怪物だって傷つくよ!   作:空飛ぶマネッキー

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冷やし中華が食べたい


タイトル変えてみました

 

 蓮は今起きている現状が理解できなかった。いや人間の理解の範囲外の出来事である。ただの高校生である自分がアメフトの選手のように突進してきたトラックを止めた、こんなの非常識にもほどがある。

 

 蓮はふと周囲が野次馬でざわめき始めている事に気付いた。

 大きな音がしたからやって来た子供達、偶然通りかかった学生や大人達が蓮を変わったものを見ているような目つきだった。

 

「ち、ちが……」

 

 懸命にこの事故を否定しようとしても怖くて声が微かにしか出ない。知らない人に見られる時間が数秒のはずが、数時間にも感じた。

 涙が溢れ、もう嫌だと泣き喚きそうなその時、身体に電流が走り蓮の意識が遠のいて行くのを感じた。そして熱い鉄板のような道路へと身体が倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん…………もうちょっと…………方法が…………」

 

 何か声がした。ハッキリ何を言っているのかは聞こえなかった。

 

「まぁ…………仕方ないよ………………なんだし、ってそこ危ない!」

 

 さっきよりは意識がハッキリして声の会話を追おうとした時、

どんがらがっしゅーんと何か物が落ちるような音がしてびくりと反応してしまった。

 

「!?」

 

 蓮はその声のせいで目を開けてしまった。

 すると見慣れない部屋が視界中に映った。辺り一面には素人目線にしても明らかに魔改造を施された電化製品が転がっており、なんとか歩ける歩幅がある程度で、部屋を分ける為の透明な仕切りのカーテンの奥にもガラクタばかりが積み重なっていた。

 当たり前だが自分の部屋ではない、こんなにも散らかってはない。

 自分に置かれた状況が分からず、もしや誘拐されたのではないかと冷や汗が流れ身震いがした

 

「ああ……やっと起きたんかい嬢ちゃん」

 

 そんな時床に仰向けで倒れていた…………ピンク色の豚の着ぐるみが関西弁でこちらを向いた。

 

「え!? やっと起きてくれたんだ! いやぁーよかったぁ」

 

 と白衣を着てメガネをかけた男は安心しながら息を吐いた。

 

「あ、大丈夫! 身体を調べたこと以外何もしてないから」

 

「か、身体を……」

 

「アホか! 誤解招いてしまうやんけ! 別に身体を調べた言うても触ってもないし服を脱がしたりもしてへんで!」

 

 蓮に向けてピンクの豚の着ぐるみが懸命に違うと首を振り、白衣の男の胸倉を掴んでいた。

 

 怖い……っ

 

 蓮は頭の中がぐちゃぐちゃになって整理がつかず、この場から逃げようとソファーから降りようとした、が手には銀色の輪、右腕に手錠がかけられてあった。そしてソファーの脚にもう片方がかけられていた。

 

「それと逃げられないように彼女に手錠をごぼぉ! ちょっとタンマぁ!」

 

「いつの間に……というかお前さんもう黙ってくれ! ほんま頼むわ!」

 

 そして豚の着ぐるみの叫びと共にアッパーカットが決まり、白衣の男は天井に首を突っ込み、ぶらんぶらんぶら下がった。

 

「あ……あ……」

 

 蓮はこれから何をされるのか、嫌な方向へ思考が働いてしまい涙が溢れそうになった。そんな自分を見てか豚の着ぐるみがドスンドスンと重い足取りで近づいてきた。

 

「あのな嬢ちゃん。わしらはな悪いことをするわけちゃうねん、まぁ信じられへんと思うし、怖いやろけどひとまず話を聞いてくれるか?」

 

 声は少し怖かったが、まだ着ぐるみのおかげか恐怖心は少し収まり、震えながらもこくりこくりと頷いた。

 とりあえず落ち着こう、無駄な抵抗をしなければ帰らせてくれる。と心の中で何度も言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 かけられていた手錠も一応外され、何をされるのかと息を飲んでいたがジュースやお菓子を出され、意外にも客をもてなすような扱いだった。

 そして蓮の向かい合わせのソファーに座る豚の着ぐるみは首の隙間からストローを通してジュースを飲んでいた。

 

「ふぃー、ま、とりあえずまずはわしらの自己紹介でもしよか、あ、そのジュース飲んでもええよ」

 

 と豚の着ぐるみは蓮に向けてジュースを勧めた。

 蓮は下手に刺激しないように黙って言うことを聞いてジュースを一気に飲み干した。

 豚の着ぐるみは紹介すると言って「喋りません」と書かれていたダンボールを糸で首からかけ正座させられていた白衣の男と、部屋の片隅にちょこんと座っていた雪のように白い髪をした少女をソファーに呼んで座らせた。

 

「このちっちゃい子がアルで、この変態男が奏威(かなでたけし)って言うねん、でわしがサグーのブースや」

 

「は、はぁ……」

 

 自己紹介をされてもどう答えていいのかわからなかった。

 ふと机に置かれていた時計に目が入った、もう既に夜の時間帯で母が心配してないかと不安な気持ちでいっぱいになった。

 帰らせてください、と言いたかったが怖いし何をされるかわかったもんではないので言い出せなかった。

 

「まぁ次は状況整理といこか」

 

 蓮の気持ちをお構いなしに話が進んでいった。

 

「嬢ちゃんはあの公園でトラックをごっつい力で止めたやん、それはな、すまんけどわしらのせいやねん」

 

 その言葉を聞いた時、ぽかんと口が開いてしまった。蓮は深呼吸で心を整え、質問しようと覚悟を決めた。

 

「そ、そ、そ、それって、どういうい、意味ですか?」

 

 恥ずかしいとか言ってられる次元じゃない、どういう事かハッキリと聞かないといけないことだ。

 

「あっ、それはね! 僕が開発したエナV2のせいなんだ」

 

 さっきまで黙っていた威という男が、笑顔で鼻息を荒くしながらマシンガントークを続けた。

 

「エナV2ってのはね、 version2の略で僕達が開発したんだ! エナは僕自身もあんまり理解してないけどとにかくすごいんだよ。この小さいアンプルにエナが入っていてね、この回転式モデルガンを使って改造したレーザー銃の弾倉にアンプルを詰め込んで……」

 

「シャラップ。話がややこしなる」

 

「すいませんでした」

 

 ブースが右拳を「殴るぞ」と警告するように見せつけた。可愛らしいあの手で殴られても痛そうには思えなかったが効果はあるようで威という男は置物のように口を閉ざした。

 

「嬢ちゃんがトラックに轢かれそうになった時にな、偶然通りかかったアルがこのレーザー銃ちゅう奴を嬢ちゃんを助ける為に撃ってしまったんや。やけどそれのおかげで嬢ちゃんの力が強くなってしもてトラックを止めたんや」

 

 何を言ってるのか一切理解できず、ポカンと口を開けてしまった。するとブースは着ぐるみの上なのに頭をポリポリかいて溜息をついた。

 

「そうやろうなぁ、わしらの事も一応知ってもらいたいけど、まぁええわ。とにかく説明していくわ、知らん言葉ばっかり出てくるからバンバン質問してええで」

 

「は……はい」

 

「とりま、嬢ちゃんを強くしたエナっちゅうもんわな、この世界で例えると魔力みたいなもんやな。エナがあるとな、まんま魔法使いやけど、空を飛べたり、透明になれたり、運動神経がよくなったりできるねん。そのエナV3? V2? が今の嬢ちゃんの中に宿ってんねん」

 

 その説明は非現実的すぎた。しかしトラックを止めた時の出来事のせいか妙に信憑性が増してしまっていて納得してしまう自分がいた。

 あれは本当に手で止めた感触が残っていたし、トラックにくっきりと手形の跡が残っていたのを明確に覚えている。まだ完全に信じた訳じゃないが嘘をついてるようにも見えなかった。

 蓮は試しに机の上の空のマグカップを掴んだ。ほんの少しだけ力を入れるとマグカップは粉々に砕け散った。シュークリームを潰すより簡単だった。

 

 自分でやっておきながら血の気が引いていく。

 

「嬢ちゃんには悪いと思ってるけど、エナが宿らんかったらトラックに轢かれて今頃ドロドロのミンチよりひどい事になってたんや。感謝してくれとは言わん、いくらでも殴ってもええ」

 

 着ぐるみのせいで何を考えてるのかは読み取れなかったけど、悲しみに溢れていて泣いてる声だった。

 

 複雑な心境だった。話自体は半分しか頭に入らなかったが、この話がもし事実だとすると、この人達は私を助けてくれた事になる。どんな形だとしてもだ。

 

「…………わ、私はき、気にしてません」

 

 前髪で視界を隠して下向きそう言った。

 

「そうなんや! いやー嬢ちゃんはわしが見込んだだけあるわー」

 

 さっきの涙声は嘘だったのだろうか、そう思わさせるほどブースの態度が180度変わってしまった。

 

「でも大丈夫や、嬢ちゃんがちゃんと普通に暮らせるような機械を開発したるから」

 

 その言葉を聞くと少しだけざわめきが柔んだ。

 その時、黙りこくっていた威がブースに口出しをした。

 

「ねぇ。本当にあの事言わなくていいの? やっと見つけた適合者なんだよ、何の為にアルと僕が連れてきて記憶を消したと思ってるんだい」

 

「記憶を消した?」

 

 蓮はその言葉が引っかかった。

 

「威、お前はほんま一言足りんなぁ。そんなことやから妹さんに嫌われるんやで…………嬢ちゃん。記憶を消したってのは嬢ちゃんの事故を目撃した人達のことやねん」

 

「そ、そうですか」

 

 変な技術力を持つのだから何かされたのかと不安な気持ちになったがブースの言葉で安心した。

 しかしその言葉は本当に信じていいのだろうか、いや嫌な方向に持っていくのはやめだ。

 

「やっぱりここで離すのは惜しい人材だ!」

 

 と、その時威が蓮の両手を掴んだ。蓮は咄嗟のことだから「きゃっ」と小さな悲鳴が出た。

 

「ちょ、お前さんその手を離さんか……」

 

 とブースが叫ぶ前に威は言った。

 

「君の力を貸して欲しいんだ! 僕たちは砂漠から宝石を探すような地道な作業からやっとエナV2適合者を見つけたんだ! それが君で本当に適合した時は心が踊ったんだよ! とにかく君が普通に生活できるように僕たちは頑張るから、その分手伝ってほしいんだ。ほら狸の手だって借りたいって言うじゃん! 今がその時で、あっ、君が狸って訳じゃないよ。ただの例えで、えっ? 狸じゃなくて猫? この際狸だろうが猫だろうがどうでもいいんだ! 僕たちはなんでもするからさ! ね! ね! ね!」

 

 今まで喋れなかった分、一気に放出したようで、驚いて声すら出てこなかった。

 

 

 

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