど購入したビールとマラサダを取り出し、野次馬根性全開で試合を見るのだった。

 

 

 

 

 




キャプテンの実力って実際問題高いんでしょうか。
正直なところ、私はキャプテンよりも各道路の全トレーナーを倒してから相手してくれるトレーナーの方が手強いと感じたのですが。道具使ってきますし、タイプ統一されてないですし。

そして加えられた勘違い要素。ざっくばらんなプロットに従いながら、それ以外は完全にノリで書き進めているので、色々が闇鍋然とした感じに…………。
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