無意識に目を瞑ってしまうほどの光が一瞬だけ花火のように輝いた。まばゆい光が終わる頃にはガルの姿などすっかりと消えてしまっていた。
僕は軽くため息をついた。
「さてと……自分でやるしかないか。やっぱり、うん……それがいい」
やはりガル達じゃダメだった。この地域ではかなりの実力者とある者から勧められたが、無能極まりない紹介だ。
いや、正体も姿も顔も声もわからない『アイツ』など信用した自分が馬鹿だったのだ。
「さてと……どうやって彼等を倒そうか……」
ガルの作り出した空間に侵入してライオニックとの先頭を遠くから眺めていたが意外にも戦闘力はかなり高かった。正面から立ち向かうには少しキツイ、二体一のハンデもある、正直ガルを転送させたのはやめときゃよかった。
でも実際は二体一の方が都合がいい。
だがもう片方のKという男はデータは取れなかった。ガルの仲間である気の弱いアルトがKを引き離してしまったからだ。
自分には時間が少ししかない、この際やる以外の選択肢はないだろう。
青年はその場から歩き出そうとした時、車椅子の一人の老婆が目に見えた。一人苦しそうに息を切らしながら車椅子の車輪を手で回ししていた。
その様子に一人の『少女』を思い出した。老婆と同じ足が不自由でこの世景色を見ることさえ許されてない一人の『少女』
こんな事をするのは自分の性格には合わない、そう否定していたが感情とは逆に、青年は老婆を目的地まで押していく事にした。
なんで僕はこんな事をしているんだろうか、この言葉前も言ったような気がする。
「付添人はどうしたんですか?」
「ええ? えーと」
少し耳が不自由ならしい、僕が言った言葉を上手く聴き取れなかったようだ。
青年はさっきよりも少し大きな声で繰り返した。
「付添人ですよ、付添人」
「ああ、付添人。もう私も歳でね……身体を少しでも鍛えるために張り切ったんだけどダメらしいわ」
「そうなんですか」
「でもあなたのように親切な方に出会えたのは嬉しいわ」
老婆はふふふと気品よく笑った。
「僕は……そんな良い人じゃありませんよ」
この人は少し勘違いしている。僕はそんな優しい人間じゃない。いや人間ですらない怪物だ。さっきも助ける気などなく気分で親切を行おうとした奴だ。『少女』を思い出さなければ目にもかけてなかったのだ。
「フフフ、そうかしらね……」
「そうですよ」
そろそろ日が暮れる、夜が訪れる。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
そろそろ夜が来る頃だった。窓の外を覗くと、不定期な時間に訪れる夜が新鮮に感じる。
「150……ひゃ、151、152」
「あのう……何やってるんですか? も、もしかして僕を拷問するウォーミングアップとか……」
少年がぼそりと腕立てを行うライオニックに聞きかけた。
「何をって……筋トレだが。お前もやるかっ? 鍛えるのはいいぞ、筋肉こそ全て! 全ての生き物は筋肉のおかげで生きてるってよく言われるしなっ!」
それにこの世界に来てからはボロボロ続き、もっと体を鍛えてなければ。
「僕は……やめておきます」
「そうか? 無理には言わないが、もう少し鍛えた方がいいんじゃないか」
少年はそう言うと少しムッと顔を強張らせた。しまった、何か悪いことを言ってしまったかもしれない。
少年は少しムキになり、ドンと立ち上がった。さっきの臆病な時とは違っていた。
「わ、悪かったですね! もやしでゴボウで」
「そ、そんな事言ってないが……」
少年の口は脂がのったように速くなっていった。さっきのオドオドした状態とはえらい違いだ。
「そ、それに……そ、そんな怪我してるのに、そんなに鍛える必要あるんですか? それに何かに取り憑かれたようにやっててこ、怖いんですよ! あんたはお化けか!」
「え、あ、えーと、あーっと……すまん……」
どう反応していいのかわからず、謝る事にした。
ハァハアと息切らす少年はハッと我に帰ったようで。
「ご、ごめんなさい、何もしないで……割とマジで」
そんな重い空気の中、うちのロボットは空気を読まずズカズカと話に入ってきた。
「ライオニック……少し話がある……」
ライオニックはKに「助かるっ」と小声で呟き、話を聞こうとした。
「どうしたんだ?」
「外から……俺たちは狙われているようだ……」
「#&^@^/#^&^!?」
驚いて声を出しかけたが自分で口を塞いだ。
自分の感覚や気配探知はまだ戻っていないのか、サグーの気配など近くには感じない。
「誰なんだそいつは」
「恐らく……ガルという男の依頼主だ……」
確かにそれなら理屈が合う。
「でも……一体どこから狙われているんだ?」
「……近くにいる…………」
ライオニックはゴクリと喉を鳴らした。
「このアパートにいる…………それは確かだ……」
「はぁっ!?」
ライオニックが驚きの声を上げた、時チャイムの音が鳴り響いた。
一瞬、どきりと胸の鼓動が速くなった。
誰なんだ、ただの一般人か新聞の集金か管理人か、それともサグーなのか。
ライオニックは一度呼吸をして、Kに少年を守るように指示して歩き出した。
ギシギシ音を立てないように忍び足でドアに近づいた。外を覗き穴で確認しようとすると……
「こういう時はお邪魔します……でいいかな?」
突然白い布らしい物が木製のドアをぶち破り、ライオニックの身体を絡め取った。
「な、なんだこれはぁぁぁ!」
それは布ではなく束になった糸だった。身動き一つ取れないままそれは身体全身視界ごと、覆い隠してしまった。
「くそっ! 何も見えない! ガァァァァァァ!」
無理矢理引きちぎろうとしても糸の力は凄まじく、より身体を食い込み状況が悪化し始めた。
「悪いね、その糸は強力なんだ。一本一本が針金ぐらいしっかりしてるからね君程度の力じゃ無理だろうね」
「誰だお前はっ! くそっ、これをほどっ」
バババババババ!
自分がこの糸に苦戦している時にKの銃弾が発砲音が部屋に響き渡った。
目が見えなくて一体どうなっているんだ。
そして銃声が鳴り止んだ後、依頼主の声がした。
「ふぅ……僕は嫌いな物から食べるタイプなんだ? いや逆かな……まぁいいや、僕の考えだとやっぱり君が一番厄介そうだ。だから先に死んでくれないかな、怖い目にも痛みも与えないようにするから頼むよ」
「…………無理だな……」
「まぁそうなると思ったよ」
またKの銃弾の音楽が始まった。