その1
・『空中都市SAGA』
かずらからホモォの話を聞いた後、既に空はオレンジ色に染まっていた。
一応小学生である二人は門限があるため、ナツメとかずらに別れを告げて家を出てすぐのことだった。
「…………そういえばユーダイ。聞きたい事があったのだが」
「なに、シキ。もしかして、ホモォのことで気になることとか?」
「いや、それについてはまだ整理中だ。私が聞きたいのは………」
「聞きたいのは?」
「佐賀は…………飛ぶのか?」
「え、飛ばないの?」
何を言ってるの?と言わんばかりの顔でそう返されたシキは額に手を当てて考え始めた。
おかしい。確か佐賀は同じ九州地方に位置する長崎よりも小さくて、隣に位置する県だったはずだと、日本地図の教科書で知ったからそれが常識だった。
だが、ユーダイの話ではラ○ュタよろしくと言わんばかり縦横無尽に空を飛び、果てはマチュピチュにまで行っている話ではないか。
自分の常識がおかしいのか。それともユーダイの常識を疑えばいいのか悩むシキだった
「いやいや、おかしいだろ。なぜ島が飛ぶ!? 小学生の私でも分かる事だが物理法則はどうしたというのだ!?」
「シキ。この物語に物理法則を期待するほど野暮なことは無いと思うよ。この先だってTASさんさんだの、アタリハンテイ力学だのと色々と――――」
それ以上はいけない。
とにもかくにも、色々と自分の知らない所で世界がおかしくなっているのは理解した。
父の影響でテレビやパソコンなど必要以上に扱わなかったが、今日からテレビだけでもいいからニュースなどを確認していこうと心の中でそう決心するシキであった。
・『小隊員紹介・ユーフォ―編』
ユーダイ達との出会いから数日後、シキは他の小隊員をするからと言われて連れてこられたのが、前に訪れた公園。
そしてタコの遊具の前には数十人もの小学生と対面する。若干緊張しながらも、数十人もの視線を浴びせられているシキは精一杯自己紹介をすることにした。
「えっと……はじめ、まして。篠ノ之 箒です。ユーダイ達からは、シキと呼ばれている」
「ユーダイからあらかじめ聞いてるよ。僕はユーフォ―小隊隊長の小茨卓。みんなからシンイチって呼ばれてるけど、呼びやすい方で呼んでいいから。これからもよろしくね」
「う、うむ、よろしく頼む。えっと……すまないが、一つ聞いていいか」
「なに?」
「なぜ、『こいばら すぐる』なのに、愛称がシンイチなんだ?」
「それはね名探偵コナンの主人公の由来だよ」
「コナンとはどういうものか知らないが、なぜコナンじゃないのだ?」
「あぁ、そっち方面だったか。なんか新鮮」
まさか主人公の本名が~ではなく、コナンそのものを見ていない子供がいたのは珍しいケースだったため、高性能ではない普通の眼鏡をかけているシンイチは苦笑いを漏らす。
ちなみに新一ほどではないが分隊中で一番頭が良い方で、音楽関連は新一ほど壊滅的ではなく普通である。
「俺、阿梨村陽平。好きに呼んでいいよ。あとみんなからメカニック担当とか言われてるけど、そこまで詳しくねーし、専門じゃねーから。よろしく、シキ」
前髪で目が隠れていて、若干気怠そうに自己紹介をする少年アリムラ。
過去にキャトラれた時にオーバーテクノロジー相手に修理(チョップ)が効いたことがあったため、分隊たちからはメカニック担当を半場押し付けられる形になった。
「よろしく頼む。………専門でも無いのに、嫌なら断ればいいのではないのか?アリムラにはやりたいことはないのか?」
「いや、別に嫌ってわけじゃねぇから。ただ小隊どころか分隊の誰一人そういうの得意なやつがいねぇからやってるだけ。やりたいことって程じゃねぇけど………アタリハンテイ力学に興味がある」
「なんだそれは?」
「いや、知らないならいい」
ヒガサキ含め、他物理組がアップをし始めている光景を横目にシキは首を傾げる。
しかし、疑問に思いながらも潜在的に物理組の素質のあるシキにとっては何かと頭の中に残ってしまう、そんなアリムラの言葉だった。
「私は井柄井鳴子。ユーダイが
「………よろしく頼む」
分隊の誰もがタダならぬ雰囲気を出しているが、特に目の前にいるおかっぱ頭の少女メーコから醸し出される真っ黒い雰囲気に薄々と感じ取ったシキは警戒してしまった。
警戒したシキを見てか、メーコは小さく不敵な笑みを浮かべる。
「そう警戒しなさんな。別にお前ェさんを取って食うたりはしねェよ」
「す、すまない。何故か分からないが、お前を見た瞬間、いや、目が合った瞬間、嫌な気を感じ取ったというか………」
「ふーん…………なるほど、本質的にはヨッコ寄りの性質だな」
「??」
「気にしなさんな。とりあえず
そう言ってもう用が済んだと言わんばかりにメーコは不敵な笑みを浮かべたまま、下がっていった。何を言っているのか殆ど分からなかったし怪しい雰囲気を纏ってはいるようだが、何やら助言めいたことを言っていたので悪い人物でない、と何となくそう判断しておく。
「私、森口香奈美!みんなからシンディって呼ばれてるからシンディってよんでね!」
「あ、あぁ、わ、わたしのことは、シキで、いいから」
「ねぇねぇ、篠ノ之博士の妹なんでしょ?ISってどんなの、カッコいいの?テレビで白騎士見ても、どんな感じなのかわかんなかったの。アーマードコアっぽい?それともヴァルキリー?ガンダム?ガングリフォン?バーチャロン?ゼオライマー?ラーゼフォン?ジェフティ?メタルギア?攻殻?ねぇねぇどんな風なのか教えて教えて!」
「す、すまないが、わたしも、どういうものなのか、直接、見たことないから、分から、ない………と、とりあえず、お、おち、落ち着いてくれ」
太眉で元気の良くシキの両手を取ってブンブンと身体が揺さぶられるほど勢いよく振って握手しながらマシンガントークする少女シンディ。
この元気良さからして分かるだろうが特技はボディランゲージ。無論ゴリ押し。
一人だけ外国人めいた名前だが、由来はギリシャ神話のシンシアから。
名前と性格があっていないが、所属する小隊がそれに連なっているから。
因みにISはどちらかと言えばフ〇ームアームズ〇ールか武装〇姫に近い。
「えー、そっかー残念」
「うっ………期待に応えられなくて、すまない」
「ううん、いいの! あ、UFOとか宇宙人に興味ある? 宇宙人に友達がいるから紹介するよ!」
「え? あ、いや…………え?」
「じゃあ今度みんなと一緒に行こうね!」
「い、いや、ちょっと待て。UFO?宇宙人?そんなもの実在するのか?」
「うん、するよ。ほら、あんな感じのって――――――――――」
『みっちゃん!?あと、てっちゃん!?またキャトラれてる――――――っ!』
ISの話から急に存在しないであろう宇宙人だのUFOだのという話に切り替わったため、思わず困惑してしまうシキをよそに全小隊員が空に指を指しているのを見て、空を見る。
「…………へぁ!?」
間の抜けた声が思わず漏れた。
視線の先、空には白昼堂々とUFOの様な物体が飛んでいて、何やら男女二人がUFOに連れ去られようとしているのが見えた。
錯覚か私を監視するために国が用意した飛行物体かなどと疑いそうになったが、小隊員全員の反応から察するに後者は保留として、前者ではないようだった。
「知らない形とエンブレムのUFO、きっと別の侵略者だ!」
「最近ケ〇ロ軍曹並の頻度だなチクショウっ! せめてプレ〇ターくらいにしろ!」
「そっちがもっとヤバいだろビジュアル的に!」
「メーコ、いますぐこっちにもUFO用意するように伝えて!」
「すでに向こうにいる悪魔に伝えてらァ。数万光年先からヤマト真っ青の時空転移で跳んで来る頃だろうよ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
「おぉスゲェ、アル〇ディア号とエメ〇ルダス号じゃん!」
「アイツ等、造るって言ってたけどマジで造ったの!?」
「個人的にはマ〇ー・バンガードのほうが良かったけども!」
「おっしゃああ!みんな、みっちゃんとてっちゃんの二人を助けるために乗り込むぞ!」
『応ゥ!』
「ほらシキ、一緒に行こ!」
「え!?行くって、あれに乗ってか!?」
IS以上のオーバーテクノロジーが満載してそうな代物を目して状況が未だつかめていないシキは手を取られ半場無理やりユーフォ―小隊を筆頭に仲間を救うため謎のUFOを追うべく宇宙の旅を経験することになる。
銀河の歴史がまた1ページ。
キャトラれた二人の自己紹介。
三つ編みの女の子が三城谷美津子。愛称はみっちゃん。よくキャトラれる。
右目に縦の傷がある男の子が蔦原哲哉。愛称はてっちゃん。よく巻き添えをくらう。
「俺たちの紹介雑くね!?」
「いまの状況的にもそういう雰囲気じゃないからね。仕方ないよ」
追記:映画でエイリアンとか地球外生命体の作ってる乗り物って大抵オーバーテクノロジーだからこれくらいやらかしても問題は無いと思う。