怪物だって傷つくよ!   作:空飛ぶマネッキー

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何故戦い続けるのか?

 

「んぐっんぐ……ごくり…………美味いなっ! コレ」

 

 ライオニックは林道を歩きながら塩むすび、卵かけおにぎりに鮭むすびを胃の中に入れた。

 

「本当に後で返してくれるんですよね……」

 

 隣で水をちびちびと飲む少年は諦め気味にこちらを見つめていた。

 

「勿論返す、俺は親から恩は倍にして返せと教えられてきた。子供の頃、俺はつい店で盗み食いをしてしまった時に両親からギッタギッタにされ一週間その店で働いた事がある」

 

「絶対無理だ…………」

 

 少年がぼそりと呟いた。

 

「なんかいったか?」

 

「いえ……何も」

 

 現在歩いている林道は木や緑だらけで太陽の光が覆い隠されてしまっていて昼とは思えない薄暗さだった。

 この道でよかったのかと不安な気持ちが芽生えたが、少年がここだと言うのだから大丈夫だろう。二、三回行き来してる事には目を瞑ろう。

 このまま数十分歩いた後に、Y字の二つの分かれ道が存在していた。

 二手の道に不安な気持ちが芽生えたが看板がポツンと建っていて板に赤色で書かれた文字を読んだ。

 

『僕の洋館までこの道まっすぐだよ。でも君じゃあたどり着けないだろうね(笑)だって君って脳も血液も臓器も全て筋肉の塊だよね!」

 

「絶対罠ですよこれ」

 

「いやだがそいつはこっちの道が正しいと」

 

「どうして敵の言うことを信じるんですか。マジで純粋なんですか……」

 

 よくよく考えると確かに敵が明確な道を教えてくれるのは都合が良すぎる、反対の道を目指してみるか。

 ライオニックは看板の筋肉の部分を注視した。

 筋肉の塊、褒められている気がして少し頬が緩んだ。

 

「……………………」

 

 少年が蟻を掌に乗せながら憐れんだ表情で視線を向けてきている。

 

「うん? 顔になんかついているのか?」

 

「いえ……じゃあ僕はこれで……いいですよね。もうここから真っ直ぐ行けばつくって書いてますから」

 

「ああ助かったっ。だがまだ捕虜の身と同じだ、アパートに戻ってく……」

 

 ライオニックが喋ってる途中に少年の姿は消えてしまっていた。

 一瞬、敵からの攻撃かと身構えたのだが自分の額に紙のような物が貼られてあった。

 

『先に帰ります』と、おそらく時間を止めた能力を使ったのだろう。時間停止の彼がいてくれると頼もしかったのだが、よくよく考えると彼の時間停止は1日一回、停止中は相手に干渉する事が不可能で必ず自分以外の誰かを巻き込む必要があるのだ。

 強いようで使い勝手が悪い。

 

 ライオニックは看板が指す反対の右側の方へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 どうしてあの時道を間違えてしまったのだろうか。

 鉢、猪、熊と凶暴な生物達と、しまいには十メートルほどの人なら軽く丸呑みできる巨大蜘蛛と鉢合わせてしまったのだ。

 

「ぎゃあああああああっ!」

 

 巨大蜘蛛の口から吐いた黄色く粘っこい吐瀉物がライオニックの肉体にかかった。

 サグー状態のライオニックの皮膚を溶かし、肉が溶ける痛みに思わず池に飛び込んだ。

 

「ぐぼっ、ごぼぜがぃにばぼんばべいぶづばげびぐのが(くそっ、この世界にはこんな生物までいるのか)」

 

 いや流石にそんな訳ないと、ライオニックは自分の考えを即座に否定した。

 水の中から巨大蜘蛛の様子を見上げた。どうやらまだ自分を倒したとは思っていないらしいが潜ってくる気配はしない。このまま消えてくれればいいのだが、奴はあまりにも凶暴すぎる倒さなければ被害が出る。

 

 川の流れに流されないよう、川の底に足をつけて……

 思いっきり飛び出す!

 

 巨大蜘蛛は川から飛び出すのを見通していたのか、自分が宙に浮いた瞬間に網状の糸を吐き出した。

 だがこちらもそれを読んでいる。

 

「くらぇぇぇぇっ!」

 

 オニギリほどの石を手に持ち、全身全霊を込め糸にぶち当たるよう投げ出した。

 石は糸を破り巨大蜘蛛の額を貫通させた。

 

 巨大蜘蛛はズシンと倒れ、ビクビク痙攣したまま弱々しくなっていった。

 人を襲う巨大蜘蛛とはいえ、命を奪うのは気分が悪い。どこか墓でも建ててやりたいのだが、無理か。

 今は急ぎの身、仕方ないのでこのまま進もうとしたのだが。

 

 ズシン、ズシン。

 二つの大きな足音。

 

「嘘だろ……?」

 

 二匹の巨大蜘蛛が六つの黒い目でこちらを見下ろしていた。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 二階へと続くホールの階段に腰を下ろすと埃がジーパンを汚した。

 もう何十年も使われていないのが丸わかりな洋館であった。古びていていつ崩れ出しても不思議じゃない。

 腕時計の針が進む事に自分の心に焦りが生まれてきた。

 夜中の0時にまでに二人を始末する。約束の内容を思い出させる。

 あれは一週間前だった。

 

『奴等を始末しろ、お前の願いをなんでも叶えてやる……目だろうが足だろうがな』

 

 陽炎のように姿があやふやな黒い影だった。

 まるで自分の心を握ったような魔法の言葉であった。

 

「悪いけど黒い塊……黒い影……どっちでもいいか、そんな君の命令を僕が聞くと思うかい?」

 

 黒い影は揺らいでいる自分の心に釘を指した。

 

『いいのか? 少女の身体は二度と戻る事はない、だが私ならそれは可能だ。直す事も壊す事もな』

 

 自分は「いいだろう」とその話の案を飲んだ。嘘でも縋りたい気持ちだったのだ。

 

『ならもう一つ、こちらの条件を聞け……………………』

 

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 何かその後に何か言われたような気がするのだ。だが思い出そうとすると頭痛がしてストップをかけられる。

 扉が開く音がした。

 

「非常に気分が悪いね。そう思わないかい? 君も僕も掌で転がされているようでさ……」

 

 洋館の扉にはライオニックが立っていた。ボロボロになりぜぇぜぇ息を切らしている。

 

「なんの事かはわからないがKは返してもらうぞ……!」

 

「はは……やっぱり君は面白いなぁ……何も知らず馬鹿正直に突っ走る……僕が一番嫌いなタイプだよ……!」

 

 

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