問題児たちと不適合者が異世界から来るそうですよ? 作:アホ蛇
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「ジン坊っちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」
箱庭の外壁と内側を繋ぐ石造りの階段に座っていた少年ジンは、外門前の街道から歩いてきた黒ウサギを見た。
「おかえり、黒ウサギ。そちらの三人が?」
「はいな、こちらの御三……え?」
振りかえり固まる黒ウサギ。
「………え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から『俺問題児!』ってオーラを放った方が」
「ああ、十六夜君なら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ』とか言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「『止めてくれるなよ』と言われたからな」
「ならどうして黒ウサギに教えてくださらなかったのですか!?」
「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」
「嘘です!絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょうみなさん!」
「「「うん」」」
ガックリと前のめりに倒れる黒ウサギと対照的にジンは蒼白な顔で言った。
「大変です!”世界の果て”にはギフトゲームのために野放しになている幻獣が!」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣の事です。特に世界の果て付近には強力な幻獣がいます。とても人間では太刀打ちできません!」
「あら、それじゃあ彼はもうゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」
「ゲームオーバーから始まるゲームも無くはないぞ」
主人公死ぬ《ゲームオーバー》→異世界へ転生or憑依etc《ゲームスタート》みたいな。
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンの訴えに三人は肩を竦めるだけだった。
「はぁ………ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。事のついでに―――”箱庭の貴族”謳われるこの黒ウサギを馬鹿にした事、骨の髄まで後悔させてやります」
打ちひしがれていた黒ウサギは、その悲しみを怒りの力へと変換したのか髪の色を黒から淡い緋色へと変える。……サ○ヤ人?
「一刻ほどで戻ります!皆様はゆっくりと箱庭ライフをご堪能くださいませ!」
黒ウサギはあっという間に跳び去ってしまった。
「ひゅ―」
ナニアレ?アレもヘッドホンと同じ身体能力ですか?化物かよ。思わず口笛吹いちまったじゃねーか。
「………。箱庭のウサギは随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
皆黒ウサギの後を見ていたが、飛鳥がジンに向き直ると他の二人も同じく倣った。
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。あなたがエスコートしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーのジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。みなさんの名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「オレは威鷹だ。姓はない」
とりあえずコミュニティのリーダーらしい少年(ジン)に倣ってお互いの自己紹介が済み、軽い食事でもしながら話す事になった。
「ニャー!」(お嬢!外から天幕に入ったはずなのに、お天道様が見えとるで!)
「………本当だ。外から見た時は箱庭の内側なんて見えなかったのに」
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されてますから」
「へぇ、それはなんとも気になる話ね。ここには吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「え、居ますけど」
「………そう」
ジンの何でもないかのような普通の返しに飛鳥はなんとも複雑そうな顔をする。
「ニャーニャニャー!ニャー」(しかしあれやなあ。ワシが知っとる人里とはえらい空気が違う場所や。まるで山奥の朝霧が晴れた時の様な澄み具合や。ほら、あの噴水の彫像もえらい立派な造りやで!お嬢の親父さんが見たらさぞ喜んだやろうなあ)
「うん。そうだね」
「あら、何か言った?」
「………。別に」
耀は先ほどの声音とは対照的な声で返す。
飛鳥もそれ以上の追求はせず、近くで賑わう噴水広場の周りに幾つもあるカフェテラスに目を向ける。
「お勧めの店はあるのかしら?」
「す、すいません。段取りは黒ウサギに任せていたので……よかったらお好きな店を選んでくださってあれ?先ほどの男性の方は?」
「男性の方?威鷹君の事?」
「………本当だ。いない」
「一体どこに………」
「まぁ、居ないものはしょうがないわ。先に行きましょう」
「は、はぁ」
三人はそのまま『六本傷』のカフェテラスへ入って行った。