問題児たちと不適合者が異世界から来るそうですよ? 作:アホ蛇
個人的に好みのシーンを入れました。
こういう共戦みたいなの好きなんですよね自分。
……別に字数稼ぎとかじゃないですよ?ええ、まったく。
ゴオォォォ―――!
感じ慣れた、風が肌をきる感触や上空の気温や風音。親しみ深いあの自由落下の感覚である。ちなみにこの感覚だと恐らく高度は四千メートルほどだろうか。
さてさて、どういうわけか手紙を読んだらいきなりこれである。普通だったら絶叫する以前に状況把握に困るくらいだぞ。
(……すっげ……)
見とれてしまった。上空からの下の光景に。あの木々や川など人間の手が一切入ってないと断言できる程の大自然に、その雄大な土地の広さに……ふつくしい。
そうこうしているうちに自由落下も最終フェイズ…つまり着地、あるいわ地面への激突だ。
ん?見ると下は地面じゃなくて水のようだ。これでは、着地寸前に勢いを殺してもドボンである。
ブンッ
右腕を横に振り、周りの風を操る。
ヒュゴ――
ボチャン!ボチャン!ボチャン!
……はて?何か音が……。
もっと具体的に言うなら『オレと同じくらいの高度から落とされた人間大の物体が三つほど水に突っ込む音』がした気がするが……。
「ふむ」
まぁ、いいか。
そのまま風を操り、水面から浮いたまま地面のある方へ移動する。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きづり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
おっと。キョロキョロと辺りの自然観賞に耽っていたら、湖からオレと同じく自由落下をしたと思わしき人物達が上がって来た。
「……まぁ、身勝手と言えば他にも約一名当てはまりそうな人もいるようだけど」
全部で三人。いや三人と猫一匹の内、男女一人が濡れた服を搾りながら此方を睨んでいる。
オレの事だろうか?オレの事だろうなぁ。だがしかし、言い訳をさせてほしい。こんな素晴らしい自然を見せられたのだ、他の人間など目に入るわけがないだろう。え?オレだけ?あそう。
「此処……何処だろ?」
「さぁな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
え?マジ?自然に気を囚われすぎてそこまで見えてなかった。というか、大亀ってアレか?亀やら象やらが世界を支えているとか言うアレか?古いな。オレや昔の考古学者じゃなかったら分からないネタじゃないか?
「まず間違いないだろうけど。一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは”オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて。それで、そこの猫を抱えている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。で、そこの濡れてない貴方は?」
なんかむっちゃ嫌味な呼ばれ方された気がするんだが……。
「威鷹《いたか》。名字は無い、好きに呼んでくれ。座右の銘は『強きを挫き、弱きを踏みにじる』」
というか、名字持ちも今時珍しいな。おっ?あの木の葉っぱの形見たこと無いな。
「わざわざどうもありがとう。最後に、野蛮で凶暴そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用方と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず猫と戯れる春日部耀。
自然観賞に夢中な威鷹。
そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。
(うわぁ……なんか問題児ばっかりみたいですねぇ……)
十六夜は苛立たしげに言う。
「で、呼び出されたは良いけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままだと動きようがないもの」
「……この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど」
「お前もな」
ふと十六夜がため息混じりに呟く。
「仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちのお前らも気づいていたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
「こんな距離で呼吸されたら普通に分かる」
「……へぇ?面白いなお前ら」
まぁ、こっちの女(耀)は面白いと思う。特に風上って辺りが。
それそうと、オレは兎も角、他の三人は『引きづり込んで、空に放り出し、湖に叩き込む」という理不尽極まりない招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷やかな視線を向ける。
「や、やだなぁお「よぉし、出て来ないんじゃ仕方がねぇ」へ?」
バンッ!
「フギャ――!!」
ヘッドホン(十六夜)は有無も言わさずに隠れている奴に向かって跳びかかった。って、なんだあれ?見たところアイツの回りに変化は無いし…純粋にあのヘッドホン(十六夜)の身体能力か?着地点近くの木が倒れたんですけど……。
「お?」
「何あれ?」
「コスプレ?」
「ち、違います!黒ウサギはコスプレなどでは」
そうしてヘッドホン(十六夜)の攻撃から姿を現したのはバニーガール的な存在。……なんじゃありゃ?
「まぁ、捕まえてみりゃ分かんだろっ!」
ドドドドドドドッ!
威鷹は言下、肩幅に開いた両足の間に拳を振り下ろす。すると、そこから黒ウサギに向かって地面から岩の様な突起物が次々と生えていった。
「はぅっ!」
黒ウサギは後方の木の枝に跳び乗って地面からの攻撃を避けたが、ほぼ同時に耀も隣りの木の枝に乗っていた。
あの風上女(耀)いつの間に?オレの攻撃時にはまだ近くにいたはず……。
「鳥達よ、彼女の動きを封じなさい!」
っと、あの風上女(耀)が木の上で追いかけてるうちに、もう一人の女(飛鳥)がナニかをして鳥達に動きを封じさせた。なんだ?今のは?
「うぅ、痛いですぅ……ハッ!」
空中で鳥達に動きを封じられ、落下し尻もちを着いた黒ウサギは気づけば四人に囲まれていた。
「なんだ?こいつ?」
「ウサギ人間?」
「お、落ち着いてください御四方」
「えい」
「フギャッ!」
耀は不思議そうに黒ウサギの近くに立ち、黒いウサ耳を鷲掴み思いっきり引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
この風上女……やる!!
「へぇ?このウサ耳って本物なのか?」
十六夜が右から耳を掴む。
「じゃあ私も」
飛鳥が左の耳を掴む。
「ならオレは尻尾を」
威鷹が後に回り込んで尻尾を摘む。
本当は掴みたかったのだが、ウサギの尻尾って短いんだよな……残念。
「ちょ、ちょっと待っ――――!」
黒ウサギは言葉にならない悲鳴を上げた。
「あ、あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「「良いからさっさと話せ」」
「……はい」
オレとヘッドホンが促して聞き出した黒ウサギの話…というか説明は要約するとこうだ。
・ここ『箱庭の世界』は『恩恵《ギフト》』を持った者達などがオモシロオカシク生活していくためにつくられた世界。
・恩恵《ギフト》とは、俺の能力のような特異な力の事。
・箱庭の世界では『ギフトゲーム』が法の一つになっている。
・ギフトゲームは、あらゆるモノを賭けたゲーム。誰にでもでき、多種多様なギフトゲームがある。
「この世界は……面白いか?」
ヘッドホンの質問。
その答えをオレを含めた他の三人も黙って待つ。
そう、面白くなければ意味がない。こちらは、クズにカスを掛けて十乗したようなクソッタレな世界でも『元いた世界』を捨てて来たのだから。
その答えは……
「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保障いたします♪」
その答えは、少なくともオレの満足のいく答えだった。
というわけで問題児達との絡みでした。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この主人公は人間に興味が薄いです。名前を語りの中ですら呼ばないという……。
主人公が問題児たちの名前を言う(打ち解ける)のはまだ先になりそうです。
後、分かり易く言うと問題児たちの名前が出ている行が三人称の部分です。